2021(02)
■すいすいすいっすー
＋＋＋＋
「なつみせんぱぁーい！」
ABCのサークル室はコンクリート打ちっぱなしの駐車場を抜けた先の棟にあるんだけど、いかにも打ちっぱなしから叫んでますって感じの響き方をした声がする。それでもちゃんとこの部屋に届いてはいるんだけど、呼ばれているなっちゃんが物凄くビックリしてる。まあ、そうだよねえ。
「って言うかまつり声うっさ」
「これだけ声が通るのにミキサーっていうのも勿体ないね」
「直クン先輩何をしみじみ言ってるんですか。絶対この声ABC以外の部屋にも聞こえてますよ。この季節ですしどこも扉開けてますよね？」
「あ、確かにそうかも」
声の主は清瀬まつり。１年生のミキサーで、結構ボリューミーなツインテールがトレードマークの元気印。ううん、元気印とかそんなかわいらしいもんじゃない。とにかく派手好きでうるっさい。声も大きいし勢いも物凄い。高校までは運動部だったから身体も動くし力もある。悪い子ではないんだけどね。元気すぎるんだ。
余談だけど、夏合宿の班割りも元気過ぎる子が集められる傾向にあったエージの班にしてもらったとはサドニナ談。話の流れでついでにサクッと滑り込ませたって。それに関してはよくやったなあと思いつつも、各大学のそういう子を預けられてるエージが保育所とか幼稚園とかそういうところの先生みたいにも見えて来る。
「なつみ先輩来てますか!?」
「あ、はい。来てますよ。まつりさん、どうしたんですか？ 随分遠くから私のことを呼んでいたようですが……」
「大ニュースなんです！ 先輩見てくださいこれ！」
「それは…！ チェアーズとのコラボグッズじゃないですか！ もしかして、グッズ売り場に並んだんですか？」
「並びましたよ～！ 授業は出れなかったですけど、その辺はご愛嬌です！」
「え……授業には、出た方が良かったんじゃないかと……。いえ、並びたい気持ちもよくわかるんですけど」
「並ばないと絶対買えませんからね！」
「私はオンラインで買おうと思っているんですけど」
「あー、今回の行列の感じ見てたら転売ヤーも結構いたっぽかったしネット販売は結構厳しいと思いますよ～」
「ですよねえ……」
なっちゃんは内気で大人しい感じの子っていう第一印象は今でも変わってないんだけど、意外だなって思ったのが野球観戦の趣味があったってことだよね。星港に本拠地を置くポケッツのライトファンで、たまにドームに見に行ってるんだって。観戦のスタンスは、本人のキャラクターを裏切らず、静かに見てるそうだけど。
まつりは女子野球の経験があるとかで、野球のルールもわかってるらしい。一般にイメージされるプロ野球はライトに見つつも、特に好きなのはプロ野球球団のマスコットだとか。マスコットのグッズとかをよく買い集めていて、今なっちゃんに見せていたのも、今日の正午に販売開始されたらしい限定グッズ。
「あっほら！ もう転売されてる！」
「定価の５倍の値段はやりすぎですね」
「全員釘バットの刑に処す！ ケツ出せやケツー」
「受注生産などにしてもらえればいいんですけど」
「なかなかそうもいかないんですかねー。ほらなつみ先輩、こうして、このイスにスイッスーカバーをかけまーす」
「いいですね」
「これ２枚セットなんで、なつみ先輩ポッケの方付けてくださいよ」
「いいんですか？」
「はい！ アタシだけイスにカバーつけてるのも変ですし」
まつりとなっちゃんは今買って来たグッズのイスカバーをかけている。ABCのサークル室にあるイスはよくある学校用のイス。カバーにはキャラクターの顔が書いてある。なっちゃんの方は向島民ならほとんど知ってるポケッツのマスコット、ポッケ。野球に興味なくてもマスコットは好きって人もいるからね。
「これ、まつりの方のはどんなキャラなの？ ポッケはよく見るけど」
「これは東都に本拠地があるチェアーズっていうチームのマスコットで、イスがモチーフになってるんです！」
「ああ、だからイスカバー？」
「ですね！ この子、スイッスーっていうんですけど、スイッスーとポッケは仲良しで、スイッスーは星港にもよく遊びに来るんですよ！」
まつりのカバンにはじゃらじゃらとたくさんのマスコットぬいぐるみがぶら下がっている。それをあたしたちに見せながら、この子がどこの何ていう子で、こういう性格で、球場ではこういう感じでパフォーマンスをして～ということを語っている。で、それをたまになっちゃんが補足してくれて。
同じ話題で盛り上がれる子がサークルに来たのは、なっちゃんにとっては良かったのかも。野球の話をしているときのなっちゃんは結構楽しそうにしてるからね。あたしやサドニナじゃ野球の話はさっぱりだし。一応向島エリアには住んでても、スポーツには疎いって言うか。
「ユキ先輩、マスコット動画もあるんで見てください！ かわいいんで！」
「えー、今はいいよ」
「じゃあ再生リスト作るんで見といてください！ 必修ですからね！ テストもします！」
「その情熱をもっとちょっとミキサーの練習の方にも向けてくれないかなあ」
「ミキサーの練習はほら、なつみ先輩に見てもらいますし！」
「え？ 私、ですか…？」
「なっちゃん、そこは見てあげてよ。ボクも見るけどご指名だし」
「ええと……私でよろしければ……」
end.
＋＋＋＋
青女のキャラを立てることでインターフェイス全体の１年生がきゃいきゃいするようになると思うので、まずは青女だ。
まつりはエイジの班に預けられるレベルの元気な子。フェーズ２の１年生では意外にいない体育会系。
夏合宿の班で１年生がわちゃわちゃしてる話もやりたい。しかも同じ班のなっちゃんに懐いているので、前評判より怯えなくていいんじゃない？
.
＋＋＋＋
「なつみせんぱぁーい！」
ABCのサークル室はコンクリート打ちっぱなしの駐車場を抜けた先の棟にあるんだけど、いかにも打ちっぱなしから叫んでますって感じの響き方をした声がする。それでもちゃんとこの部屋に届いてはいるんだけど、呼ばれているなっちゃんが物凄くビックリしてる。まあ、そうだよねえ。
「って言うかまつり声うっさ」
「これだけ声が通るのにミキサーっていうのも勿体ないね」
「直クン先輩何をしみじみ言ってるんですか。絶対この声ABC以外の部屋にも聞こえてますよ。この季節ですしどこも扉開けてますよね？」
「あ、確かにそうかも」
声の主は清瀬まつり。１年生のミキサーで、結構ボリューミーなツインテールがトレードマークの元気印。ううん、元気印とかそんなかわいらしいもんじゃない。とにかく派手好きでうるっさい。声も大きいし勢いも物凄い。高校までは運動部だったから身体も動くし力もある。悪い子ではないんだけどね。元気すぎるんだ。
余談だけど、夏合宿の班割りも元気過ぎる子が集められる傾向にあったエージの班にしてもらったとはサドニナ談。話の流れでついでにサクッと滑り込ませたって。それに関してはよくやったなあと思いつつも、各大学のそういう子を預けられてるエージが保育所とか幼稚園とかそういうところの先生みたいにも見えて来る。
「なつみ先輩来てますか!?」
「あ、はい。来てますよ。まつりさん、どうしたんですか？ 随分遠くから私のことを呼んでいたようですが……」
「大ニュースなんです！ 先輩見てくださいこれ！」
「それは…！ チェアーズとのコラボグッズじゃないですか！ もしかして、グッズ売り場に並んだんですか？」
「並びましたよ～！ 授業は出れなかったですけど、その辺はご愛嬌です！」
「え……授業には、出た方が良かったんじゃないかと……。いえ、並びたい気持ちもよくわかるんですけど」
「並ばないと絶対買えませんからね！」
「私はオンラインで買おうと思っているんですけど」
「あー、今回の行列の感じ見てたら転売ヤーも結構いたっぽかったしネット販売は結構厳しいと思いますよ～」
「ですよねえ……」
なっちゃんは内気で大人しい感じの子っていう第一印象は今でも変わってないんだけど、意外だなって思ったのが野球観戦の趣味があったってことだよね。星港に本拠地を置くポケッツのライトファンで、たまにドームに見に行ってるんだって。観戦のスタンスは、本人のキャラクターを裏切らず、静かに見てるそうだけど。
まつりは女子野球の経験があるとかで、野球のルールもわかってるらしい。一般にイメージされるプロ野球はライトに見つつも、特に好きなのはプロ野球球団のマスコットだとか。マスコットのグッズとかをよく買い集めていて、今なっちゃんに見せていたのも、今日の正午に販売開始されたらしい限定グッズ。
「あっほら！ もう転売されてる！」
「定価の５倍の値段はやりすぎですね」
「全員釘バットの刑に処す！ ケツ出せやケツー」
「受注生産などにしてもらえればいいんですけど」
「なかなかそうもいかないんですかねー。ほらなつみ先輩、こうして、このイスにスイッスーカバーをかけまーす」
「いいですね」
「これ２枚セットなんで、なつみ先輩ポッケの方付けてくださいよ」
「いいんですか？」
「はい！ アタシだけイスにカバーつけてるのも変ですし」
まつりとなっちゃんは今買って来たグッズのイスカバーをかけている。ABCのサークル室にあるイスはよくある学校用のイス。カバーにはキャラクターの顔が書いてある。なっちゃんの方は向島民ならほとんど知ってるポケッツのマスコット、ポッケ。野球に興味なくてもマスコットは好きって人もいるからね。
「これ、まつりの方のはどんなキャラなの？ ポッケはよく見るけど」
「これは東都に本拠地があるチェアーズっていうチームのマスコットで、イスがモチーフになってるんです！」
「ああ、だからイスカバー？」
「ですね！ この子、スイッスーっていうんですけど、スイッスーとポッケは仲良しで、スイッスーは星港にもよく遊びに来るんですよ！」
まつりのカバンにはじゃらじゃらとたくさんのマスコットぬいぐるみがぶら下がっている。それをあたしたちに見せながら、この子がどこの何ていう子で、こういう性格で、球場ではこういう感じでパフォーマンスをして～ということを語っている。で、それをたまになっちゃんが補足してくれて。
同じ話題で盛り上がれる子がサークルに来たのは、なっちゃんにとっては良かったのかも。野球の話をしているときのなっちゃんは結構楽しそうにしてるからね。あたしやサドニナじゃ野球の話はさっぱりだし。一応向島エリアには住んでても、スポーツには疎いって言うか。
「ユキ先輩、マスコット動画もあるんで見てください！ かわいいんで！」
「えー、今はいいよ」
「じゃあ再生リスト作るんで見といてください！ 必修ですからね！ テストもします！」
「その情熱をもっとちょっとミキサーの練習の方にも向けてくれないかなあ」
「ミキサーの練習はほら、なつみ先輩に見てもらいますし！」
「え？ 私、ですか…？」
「なっちゃん、そこは見てあげてよ。ボクも見るけどご指名だし」
「ええと……私でよろしければ……」
end.
＋＋＋＋
青女のキャラを立てることでインターフェイス全体の１年生がきゃいきゃいするようになると思うので、まずは青女だ。
まつりはエイジの班に預けられるレベルの元気な子。フェーズ２の１年生では意外にいない体育会系。
夏合宿の班で１年生がわちゃわちゃしてる話もやりたい。しかも同じ班のなっちゃんに懐いているので、前評判より怯えなくていいんじゃない？
.
