2021

■腕力と機械と氷の情緒

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「有志集合ー」
「三浦ですよー、来ましたよ慧梨夏さーん! よっちゃんもいます! それから鵠沼クンも」

 慧梨夏サンから招集されていたらしいのは俺、三浦、葉山、それから宮前だ。どうしてそのメンバーが招集されたのかはまだわからないけど、とりあえず車に乗れる定員丁度の5人が集まった。今日の活動内容は今から発表されるそうだ。
 まずは有無を言わさず車に詰め込まれ、俺が後部座席だと図体がデカくて邪魔だという理由で助手席に座ることになった。三浦は終始はしゃいでいるけど、まだ何が始まるのか理解していない俺と1年は何が始まるんだということばかりが気になっている。

「三浦さんは何の会なのか聞いているんですか?」
「ううん、まだだよ」
「まだなのにそんなにはしゃげるんですね」
「葉山、三浦ってのはそういう奴だ」
「納得しました」
「えー、ひどーい。それで慧梨夏サン、これって何の会なんです?」
「かき氷の会だね。去年鵠っちの誕生会兼かき氷大会やったでしょ? 今年も明日のサークルの後にやろうと思って。それで、材料を確保しようと思ってね。その買い出し」
「なるほど~!」
「ちなみにだけど鵠っち、冷凍庫の中身なんかは」
「そんなにないっすね。アイスがちょっとあるくらいで」
「ナ~イス。材料は鵠っちの部屋の冷凍庫で保存と、冷凍をさせてもらおうかと。大丈夫?」
「大丈夫っす」

 俺たちは明日のサークルで行うかき氷大会の材料を買い出しに行く一団だったらしい。去年のかき氷大会と言えば、電動かき氷機があるにも関わらず体育会系だからという理由で手回し式のキョロちゃんというかき氷機のハンドルを延々とぐるぐる回していた覚えがある。あれは地味にしんどかった。
 明日のかき氷大会は去年のスタイルとはまた違う風にするそうだ。会場&冷凍庫要員としての俺、かき氷機(機械≒ロボット)要員としての葉山、可愛い物に敏感な女子要員の宮前、そして賑やかしの三浦という4人を招集したそうだ。賑やかしの仕事とは、と思ったけど、どうせイベントをやるなら乗り気な奴がいる方がいいんだろうな。

「今年調達したかき氷機はね、冷凍フルーツも削れるんですよ」
「え~! おしゃ~!」
「氷は専用の容器で作ったヤツじゃないとダメなんだけど、ジュースを凍らせたり、味付けしたり缶詰の果物を入れたりしていろいろカスタム出来るんだよ」
「専門店のとか、台湾風かき氷みたいに出来るってことですか?」
「そーそーそー! そーゆーコト紫乃ちゃん! だからね、これという食材を買いに出てるんですよ」

 そう聞くと、なるほどなーとみんな納得してどんな味の氷にしようかなと想像を膨らませ始めるんだ。マンゴーを凍らせるのが絶対美味いだろうとか、テッパンのカルピス氷とか、いろいろアイディアを出し合う。もちろん変わり種以外にも、これまで通りのかき氷の用意も忘れない。
 専用の器というのがいくつあるのかはわからないけど、円柱型の器とハーフ器というものがあるらしく、ハーフ器を2つ合わせてミックス氷というのも出来るらしい。最近のかき氷はよくわかんないじゃんと思いつつも、美味そうだとも思う。ハーフ氷にするに当たって相性のいい組み合わせも考えたい。

「紫乃ちゃんはどんな果物を削りたい?」
「私はイチゴを削って、バニラアイスにトッピングしたいと思ったんですけど、かき氷大会の主旨からは外れますよね?」
「え? 別にいいと思うよ。って言うかむしろ美味しそう! イチゴミルク感が強いんだろうな~」

 慧梨夏サンが練乳も用意しないとな~とウキウキしている中で、バックミラー越しに見える葉山はひたすらスマホを見ている。乗り物酔いには強いタイプか。どうやら、機械要員として慧梨夏サンが調達したというかき氷機についての情報を得ているらしい。

「慧梨夏さん、かき氷機というのは機械の構造上、どうしても削り残しが出ますよね」
「そうだね。6ミリとか7ミリかな? それくらいは残るってネットで見たね。そういう果物はトッピングにしてもいいんじゃないかなとは」
「確かに使い道としてはいいですね。あの、明日は実際のかき氷機の構造を見せてもらうことは」
「もちろん出来るよ。何かね、刃の長さで氷のふわふわ感が調節出来るから、よっちゃんにはその役をやってもらおうと思ってたよ。専門店みたいなふわふわにするか、縁日みたいなじゃりじゃりにするか」
「く~っ! いいですね慧梨夏サン! 縁日のじゃりじゃり!」
「あー、確かに昔ながらの粗い氷は捨てがたいじゃん?」
「じゃあ鵠っち、やる?」
「えーと……やる、とは」
「またまたぁ。キョロちゃん出動でしょ」
「マジすか!?」

 電動かき氷機があるから今年はハンドルを延々回し続けなくてもいいかと思ったら。キョロちゃんは今年も出動予定だったらしい。電動のかき氷機でも粗い氷に出来るなら別にキョロちゃんでやる必要はないじゃんと思いつつも、氷を作る用の器の数が限られていると言われれば、仕方ないのかなあとも少し。

「最新のかき氷機の他にも従来型の電動かき氷機も用意するし、もちろんキョロちゃんも出動だし! 鵠っちの家の冷凍庫を氷で埋め尽くした上で、明日はみんなでかき氷をどんどん食べるからね!」
「いよっ慧梨夏サン名幹事~!」
「GREENsがこの路線で行くなら誰か引き継いでくれないといけないんだけどね」


end.


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最近のかき氷機はなかなかにハイテクだし、それと同時にキョロちゃんも出動するのでよっちゃんにはなかなか楽しい現場になりそうですね
それぞれ仕事がある中で、賑やかしの仕事というのが地味に大事。イベントやるならポジティブにという慧梨夏の考え方。
一応誕生日なのに家に押しかけられて、買い出しの後にはきっと氷の下拵えもあるから結構大変なポジションの鵠さんである。まあ、あるあるではあるんだけども

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