2021
■突き付けられる現実
++++
「おはようございまーす」
「おはよーすがやん!」
「おーすくるみ。あれっ。何か今日人少なくないすか?」
「タカちゃんとエージが夏合宿の顔合わせだって言ってたからね」
「ああ、それでかー。じゃあササとシノも打ち合わせなんすね」
インターフェイス夏合宿の班が決まって少し経った。少しずつ班の顔合わせに行って来たよーとかそんな話を聞いて、俺も早く顔合わせの日にならないかなーって待ってる感じ。一応日程としては、来週の火曜日っていう風にはなってるんだけど。1年で顔合わせに行ってないの、あと俺だけか。
「そう言えば、こないだはくるみが顔合わせに行ってきたんだよね。どうだった?」
「奈々先輩がすっごく優しかったですし、マリン先輩はしっかり者でカッコいいですし、1年生のみんなとも仲良くなりたいし、夏合宿の忙しさを猛烈に実感してますっ!」
「そう。今のところは楽しそうで何より」
「はいっ! 楽しいです!」
「果林先輩、今のところはってのが引っかかりますけど」
「夢も希望もあるけど、時には現実も絶望もあるよってことは念頭に置いといてもらわないといけないからね。タカちゃんもエージも頑張ってるけど」
「現実と絶望かー……そう聞くと怖いっすね」
「もちろん、楽しいだけで終われれば一番いいんだけどね」
夏合宿では毎年何かしらの問題が起こっているらしい。去年はイキり系の3年生がペアになった1年生をパワハラで潰してしまうということが発生したらしい。パワハラを受けた人は精神的に追い詰められて、合宿の後にサークルを辞めてしまったそうだ。今年はそんなことがないといいけど、と果林先輩は心配している。
「そう言えばアタシ前回サキの話聞けてないけど、顔合わせどうだった?」
「あー……まあ、俺は話を聞いてるだけだったので」
「班の子とは上手くやれそう?」
「ハナ先輩もいるので。班長の先輩も穏やかな感じなので安心しました」
「えーっと? サキの班長は、っと。ゲンゴローか。1年生はどう? ペアの相手とか」
「青女のエマとペアになりました。典型的なお嬢様っていう感じで」
「お嬢様かー。青女にはいるんだよね、本物が」
「最初はドぎついタイプかなって引いたんですけど、話してみると、お嬢様言葉の効果もあってそこまでキツくなかったですね」
「えーっ、そんな絵に描いたようなお嬢様がいるんだ! すごーい!」
サキの班の話は水曜日のサークルでチラッと聞いたんだけど、サークルで話した以外のことも実は車の中で聞いてたんだ。顔合わせの空気が実はちょっと微妙だったことだとか。それっていうのは、不貞腐れたような態度でつまらなさそうにしている女子が発する空気なんだろうなあ、というようなことだとか。
その女子とペアになったハナ先輩が「よろしく」と挨拶をしても「どーも」とむすっとしたような感じで返していたのを見てドン引きしたってサキが言ってて。サキがドン引きするって相当だなと俺も思った。って言うか、初対面の人に対する態度ではないし、あの人とはまともなコミュニケーションがとれないなと思ったらしい。
「すがやんはこれから顔合わせだよね」
「そうっすね。一応班長と副班長の先輩からそれぞれ顔合わせの連絡は来てるんで」
「え、副班長からも来てるとか。誰? そんな真面目な子。あ~、班長がサドニナで、副班長があやめか」
「班長のサドニナ先輩からの連絡に結構漏れがあったとかで、その訂正を副班長のあやめ先輩がしてくれててって感じっすね」
「映像で再生出来るわ。あやめも野坂教の信者だからねー、その辺は真面目なんですよねー」
多分だけど、今後の連絡に関してはあやめ先輩の方を基準に見ていけばいいのかな、という感じ。LINEの文章のノリとかそういうのを見ている感じでは。サドニナ先輩のメッセージは絵文字でキラキラしてるんだけど、内容を整理して読むのが結構な作業量で。一方、あやめ先輩のメッセージはパッと見で内容が理解出来る。
「レナも星ヶ丘の1年の子って言ってたし、サキも青女の1年の子でしょ? くるみのペアは? やっぱ1年の子?」
「あたしは千颯っていう星大の1年の子とペアになりました。結構ほわっとした感じの子で、知ってる人だったら高木先輩みたいな性格ですねー」
「ああ、そうなんだ。そしたらすがやんも1年生とペアになる可能性が十二分にあるね」
「普通は1年ペアにはならない感じですか?」
「絶対にならないってことはないけど、基本は1・2年で組むようになる感じ。でも今年の人数バランスだと絶対各班1組は1年ペアが出来るし、だったらウチの子に頼もうってなるのはわかるかな」
如何せん緑ヶ丘だと「緑大ならラジオのことはある程度わかってるだろうし、技術も他の大学さんよりあるだろう」と思われがちなんだそうだ。実際に番組をやるだけならともかく、ペアの話し合いをリードするっていう点では誰に対しても平等だとは思うけど。そういうところも期待されたらどーするかなあ。
「すがやんの班は2年生がサドニナとあやめでしょ? ラジオっていうところではすがやんが意見を求められることも十分あるから、しっかり考えときなね」
「すがやん、責任重大だね!」
「がんばれー」
「や、くるみもサキも気楽過ぎないか!?」
「あたしは向島の奈々先輩がいるし」
「俺もハナ先輩がいるし」
「そうかー、ラジオ番組に対する知識と技術かー…! 果林先輩、改めて鍛え直してもらっていいですか?」
「いい心がけだね」
end.
++++
班長が「2年がラジオに弱いから1年でフォローして」って言ってるんでしたねサドニナ班は。すがやんにかかる圧である。
すがやん車の中ではサキもここだけの話をしているみたいです。ハナちゃんがビキビキしてたとかそんなことも言ってたのかな
もしかしなくてもサドニナは去年のヒロ枠なんだろうなあ。副班長の方がしっかりしてる班。しかし野坂教の信者とは。あとマリンとなっちゃんがいるのかしら。
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「おはようございまーす」
「おはよーすがやん!」
「おーすくるみ。あれっ。何か今日人少なくないすか?」
「タカちゃんとエージが夏合宿の顔合わせだって言ってたからね」
「ああ、それでかー。じゃあササとシノも打ち合わせなんすね」
インターフェイス夏合宿の班が決まって少し経った。少しずつ班の顔合わせに行って来たよーとかそんな話を聞いて、俺も早く顔合わせの日にならないかなーって待ってる感じ。一応日程としては、来週の火曜日っていう風にはなってるんだけど。1年で顔合わせに行ってないの、あと俺だけか。
「そう言えば、こないだはくるみが顔合わせに行ってきたんだよね。どうだった?」
「奈々先輩がすっごく優しかったですし、マリン先輩はしっかり者でカッコいいですし、1年生のみんなとも仲良くなりたいし、夏合宿の忙しさを猛烈に実感してますっ!」
「そう。今のところは楽しそうで何より」
「はいっ! 楽しいです!」
「果林先輩、今のところはってのが引っかかりますけど」
「夢も希望もあるけど、時には現実も絶望もあるよってことは念頭に置いといてもらわないといけないからね。タカちゃんもエージも頑張ってるけど」
「現実と絶望かー……そう聞くと怖いっすね」
「もちろん、楽しいだけで終われれば一番いいんだけどね」
夏合宿では毎年何かしらの問題が起こっているらしい。去年はイキり系の3年生がペアになった1年生をパワハラで潰してしまうということが発生したらしい。パワハラを受けた人は精神的に追い詰められて、合宿の後にサークルを辞めてしまったそうだ。今年はそんなことがないといいけど、と果林先輩は心配している。
「そう言えばアタシ前回サキの話聞けてないけど、顔合わせどうだった?」
「あー……まあ、俺は話を聞いてるだけだったので」
「班の子とは上手くやれそう?」
「ハナ先輩もいるので。班長の先輩も穏やかな感じなので安心しました」
「えーっと? サキの班長は、っと。ゲンゴローか。1年生はどう? ペアの相手とか」
「青女のエマとペアになりました。典型的なお嬢様っていう感じで」
「お嬢様かー。青女にはいるんだよね、本物が」
「最初はドぎついタイプかなって引いたんですけど、話してみると、お嬢様言葉の効果もあってそこまでキツくなかったですね」
「えーっ、そんな絵に描いたようなお嬢様がいるんだ! すごーい!」
サキの班の話は水曜日のサークルでチラッと聞いたんだけど、サークルで話した以外のことも実は車の中で聞いてたんだ。顔合わせの空気が実はちょっと微妙だったことだとか。それっていうのは、不貞腐れたような態度でつまらなさそうにしている女子が発する空気なんだろうなあ、というようなことだとか。
その女子とペアになったハナ先輩が「よろしく」と挨拶をしても「どーも」とむすっとしたような感じで返していたのを見てドン引きしたってサキが言ってて。サキがドン引きするって相当だなと俺も思った。って言うか、初対面の人に対する態度ではないし、あの人とはまともなコミュニケーションがとれないなと思ったらしい。
「すがやんはこれから顔合わせだよね」
「そうっすね。一応班長と副班長の先輩からそれぞれ顔合わせの連絡は来てるんで」
「え、副班長からも来てるとか。誰? そんな真面目な子。あ~、班長がサドニナで、副班長があやめか」
「班長のサドニナ先輩からの連絡に結構漏れがあったとかで、その訂正を副班長のあやめ先輩がしてくれててって感じっすね」
「映像で再生出来るわ。あやめも野坂教の信者だからねー、その辺は真面目なんですよねー」
多分だけど、今後の連絡に関してはあやめ先輩の方を基準に見ていけばいいのかな、という感じ。LINEの文章のノリとかそういうのを見ている感じでは。サドニナ先輩のメッセージは絵文字でキラキラしてるんだけど、内容を整理して読むのが結構な作業量で。一方、あやめ先輩のメッセージはパッと見で内容が理解出来る。
「レナも星ヶ丘の1年の子って言ってたし、サキも青女の1年の子でしょ? くるみのペアは? やっぱ1年の子?」
「あたしは千颯っていう星大の1年の子とペアになりました。結構ほわっとした感じの子で、知ってる人だったら高木先輩みたいな性格ですねー」
「ああ、そうなんだ。そしたらすがやんも1年生とペアになる可能性が十二分にあるね」
「普通は1年ペアにはならない感じですか?」
「絶対にならないってことはないけど、基本は1・2年で組むようになる感じ。でも今年の人数バランスだと絶対各班1組は1年ペアが出来るし、だったらウチの子に頼もうってなるのはわかるかな」
如何せん緑ヶ丘だと「緑大ならラジオのことはある程度わかってるだろうし、技術も他の大学さんよりあるだろう」と思われがちなんだそうだ。実際に番組をやるだけならともかく、ペアの話し合いをリードするっていう点では誰に対しても平等だとは思うけど。そういうところも期待されたらどーするかなあ。
「すがやんの班は2年生がサドニナとあやめでしょ? ラジオっていうところではすがやんが意見を求められることも十分あるから、しっかり考えときなね」
「すがやん、責任重大だね!」
「がんばれー」
「や、くるみもサキも気楽過ぎないか!?」
「あたしは向島の奈々先輩がいるし」
「俺もハナ先輩がいるし」
「そうかー、ラジオ番組に対する知識と技術かー…! 果林先輩、改めて鍛え直してもらっていいですか?」
「いい心がけだね」
end.
++++
班長が「2年がラジオに弱いから1年でフォローして」って言ってるんでしたねサドニナ班は。すがやんにかかる圧である。
すがやん車の中ではサキもここだけの話をしているみたいです。ハナちゃんがビキビキしてたとかそんなことも言ってたのかな
もしかしなくてもサドニナは去年のヒロ枠なんだろうなあ。副班長の方がしっかりしてる班。しかし野坂教の信者とは。あとマリンとなっちゃんがいるのかしら。
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