2021
■ボケとツッコミと間のくるみ
++++
待ち合わせに指定されたのは、花栄の真ん中にあるカフェ。インターフェイス関係の会議は大体ここでやってるんだって。アイス黒糖ラテと、季節のメニューって書いてたから白桃のミルクレープに飛び付いちゃったけど会議だよね。ケーキを足したのは失敗したかも! とりあえず、それらしい人を探す。
禁煙席の奥の方に、机をいくつかくっつけている人を見つける。見た感じも、先に聞いてた特徴の通り。だから思い切って声をかけると、インターフェイス夏合宿の打ち合わせの席だったから一安心。席に座って、他の子たちの到着を待つ間に、あたしは証拠隠滅をしたいんだけど大丈夫かな。
「えっと、緑ヶ丘の依田くるみちゃんねッ!」
「はいっ! 依田くるみです!」
「かわいい~ッ! うちは班長で向島の岡島奈々っす」
「奈々先輩っ! よろしくお願いします!」
「かわっ、カワヨ~ッ! っとっと、ごめんごめん。挙動不審だよね」
「あの、ひとつ聞きたいんですけど大丈夫ですか?」
「なになに? 何でも聞いてーッ」
「夏の新作って書いてたんでうっかり白桃のミルクレープ買っちゃったんですけど、仮にもこれから会議なのに、飲み物ならともかくケーキはさすがにマズいですよね?」
「ああ、そんなこと。全然大丈夫だよ」
「よかったー」
班長の奈々先輩が大丈夫って言ってくれたので、ケーキを買ったことの証拠隠滅はしなくて良くなった感じ。でも、他の人がケーキ買ってこなかったらそれはそれで食い意地張ってると思われるかな? まあ、食い意地は実際張ってるし、スイーツの前に人は無力だし。開き直りも大事だよね。
「奈々先輩、いつからここで待ってるんですか? まだ集合時間の20分前ですけど」
「10分前くらいかな。豊葦から花栄に出ようと思ったらさ、めんどくさいじゃんいろいろ。青池止まりのこととか考えなきゃいけないし」
「わかりますー」
「そっか、くるちゃんも緑ヶ丘だもんね。他の子たちは星港市内から来るし、もうちょっとしないと来ないと思うけど」
あたしは通学では地下鉄に乗らないんだけど、買い物とかで星港市内に入るときは私鉄と地下鉄の接続でしまったーってなることもまああるんだよね。電車に乗ったまま一本ですーっと行ければ一番楽なんだけどね。
ケーキは他の人が来る前に食べてしまおうと、食べながら奈々先輩とお話をする。奈々先輩が話しやすそうな感じの人でよかったなー。奈々先輩はあたしと似た波長だから合うとは思うけどって先輩たちが言ってくれてたけど。でも、他の人がどんな感じなのかはまだわかんないもんね。仲良くなりたいなー。
「奈々、もう来てたです?」
「あっ、マリン。早いねー」
「集合時刻の15分前ですよ? ちっとも早くないですよ。これくらいが普通です」
「向島時刻ではめちゃくちゃ早いよ、15分前集合は」
「向島時刻とかいうインターフェイスで一番当てにならない物を引き合いに出すのはやめるですよ」
「すみませんでしたッ!」
「2年生の先輩ですか? 緑ヶ丘の依田くるみっていいます」
「あ、挨拶もそこそこにごめんですよ。星ヶ丘の浦和茉莉奈、インターフェイスではマリンって名前ですよ」
「マリン先輩! よろしくお願いします」
「よろしくです」
「くるちゃんだよマリン、かわいいでしょ~」
「どうして奈々がドヤるです」
「2人は奈々先輩がボケでマリン先輩がツッコミって感じですか?」
「コンビを組んだ覚えはないですけど、そうならざるを得ないですよ」
「そんな~、夏合宿の間はコンビでいいじゃんッ! 班長と副班長なんだしーッ!」
ここまでの感じから見ても、マリン先輩はしっかり者タイプの先輩なのかな。時間にも厳しいし、奈々先輩へのツッコミもキレッキレだし。あたしもすっとぼけたことをして怒られないようにしなきゃ。
「そう言えば、今先輩たちが言ってた“向島時刻”って何ですか?」
「あっ、くるちゃんそれ聞いちゃう?」
「えっ、聞いちゃまずかったですか?」
「奈々を含めて向島の人たちは基本的に時間にルーズですよ」
「全員じゃないしッ! 菜月先輩とりっちゃん先輩はきっちりしてるしッ!」
「それ以外の人はきっちりしてないよね」
「すみませんでしたッ!」
「つまりは、向島の人の基準で時間を語るなって話ですよ」
「今4年生の圭斗先輩って人がいるんだけど、その人の時間がMMP標準時で、それを基準に早い遅いが決まるっていう。その圭斗先輩も軽くルーズではあるんだけど」
「緩すぎです」
「野坂先輩程じゃないしッ!」
「私は野坂先輩を3番目に凄い先輩だと思ってますですけど、時間のルーズさで大幅な減点がかかってるですよ。時間単位での遅刻を繰り返すのは相当悪質です」
「だから向島の悪評をこれ以上広めないためにも早めに来たんじゃん」
「班長として最低限の責務ですよ。待ち合わせ場所の目印でもあるです」
「くーッ、マリンは手厳しいなあッ!」
そんなことを話しているうちにも、集合時刻の5分前。ケーキの皿は無事に空になったので、お皿だけ返却口に返しに行く。証拠隠滅完了! えっと、1年生があと3人来るんだよね。どんな子なのかな~、緊張するな~。
「奈々、今日の打ち合わせをどう進めるかは考えてるよね?」
「自己紹介して、ペアを決めて~って感じ。あとは雑談でもして仲良くなったらいいんじゃないかなーとは」
「番組のテーマも決めておいた方がいいですよ」
「あっ、それもそっか!」
「どっちが班長だかわからなくなるような事態は回避するですよ」
end.
++++
向島時刻とかいうインターフェイスで一番当てにならない物。マリンも基本キレッキレではある。戸田班ですし。
乗り継ぎの都合などで早めに星港市内の集合場所に着くのは緑大&向島あるある。そして花栄まで行くのたるいわって場所を変えたのがTKG。
クソ真面目なマリンと向島育ちで悪乗りベースの奈々の相性が気になるところではあるけど、まあなんか上手いことバランスはとるんやろ
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待ち合わせに指定されたのは、花栄の真ん中にあるカフェ。インターフェイス関係の会議は大体ここでやってるんだって。アイス黒糖ラテと、季節のメニューって書いてたから白桃のミルクレープに飛び付いちゃったけど会議だよね。ケーキを足したのは失敗したかも! とりあえず、それらしい人を探す。
禁煙席の奥の方に、机をいくつかくっつけている人を見つける。見た感じも、先に聞いてた特徴の通り。だから思い切って声をかけると、インターフェイス夏合宿の打ち合わせの席だったから一安心。席に座って、他の子たちの到着を待つ間に、あたしは証拠隠滅をしたいんだけど大丈夫かな。
「えっと、緑ヶ丘の依田くるみちゃんねッ!」
「はいっ! 依田くるみです!」
「かわいい~ッ! うちは班長で向島の岡島奈々っす」
「奈々先輩っ! よろしくお願いします!」
「かわっ、カワヨ~ッ! っとっと、ごめんごめん。挙動不審だよね」
「あの、ひとつ聞きたいんですけど大丈夫ですか?」
「なになに? 何でも聞いてーッ」
「夏の新作って書いてたんでうっかり白桃のミルクレープ買っちゃったんですけど、仮にもこれから会議なのに、飲み物ならともかくケーキはさすがにマズいですよね?」
「ああ、そんなこと。全然大丈夫だよ」
「よかったー」
班長の奈々先輩が大丈夫って言ってくれたので、ケーキを買ったことの証拠隠滅はしなくて良くなった感じ。でも、他の人がケーキ買ってこなかったらそれはそれで食い意地張ってると思われるかな? まあ、食い意地は実際張ってるし、スイーツの前に人は無力だし。開き直りも大事だよね。
「奈々先輩、いつからここで待ってるんですか? まだ集合時間の20分前ですけど」
「10分前くらいかな。豊葦から花栄に出ようと思ったらさ、めんどくさいじゃんいろいろ。青池止まりのこととか考えなきゃいけないし」
「わかりますー」
「そっか、くるちゃんも緑ヶ丘だもんね。他の子たちは星港市内から来るし、もうちょっとしないと来ないと思うけど」
あたしは通学では地下鉄に乗らないんだけど、買い物とかで星港市内に入るときは私鉄と地下鉄の接続でしまったーってなることもまああるんだよね。電車に乗ったまま一本ですーっと行ければ一番楽なんだけどね。
ケーキは他の人が来る前に食べてしまおうと、食べながら奈々先輩とお話をする。奈々先輩が話しやすそうな感じの人でよかったなー。奈々先輩はあたしと似た波長だから合うとは思うけどって先輩たちが言ってくれてたけど。でも、他の人がどんな感じなのかはまだわかんないもんね。仲良くなりたいなー。
「奈々、もう来てたです?」
「あっ、マリン。早いねー」
「集合時刻の15分前ですよ? ちっとも早くないですよ。これくらいが普通です」
「向島時刻ではめちゃくちゃ早いよ、15分前集合は」
「向島時刻とかいうインターフェイスで一番当てにならない物を引き合いに出すのはやめるですよ」
「すみませんでしたッ!」
「2年生の先輩ですか? 緑ヶ丘の依田くるみっていいます」
「あ、挨拶もそこそこにごめんですよ。星ヶ丘の浦和茉莉奈、インターフェイスではマリンって名前ですよ」
「マリン先輩! よろしくお願いします」
「よろしくです」
「くるちゃんだよマリン、かわいいでしょ~」
「どうして奈々がドヤるです」
「2人は奈々先輩がボケでマリン先輩がツッコミって感じですか?」
「コンビを組んだ覚えはないですけど、そうならざるを得ないですよ」
「そんな~、夏合宿の間はコンビでいいじゃんッ! 班長と副班長なんだしーッ!」
ここまでの感じから見ても、マリン先輩はしっかり者タイプの先輩なのかな。時間にも厳しいし、奈々先輩へのツッコミもキレッキレだし。あたしもすっとぼけたことをして怒られないようにしなきゃ。
「そう言えば、今先輩たちが言ってた“向島時刻”って何ですか?」
「あっ、くるちゃんそれ聞いちゃう?」
「えっ、聞いちゃまずかったですか?」
「奈々を含めて向島の人たちは基本的に時間にルーズですよ」
「全員じゃないしッ! 菜月先輩とりっちゃん先輩はきっちりしてるしッ!」
「それ以外の人はきっちりしてないよね」
「すみませんでしたッ!」
「つまりは、向島の人の基準で時間を語るなって話ですよ」
「今4年生の圭斗先輩って人がいるんだけど、その人の時間がMMP標準時で、それを基準に早い遅いが決まるっていう。その圭斗先輩も軽くルーズではあるんだけど」
「緩すぎです」
「野坂先輩程じゃないしッ!」
「私は野坂先輩を3番目に凄い先輩だと思ってますですけど、時間のルーズさで大幅な減点がかかってるですよ。時間単位での遅刻を繰り返すのは相当悪質です」
「だから向島の悪評をこれ以上広めないためにも早めに来たんじゃん」
「班長として最低限の責務ですよ。待ち合わせ場所の目印でもあるです」
「くーッ、マリンは手厳しいなあッ!」
そんなことを話しているうちにも、集合時刻の5分前。ケーキの皿は無事に空になったので、お皿だけ返却口に返しに行く。証拠隠滅完了! えっと、1年生があと3人来るんだよね。どんな子なのかな~、緊張するな~。
「奈々、今日の打ち合わせをどう進めるかは考えてるよね?」
「自己紹介して、ペアを決めて~って感じ。あとは雑談でもして仲良くなったらいいんじゃないかなーとは」
「番組のテーマも決めておいた方がいいですよ」
「あっ、それもそっか!」
「どっちが班長だかわからなくなるような事態は回避するですよ」
end.
++++
向島時刻とかいうインターフェイスで一番当てにならない物。マリンも基本キレッキレではある。戸田班ですし。
乗り継ぎの都合などで早めに星港市内の集合場所に着くのは緑大&向島あるある。そして花栄まで行くのたるいわって場所を変えたのがTKG。
クソ真面目なマリンと向島育ちで悪乗りベースの奈々の相性が気になるところではあるけど、まあなんか上手いことバランスはとるんやろ
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