2021
■夏の起点
++++
「おはよー。何だか盛り上がってんねえ」
「あっ、つばめ先輩おはようございます。夏合宿の班が決まったので、それで盛り上がってたんです」
「あー、そんな季節か。で? 班割りってアタシも見れんの?」
「どうぞー」
ゲンゴローから班割りの書かれた紙を受け取って、それに目を通す。一番気になるのはウチの班員がどういう班に組み込まれて、誰とペアを組むことになったのかということ。特に、彩人のことでいろいろ注文を付けさせてもらってるからというのもある。
彩人はタカティの班に割り振られたらしい。ゲンゴローによれば、2年生の男子が少ないという事情で自由に動かせる男子がミドリしかいなかったんだそうだ。タカティとミドリで2年アナミキを固定して、後は適当に男子をぶち込んでいったとのこと。
「女の子が1人もいないのも不自然だろうっていうことで、一応星大さんの女の子を1人入れてはあるんですけど。アオとミドリによればあまり激しい感じの子ではないそうなので」
「マジで対策委員の皆さんには感謝しかないっす」
「班打ち合わせでもちゃんとタカティに挨拶しときなね、しばらく世話になるんだ」
「はいっす」
「ついでだし腕も盗んできな。タカティの番組構成の腕はインターフェイス内でも際立ってるから」
「ああ、そうだね。タカティと一緒ならPとしても刺激を受けられると思うよ」
「マジすか! そんな人と一緒にしてもらってゴローさんマジであざっす! 一生懸命勉強してきます!」
怪我の功名と言うか何というか。技術面で何か盗んできたいってんならやっぱ緑ヶ丘なんだとは思うんだよな。去年なら向島でも良かったんだろうけど、今年は2年以上が奈々しかいないっぽいし。いろいろ酷だとは思うけど。
「で、海月はっと。おっ、エージの班じゃん。いいねいいね」
「つばめ先輩そんなにいい班長なんですか!?」
「アタシが個人的に気に入ってるってのもあるけど、今の2年生じゃ1番厳しいね。要所要所でちゃんとシメられる奴だよ。面倒見もいいし」
「へー、そうなんですか。グレートフルマスターオブセレモニー兼ステージミューズとしては、何を盗んで来れますか?」
「エージは演劇経験があるから、発声も出来てるし舞台慣れもしてる。ステージに立つ立場のこともわかってるはずだ」
「なるほどです!」
「ちなみにですけど、要所で締めることが出来るからっていう理由でエージの班には各大学の元気過ぎる子が集められてますね」
「あー……まあ、わからんでもない」
操縦不能な奴をいかに扱うかっていうのは班運営の大きなポイントだもんな。まあ、エージも去年のことは嫌でも覚えてるだろうし、反面教師にしてくれればとは思う。ホネのある奴だし、海月もいるし。個人的には応援したい。
「みちるはアオの班か」
「私はもう班の顔合わせに行ってきました」
「早っ! もうやったの!? さすがアオだなあ」
「予定が合うのであればやっておいても損はないだろうと。私は青女のユキさんとペアを組むことになりました」
「ああ、そうなんだ。うーん、俺も顔合わせの日を決めないとなー」
さすがに班が決まって2日3日で顔合わせをするってのはアオの初動が早すぎるってだけの話だけど、その話を聞いてゲンゴローがちょっと焦ってんな。遅すぎるのも考え物だけど、早ければいいってモンでもないんだけどな。
「みちる、どんな雰囲気の班だった?」
「彩人の班とは逆で、女子メインですね。でもかしましい感じではなく、アオさんを筆頭に淡々とした、クールな人が多いなという感じでした」
「アオの班って感じだなあ」
「女子ばっかなんだね」
「そうですね。小林班の深青が唯一の男子で」
「え!? 小林班の奴が出てんの!?」
「そうみたいですね」
インターフェイスの行事と言えば、出ても精々アタシらみたいな連中か、たま~に中立っぽい奴が出てくるってイメージだったけど。どこの班からでも出てくる時代なんだな。まあ、よくよく考えたら去年のマリンも十分変な班から出てきてたし、結局は本人の気持ちか。
「おっ、深青ってアイツだろ? V系メイクのベーシスト!」
「そうそう。彩人と音楽の話をしたことがあるって聞いた」
「そうなんだよ。アイツはバリバリのバンドマンで、セットリストとかでどう場を盛り上げるかーって考えるタイプのPなんだよ」
「へえ、Pなんだ。そしたら彩人とは話が弾むね」
「で、インターフェイスってアナミキのどっちかしかないだろ? Pの俺らはどっちで出るとか、そういう話もしててさ」
「ねえ彩人、その子初心者講習会にいた? そういう目立つ感じの子がいたらさすがに俺でも気付くと思うんだけど」
「来てましたよ。ただ、限りなくすっぴんに近かったんで。現場で変に目立つのも申し訳ないからって」
「いい子…! ちょっと、1回合宿に出てくれる子と個別に話したいなあ」
ゲンゴローが対策委員としてやっておきたい仕事を見つけたみたいだけど、アタシは2年生のいる班がどんなトコなのかを密かにチェックする。1年に目が行きがちだけど、2年生の働きも重要だからね。
「マリン、アンタはどんな感じ? っつっても顔合わせはまだだろうけど」
「私は今までつばめ先輩や野坂先輩におんぶにだっこだったですけど、2年生として、副班長としてしっかりしないといけないと思ってますですよ」
「まあ、何だ。責任感が強いのも結構だけど、肩の力は抜いときな。真面目なのはいいけど、アタマと肩がガチガチなのはアンタの悪い癖だ」
「はいです」
「さ! 夏合宿もいいけどその前には丸の池があるんだからね!」
end.
++++
星ヶ丘勢のあれやこれや。つばちゃんは前対策委員なのでもちろん班割りを見ただけでいろんなことがわかるよ
気になるのは1年生だけど、1年生は面倒見てもらえるし、2年生の方にも目を向けたいつばちゃん。
ゲンゴローがそうやって他の班の人とも話しに行くところを後に柳井が見てたんやろなあ。
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「おはよー。何だか盛り上がってんねえ」
「あっ、つばめ先輩おはようございます。夏合宿の班が決まったので、それで盛り上がってたんです」
「あー、そんな季節か。で? 班割りってアタシも見れんの?」
「どうぞー」
ゲンゴローから班割りの書かれた紙を受け取って、それに目を通す。一番気になるのはウチの班員がどういう班に組み込まれて、誰とペアを組むことになったのかということ。特に、彩人のことでいろいろ注文を付けさせてもらってるからというのもある。
彩人はタカティの班に割り振られたらしい。ゲンゴローによれば、2年生の男子が少ないという事情で自由に動かせる男子がミドリしかいなかったんだそうだ。タカティとミドリで2年アナミキを固定して、後は適当に男子をぶち込んでいったとのこと。
「女の子が1人もいないのも不自然だろうっていうことで、一応星大さんの女の子を1人入れてはあるんですけど。アオとミドリによればあまり激しい感じの子ではないそうなので」
「マジで対策委員の皆さんには感謝しかないっす」
「班打ち合わせでもちゃんとタカティに挨拶しときなね、しばらく世話になるんだ」
「はいっす」
「ついでだし腕も盗んできな。タカティの番組構成の腕はインターフェイス内でも際立ってるから」
「ああ、そうだね。タカティと一緒ならPとしても刺激を受けられると思うよ」
「マジすか! そんな人と一緒にしてもらってゴローさんマジであざっす! 一生懸命勉強してきます!」
怪我の功名と言うか何というか。技術面で何か盗んできたいってんならやっぱ緑ヶ丘なんだとは思うんだよな。去年なら向島でも良かったんだろうけど、今年は2年以上が奈々しかいないっぽいし。いろいろ酷だとは思うけど。
「で、海月はっと。おっ、エージの班じゃん。いいねいいね」
「つばめ先輩そんなにいい班長なんですか!?」
「アタシが個人的に気に入ってるってのもあるけど、今の2年生じゃ1番厳しいね。要所要所でちゃんとシメられる奴だよ。面倒見もいいし」
「へー、そうなんですか。グレートフルマスターオブセレモニー兼ステージミューズとしては、何を盗んで来れますか?」
「エージは演劇経験があるから、発声も出来てるし舞台慣れもしてる。ステージに立つ立場のこともわかってるはずだ」
「なるほどです!」
「ちなみにですけど、要所で締めることが出来るからっていう理由でエージの班には各大学の元気過ぎる子が集められてますね」
「あー……まあ、わからんでもない」
操縦不能な奴をいかに扱うかっていうのは班運営の大きなポイントだもんな。まあ、エージも去年のことは嫌でも覚えてるだろうし、反面教師にしてくれればとは思う。ホネのある奴だし、海月もいるし。個人的には応援したい。
「みちるはアオの班か」
「私はもう班の顔合わせに行ってきました」
「早っ! もうやったの!? さすがアオだなあ」
「予定が合うのであればやっておいても損はないだろうと。私は青女のユキさんとペアを組むことになりました」
「ああ、そうなんだ。うーん、俺も顔合わせの日を決めないとなー」
さすがに班が決まって2日3日で顔合わせをするってのはアオの初動が早すぎるってだけの話だけど、その話を聞いてゲンゴローがちょっと焦ってんな。遅すぎるのも考え物だけど、早ければいいってモンでもないんだけどな。
「みちる、どんな雰囲気の班だった?」
「彩人の班とは逆で、女子メインですね。でもかしましい感じではなく、アオさんを筆頭に淡々とした、クールな人が多いなという感じでした」
「アオの班って感じだなあ」
「女子ばっかなんだね」
「そうですね。小林班の深青が唯一の男子で」
「え!? 小林班の奴が出てんの!?」
「そうみたいですね」
インターフェイスの行事と言えば、出ても精々アタシらみたいな連中か、たま~に中立っぽい奴が出てくるってイメージだったけど。どこの班からでも出てくる時代なんだな。まあ、よくよく考えたら去年のマリンも十分変な班から出てきてたし、結局は本人の気持ちか。
「おっ、深青ってアイツだろ? V系メイクのベーシスト!」
「そうそう。彩人と音楽の話をしたことがあるって聞いた」
「そうなんだよ。アイツはバリバリのバンドマンで、セットリストとかでどう場を盛り上げるかーって考えるタイプのPなんだよ」
「へえ、Pなんだ。そしたら彩人とは話が弾むね」
「で、インターフェイスってアナミキのどっちかしかないだろ? Pの俺らはどっちで出るとか、そういう話もしててさ」
「ねえ彩人、その子初心者講習会にいた? そういう目立つ感じの子がいたらさすがに俺でも気付くと思うんだけど」
「来てましたよ。ただ、限りなくすっぴんに近かったんで。現場で変に目立つのも申し訳ないからって」
「いい子…! ちょっと、1回合宿に出てくれる子と個別に話したいなあ」
ゲンゴローが対策委員としてやっておきたい仕事を見つけたみたいだけど、アタシは2年生のいる班がどんなトコなのかを密かにチェックする。1年に目が行きがちだけど、2年生の働きも重要だからね。
「マリン、アンタはどんな感じ? っつっても顔合わせはまだだろうけど」
「私は今までつばめ先輩や野坂先輩におんぶにだっこだったですけど、2年生として、副班長としてしっかりしないといけないと思ってますですよ」
「まあ、何だ。責任感が強いのも結構だけど、肩の力は抜いときな。真面目なのはいいけど、アタマと肩がガチガチなのはアンタの悪い癖だ」
「はいです」
「さ! 夏合宿もいいけどその前には丸の池があるんだからね!」
end.
++++
星ヶ丘勢のあれやこれや。つばちゃんは前対策委員なのでもちろん班割りを見ただけでいろんなことがわかるよ
気になるのは1年生だけど、1年生は面倒見てもらえるし、2年生の方にも目を向けたいつばちゃん。
ゲンゴローがそうやって他の班の人とも話しに行くところを後に柳井が見てたんやろなあ。
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