2021

■どこ大学のどんな枠

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 本日の対策委員は、夏合宿の班決めだ。各大学から夏合宿の参加者が出揃い、それをいよいよ6人班にしていく作業が始まった。前回の会議でわかばはエイジの班で副班長をやることになった。他の6人がそれぞれの班で班長をやりましょうという風になっている。で、リストを見ながらあれやこれやと。
 2年生とMBCCの1年生6人に関してはパッと決まった。対策委員以外の2年生の参加者は定例会メンバー5人だ。だからパートや大学の組み合わせでパパパッとパズルに当てはめていくように落ち着くところに落ち着いた感じがある。あと、MBCCの子たちは俺とエイジで配置していった。

「さて。エージとタカティが緑ヶ丘の子を決めてくれたから、ここからが本番だね」
「ウチの班はもう全枠埋まったから、ここからはどうしようか」
「タカティはここから他の班の組み合わせに破綻がないかを見てもらえると。同じ大学同士のペアにならないかとか、いろいろ見ててもらえれば」
「わかったよ」

 いろいろな事情から、俺の班の6枠は一気に埋まっていった。ゲンゴローに頼まれて星ヶ丘のワケありの子を引き取ったり、班長が緑ヶ丘だから青敬の子も入れようかとか。そんなことをやっていたらすぐに終わっちゃったよね。他の班も2年生とMBCC以外のあと3人をどうするか。

「とりあえず、緑ヶ丘の子とパートが逆の子を入れてみればいいんじゃない?」
「なるほどな。アナを入れた班にはミキを入れてみて、その後は大学のバランスを見ながら入れるべ」
「そうは言ってもどう入れよう?」
「例えば、3人決まってる現段階で緑ヶ丘と向島が2人以上になってるところには、星ヶ丘や青敬から入れてみるとか」
「ああ、そうやってバランスを取るんだ。それで言ったらエイジんトコと、奈々のところと、ああ、ゲンゴローのところもハナちゃんとサキがいるから2人以上だね」
「俺のところは俺が星ヶ丘枠にならないかな~、な~んて」
「……うん、まあ、決めてこっか」
「そうだね」

 言っても、ウチの2年生と一緒にした1年生の子っていうのは、ササ以外ちゃんとした理由があって一緒にしてるんだよね。例えば、シノは落ち着きがなくて心配だから締めてくれるエイジと一緒に。サキは大人しくて黙っちゃわないか心配だから、慣れたハナちゃんと一緒にって具合に。
 まあ、ラジオの技量っていう意味ではシノもサキも何の問題もないから、どこの大学の人と当たってもそれらしくやってくれるとは思うんだけど、コミュニケーションの点でちょっと心配があるかなあと。班打ち合わせは何とかなっても、マンツーマンでやることも多いペア打ち合わせがどうなるかな。

「そう言えば、青敬さんの子ってどういう感じの子のかな。性格とか」
「あやめから情報を預かって来てるんだけど、タカティのところの当麻は、3人組の中で一番の常識人で、キャラもそんなに濃くないから埋もれないか心配だってッ!」
「ああ、普通の子なんだね。じゃあ俺とミドリでも手に追えそうだね」
「他の子は?」
「雨竜はとにかくやかましくてウルサイ元気系だから必要があれば容赦なく叱り付けてやってくださいって」
「じゃあエージだ」
「エージだ」
「うん。シノとは仲良くやれそうじゃない?」
「ちょっと待てお前ら、俺にめんどくさそうなの押し付けようとしてないかっていう」
「そしたら、ウチのまつりもエージんトコでおねがーい! なっちゃんもいるし!」
「ちょっと待てサドニナ。もしかしてそいつもうるさい感じのヤツか」
「元気元気!」
「ええと……かなり元気な子では、あります……」
「はーっ……マジか。で、パートは?」
「ミキサー」
「おい、そしたらあとうるさいアナウンサーのいるトコ。ウチの枠、残1だから出すなら今のうちだべ」
「あーはい! そしたらウチの海月をお願いします!」
「そしたらウチももう全部埋まったからな! ノルマ通り青敬と星ヶ丘も預かったし」

 こりゃ相当うるさくなりそうだべ、とエイジは覚悟を決めた模様。だけどそのエイジの班で副班長をやることになっているわかばがブルブルと震えている。まあ、見るからにそういう元気系の子には圧倒されそうなタイプだもんなあ。心中お察しします。

「それで、青敬情報はどうなった?」
「えっと、最後? 北星かな? この子は映像編集の技術はガチ中のガチだけど、能力をそっちに全振りしてるから日常生活はとにかく残念。寝てたら叩き起こしてやってー。でもラジオの技術は人並みになると思う! だって」
「で、先の条件から言うと、この北星を預かることになりそうなのは奈々だっていう」
「えっ、うち!?」
「俺は海月と雨竜を引き取ったっていう」
「俺も彩人と当麻で手一杯だし」
「俺は俺が星ヶ丘枠だし」
「えー、ゲンゴローそれ反則じゃんッ!」
「多分マリンが要所で締めてくれるよ」
「あっそーじゃんマリンがいるッ! 何とかなりそうな気がして来たッ! わかったよ、北星を引き取るよッ!」

 ――と、青敬の子たちを無事に割り振ることが出来て気付く。奈々の班は奈々とくるみがいるから星ヶ丘さんや青敬さんを預かる話になってるんだけど、ゲンゴロー理論を適用すれば、副班長のマリンも十分に星ヶ丘枠なんだよなあ。ゲンゴローがしれ~っと逃げ切った感がある。なんならマリンって本職はプロデューサーだよね?

「はいはーい! サドニナの班は2年生がラジオ弱いんで~、1年生でカバーしてくださ~い!」
「ああ、サドニナとあやめか。確かに2年の名前だけ見りゃ他の班より弱いな。わかった。そしたら向島でも入れとくか」


end.


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対策委員の夏合宿班決め会議。各班3枠が埋まった後のあれこれ。青敬情報は定例会も兼ねてる奈々の担当。
何だかんだ高木班は彩人がちょっとワケありなだけで他の子は各大学の常識人枠みたいな雰囲気。強いて言えば2年生がのほほんとしてる見せかけてアレ。
ラジオに弱い星ヶ丘枠と言い張るゲンゴローだけど、今までどこの班にいて今現在どこの班にいて、ミキサーの基礎を誰から教わったのかっていう……ねえ。

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