2021
■荒波のその先で
++++
「戸田、お疲れさん。誕生日おめでとう」
「班長お疲れさま~、でしょでしょ~」
「いやお前、班長としてはこれからが正念場なんだぞ。言葉の選び方の感覚が鈍ったな、元自称ステージスター」
朝霞クン主催で昨日開いてもらった俺の誕生会の後、2人で二次会をやっていた。そこで少し話してたんだけど、明日はつばちゃんの誕生日だし、例年のようにお祝いしてあげたいよねと。そういうワケで、朝霞クン宅につばちゃんを招いて気兼ねなくやろうジャない、と現在に至ってます。
汎用性の高いチキンカツを俺の家で揚げて来て、焼き鳥は出来合いのヤツだけどいくらか用意して、その他にも枝豆とか、おつまみとして需要のある物を朝霞クン家の冷凍庫にインしていつでもチン出来るようにしてある。余っても朝霞クンがビールと一緒につまんでくれるだろうからネ。
で、早速ダメ出しをされた元ステージスターの俺なんだけど。確かに「班長お疲れさま」は大学祭の後に言うべきだったかもしれないね。朝霞クンの言うように、班長としては丸の池ステージを迎えるこれからがまさに本番。班に1年生もたくさん来てくれたし、その手腕が問われるのもこれから。
「や、ありがたいけど気持ち悪いわ。洋平はともかく朝霞サンからフツーに祝われるとか」
「それもこれも部活を引退したからだろうな」
「それだけでこうも変わるモンかね、鬼のプロデューサーとまで呼ばれた人が」
つばちゃんの感想はご尤も。俺も自分のこととしてすっごく実感してるからね。でも、部活を引退して鬼のプロデューサーじゃなくなった朝霞クンは、それこそ地で人がいい感じだし、それまでの鬼の顔しか知らなかったら戸惑うのも仕方ない。
「あっそうだ朝霞クン、壁ドン問題は大丈夫? 今3人集まっちゃってるけど」
「彩人には夜に人が来るからとは言ってある。多少なら問題ない」
「まー言って彩人も短気だからね」
「そんな気はしてたんだ。騒音問題についてはこないだ和解したんだけど、末期の頃は俺が歩くだけでも壁を殴られてたからな」
「はーっ……壁を殴って拳割るPはどこぞのステージバカだけでいいっつってたんだけどな」
「それって~、ひょっとしなくても~、こちらの元プロデューサーさんのこと~?」
「以外に誰がいんだよ、そんなバカ野郎が」
「なんだと」
とは言うけど朝霞クンが怒りに任せて壁を殴って拳を割ったのは事実だからね~。しかももうちょっと当たり所が悪ければ折れてたっていう、ギリギリセーフの打撲でさ。でも、そんな朝霞クンをバカ野郎と真正面から言えるのは、さすがのつばちゃん。
「そーいや朝霞サン、こないだ彩人とサシメシしてたんだって? ヘッタクソなチンジャオロースーだったそうじゃん」
「下手くそには違いないけど人から言われるとそれなりに腹立つな。彩人が下手くそっつったのか」
「彩人が言ってたのはピーマンの太さがバラバラだったとか肉が繋がってたとか、その程度の事実だよ。味は美味かったってさ。下手くそってのはその話を聞いたアタシの解釈ね」
「どうせ俺は料理が出来ねーよ」
「朝霞クンの手料理とか激烈レアじゃん! 俺だってそうそう食べたことないのに!」
「お前は昨日ケーキ食っただろ。あれはもう二度とやらねー確率の方が高いからな」
そうでした。昨日のケーキは本当に美味しくって、朝霞クンが俺の好みを考えて甘さとかトッピングとかを考えてくれたって聞いて感動したよね。二度とやらない宣言はちょっと残念だけど、生涯の思い出として大切にとっておかなきゃね。
「それはそうと戸田、ちょっと見ない間に班がデカくなったな」
「そ~そ~、1年生が3人も入ったって聞いてビックリしたでしょ~。マリンちゃんまでは聞いてたけど~」
「アタシが一番驚いてるからな。や、ゲンゴローのがビビってたわ。ゲンゴローには初心者講習会で一本釣りして来いっつってたのに、その前に3人も来たっしょ? こっちもまさか流刑地って呼ばれた班を1年が訪ねて来るとも思わないしさ」
「言って1年生の子たちにはそ~ゆ~の、関係なかったんだろうね~」
「確かに白河が1年連れて遠足してたけど、うちら1年ガン無視して自分らの練習してたワケ。どーせ来ないと思ってるし」
「そのスタンスが良かったと思って戸田班を訪ねたのがあの3人か」
「ま、荒くれ者集団改め、変人集団としてはアリかなと。あ、朝霞サンる~び~次開ける? さっきゲンゴローがクラフトビールくれたんだよ。一緒に開けよ」
「おっ、いいな。分けてもらえるならありがたく」
「え~! つばちゃん俺にも分けて~!」
ゲンゴローもすっかりつばちゃんの有能な右腕って感じだよね。そう言えば、明日はそのゲンゴローの誕生日だ。とうとうハタチを迎えるゲンゴロー。今までは班の集まりでも未成年の間はコーラで乾杯を貫いてたけど、つばちゃんのる~び~を浴びる日はいつになるやら。
戸田班絡みでさっそく事件も起きたっていう風には聞いてるけど、こうしている分にはつばちゃんも平静と言うか。今までだったらそのことを物騒な感じで俺たちに愚痴って来ても良さそうなものだけどね。俺たちが引退したからか、つばちゃんがそれを自分で受け止められるだけの懐になって来たのか。後者だったら嬉しいね。
「山口、食うモンが足りない」
「アタシももうちょっと何かつまみたいわ」
「そしたら、このカツでチキン南蛮にでもする~?」
「いいな! それでいこう」
「いいね~、る~び~との相性最高だよ」
「そしたらこれ飲み終わったら作るよ。朝霞クン台所貸してね」
「どうぞご自由に」
end.
++++
洋朝とつばちゃんで水入らずのヤツです。時間が深くなれば突っ込んだところの、真っ黒い話もあったんだろうけど、まずは楽しくる~び~で乾杯。
確かに1年生が3人も来たことに関してはゲンゴローの驚きっぷりが結構大きかったね。釣るぞって意気込んでたのに釣る前に来ちゃったから。
冒頭のPさんの台詞、ごく普通に誕生日を祝ってるのに何故か気持ち悪さの方が前面に来るのはフェーズ1が尾を引いてんだな
.
++++
「戸田、お疲れさん。誕生日おめでとう」
「班長お疲れさま~、でしょでしょ~」
「いやお前、班長としてはこれからが正念場なんだぞ。言葉の選び方の感覚が鈍ったな、元自称ステージスター」
朝霞クン主催で昨日開いてもらった俺の誕生会の後、2人で二次会をやっていた。そこで少し話してたんだけど、明日はつばちゃんの誕生日だし、例年のようにお祝いしてあげたいよねと。そういうワケで、朝霞クン宅につばちゃんを招いて気兼ねなくやろうジャない、と現在に至ってます。
汎用性の高いチキンカツを俺の家で揚げて来て、焼き鳥は出来合いのヤツだけどいくらか用意して、その他にも枝豆とか、おつまみとして需要のある物を朝霞クン家の冷凍庫にインしていつでもチン出来るようにしてある。余っても朝霞クンがビールと一緒につまんでくれるだろうからネ。
で、早速ダメ出しをされた元ステージスターの俺なんだけど。確かに「班長お疲れさま」は大学祭の後に言うべきだったかもしれないね。朝霞クンの言うように、班長としては丸の池ステージを迎えるこれからがまさに本番。班に1年生もたくさん来てくれたし、その手腕が問われるのもこれから。
「や、ありがたいけど気持ち悪いわ。洋平はともかく朝霞サンからフツーに祝われるとか」
「それもこれも部活を引退したからだろうな」
「それだけでこうも変わるモンかね、鬼のプロデューサーとまで呼ばれた人が」
つばちゃんの感想はご尤も。俺も自分のこととしてすっごく実感してるからね。でも、部活を引退して鬼のプロデューサーじゃなくなった朝霞クンは、それこそ地で人がいい感じだし、それまでの鬼の顔しか知らなかったら戸惑うのも仕方ない。
「あっそうだ朝霞クン、壁ドン問題は大丈夫? 今3人集まっちゃってるけど」
「彩人には夜に人が来るからとは言ってある。多少なら問題ない」
「まー言って彩人も短気だからね」
「そんな気はしてたんだ。騒音問題についてはこないだ和解したんだけど、末期の頃は俺が歩くだけでも壁を殴られてたからな」
「はーっ……壁を殴って拳割るPはどこぞのステージバカだけでいいっつってたんだけどな」
「それって~、ひょっとしなくても~、こちらの元プロデューサーさんのこと~?」
「以外に誰がいんだよ、そんなバカ野郎が」
「なんだと」
とは言うけど朝霞クンが怒りに任せて壁を殴って拳を割ったのは事実だからね~。しかももうちょっと当たり所が悪ければ折れてたっていう、ギリギリセーフの打撲でさ。でも、そんな朝霞クンをバカ野郎と真正面から言えるのは、さすがのつばちゃん。
「そーいや朝霞サン、こないだ彩人とサシメシしてたんだって? ヘッタクソなチンジャオロースーだったそうじゃん」
「下手くそには違いないけど人から言われるとそれなりに腹立つな。彩人が下手くそっつったのか」
「彩人が言ってたのはピーマンの太さがバラバラだったとか肉が繋がってたとか、その程度の事実だよ。味は美味かったってさ。下手くそってのはその話を聞いたアタシの解釈ね」
「どうせ俺は料理が出来ねーよ」
「朝霞クンの手料理とか激烈レアじゃん! 俺だってそうそう食べたことないのに!」
「お前は昨日ケーキ食っただろ。あれはもう二度とやらねー確率の方が高いからな」
そうでした。昨日のケーキは本当に美味しくって、朝霞クンが俺の好みを考えて甘さとかトッピングとかを考えてくれたって聞いて感動したよね。二度とやらない宣言はちょっと残念だけど、生涯の思い出として大切にとっておかなきゃね。
「それはそうと戸田、ちょっと見ない間に班がデカくなったな」
「そ~そ~、1年生が3人も入ったって聞いてビックリしたでしょ~。マリンちゃんまでは聞いてたけど~」
「アタシが一番驚いてるからな。や、ゲンゴローのがビビってたわ。ゲンゴローには初心者講習会で一本釣りして来いっつってたのに、その前に3人も来たっしょ? こっちもまさか流刑地って呼ばれた班を1年が訪ねて来るとも思わないしさ」
「言って1年生の子たちにはそ~ゆ~の、関係なかったんだろうね~」
「確かに白河が1年連れて遠足してたけど、うちら1年ガン無視して自分らの練習してたワケ。どーせ来ないと思ってるし」
「そのスタンスが良かったと思って戸田班を訪ねたのがあの3人か」
「ま、荒くれ者集団改め、変人集団としてはアリかなと。あ、朝霞サンる~び~次開ける? さっきゲンゴローがクラフトビールくれたんだよ。一緒に開けよ」
「おっ、いいな。分けてもらえるならありがたく」
「え~! つばちゃん俺にも分けて~!」
ゲンゴローもすっかりつばちゃんの有能な右腕って感じだよね。そう言えば、明日はそのゲンゴローの誕生日だ。とうとうハタチを迎えるゲンゴロー。今までは班の集まりでも未成年の間はコーラで乾杯を貫いてたけど、つばちゃんのる~び~を浴びる日はいつになるやら。
戸田班絡みでさっそく事件も起きたっていう風には聞いてるけど、こうしている分にはつばちゃんも平静と言うか。今までだったらそのことを物騒な感じで俺たちに愚痴って来ても良さそうなものだけどね。俺たちが引退したからか、つばちゃんがそれを自分で受け止められるだけの懐になって来たのか。後者だったら嬉しいね。
「山口、食うモンが足りない」
「アタシももうちょっと何かつまみたいわ」
「そしたら、このカツでチキン南蛮にでもする~?」
「いいな! それでいこう」
「いいね~、る~び~との相性最高だよ」
「そしたらこれ飲み終わったら作るよ。朝霞クン台所貸してね」
「どうぞご自由に」
end.
++++
洋朝とつばちゃんで水入らずのヤツです。時間が深くなれば突っ込んだところの、真っ黒い話もあったんだろうけど、まずは楽しくる~び~で乾杯。
確かに1年生が3人も来たことに関してはゲンゴローの驚きっぷりが結構大きかったね。釣るぞって意気込んでたのに釣る前に来ちゃったから。
冒頭のPさんの台詞、ごく普通に誕生日を祝ってるのに何故か気持ち悪さの方が前面に来るのはフェーズ1が尾を引いてんだな
.