2021
■何か少しずつ残念
++++
「おっす菜月」
「おー、真希。久しいなあ」
「菜月風邪ひいてたし、アタシも前回は就活してたからなあ」
「卒論進んでる?」
「ほどほどには。そっちは?」
「休み休み。ゾーンに入るのを待ってる」
ゼミ室で久々に真希と対面する。さすがに4年にもなると授業は全然ないし、仲のいい友達でも会わないことの方が多い。うちは夏風邪で寝込んでたし、真希も就活とかでゼミに来てなかったということもありありで。
ゼミの方もさすがに4年にもなると欠席してたとしても「就活かな?」などと勝手に解釈されてあんまり深堀りされないし、うちみたく地元との往復でいない人に関しては欠席扱いにもならないという、何気に話のわかる教授だ。
「そういや、その後何かあったか?」
「その後って?」
「そっちの1年がMMPに見学に来ただろ。何か言ってたかなって」
「希の方は掛け持ちしながらだけど正式にMMPに入ったらしいね。トークするのも機材触るのもどっちもやるんだーって言って鼻息荒くしてたよ」
「へえ、やる気に溢れてるようで」
「まあ、あの子はそういう感じの熱い子だからね」
こないだ、真希のバドサーの子を2人程MMPの見学に連れて行った。初心者講習会の前だから結構前のことにはなるんだけど、あれからどうなったかという話を現役にも聞いてないし、ちょっとくらいは気になっていたから。
やる気があるようで何よりなのは男子の方。あの子は確かに結構アグレッシブと言うか、積極的にサークルのことについて質問したりしてたし、アナもミキもやるって言ってるらしいと聞いても、頑張るなあと思うくらいで、特に驚きはない。
「女子の方は?」
「うーん、あっちはどうだろうねえ」
「あ、あんまり反応良くなかった? まあ、覚悟はしてるけどな。陰キャ集団だから合わない奴にはとことん合わないし」
「活動に興味があると言うよりは出会い目的っぽいからねえ」
「出会いねえ。まあ、ないことはないけどそんなに期待も出来ないぞ」
出会いと言えば、友達だとか、彼氏彼女だとか? まあ、ないことはないんだろうけど基本的には同じ活動に興味があるという点で繋がり始めるし、放送サークルの活動に興味がないんであれば、とっかかりという点ではどうだろうと思うけどな。空気的な意味でも。
「マエトモがさ、MMPにはイケメンもいるぞ的なことを言ってたんだよ」
「イケメン? そんなものがいた覚えはないけど」
「圭斗さんのことを言ってたんじゃない? 圭斗さん結構な美形じゃんね、菜月の好みではないけど」
「まあ、一般的には女子受けする顔か」
「見学の後でイケメンがいなかったって言って不貞腐れてたんだよ」
「はあ。それは責任を取れないぞ」
「道案内してくれた4年生の先輩は可愛かったけど引退してるし、可愛い人の繋がりでイケメンいないかなと思ったけどとかうんたらかんたら。アタシにはそんな風に言ってたんだよ」
MMP自体は陰キャ集団だけど、確かにインターフェイスの活動もあるから出会い自体はないことはない。ただ、うちは出会いを目的に活動をやっていたワケじゃないから何となく、真希が聞いたらしい話には疑問符が浮かぶ。普通にミスマッチじゃないかと。
男の顔云々の事にしても、中身が伴わなければ何の意味もないワケで。いや、それはうちの持論で、世の中には中身がクズでも外見が良ければいいという人もいるのかもしれない。でも、それはMMPに求める物ではないような気がする。もっとキラキラしたアクティブなサークルの方がイケメン母数は多いと思う。
「でも、菜月の部屋に貼ってる写真とかを見れば、イケメンとの出会い的なことには確かに期待を持っちまうけど、あの子は別に菜月の部屋には入ってないもんなあ」
「入ってないなあ」
うちの部屋に貼ってる写真というのは、1年の頃から要所で撮ってたヤツのことだ。スキー場に行った時とか、対策委員で合宿を乗り越えた後だとか。それ以外にも写真はかなりの枚数撮って来たけど、それらはMMPのサークル室にまるっと置いてきた。何百枚になってるかな、物凄く多くて、重い。
「ああ、そうだ。3年生に1人イケメンがいたけど、そいつがいい男について熱弁してるのを見てドン引きしたとも言ってたな」
「……そいつがイケメンであるかはともかく、イケメン好きの男なら心当たりがある」
もしかしなくてもノサカのことだな。アイツはカンザキが“イケメン詐欺”と呼ぶように、ある程度顔もいい方ではあるだろう。運動神経もいいし、成績もぶん殴りたくなる程にはいい。どうせまだオールSなんだろう。だけど、とにかく陰を極めた残念な男だ。そう、それこそ詐欺なんだ。
「でも、そこまで外してるならその子はもうバド一本でやってくことになったのか?」
「さあ~、まだもうちょっと、合宿っていうので他校の人と出会うチャンスがあるからみたいなことは言ってたけど」
「まあ、出会えるには出会えるけど、それで出会えませんでしたって苦情出されても困るぞ」
何と言うか、出会い目的っていうのが三井の影を彷彿とするなあと思う。ああいうのには深く踏み込まずにほっとくのが一番いいんじゃないかと思うけど。手っ取り早く出会いたいならそういうアプリでも使えばいいんじゃないかな。よくわかんないけど。
「……何か、サークルを引退しててよかったなってここまで強く思うのは初めてだな」
「ドンマイ」
end.
++++
菜月さんと真希ちゃんのそれからの話。そういやあの後1年生たちはどうなった?的な情報交換。菜月さんは聞き専。
彼氏欲しいなーとか彼女欲しいなーとかそういう恋愛にガツガツしてるのは菜月さんの中では三井サンのイメージ。圭斗さんとはまた少し違うのね
イケメン詐欺はイケメン詐欺のまんまだし2年生で4期やっても成績は変わらずオールS。でもちょっとずつ残念なところがあるみたいだ
.
++++
「おっす菜月」
「おー、真希。久しいなあ」
「菜月風邪ひいてたし、アタシも前回は就活してたからなあ」
「卒論進んでる?」
「ほどほどには。そっちは?」
「休み休み。ゾーンに入るのを待ってる」
ゼミ室で久々に真希と対面する。さすがに4年にもなると授業は全然ないし、仲のいい友達でも会わないことの方が多い。うちは夏風邪で寝込んでたし、真希も就活とかでゼミに来てなかったということもありありで。
ゼミの方もさすがに4年にもなると欠席してたとしても「就活かな?」などと勝手に解釈されてあんまり深堀りされないし、うちみたく地元との往復でいない人に関しては欠席扱いにもならないという、何気に話のわかる教授だ。
「そういや、その後何かあったか?」
「その後って?」
「そっちの1年がMMPに見学に来ただろ。何か言ってたかなって」
「希の方は掛け持ちしながらだけど正式にMMPに入ったらしいね。トークするのも機材触るのもどっちもやるんだーって言って鼻息荒くしてたよ」
「へえ、やる気に溢れてるようで」
「まあ、あの子はそういう感じの熱い子だからね」
こないだ、真希のバドサーの子を2人程MMPの見学に連れて行った。初心者講習会の前だから結構前のことにはなるんだけど、あれからどうなったかという話を現役にも聞いてないし、ちょっとくらいは気になっていたから。
やる気があるようで何よりなのは男子の方。あの子は確かに結構アグレッシブと言うか、積極的にサークルのことについて質問したりしてたし、アナもミキもやるって言ってるらしいと聞いても、頑張るなあと思うくらいで、特に驚きはない。
「女子の方は?」
「うーん、あっちはどうだろうねえ」
「あ、あんまり反応良くなかった? まあ、覚悟はしてるけどな。陰キャ集団だから合わない奴にはとことん合わないし」
「活動に興味があると言うよりは出会い目的っぽいからねえ」
「出会いねえ。まあ、ないことはないけどそんなに期待も出来ないぞ」
出会いと言えば、友達だとか、彼氏彼女だとか? まあ、ないことはないんだろうけど基本的には同じ活動に興味があるという点で繋がり始めるし、放送サークルの活動に興味がないんであれば、とっかかりという点ではどうだろうと思うけどな。空気的な意味でも。
「マエトモがさ、MMPにはイケメンもいるぞ的なことを言ってたんだよ」
「イケメン? そんなものがいた覚えはないけど」
「圭斗さんのことを言ってたんじゃない? 圭斗さん結構な美形じゃんね、菜月の好みではないけど」
「まあ、一般的には女子受けする顔か」
「見学の後でイケメンがいなかったって言って不貞腐れてたんだよ」
「はあ。それは責任を取れないぞ」
「道案内してくれた4年生の先輩は可愛かったけど引退してるし、可愛い人の繋がりでイケメンいないかなと思ったけどとかうんたらかんたら。アタシにはそんな風に言ってたんだよ」
MMP自体は陰キャ集団だけど、確かにインターフェイスの活動もあるから出会い自体はないことはない。ただ、うちは出会いを目的に活動をやっていたワケじゃないから何となく、真希が聞いたらしい話には疑問符が浮かぶ。普通にミスマッチじゃないかと。
男の顔云々の事にしても、中身が伴わなければ何の意味もないワケで。いや、それはうちの持論で、世の中には中身がクズでも外見が良ければいいという人もいるのかもしれない。でも、それはMMPに求める物ではないような気がする。もっとキラキラしたアクティブなサークルの方がイケメン母数は多いと思う。
「でも、菜月の部屋に貼ってる写真とかを見れば、イケメンとの出会い的なことには確かに期待を持っちまうけど、あの子は別に菜月の部屋には入ってないもんなあ」
「入ってないなあ」
うちの部屋に貼ってる写真というのは、1年の頃から要所で撮ってたヤツのことだ。スキー場に行った時とか、対策委員で合宿を乗り越えた後だとか。それ以外にも写真はかなりの枚数撮って来たけど、それらはMMPのサークル室にまるっと置いてきた。何百枚になってるかな、物凄く多くて、重い。
「ああ、そうだ。3年生に1人イケメンがいたけど、そいつがいい男について熱弁してるのを見てドン引きしたとも言ってたな」
「……そいつがイケメンであるかはともかく、イケメン好きの男なら心当たりがある」
もしかしなくてもノサカのことだな。アイツはカンザキが“イケメン詐欺”と呼ぶように、ある程度顔もいい方ではあるだろう。運動神経もいいし、成績もぶん殴りたくなる程にはいい。どうせまだオールSなんだろう。だけど、とにかく陰を極めた残念な男だ。そう、それこそ詐欺なんだ。
「でも、そこまで外してるならその子はもうバド一本でやってくことになったのか?」
「さあ~、まだもうちょっと、合宿っていうので他校の人と出会うチャンスがあるからみたいなことは言ってたけど」
「まあ、出会えるには出会えるけど、それで出会えませんでしたって苦情出されても困るぞ」
何と言うか、出会い目的っていうのが三井の影を彷彿とするなあと思う。ああいうのには深く踏み込まずにほっとくのが一番いいんじゃないかと思うけど。手っ取り早く出会いたいならそういうアプリでも使えばいいんじゃないかな。よくわかんないけど。
「……何か、サークルを引退しててよかったなってここまで強く思うのは初めてだな」
「ドンマイ」
end.
++++
菜月さんと真希ちゃんのそれからの話。そういやあの後1年生たちはどうなった?的な情報交換。菜月さんは聞き専。
彼氏欲しいなーとか彼女欲しいなーとかそういう恋愛にガツガツしてるのは菜月さんの中では三井サンのイメージ。圭斗さんとはまた少し違うのね
イケメン詐欺はイケメン詐欺のまんまだし2年生で4期やっても成績は変わらずオールS。でもちょっとずつ残念なところがあるみたいだ
.