2021
■親友の誕生日を祝いたい!
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窓から差し込む光で目が覚め、手元のスマホで時刻を確認すると朝の6時前だった。昨日は朝霞の部屋の簡易防音対策と称した模様替えを手伝わされ、その流れで少々2人用のボードゲームをやるなどしていた。隣から壁ドンされないかの確認も兼ね、小一時間ほどの配信もした。
一応これをやっている間に隣から壁ドンなどの反応は特になく、簡易的防音対策は成功したと言っていいだろう。一応向こうからも生活音は多少なりあったし、隣人が留守にしていたということはなさそうだ。気にならない程度の音漏れに留めることが出来たのだろう。しかし、調子に乗ってまた騒がしくしてはそろそろ壁に穴が開きかねん。
家主の朝霞はまだ深い眠りの中にいるようで、ちょっとやそっとでは起きないと見ていいだろう。徹夜は出来るが朝にはさほど強くないとは聞いていた。さて、これからどうしたものか。幸い、1人での暇潰しには事欠かん部屋ではある。映画を見るもよし、陳列されたボードゲームを見るもよし。
「……本当にホールケーキだな」
腹が減ったら冷蔵庫の中にあるケーキを食えという風に言われていた。先週、USDXの集まりで食わされた物とほぼ同じ物だ。朝霞は友人の誕生日に向けてケーキ作りの練習をしているとのことで、人数分のホールケーキを持って来やがったのだ。ホールケーキと言っても直径12センチの小さな物なのだが。
冷蔵庫の中にはあのホールケーキが2つほどある。また練習をしていたのだろう。ケーキ作りは伏見の師事を受けているそうだ。つい2週間ほど前、伏見からとうとう告白をされて付き合い始めたらしいが、それらしい雰囲気もなく何が変わったでもない。そんな様子を美奈と冷やかすが、熱くなっているのは伏見だけにも見える。
「……ふあ」
「起きたのか」
「……おあおざいます」
朝霞は寝起きで頭が回っていないのか、口も回っていないようだ。しばしボーっとして、メガネに手を伸ばす。
「いま何時…?」
「6時だ」
「はやぁ……マジか。てかリン君ケーキ食ってんの…?」
「腹が減ったら食えとお前が言ったのだろう」
「や。食ってもらってどーもです。朝からよくそんなモン食えるなと思って」
「腹に入る物であれば時間帯問わず食えるな」
「今回は味どう?」
「オレには甘さが足りんのには変わりないが、スポンジがしっとりしたような気がする」
「あ、そうなんだ。それは美味くなってんのかな」
「食いやすくはあるな」
「じゃあよかった」
朝食代わりにケーキを食む。そうこうしている間に朝霞は顔を洗い、コンタクトを装着し、冷えた牛乳とコーンスープの素を持って部屋に戻って来る。近頃は冷えた牛乳で作るスープの顆粒を店でよく見るが、これが夏の朝には重宝するのだと言う。美味いし、比較的腹に溜まるそうだ。
「お前は友人の誕生日のためにケーキ作りをしているのだろう」
「そうだね」
「他には何かするのか。飲むなど」
「そう、聞いてよリン君。俺はこれまでの恩返しと謝罪も兼ねてアイツの誕生日を丸1日かけてガチで祝おうとしてるんだよ」
「恩返しはともかく謝罪とは」
「アイツは俺の誕生日を1年の時からずっと祝ってくれてたんだけど、部活の現役当時の俺は何においてもステージ最優先だったんだよ」
朝霞の誕生日は7月末。星ヶ丘の放送部が一大イベントとしているステージの直前なのだという。部活に熱を上げている朝霞が自分の誕生日を祝われたところで、それがステージに何の益をもたらすのだと一蹴し、仮にも自分を祝おうとした友人を毎年ぶん殴って来たそうだ。
その話を聞いたオレは朝霞のその言動に若干引いているし、部を引退してただの人になった朝霞も当時の自分のやってきたことが常軌を逸しているとようやく気付いたそうだ。3年分のそれをたった1日で返し切れるとも思わないが、これまでの謝罪と礼を兼ねて誕生日を盛大に祝ってやりたいのだという。
「プレゼントは買って来たし、夜はアイツがバイトしてる店を貸し切って、アイツに縁のある人を呼んでパーティーをする事にはなってる。だけど、そこに至るまでの予定が! タイムテーブルが微妙に埋まり切らない! っていう!」
「漠然とは考えているのか」
「ドライブとかしたいなーと思って。いや、最後まで言わないでリン君。ペーパードライバーが星港に突っ込むとか自殺行為だろって、それは俺が一番わかってるんだけど、車だからこそ行ける場所とかで、こう、水入らずで話したいことだとか、いろいろあるじゃん」
「オレはまだ何も言っとらんが。まあ、ペーパードライバーが星港のど真ん中に突っ込むのは確かに度胸が要るだろうとは。そうなると、比較的安全で、見どころもあるドライブコースか」
「リン君は普段から車に乗ってるし、どこかいいところ知ってる?」
「そうは言っても地元と大学の往復程度で――まあ、地元の一本道などは、海が見えていいロケーションではあるのかもしれんがオレにはよく見る風景でだな」
「海! いいじゃん! 一本道なら星港よりか安全だよね。リン君監修の西海ドライブにしようかな」
地元の話に朝霞が思いがけず乗り気になってしまったが、まあ、企画のタイムテーブルが埋まるのであればそれでいいのだろう。何だかんだで頭を働かせると覚醒するのが早い男だ。いつしか右手には冷蔵庫から取り出したもう1台のケーキをつつくためのフォークを、左手にはペンを持っている。
「西海はベティさんの店くらいしか行かないし、いいところがあればいろいろ教えてもらえると」
「それこそ伏見に聞けばいいと思うが。アイツも西海在住だろう」
end.
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何をトチ狂ったか2日連続でリン様と朝霞Pです。仕方ないよね、需要があったんだ。リン様マジリン様。
やまよの誕生日を祝おうとケーキ作りの練習をしたり、1日のプランを一生懸命考えている朝霞Pです。今までは殴って来たもんな。
この感じだと朝霞Pはしばらくはケーキ食べてそうだしUSDXメンバーも巻き込まれてケーキ食べるハメになってそうだ。がんばれチータ君。
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窓から差し込む光で目が覚め、手元のスマホで時刻を確認すると朝の6時前だった。昨日は朝霞の部屋の簡易防音対策と称した模様替えを手伝わされ、その流れで少々2人用のボードゲームをやるなどしていた。隣から壁ドンされないかの確認も兼ね、小一時間ほどの配信もした。
一応これをやっている間に隣から壁ドンなどの反応は特になく、簡易的防音対策は成功したと言っていいだろう。一応向こうからも生活音は多少なりあったし、隣人が留守にしていたということはなさそうだ。気にならない程度の音漏れに留めることが出来たのだろう。しかし、調子に乗ってまた騒がしくしてはそろそろ壁に穴が開きかねん。
家主の朝霞はまだ深い眠りの中にいるようで、ちょっとやそっとでは起きないと見ていいだろう。徹夜は出来るが朝にはさほど強くないとは聞いていた。さて、これからどうしたものか。幸い、1人での暇潰しには事欠かん部屋ではある。映画を見るもよし、陳列されたボードゲームを見るもよし。
「……本当にホールケーキだな」
腹が減ったら冷蔵庫の中にあるケーキを食えという風に言われていた。先週、USDXの集まりで食わされた物とほぼ同じ物だ。朝霞は友人の誕生日に向けてケーキ作りの練習をしているとのことで、人数分のホールケーキを持って来やがったのだ。ホールケーキと言っても直径12センチの小さな物なのだが。
冷蔵庫の中にはあのホールケーキが2つほどある。また練習をしていたのだろう。ケーキ作りは伏見の師事を受けているそうだ。つい2週間ほど前、伏見からとうとう告白をされて付き合い始めたらしいが、それらしい雰囲気もなく何が変わったでもない。そんな様子を美奈と冷やかすが、熱くなっているのは伏見だけにも見える。
「……ふあ」
「起きたのか」
「……おあおざいます」
朝霞は寝起きで頭が回っていないのか、口も回っていないようだ。しばしボーっとして、メガネに手を伸ばす。
「いま何時…?」
「6時だ」
「はやぁ……マジか。てかリン君ケーキ食ってんの…?」
「腹が減ったら食えとお前が言ったのだろう」
「や。食ってもらってどーもです。朝からよくそんなモン食えるなと思って」
「腹に入る物であれば時間帯問わず食えるな」
「今回は味どう?」
「オレには甘さが足りんのには変わりないが、スポンジがしっとりしたような気がする」
「あ、そうなんだ。それは美味くなってんのかな」
「食いやすくはあるな」
「じゃあよかった」
朝食代わりにケーキを食む。そうこうしている間に朝霞は顔を洗い、コンタクトを装着し、冷えた牛乳とコーンスープの素を持って部屋に戻って来る。近頃は冷えた牛乳で作るスープの顆粒を店でよく見るが、これが夏の朝には重宝するのだと言う。美味いし、比較的腹に溜まるそうだ。
「お前は友人の誕生日のためにケーキ作りをしているのだろう」
「そうだね」
「他には何かするのか。飲むなど」
「そう、聞いてよリン君。俺はこれまでの恩返しと謝罪も兼ねてアイツの誕生日を丸1日かけてガチで祝おうとしてるんだよ」
「恩返しはともかく謝罪とは」
「アイツは俺の誕生日を1年の時からずっと祝ってくれてたんだけど、部活の現役当時の俺は何においてもステージ最優先だったんだよ」
朝霞の誕生日は7月末。星ヶ丘の放送部が一大イベントとしているステージの直前なのだという。部活に熱を上げている朝霞が自分の誕生日を祝われたところで、それがステージに何の益をもたらすのだと一蹴し、仮にも自分を祝おうとした友人を毎年ぶん殴って来たそうだ。
その話を聞いたオレは朝霞のその言動に若干引いているし、部を引退してただの人になった朝霞も当時の自分のやってきたことが常軌を逸しているとようやく気付いたそうだ。3年分のそれをたった1日で返し切れるとも思わないが、これまでの謝罪と礼を兼ねて誕生日を盛大に祝ってやりたいのだという。
「プレゼントは買って来たし、夜はアイツがバイトしてる店を貸し切って、アイツに縁のある人を呼んでパーティーをする事にはなってる。だけど、そこに至るまでの予定が! タイムテーブルが微妙に埋まり切らない! っていう!」
「漠然とは考えているのか」
「ドライブとかしたいなーと思って。いや、最後まで言わないでリン君。ペーパードライバーが星港に突っ込むとか自殺行為だろって、それは俺が一番わかってるんだけど、車だからこそ行ける場所とかで、こう、水入らずで話したいことだとか、いろいろあるじゃん」
「オレはまだ何も言っとらんが。まあ、ペーパードライバーが星港のど真ん中に突っ込むのは確かに度胸が要るだろうとは。そうなると、比較的安全で、見どころもあるドライブコースか」
「リン君は普段から車に乗ってるし、どこかいいところ知ってる?」
「そうは言っても地元と大学の往復程度で――まあ、地元の一本道などは、海が見えていいロケーションではあるのかもしれんがオレにはよく見る風景でだな」
「海! いいじゃん! 一本道なら星港よりか安全だよね。リン君監修の西海ドライブにしようかな」
地元の話に朝霞が思いがけず乗り気になってしまったが、まあ、企画のタイムテーブルが埋まるのであればそれでいいのだろう。何だかんだで頭を働かせると覚醒するのが早い男だ。いつしか右手には冷蔵庫から取り出したもう1台のケーキをつつくためのフォークを、左手にはペンを持っている。
「西海はベティさんの店くらいしか行かないし、いいところがあればいろいろ教えてもらえると」
「それこそ伏見に聞けばいいと思うが。アイツも西海在住だろう」
end.
++++
何をトチ狂ったか2日連続でリン様と朝霞Pです。仕方ないよね、需要があったんだ。リン様マジリン様。
やまよの誕生日を祝おうとケーキ作りの練習をしたり、1日のプランを一生懸命考えている朝霞Pです。今までは殴って来たもんな。
この感じだと朝霞Pはしばらくはケーキ食べてそうだしUSDXメンバーも巻き込まれてケーキ食べるハメになってそうだ。がんばれチータ君。
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