2021
■2人で帰ろう
++++
「それじゃあお疲れさまでしたー」
「お疲れさまでーす」
「サキー、帰ろー」
サークルが終わると、ごくたまに一部のメンバーで飯を食いに行くこともあるけど、基本はそのまま各自解散。家の方角も使う足も路線も結構みんなバラバラだから、まとまって帰ることもそんなに多くなかったみたいだ。
1年で言えばササが原付で10分くらいのところに住んでてそのままブーンと帰るし、シノは向島エリアの南側、西形市から来ていて1時間半とかそれくらいかけて来ている。だからシノが寄り道をすることは本当になくて、基本真っ直ぐ帰ってばかりだ。
くるみは星港鉄道豊葦線の沿線、歩月駅近くに住んでいるらしい。で、6人中唯一の星港市民のレナは自前のバイクでこれまた颯爽と帰って行く。青浪に住む俺と西海に住むサキが方角としては近しいのかな。いや、一緒なのは途中までだけど。
で、こうしてたまにサキを助手席に乗せて帰るっていうパターンも出来たんだ。もちろん一緒なのは方角が北と西に分かれるまでの間だけど、一緒の時間が増えるといろんな話をするようにもなるし、そこそこ仲良くなれた気もする。
「サキ、何か食ってく?」
「俺はそんなにおなか空いてないよ。ハナ先輩のパンがまだお腹に残ってるから」
「そっか。それじゃあ真っ直ぐ帰るなー」
「すがやん、おなか空いてるんじゃないの」
「これから晩飯だなーってくらいの健全な空腹だし、大丈夫大丈夫」
「そう。それならいいけど」
「でも、ハナ先輩のパンって何であんな美味いんだろうな」
「豊葦ではかなり有名なお店なんでしょ。ササが言ってたよ」
「正直2つ3つは余裕で食えるもんな。もっと食べたい」
「それは店に行って買いなよ、車もあるんだし」
「まあそうなるよな」
ハナ先輩は大人気のパン屋でアルバイトをしていて、商品にするには少し難があったり、焼いてからの時間が経ち過ぎてしまったものなんかをたまにサークルに持ってきてくれるんだ。その不定期イベントが起きるとみんな大盛り上がり。
今日もハナ先輩のパン祭りが開催されて、俺は紅茶パンを、サキは塩パンを食べていた。お互いのパンをちぎって一口ずつ交換したんだけど、塩パンの弾力が物凄くて、塩味も相俟ってこれは美味いって思ったね。レンジで10秒から20秒ほどあっためるともっと美味いとのこと。
「でも、あの塩パン、弾力があって食べ応えがあるってのはわかるけど、そこまで腹にたまるのかー」
「よく噛んでたからかな。すがやんの紅茶パンって、シフォンケーキみたいな柔らかさだったでしょ。溶ける系の」
「そうだなー。確かにすぐなくなるって感じだった」
「ああいうのと比べると、お腹に残る時間は長いかもね」
「そっか。またハナ先輩塩パン持ってきてくれないかなー」
「だから、自分で買いに行けばいいでしょ」
星港市内はパン屋の戦国時代って言われることもあるとかないとかっていうほどパン屋がひしめいてるらしいけど、青浪はそんなでもないし、通学途中での道草ってよくよく考えたらそんなにしたことがなかったかもしれない。
いつもより周りを気にして車を走らせていると、横断歩道の前に中学生か高校生が2、3人いるのに気付く。減速して、停止線の前で止まると、きゃいきゃいと喋っていた学生たちが駆け足で横断歩道を渡って、その先でまた喋り始めた。
「すがやん、横断歩道止まる人なんだ」
「横断歩道での取り締まりってのも最近じゃ結構厳しくなってんだぜ。歩行者いるのに止まんなかったら違反なんだって」
「ああ、そうなんだ。すがやんは優しいなって思ったんだけど、規則だったんだ」
「違反したら免許更新のときの講習時間長くなるし、ゴールド免許になるの難しくなるから気を付けろーって親が言ってた」
「俺もさ、免許は一応持ってるんだよ」
「え、そうなんだ」
「うん。西海だし、あった方がいいでしょ」
「そうだよなー。結局向島エリアは車社会だよなー」
「でも実際はペーパードライバーだし、ほっといたらそのうち勝手にゴールド免許になってそう」
「それはそれでいいと思うけど。俺は普段から車乗るし、ちょっとしたうっかりで事故とか違反とかやらないとも限らないからさ」
俺は高3の夏休みに免許を取ったから、初心者マークが外れるのはもう少し先だ。免許取ってから実際に運転するまでにラグがあったら怖いだろうからって理由で俺はたまに助手席に親を乗せて運転させてもらってたけど、実際免許を取るだけ取ってペーパーって人もいるんだよな。
「サキ、車に乗るとしたらどんな車種がいい?」
「え。考えたこともなかったけど、現状軽で大丈夫かな」
「あんまこだわらないタイプか」
「そうだね。実際乗るときになればちゃんと考えるだろうけどね」
「つかゴティ先輩のプジョーがヤバいじゃんな」
「あれはすごいね。左ハンドルの車なんてあんな間近で見たことなかったし、学生であんな車に乗る人がいるなんて思ってもみなかった」
「ホントにそれ」
「すがやんもああいうのに乗りたい?」
「いやいやいや、俺は親のお下がりのシエンタで十分です。身の丈は弁えてます」
ゴティ先輩は規格外として、次の車という事を考えたときに、最初に普通車に乗っちまったし軽に乗れんのかなという心配は少し。でも、お下がりとしては割と新しめだし、長く乗らせてもらってお金を貯めて、少しいい車を買うのかなとも思ったりする。どうなるかな。
「他のみんなはどんなの乗りそうかな」
「くるみはかわいい系の軽っぽい」
「わかる」
「レナは車にもこだわりそうだし、真っ赤なのかなとか」
「わかるわー」
end.
++++
すがやんとサキがきゃいきゃいしてるのに需要があるというだけのセルフ供給。だってかわいいんだもん
MBCC1年生6人はみんな住んでる場所が結構散り散りバラバラなので、団体行動はあまりありません。
この話を受けたすがサキのパン屋探訪の話とかもやってみたい。みんなにもお土産~とか言いながらたくさん買うすがやんの図が見える
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「それじゃあお疲れさまでしたー」
「お疲れさまでーす」
「サキー、帰ろー」
サークルが終わると、ごくたまに一部のメンバーで飯を食いに行くこともあるけど、基本はそのまま各自解散。家の方角も使う足も路線も結構みんなバラバラだから、まとまって帰ることもそんなに多くなかったみたいだ。
1年で言えばササが原付で10分くらいのところに住んでてそのままブーンと帰るし、シノは向島エリアの南側、西形市から来ていて1時間半とかそれくらいかけて来ている。だからシノが寄り道をすることは本当になくて、基本真っ直ぐ帰ってばかりだ。
くるみは星港鉄道豊葦線の沿線、歩月駅近くに住んでいるらしい。で、6人中唯一の星港市民のレナは自前のバイクでこれまた颯爽と帰って行く。青浪に住む俺と西海に住むサキが方角としては近しいのかな。いや、一緒なのは途中までだけど。
で、こうしてたまにサキを助手席に乗せて帰るっていうパターンも出来たんだ。もちろん一緒なのは方角が北と西に分かれるまでの間だけど、一緒の時間が増えるといろんな話をするようにもなるし、そこそこ仲良くなれた気もする。
「サキ、何か食ってく?」
「俺はそんなにおなか空いてないよ。ハナ先輩のパンがまだお腹に残ってるから」
「そっか。それじゃあ真っ直ぐ帰るなー」
「すがやん、おなか空いてるんじゃないの」
「これから晩飯だなーってくらいの健全な空腹だし、大丈夫大丈夫」
「そう。それならいいけど」
「でも、ハナ先輩のパンって何であんな美味いんだろうな」
「豊葦ではかなり有名なお店なんでしょ。ササが言ってたよ」
「正直2つ3つは余裕で食えるもんな。もっと食べたい」
「それは店に行って買いなよ、車もあるんだし」
「まあそうなるよな」
ハナ先輩は大人気のパン屋でアルバイトをしていて、商品にするには少し難があったり、焼いてからの時間が経ち過ぎてしまったものなんかをたまにサークルに持ってきてくれるんだ。その不定期イベントが起きるとみんな大盛り上がり。
今日もハナ先輩のパン祭りが開催されて、俺は紅茶パンを、サキは塩パンを食べていた。お互いのパンをちぎって一口ずつ交換したんだけど、塩パンの弾力が物凄くて、塩味も相俟ってこれは美味いって思ったね。レンジで10秒から20秒ほどあっためるともっと美味いとのこと。
「でも、あの塩パン、弾力があって食べ応えがあるってのはわかるけど、そこまで腹にたまるのかー」
「よく噛んでたからかな。すがやんの紅茶パンって、シフォンケーキみたいな柔らかさだったでしょ。溶ける系の」
「そうだなー。確かにすぐなくなるって感じだった」
「ああいうのと比べると、お腹に残る時間は長いかもね」
「そっか。またハナ先輩塩パン持ってきてくれないかなー」
「だから、自分で買いに行けばいいでしょ」
星港市内はパン屋の戦国時代って言われることもあるとかないとかっていうほどパン屋がひしめいてるらしいけど、青浪はそんなでもないし、通学途中での道草ってよくよく考えたらそんなにしたことがなかったかもしれない。
いつもより周りを気にして車を走らせていると、横断歩道の前に中学生か高校生が2、3人いるのに気付く。減速して、停止線の前で止まると、きゃいきゃいと喋っていた学生たちが駆け足で横断歩道を渡って、その先でまた喋り始めた。
「すがやん、横断歩道止まる人なんだ」
「横断歩道での取り締まりってのも最近じゃ結構厳しくなってんだぜ。歩行者いるのに止まんなかったら違反なんだって」
「ああ、そうなんだ。すがやんは優しいなって思ったんだけど、規則だったんだ」
「違反したら免許更新のときの講習時間長くなるし、ゴールド免許になるの難しくなるから気を付けろーって親が言ってた」
「俺もさ、免許は一応持ってるんだよ」
「え、そうなんだ」
「うん。西海だし、あった方がいいでしょ」
「そうだよなー。結局向島エリアは車社会だよなー」
「でも実際はペーパードライバーだし、ほっといたらそのうち勝手にゴールド免許になってそう」
「それはそれでいいと思うけど。俺は普段から車乗るし、ちょっとしたうっかりで事故とか違反とかやらないとも限らないからさ」
俺は高3の夏休みに免許を取ったから、初心者マークが外れるのはもう少し先だ。免許取ってから実際に運転するまでにラグがあったら怖いだろうからって理由で俺はたまに助手席に親を乗せて運転させてもらってたけど、実際免許を取るだけ取ってペーパーって人もいるんだよな。
「サキ、車に乗るとしたらどんな車種がいい?」
「え。考えたこともなかったけど、現状軽で大丈夫かな」
「あんまこだわらないタイプか」
「そうだね。実際乗るときになればちゃんと考えるだろうけどね」
「つかゴティ先輩のプジョーがヤバいじゃんな」
「あれはすごいね。左ハンドルの車なんてあんな間近で見たことなかったし、学生であんな車に乗る人がいるなんて思ってもみなかった」
「ホントにそれ」
「すがやんもああいうのに乗りたい?」
「いやいやいや、俺は親のお下がりのシエンタで十分です。身の丈は弁えてます」
ゴティ先輩は規格外として、次の車という事を考えたときに、最初に普通車に乗っちまったし軽に乗れんのかなという心配は少し。でも、お下がりとしては割と新しめだし、長く乗らせてもらってお金を貯めて、少しいい車を買うのかなとも思ったりする。どうなるかな。
「他のみんなはどんなの乗りそうかな」
「くるみはかわいい系の軽っぽい」
「わかる」
「レナは車にもこだわりそうだし、真っ赤なのかなとか」
「わかるわー」
end.
++++
すがやんとサキがきゃいきゃいしてるのに需要があるというだけのセルフ供給。だってかわいいんだもん
MBCC1年生6人はみんな住んでる場所が結構散り散りバラバラなので、団体行動はあまりありません。
この話を受けたすがサキのパン屋探訪の話とかもやってみたい。みんなにもお土産~とか言いながらたくさん買うすがやんの図が見える
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