2021
■近況をずるずると
++++
「は~、やっぱりこれだなー!」
「僕も1人ではなかなか来ないからね、久し振りで嬉しいね」
菜月さんにラーメンを食べに行かないかと誘われれば、行く店は限られる。まず候補に上がるのは、1日必要量の3分の1の野菜が摂れるというラーメンが売りの店だ。僕は野菜醤油豚骨ラーメンを食べるし、菜月さんは野菜塩ラーメンというのがお決まりのメニューだ。気分によって餃子を付けたりチャーシュー丼を頼んだり。
ちゃんとした食事の解禁だーと言いながら、彼女はいつものように野菜塩ラーメンとチャーシュー丼(温玉トッピング)を頼む。この時期の彼女は毎年のように夏風邪に苦しんでいて、とにかく咳が酷い。それは発作にも近い激しさで、見ている方がしんどくなってくるんだ。
「菜月さん、体の方は良くなったのかな」
「まあ、普通に話せてるしラーメンを食べられる程度には良くなったな」
「それは良かったね。でも、普通に話せなかったしラーメンは食べられなかったという風にも聞こえるね」
「実際普通には話せなかったしラーメンなんか食べられなかったからな。大分良くなったぞ。うちの中で、夏風邪からの復帰っていうのは病み上がりのカレーをもって復帰なんだ」
「カレーか。自分で作るのかい?」
「そうだな。そろそろ治りがけかなって頃にカレーを作って、それを食べられればオッケー、的な。オッケーになったら好きな物を食べる」
「それで暴食して大変なことにならなければいいね」
「縁起でもないことを言うな」
菜月さんが暴食をするときは本当に暴飲暴食をするから、せっかく良くなった体調がまた悪くならないかと不安になるね。彼女の何が性質が悪いって、毎年この時期に風邪をひくとわかっているのに薬などを部屋に置かないところだ。咳止めの薬でもあればまた違うと思うんだけど。
「君のことだ、薬は持ち合わせてなかったんだろう?」
「まあ、普通の薬は持ってないけど、木曜日? だったかな、ノサカがお見舞いに来てくれて」
「野坂が? 風邪をひいたという話をしていたのかな?」
「いや、そんな話はこれっぽっちもしてなかったんだけど、時期が時期だから風邪をひいているような気がしてとか言って訪ねて来たな。それでゼリーとサイダーと咳止めののど飴を持って来てくれた」
「ゼリーとサイダーは菜月さんの養生セットだからわかるけど、咳止めののど飴か」
「お菓子コーナーにあるようなヤツじゃなくて、用法用量を守ってなめるちゃんとしたヤツだ。何か、うちは薬が嫌いだろうからのど飴にしたとか言ってたな」
何と言うか、さすが、野坂はここぞと言う時には外さないなという感想を抱いたね。風邪をひいたという話もしていないのに、時期柄というだけの理由でお見舞いに行っただなんて。しかもそれがバチ当たりしたとは。何かしら通じ合う何かがあるんじゃないのかな。ノサペディアっぷりは健在だし。
「だけどな、仮にも初心者講習会の講師が講習会2日前に風邪をひいてる人間のところに来るなと」
「まあまあ。それだけ菜月さんの事が気掛かりだったんだよ」
「実際のど飴が結構効いて凄いなとは思ったけど」
「へえ、ああいうのど飴も実際に効くんだね」
「そうなんだよ。だからか、いつもより治りが早かったような気がする。ゆっくり寝られたのが良かったのかな」
今度からはのど飴を置いておこうかな、と彼女はご機嫌な様子。ただ、夏風邪の季節は終わってしまったし、大学卒業後は実家に戻ることを前提で就職活動もしているのだから、せっかくののど飴も単純におやつになってしまうような気がする。
「風邪をひいていた以外に最近はどうかな? 何か変わったことなどは」
「特にないな。梅雨に入って外に出たくないなと思いつつゲームをしながら暮らしてる」
さすがの菜月さんでも4年生になって全休が増えたらしく、自堕落な……もとい、夢のような生活をしているなあと思う。ゲームをやっていると本当に外に出ないからね彼女は。だけど、4年生がやるべきことは他にもいくつかある。
「就活や卒論は?」
「就活はまあ、ぼちぼちって感じで、何十社も応募してハシゴしながら一生懸命走り回ってるような人とは違うし。卒論もぼちぼち。レポートとか論文ってのは気分に左右される物だからな。書くモードに入ると一気に数千字レベルで積むし」
「一気に数千字ね。いやあ、僕も言ってみたいものだね」
「手書きじゃないんだからお前でも何の問題もないだろ」
「僕も頑張ってはいるんだよ? 実験と検証を重ねた上で、また仮説を立てての繰り返しで」
「文系の卒論と理系の卒研は全然やることが違うと聞いたことはあるけどな」
「ただ、こっちはこっちで実験結果やそれに用いた図などをそのまま記したり上手く配置することでかさ増しすることは出来なくないからね」
「うちがやってるのはテーマがテーマっていうのもあるけど文字だらけだし、実験と検証と言うよりかは文献調査に基づく仮説の検証っていうのが今のところのメインだから、文字だらけになるな。3年までの下積みがあるから今のところ1万7千字くらいか」
「へえ、結構書いてるね」
「ここからまだ1万字積まなきゃいけないからな」
ただ、それこそ彼女が書くモードに入ればすぐだろう。それくらい彼女の書く仕事に対しては信頼感がある。まあ、聞いている感じだとそこまで特別何かが変わったというワケではなさそうだし、一安心。就活をストレスに感じて病む人もいるという話だし。
「でもなんか、ゲームと卒論と、バスでの往復にも疲れて来た頃合いだし、悪ふざけか体を動かしたいなあ」
「MMP的には、うまい棒レースか缶蹴りということになるけど」
「……真希とバドミントンするし」
end.
++++
単純に菜月さんと圭斗さんがラーメンをうまうましてるだけの話。それと近況報告を少々。大したことはしてません。
結局菜月さんと圭斗さんって今までの4年生の先輩と比較して遊びに行く方の人だったのかしら。でも呼ばれることもあったし言ってた方かな
ノサカのお見舞いは確か去年やったような気がする。のど飴の個数を用法用量の通り舐めても余らない数のものにうんたらかんたら
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「は~、やっぱりこれだなー!」
「僕も1人ではなかなか来ないからね、久し振りで嬉しいね」
菜月さんにラーメンを食べに行かないかと誘われれば、行く店は限られる。まず候補に上がるのは、1日必要量の3分の1の野菜が摂れるというラーメンが売りの店だ。僕は野菜醤油豚骨ラーメンを食べるし、菜月さんは野菜塩ラーメンというのがお決まりのメニューだ。気分によって餃子を付けたりチャーシュー丼を頼んだり。
ちゃんとした食事の解禁だーと言いながら、彼女はいつものように野菜塩ラーメンとチャーシュー丼(温玉トッピング)を頼む。この時期の彼女は毎年のように夏風邪に苦しんでいて、とにかく咳が酷い。それは発作にも近い激しさで、見ている方がしんどくなってくるんだ。
「菜月さん、体の方は良くなったのかな」
「まあ、普通に話せてるしラーメンを食べられる程度には良くなったな」
「それは良かったね。でも、普通に話せなかったしラーメンは食べられなかったという風にも聞こえるね」
「実際普通には話せなかったしラーメンなんか食べられなかったからな。大分良くなったぞ。うちの中で、夏風邪からの復帰っていうのは病み上がりのカレーをもって復帰なんだ」
「カレーか。自分で作るのかい?」
「そうだな。そろそろ治りがけかなって頃にカレーを作って、それを食べられればオッケー、的な。オッケーになったら好きな物を食べる」
「それで暴食して大変なことにならなければいいね」
「縁起でもないことを言うな」
菜月さんが暴食をするときは本当に暴飲暴食をするから、せっかく良くなった体調がまた悪くならないかと不安になるね。彼女の何が性質が悪いって、毎年この時期に風邪をひくとわかっているのに薬などを部屋に置かないところだ。咳止めの薬でもあればまた違うと思うんだけど。
「君のことだ、薬は持ち合わせてなかったんだろう?」
「まあ、普通の薬は持ってないけど、木曜日? だったかな、ノサカがお見舞いに来てくれて」
「野坂が? 風邪をひいたという話をしていたのかな?」
「いや、そんな話はこれっぽっちもしてなかったんだけど、時期が時期だから風邪をひいているような気がしてとか言って訪ねて来たな。それでゼリーとサイダーと咳止めののど飴を持って来てくれた」
「ゼリーとサイダーは菜月さんの養生セットだからわかるけど、咳止めののど飴か」
「お菓子コーナーにあるようなヤツじゃなくて、用法用量を守ってなめるちゃんとしたヤツだ。何か、うちは薬が嫌いだろうからのど飴にしたとか言ってたな」
何と言うか、さすが、野坂はここぞと言う時には外さないなという感想を抱いたね。風邪をひいたという話もしていないのに、時期柄というだけの理由でお見舞いに行っただなんて。しかもそれがバチ当たりしたとは。何かしら通じ合う何かがあるんじゃないのかな。ノサペディアっぷりは健在だし。
「だけどな、仮にも初心者講習会の講師が講習会2日前に風邪をひいてる人間のところに来るなと」
「まあまあ。それだけ菜月さんの事が気掛かりだったんだよ」
「実際のど飴が結構効いて凄いなとは思ったけど」
「へえ、ああいうのど飴も実際に効くんだね」
「そうなんだよ。だからか、いつもより治りが早かったような気がする。ゆっくり寝られたのが良かったのかな」
今度からはのど飴を置いておこうかな、と彼女はご機嫌な様子。ただ、夏風邪の季節は終わってしまったし、大学卒業後は実家に戻ることを前提で就職活動もしているのだから、せっかくののど飴も単純におやつになってしまうような気がする。
「風邪をひいていた以外に最近はどうかな? 何か変わったことなどは」
「特にないな。梅雨に入って外に出たくないなと思いつつゲームをしながら暮らしてる」
さすがの菜月さんでも4年生になって全休が増えたらしく、自堕落な……もとい、夢のような生活をしているなあと思う。ゲームをやっていると本当に外に出ないからね彼女は。だけど、4年生がやるべきことは他にもいくつかある。
「就活や卒論は?」
「就活はまあ、ぼちぼちって感じで、何十社も応募してハシゴしながら一生懸命走り回ってるような人とは違うし。卒論もぼちぼち。レポートとか論文ってのは気分に左右される物だからな。書くモードに入ると一気に数千字レベルで積むし」
「一気に数千字ね。いやあ、僕も言ってみたいものだね」
「手書きじゃないんだからお前でも何の問題もないだろ」
「僕も頑張ってはいるんだよ? 実験と検証を重ねた上で、また仮説を立てての繰り返しで」
「文系の卒論と理系の卒研は全然やることが違うと聞いたことはあるけどな」
「ただ、こっちはこっちで実験結果やそれに用いた図などをそのまま記したり上手く配置することでかさ増しすることは出来なくないからね」
「うちがやってるのはテーマがテーマっていうのもあるけど文字だらけだし、実験と検証と言うよりかは文献調査に基づく仮説の検証っていうのが今のところのメインだから、文字だらけになるな。3年までの下積みがあるから今のところ1万7千字くらいか」
「へえ、結構書いてるね」
「ここからまだ1万字積まなきゃいけないからな」
ただ、それこそ彼女が書くモードに入ればすぐだろう。それくらい彼女の書く仕事に対しては信頼感がある。まあ、聞いている感じだとそこまで特別何かが変わったというワケではなさそうだし、一安心。就活をストレスに感じて病む人もいるという話だし。
「でもなんか、ゲームと卒論と、バスでの往復にも疲れて来た頃合いだし、悪ふざけか体を動かしたいなあ」
「MMP的には、うまい棒レースか缶蹴りということになるけど」
「……真希とバドミントンするし」
end.
++++
単純に菜月さんと圭斗さんがラーメンをうまうましてるだけの話。それと近況報告を少々。大したことはしてません。
結局菜月さんと圭斗さんって今までの4年生の先輩と比較して遊びに行く方の人だったのかしら。でも呼ばれることもあったし言ってた方かな
ノサカのお見舞いは確か去年やったような気がする。のど飴の個数を用法用量の通り舐めても余らない数のものにうんたらかんたら
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