2021
■どこからが本番?
++++
「それじゃ、講習会お疲れさんっした! かんぱーい!」
「かんぱーい」
やって来たのは地下街だ。星港市営地下鉄の駅周辺には、地下街が広がっているところがまあある。そういうところの、立ち飲み街。つばめサンから聞いて前々から知ってはいたし、そのうち行ってみたかった場所にようやく来ることが出来た。
一緒に来たのは、こないだセルフ打ち上げの約束をした高木と、飛び入りの果林先輩だ。そんな楽しいことするんだったら混ぜて欲しいですよねーと。別に疚しい話をするための会でもないから断る理由もないし、ビールをより飲める人がいた方が楽しい会だ。俺も高木もウェルカムと迎え入れた。
「餃子にビール! これはつばめの好きなヤツだわ~」
「何か、屋外なのか屋内なのかよくわからない感じが不思議ですね」
「半外、的な? 一応外だよ。地下だけどね。天候に左右されないのがいいね」
「でも、ビアガーデンとか屋上バーベキューとか、外で思いっ切りビール飲みたいっていう」
「ビアガーデンはねえ、タカちゃんが本当にハタチになって法的に問題なくなったら行こうねって話になってるんだよ。だからそれまでにビールの練習しといてねって」
「そーゆーコトだったんすね。コイツ2月生まれっすし、来年すね」
「そうそう。練習する時間的猶予はたっぷりあるから」
「つか、変なトコで謙遜してまだまだビールは苦手~とか何とか言ってますけどコイツ、下手な下戸の奴よか全然飲めるっていう」
「まあまあ。タカちゃんは基準がMBCCの上位陣だから。目標が高いのはいいことよ」
「あー……あの辺をイメージしてるなら、まあ」
MBCCでビールと言えばやっぱり高崎先輩のイメージが強い。高木が譲ってもらったドイツ語の辞書にも、実質的ビール祭りって言われるオクトーバーフェストのコラム欄に丸が打ってあったらしいし。
で、あの人は酒がメチャクチャ強い。俺もまあまあ強い、飲める方だと思ってたけど、あの人にはフツーに負けた。ただ飲むだけなら高崎先輩よか高木の方が強いって説もあるけど、高木にはビールが飲めないっていう致命的な弱点があったから、結果としてはトントンくらいか。
「果林先輩、そーいやこの店、小籠包も美味いらしいっす」
「あっ本当。それじゃあ頼もうか。すいませーん! 小籠包10個ー!」
「一番多いのを頼む辺り安定っすね」
「もちろんエージとタカちゃんにも分けてあげますよ」
「マジすか! あざっす!」
「ありがとうございます」
「頑張った対策委員へのせめてもの労いね」
ビールの話ばっかりで忘れかけていたけど、普通に初心者講習会のセルフ打ち上げの体だった。いや、別に講習会の話をしなきゃいけないってワケでもないんだけど。そういや対策委員だったなーって思い出した。講習会の終わったこれからが本番なんだっていう。
「対策委員的に一番心配だったのが野坂のいつものだけど、イレギュラーが発生してよかったねえ」
「イレギュラーと言っていいんですかね」
「イレギュラーっしょ。だって遅刻しなかったんだから」
そう、対策委員的に何が心配だったかっつったら、悪質な遅刻癖で通っているマーシーさんがちゃんと時間通りに来てくれるかっていう。ファンフェスでも電車2本分くらい遅れて来るっていう。ペア組んでた俺が相当冷や冷やさせられたのは記憶に新しい。
結果としてはL先輩と一緒に普通~に講師の先輩の集合時間に来てくれたので、対策委員一同、特に奈々がホッとしていた。まあ、奈々は対策委員でも定例会でも行事ごとにマーシーさんの遅刻の心配ばっかしてたって話だから……ちょっと同情するべ。
「L先輩の部屋に泊まるっつーのは賢いなと思ったっすね」
「しかも水薙駅まで高ピー先輩の後ろに乗っけてもらったんだって! 高ピー先輩を足にするとか神経が図太過ぎて吐きそうだわ」
「と言うか、高崎先輩が早朝に動くイメージもなかったですね」
「L曰く、水薙近くのカフェのモーニング目当てだったみたい。ほら、高ピー先輩豊葦のカフェ結構いろんなトコ行ってて詳しいから。モーニングにしか出ない玉子サンドが食べたかったんだって。絶対美味しいヤツじゃないですかー! アタシも食べたいですよねー!」
「果林先輩は、バイト上がりのモーニングで行けそうじゃないですか?」
「あそっか。全然思いつかなかったわ。タカちゃんナイス。月曜の朝にでも行こっと」
今日は講習会だったからさすがにバイトを入れてないらしいけど、果林先輩は夜勤でバイトしてるから、バイト上がりの足でそのままモーニングへっていうのも余裕なんだよな。俺は普通にモーニングの時間帯に起きる朝型人間だけど。朝型でも労働後でもない高木にはどのみち無理だな。
「あっ、小籠包来たよ。おいしそ~!」
「これって、レンゲに乗っけてそのまま食うヤツすか」
「まあ、それが一番一般的なんじゃない? エージ、つばめから食べ方は教わってない?」
「教わってないっすね。く~っ、熱そ~…!」
「確かに、気を付けないとヤケドするかもね。エージ、ビールおかわりいっとく?」
「そうっすね。これは緊急用のジョッキが必要だっていう」
「ええー……緊急用のジョッキって。あっ、俺はレモンサワーで」
「お前のも普通にジョッキだとは言っとくべ」
「まあ、その辺はご愛嬌じゃない」
end.
++++
タカエイの打ち上げに果林が乱入してもやってることは普段と大差ないので平和だなと思いました。きっとこの後タカちゃん宅でみんな飲み直す。
去年みたいな大きな問題はそこまでなかったので、打ち上げでも講習会の話はあんまりしてないし、なんなら話は反れがち。
そういやエイジは普通に朝型だし、果林はバイト明けなら早朝でも普通に起きてるけど、絶対起きてないだろうTKGよ。
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「それじゃ、講習会お疲れさんっした! かんぱーい!」
「かんぱーい」
やって来たのは地下街だ。星港市営地下鉄の駅周辺には、地下街が広がっているところがまあある。そういうところの、立ち飲み街。つばめサンから聞いて前々から知ってはいたし、そのうち行ってみたかった場所にようやく来ることが出来た。
一緒に来たのは、こないだセルフ打ち上げの約束をした高木と、飛び入りの果林先輩だ。そんな楽しいことするんだったら混ぜて欲しいですよねーと。別に疚しい話をするための会でもないから断る理由もないし、ビールをより飲める人がいた方が楽しい会だ。俺も高木もウェルカムと迎え入れた。
「餃子にビール! これはつばめの好きなヤツだわ~」
「何か、屋外なのか屋内なのかよくわからない感じが不思議ですね」
「半外、的な? 一応外だよ。地下だけどね。天候に左右されないのがいいね」
「でも、ビアガーデンとか屋上バーベキューとか、外で思いっ切りビール飲みたいっていう」
「ビアガーデンはねえ、タカちゃんが本当にハタチになって法的に問題なくなったら行こうねって話になってるんだよ。だからそれまでにビールの練習しといてねって」
「そーゆーコトだったんすね。コイツ2月生まれっすし、来年すね」
「そうそう。練習する時間的猶予はたっぷりあるから」
「つか、変なトコで謙遜してまだまだビールは苦手~とか何とか言ってますけどコイツ、下手な下戸の奴よか全然飲めるっていう」
「まあまあ。タカちゃんは基準がMBCCの上位陣だから。目標が高いのはいいことよ」
「あー……あの辺をイメージしてるなら、まあ」
MBCCでビールと言えばやっぱり高崎先輩のイメージが強い。高木が譲ってもらったドイツ語の辞書にも、実質的ビール祭りって言われるオクトーバーフェストのコラム欄に丸が打ってあったらしいし。
で、あの人は酒がメチャクチャ強い。俺もまあまあ強い、飲める方だと思ってたけど、あの人にはフツーに負けた。ただ飲むだけなら高崎先輩よか高木の方が強いって説もあるけど、高木にはビールが飲めないっていう致命的な弱点があったから、結果としてはトントンくらいか。
「果林先輩、そーいやこの店、小籠包も美味いらしいっす」
「あっ本当。それじゃあ頼もうか。すいませーん! 小籠包10個ー!」
「一番多いのを頼む辺り安定っすね」
「もちろんエージとタカちゃんにも分けてあげますよ」
「マジすか! あざっす!」
「ありがとうございます」
「頑張った対策委員へのせめてもの労いね」
ビールの話ばっかりで忘れかけていたけど、普通に初心者講習会のセルフ打ち上げの体だった。いや、別に講習会の話をしなきゃいけないってワケでもないんだけど。そういや対策委員だったなーって思い出した。講習会の終わったこれからが本番なんだっていう。
「対策委員的に一番心配だったのが野坂のいつものだけど、イレギュラーが発生してよかったねえ」
「イレギュラーと言っていいんですかね」
「イレギュラーっしょ。だって遅刻しなかったんだから」
そう、対策委員的に何が心配だったかっつったら、悪質な遅刻癖で通っているマーシーさんがちゃんと時間通りに来てくれるかっていう。ファンフェスでも電車2本分くらい遅れて来るっていう。ペア組んでた俺が相当冷や冷やさせられたのは記憶に新しい。
結果としてはL先輩と一緒に普通~に講師の先輩の集合時間に来てくれたので、対策委員一同、特に奈々がホッとしていた。まあ、奈々は対策委員でも定例会でも行事ごとにマーシーさんの遅刻の心配ばっかしてたって話だから……ちょっと同情するべ。
「L先輩の部屋に泊まるっつーのは賢いなと思ったっすね」
「しかも水薙駅まで高ピー先輩の後ろに乗っけてもらったんだって! 高ピー先輩を足にするとか神経が図太過ぎて吐きそうだわ」
「と言うか、高崎先輩が早朝に動くイメージもなかったですね」
「L曰く、水薙近くのカフェのモーニング目当てだったみたい。ほら、高ピー先輩豊葦のカフェ結構いろんなトコ行ってて詳しいから。モーニングにしか出ない玉子サンドが食べたかったんだって。絶対美味しいヤツじゃないですかー! アタシも食べたいですよねー!」
「果林先輩は、バイト上がりのモーニングで行けそうじゃないですか?」
「あそっか。全然思いつかなかったわ。タカちゃんナイス。月曜の朝にでも行こっと」
今日は講習会だったからさすがにバイトを入れてないらしいけど、果林先輩は夜勤でバイトしてるから、バイト上がりの足でそのままモーニングへっていうのも余裕なんだよな。俺は普通にモーニングの時間帯に起きる朝型人間だけど。朝型でも労働後でもない高木にはどのみち無理だな。
「あっ、小籠包来たよ。おいしそ~!」
「これって、レンゲに乗っけてそのまま食うヤツすか」
「まあ、それが一番一般的なんじゃない? エージ、つばめから食べ方は教わってない?」
「教わってないっすね。く~っ、熱そ~…!」
「確かに、気を付けないとヤケドするかもね。エージ、ビールおかわりいっとく?」
「そうっすね。これは緊急用のジョッキが必要だっていう」
「ええー……緊急用のジョッキって。あっ、俺はレモンサワーで」
「お前のも普通にジョッキだとは言っとくべ」
「まあ、その辺はご愛嬌じゃない」
end.
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タカエイの打ち上げに果林が乱入してもやってることは普段と大差ないので平和だなと思いました。きっとこの後タカちゃん宅でみんな飲み直す。
去年みたいな大きな問題はそこまでなかったので、打ち上げでも講習会の話はあんまりしてないし、なんなら話は反れがち。
そういやエイジは普通に朝型だし、果林はバイト明けなら早朝でも普通に起きてるけど、絶対起きてないだろうTKGよ。
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