2021
■早起きを頑張ろう
++++
前科は数えきれないくらいあるのを知っているし、打てる手は打っておいた方がいいというのはよくわかる。だけど、まさか俺の部屋に野坂が泊まりに来るとは思わなかった。明日はとうとう初心者講習会、そこで遅刻をするのを防ぎたいという目論見のようだ。まあ、講師がいないとか、シャレにならないからな。
今日も今日で野坂はMBCCのサークル室で明日に向けた最終確認をしていた。見本番組の練習であったり、講習内容の擦り合わせだったり。それらに関しては順調と言っていいだろう。対策委員の高木とエージもこの感じで明日はお願いしますと納得していたけど、野坂に対する念押しが強かったのは気の所為ではなかった。
「緑大は学内にコンビニがあるからこういう事態への対応がラクだな」
「お泊りセット的な?」
「ああ。下着に肌着にTシャツにって、何でも売ってるだろ」
「服なら学内のスポーツ用品店で買うって手段もあるにはあるな。まあ、コンビニで間に合うならコンビニで十分だけどな」
「学内にスポーツ用品店があるとかおかしいからな?」
「緑大的には割と普通だ。カズ先輩とかあそこで二輪グッズ買ったりしてたし」
「はえー」
着替えや衛生用品、それから食事を学内のコンビニと購買をハシゴして揃える。購買に行ったのは、量の多いテイクアウト丼を買うためだ。緑大のLサイズは食べることも仕事のうちのアスリートか果林みたいな人のためのものだけど、野坂にとってもちょうどいい量だったらしい。
「よーし、メシだな! てかお前メシ少な! それだけで大丈夫かよ」
「全然平気」
――とか何とかやっていると、インターホンが鳴る。そして間髪おかずにドア自体が殴打される。ということは、このドアの向こうにいる人は確定だ。早く出ないとまた怒られる。一旦箸を置いて玄関へ。
「うーす。講習会前だろ、景気づけに一杯やろうぜ。今日Mサイズのハーフ&ハーフ作って来たんだよ」
「ナ、ナンダッテー!?」
「あ? 野坂がいるのか」
「挨拶もそこそこに大変失礼しました! お疲れさまです!」
「何やってんだ。講習会前の打ち合わせか」
「講習会前のこのタイミングで俺が取り得る最善の策がこれでした。Lの部屋に泊まって明日の朝は一緒に行動する、これで遅刻のリスクを軽減出来ないかと」
「そういうな。まあ、お前は前科何犯かわかんねえし、それくらいしといた方が対策委員も安心だろ」
やっぱりインターフェイスの人間の中では野坂と言えば悪質な遅刻魔で、行事のときには遅刻の心配をしなければならないというのが常識みたいな感じになってるんだなと。高崎先輩から前科何犯かわからないと言われた野坂は反論の余地がないと小さくなっている。今年のファンフェスでも電車2本分くらいは遅れてきやがったもんな。
「俺はLと飲むつもりだったが、お前は飲まねえ方がいいな」
「そうですね。大事な事柄の前には飲まないようにしています」
「でもピザは食うだろ」
「いただいてよろしいのですか!?」
「どうせLなんか大して食わねえんだ」
「しかし、高崎先輩の夕飯だったのでは」
「俺は部屋にも食うモンは持ってるからな」
「ではお言葉に甘えていただきます」
俺と高崎先輩はビールで、野坂はオレンジジュースで乾杯。Mサイズのピザを前に野坂はテンションが上がっている。俺は高崎先輩がこうしてたまに作って来るピザ(普段はSサイズだけど)を食べるけど、野坂は店のピザなんかご無沙汰なんだそうだ。確かに、実家に住んでた頃は宅配ピザなんかそうそう食わなかったな。
「それで野坂、明日はどこから電車に乗るんだ。会場は星大とは噂で聞いてるけど」
「それをあまり考えていませんでした。Lは原付で駅まで行くと聞いた時に、俺には足がないと。どうするのが現実的でしょうか」
「ここからだったらスクールバスに乗って水薙まで行くのが一番現実的じゃねえか?」
「ああ、そうっすね」
「言って俺らはバスなんか使わねえし、明日の朝何時からバスが動いてんのかは知らねえけどな」
「しかも明日は土日だろ。確か土日は平日とはダイヤが違ったと思う」
「それはわかる。ウチのバスも平日と土日はダイヤが違うし。そしたら、1回下見して来ればいいのか」
「高木に聞くっつー手段もあるけどな」
「そうっすね。高木はバス乗ってるし、ダイヤも知ってるはずだ」
さすがに原付で2ケツするわけには行かないし、さてどうしたものか。バスのダイヤを調べようとは言うものの、誰もピザを食うのをやめないっていうな。
「それか、俺の後ろに乗ってくか」
「はい!? 高崎先輩の後ろにですか!?」
「どーしたんすか、高崎先輩が早朝から動くとか」
「水薙駅近くのカフェに、モーニングの時間帯にしか出ねえ玉子サンドっつーのがあるんだ。いつか食いに行きてえと思ってたんだけど、朝から動く理由がなかなか無くてよ。野坂を送りついでに俺はモーニング。完璧じゃねえか」
「確かにWIN-WINではありますが、本当によろしいのですか?」
「寝坊した場合は一切責任は取らねえぞ」
「はい! 頑張って起きますね! ……L、ちゃんと起こせよ」
つか、俺が起こすのな。俺も朝は弱い方なんだけど、ああだこうだ言ってられる状況じゃないもんな。てか、今いる3人、全員朝に弱いっていう。いや、早寝早起きだ。頑張ろう。
end.
++++
遅刻に関する前科が何犯かわからないノサカ、インターフェイスのガチな行事でもやらかしまくっているので信用がまるでない。ある意味当然。
カフェマスターの高崎、場合によってはスイーツだけでなくモーニングも攻めに行く模様。でも朝には弱いから動く理由が要ったのね
講習会前の景気づけ。タカエイなんかもワンチャンやってそうではあるのでMBCC的な行動様式なのかもしれない。MMPはやってはいけない。
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前科は数えきれないくらいあるのを知っているし、打てる手は打っておいた方がいいというのはよくわかる。だけど、まさか俺の部屋に野坂が泊まりに来るとは思わなかった。明日はとうとう初心者講習会、そこで遅刻をするのを防ぎたいという目論見のようだ。まあ、講師がいないとか、シャレにならないからな。
今日も今日で野坂はMBCCのサークル室で明日に向けた最終確認をしていた。見本番組の練習であったり、講習内容の擦り合わせだったり。それらに関しては順調と言っていいだろう。対策委員の高木とエージもこの感じで明日はお願いしますと納得していたけど、野坂に対する念押しが強かったのは気の所為ではなかった。
「緑大は学内にコンビニがあるからこういう事態への対応がラクだな」
「お泊りセット的な?」
「ああ。下着に肌着にTシャツにって、何でも売ってるだろ」
「服なら学内のスポーツ用品店で買うって手段もあるにはあるな。まあ、コンビニで間に合うならコンビニで十分だけどな」
「学内にスポーツ用品店があるとかおかしいからな?」
「緑大的には割と普通だ。カズ先輩とかあそこで二輪グッズ買ったりしてたし」
「はえー」
着替えや衛生用品、それから食事を学内のコンビニと購買をハシゴして揃える。購買に行ったのは、量の多いテイクアウト丼を買うためだ。緑大のLサイズは食べることも仕事のうちのアスリートか果林みたいな人のためのものだけど、野坂にとってもちょうどいい量だったらしい。
「よーし、メシだな! てかお前メシ少な! それだけで大丈夫かよ」
「全然平気」
――とか何とかやっていると、インターホンが鳴る。そして間髪おかずにドア自体が殴打される。ということは、このドアの向こうにいる人は確定だ。早く出ないとまた怒られる。一旦箸を置いて玄関へ。
「うーす。講習会前だろ、景気づけに一杯やろうぜ。今日Mサイズのハーフ&ハーフ作って来たんだよ」
「ナ、ナンダッテー!?」
「あ? 野坂がいるのか」
「挨拶もそこそこに大変失礼しました! お疲れさまです!」
「何やってんだ。講習会前の打ち合わせか」
「講習会前のこのタイミングで俺が取り得る最善の策がこれでした。Lの部屋に泊まって明日の朝は一緒に行動する、これで遅刻のリスクを軽減出来ないかと」
「そういうな。まあ、お前は前科何犯かわかんねえし、それくらいしといた方が対策委員も安心だろ」
やっぱりインターフェイスの人間の中では野坂と言えば悪質な遅刻魔で、行事のときには遅刻の心配をしなければならないというのが常識みたいな感じになってるんだなと。高崎先輩から前科何犯かわからないと言われた野坂は反論の余地がないと小さくなっている。今年のファンフェスでも電車2本分くらいは遅れてきやがったもんな。
「俺はLと飲むつもりだったが、お前は飲まねえ方がいいな」
「そうですね。大事な事柄の前には飲まないようにしています」
「でもピザは食うだろ」
「いただいてよろしいのですか!?」
「どうせLなんか大して食わねえんだ」
「しかし、高崎先輩の夕飯だったのでは」
「俺は部屋にも食うモンは持ってるからな」
「ではお言葉に甘えていただきます」
俺と高崎先輩はビールで、野坂はオレンジジュースで乾杯。Mサイズのピザを前に野坂はテンションが上がっている。俺は高崎先輩がこうしてたまに作って来るピザ(普段はSサイズだけど)を食べるけど、野坂は店のピザなんかご無沙汰なんだそうだ。確かに、実家に住んでた頃は宅配ピザなんかそうそう食わなかったな。
「それで野坂、明日はどこから電車に乗るんだ。会場は星大とは噂で聞いてるけど」
「それをあまり考えていませんでした。Lは原付で駅まで行くと聞いた時に、俺には足がないと。どうするのが現実的でしょうか」
「ここからだったらスクールバスに乗って水薙まで行くのが一番現実的じゃねえか?」
「ああ、そうっすね」
「言って俺らはバスなんか使わねえし、明日の朝何時からバスが動いてんのかは知らねえけどな」
「しかも明日は土日だろ。確か土日は平日とはダイヤが違ったと思う」
「それはわかる。ウチのバスも平日と土日はダイヤが違うし。そしたら、1回下見して来ればいいのか」
「高木に聞くっつー手段もあるけどな」
「そうっすね。高木はバス乗ってるし、ダイヤも知ってるはずだ」
さすがに原付で2ケツするわけには行かないし、さてどうしたものか。バスのダイヤを調べようとは言うものの、誰もピザを食うのをやめないっていうな。
「それか、俺の後ろに乗ってくか」
「はい!? 高崎先輩の後ろにですか!?」
「どーしたんすか、高崎先輩が早朝から動くとか」
「水薙駅近くのカフェに、モーニングの時間帯にしか出ねえ玉子サンドっつーのがあるんだ。いつか食いに行きてえと思ってたんだけど、朝から動く理由がなかなか無くてよ。野坂を送りついでに俺はモーニング。完璧じゃねえか」
「確かにWIN-WINではありますが、本当によろしいのですか?」
「寝坊した場合は一切責任は取らねえぞ」
「はい! 頑張って起きますね! ……L、ちゃんと起こせよ」
つか、俺が起こすのな。俺も朝は弱い方なんだけど、ああだこうだ言ってられる状況じゃないもんな。てか、今いる3人、全員朝に弱いっていう。いや、早寝早起きだ。頑張ろう。
end.
++++
遅刻に関する前科が何犯かわからないノサカ、インターフェイスのガチな行事でもやらかしまくっているので信用がまるでない。ある意味当然。
カフェマスターの高崎、場合によってはスイーツだけでなくモーニングも攻めに行く模様。でも朝には弱いから動く理由が要ったのね
講習会前の景気づけ。タカエイなんかもワンチャンやってそうではあるのでMBCC的な行動様式なのかもしれない。MMPはやってはいけない。
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