2021
■目標の先に続く道
++++
「よう奏多。アンタも昼飯?」
「真希さんはぼっち飯すか? 友達多そうなのに」
「4年の文系がこの時期に来てる方がおかしいよ。そういうアンタこそぼっちかい?」
「そうっすよ。それとも真希さんご一緒してくれます?」
「おっ、いいねえ。ウチのサークルきってのイケメンと、気ままにランチと洒落込もうか」
4年の真希さんは、ウチのサークルの姐御的ポジションの人だ。本人曰く80キロオーバーの丸い体型でパッと見動きは鈍そうなんだけど、メチャクチャ動けてバドミントンの腕前も確かだから人は見た目じゃ判断出来ねーなと。何なら脂肪の下にちゃんと筋肉もあってパワーとキレがヤベーんだよな。
その真希さんとランチをすることになったのはいいけど、サシメシってのは初めてなんだよな。前原さんとかかっすーとかと一緒になら飯の1回くらいは食ったことはあるんだけど。……にしてもやっぱすげー量食うな。大盛りのサラダと大盛りのカツ丼に、味噌汁って。
「奏多、サークルは楽しいかい?」
「楽しいっすよ。また唐突な。どうしたんすか?」
「ほら、仲良くしてた希がMMPと掛け持つようになって来る頻度下がってんだろ。アンタ最近マエトモと張り合うくらいしかすることなさそうだし、サークルに来てて楽しいかなって少し心配してたんだよ」
「心配してもらってどーもです。まあ、かっすーの件は本人が決めることっすし、一番の楽しみはまだ残ってるんで。楽しくやらさせてもらってますよ」
「ならいいんだ。まあ、マエトモなんかに負けっ放しじゃいられないよねえ」
かっすーがラジオのサークルと正式に掛け持つようになって、バドミントンの方に来る頻度がちょっと落ちている。かっすーと仲の良かった俺があぶれてヒマしてんじゃないかっていうことをちょっと心配されてたらしい。
それっていうのも、ラジオのサークルの方に人脈があって、かっすーともう1人、露崎さんだったかを向こうに紹介したのが真希さんだったからっていう事情もあったらしい。まあ、俺はどこで、誰が相手でもそれなりに適応する能力はあるんでね。
「真希さんは、ラジオのサークルの友達からかっすーのこととか何か聞いてますか?」
「いや。向こうは3年で引退だし、本当に引率しただけだから特に何の反応も無かったね。アタシの言ってた通りの子だな、くらいの感想で」
「そうすか」
「心配かい?」
「いや、全然。かっすーの事なんで上手くやってるでしょ」
ただ、最初ラジオのサークルを見学するって言ってたのはかっすーだけだったのに、いつの間にあの露崎さんとかいう人がくっついて来てたのかは謎だ。そもそも普段からいるのかいねーのかよくわかんねーし。
「おっ」
「ん?」
通りかかった春風に向かって手を振る。春風もこちらに気付いたのか、丼物の乗ったトレーを手にこちらに向かって来る。
「よう春風」
「奏多。何か用だった?」
「いや。見かけたから、ただの挨拶」
「あなたねえ、一緒に食事をしている人がいるのに失礼でしょう」
「や、アタシはいいんだよ。奏多、このかわい子ちゃんは友達かい?」
「昔馴染みなんすよ。同じ学部学科で、毎日顔合わせてるんすけどね?」
「奏多の幼馴染みの鳥居春風といいます」
「アタシはバドサーの4年で、羽広真希ってんだ。せっかくだし、春風もぼっち飯なら相席したらいいよ。他に空いてる席も少なそうだし」
「では、お言葉に甘えて失礼します」
春風がトレーに乗せて来たのは大盛りの鶏マヨ丼に豚汁だ。1人だからって気ぃ抜いてたな。だけど真希さんは春風デフォルトの食べっぷりを気に入ったらしい。これは相手が良かったな。
「春風もこれだけ食べるのに、奏多は全然食べないねえ」
「俺が普通なんすよ。真希さんと春風がおかしいんす」
「おっと、言ってくれるねえ。春風も何かサークルとかでスポーツをやってんのかい?」
「いえ、私は天文部です。今日はこの後で観測会があるので、お腹が空かないようにと思って」
「観測会って夜だろ。今ガッツリ食うんじゃなくて授業の後に間食した方が良かっただろどう考えても」
「授業の後にも食べるの。私は私でちゃんと考えてるから」
「へーへー」
「あー、そしたらアレか、マエトモが磐田に天文ガチ勢で囲えって言ってた姫が春風か」
「そーゆーコトっすね」
一応今まで春風には言わないでいたけどバレてしまったからにはしょうがない。だって天文部のヤバい噂がガチでヤバかったんだ。春風に何かあったら俺が真宙君にぶっ殺されんだから。打てる手は打っといた方がいいだろっていう。言い訳準備完了。
「春風、部活は楽しいかい?」
「はい。今のところ、磐田先輩たちに良くしてもらえているので、楽しくやらせてもらっています」
「それならいいんだよ。当事者の前で言うのも難だけど、如何せん天文部は胡散臭いっつーか、きな臭いからねえ」
「普通の天文部ではないという風には、私も思っています。ですが、どうしても去年磐田先輩が作ったプラネタリウムをこの目で見たいのです」
「目的だとか、目標があるのはいいことだよ。マエトモを倒すとか、プラネタリウムを見るとか。それが達成された後にも何か続いたらいいねえ」
「そーっすね」
「ああ、そうだ春風。アタシの友達の星好きの子が、去年学祭であのプラネタリウムを見たんだって。結構なクオリティだったそうだから。楽しみにしときな」
「はい。ありがとうございます」
「真希さんの友達にも星好きの人がいるんすね」
「いや、MMPに希たちを引率した子と同一人物だよ」
end.
++++
そしてその後、真希ちゃんの友達の星好きの子がラジオのサークルでやってた番組を聞いて春風がMMPの方に傾いて行くんだな
向島のバドサーの話をちょこちょこやるようになって、菜月さんの友達として半モブのように出て来た真希姐さんにも光が当たってきました
そういや最近菜月さん本人を見てない気もするし、ゼミの話とかもやってみたいね。とは言っても菜月さんと真希ちゃんのお喋りになりそうだけど。
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「よう奏多。アンタも昼飯?」
「真希さんはぼっち飯すか? 友達多そうなのに」
「4年の文系がこの時期に来てる方がおかしいよ。そういうアンタこそぼっちかい?」
「そうっすよ。それとも真希さんご一緒してくれます?」
「おっ、いいねえ。ウチのサークルきってのイケメンと、気ままにランチと洒落込もうか」
4年の真希さんは、ウチのサークルの姐御的ポジションの人だ。本人曰く80キロオーバーの丸い体型でパッと見動きは鈍そうなんだけど、メチャクチャ動けてバドミントンの腕前も確かだから人は見た目じゃ判断出来ねーなと。何なら脂肪の下にちゃんと筋肉もあってパワーとキレがヤベーんだよな。
その真希さんとランチをすることになったのはいいけど、サシメシってのは初めてなんだよな。前原さんとかかっすーとかと一緒になら飯の1回くらいは食ったことはあるんだけど。……にしてもやっぱすげー量食うな。大盛りのサラダと大盛りのカツ丼に、味噌汁って。
「奏多、サークルは楽しいかい?」
「楽しいっすよ。また唐突な。どうしたんすか?」
「ほら、仲良くしてた希がMMPと掛け持つようになって来る頻度下がってんだろ。アンタ最近マエトモと張り合うくらいしかすることなさそうだし、サークルに来てて楽しいかなって少し心配してたんだよ」
「心配してもらってどーもです。まあ、かっすーの件は本人が決めることっすし、一番の楽しみはまだ残ってるんで。楽しくやらさせてもらってますよ」
「ならいいんだ。まあ、マエトモなんかに負けっ放しじゃいられないよねえ」
かっすーがラジオのサークルと正式に掛け持つようになって、バドミントンの方に来る頻度がちょっと落ちている。かっすーと仲の良かった俺があぶれてヒマしてんじゃないかっていうことをちょっと心配されてたらしい。
それっていうのも、ラジオのサークルの方に人脈があって、かっすーともう1人、露崎さんだったかを向こうに紹介したのが真希さんだったからっていう事情もあったらしい。まあ、俺はどこで、誰が相手でもそれなりに適応する能力はあるんでね。
「真希さんは、ラジオのサークルの友達からかっすーのこととか何か聞いてますか?」
「いや。向こうは3年で引退だし、本当に引率しただけだから特に何の反応も無かったね。アタシの言ってた通りの子だな、くらいの感想で」
「そうすか」
「心配かい?」
「いや、全然。かっすーの事なんで上手くやってるでしょ」
ただ、最初ラジオのサークルを見学するって言ってたのはかっすーだけだったのに、いつの間にあの露崎さんとかいう人がくっついて来てたのかは謎だ。そもそも普段からいるのかいねーのかよくわかんねーし。
「おっ」
「ん?」
通りかかった春風に向かって手を振る。春風もこちらに気付いたのか、丼物の乗ったトレーを手にこちらに向かって来る。
「よう春風」
「奏多。何か用だった?」
「いや。見かけたから、ただの挨拶」
「あなたねえ、一緒に食事をしている人がいるのに失礼でしょう」
「や、アタシはいいんだよ。奏多、このかわい子ちゃんは友達かい?」
「昔馴染みなんすよ。同じ学部学科で、毎日顔合わせてるんすけどね?」
「奏多の幼馴染みの鳥居春風といいます」
「アタシはバドサーの4年で、羽広真希ってんだ。せっかくだし、春風もぼっち飯なら相席したらいいよ。他に空いてる席も少なそうだし」
「では、お言葉に甘えて失礼します」
春風がトレーに乗せて来たのは大盛りの鶏マヨ丼に豚汁だ。1人だからって気ぃ抜いてたな。だけど真希さんは春風デフォルトの食べっぷりを気に入ったらしい。これは相手が良かったな。
「春風もこれだけ食べるのに、奏多は全然食べないねえ」
「俺が普通なんすよ。真希さんと春風がおかしいんす」
「おっと、言ってくれるねえ。春風も何かサークルとかでスポーツをやってんのかい?」
「いえ、私は天文部です。今日はこの後で観測会があるので、お腹が空かないようにと思って」
「観測会って夜だろ。今ガッツリ食うんじゃなくて授業の後に間食した方が良かっただろどう考えても」
「授業の後にも食べるの。私は私でちゃんと考えてるから」
「へーへー」
「あー、そしたらアレか、マエトモが磐田に天文ガチ勢で囲えって言ってた姫が春風か」
「そーゆーコトっすね」
一応今まで春風には言わないでいたけどバレてしまったからにはしょうがない。だって天文部のヤバい噂がガチでヤバかったんだ。春風に何かあったら俺が真宙君にぶっ殺されんだから。打てる手は打っといた方がいいだろっていう。言い訳準備完了。
「春風、部活は楽しいかい?」
「はい。今のところ、磐田先輩たちに良くしてもらえているので、楽しくやらせてもらっています」
「それならいいんだよ。当事者の前で言うのも難だけど、如何せん天文部は胡散臭いっつーか、きな臭いからねえ」
「普通の天文部ではないという風には、私も思っています。ですが、どうしても去年磐田先輩が作ったプラネタリウムをこの目で見たいのです」
「目的だとか、目標があるのはいいことだよ。マエトモを倒すとか、プラネタリウムを見るとか。それが達成された後にも何か続いたらいいねえ」
「そーっすね」
「ああ、そうだ春風。アタシの友達の星好きの子が、去年学祭であのプラネタリウムを見たんだって。結構なクオリティだったそうだから。楽しみにしときな」
「はい。ありがとうございます」
「真希さんの友達にも星好きの人がいるんすね」
「いや、MMPに希たちを引率した子と同一人物だよ」
end.
++++
そしてその後、真希ちゃんの友達の星好きの子がラジオのサークルでやってた番組を聞いて春風がMMPの方に傾いて行くんだな
向島のバドサーの話をちょこちょこやるようになって、菜月さんの友達として半モブのように出て来た真希姐さんにも光が当たってきました
そういや最近菜月さん本人を見てない気もするし、ゼミの話とかもやってみたいね。とは言っても菜月さんと真希ちゃんのお喋りになりそうだけど。
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