2021
■ニッコニコのおみまいみぃー
公式学年+1年
++++
「えっ、智也寝込んでんの!?」
「この季節だろ、元々最近ちょっと調子悪いって言ってたんだけど、半日台所に置いといたレタスチャーハンがどうも痛んでたみたくて」
「あー、それはダメだ。この時期、食べ物は数時間でもう腐るよ」
「冷蔵庫にすぐ入れないとだねー」
「シノは、一人暮らしをして日が浅い。わからなかったんだろう」
俺の体感だけど、進級してからのシノはちょっと体が弱くなったように思う。いや、厳密には進級してからと言うより去年の夏に熱中症をやって以来かもしれない。ちょっとしたことで体調を崩しがちになったような気がする。
それでも何とか騙し騙しやってたんだけど、バイトの入り方や一人暮らしで乱れ始めた生活リズム、季節の変わり目、悪くなった食べ物なんかの条件が重なって、昨日から寝込んでいる。講習会も近いのに対策委員の会議が~と言っているのを寝かしつけて、会議のことはくるみに託した。
一方、ゼミの方では班分けが行われた。5人の班で1年かけて1本のラジオ番組を作るんだそうだ。番組のテーマ決めから町へ出ての取材(フィールドワーク)、素材やナレーションの収録、パソコンでの編集までを行い、11月の末頃に発表するとのこと。
ちなみに、この班ではオープンキャンパスでも3年生がインフォメーションをやる合間合間に45分くらいの番組をやるんだそうだ。俺は亮真と同じ3班になった。シノはまいみぃや羽場君という、仲のいいメンツと一緒に2班ということになった。
「シノ、せっかく花粉症の季節が終わって調子良くなってたのにね」
「アイツ何気にめちゃくちゃ体弱くない? 気の所為?」
「多分気の所為じゃなくなってきてる。花粉症も今年に入ってからだし。あの、夏になったら班でフィールドワークに行くと思うけど、熱中症にならないかだけ見といてやって。アイツ、去年もやってるし」
「わかったよー」
「いやいや、フツーに返事してるけどミトゥー、それに陸、それは本人が気をつけるトコじゃなくて?」
「本人にも気を付けさせるけど、サークル関係とかでも忙しくなってきたら忘れそうだから」
「はーっ……陸、そんなコトやってっからアンタが智也の面倒を見るんだーって先生からも言われるんじゃん」
「でも、心配なものは心配だ。無茶して体壊すところは見たくない」
――とまあ、最近はそんな感じでシノの心配をしているから、高木先輩からは俺が心配される始末だ。シノを心配しすぎるあまり、自分のことと、自分の周りの人のことが疎かにならないようにねって。シノのことはシノ自身にもフォローさせるんだよとは注意をされている。
ただ、他にもメンバーがいるサークルや対策委員ならともかく、ゼミのことは俺が頑張ってあげたいと強く思う。そのために俺は対策委員とかに出ずに大学に残ってるんだし。でも、生活リズムを整えさせるのが一番いいのかな。その辺のやり方はエージ先輩か鵠沼先輩に聞いてみたい。
「でも、ササは頼りになるし、ササがいてくれるって思えばシノも1日くらいはゆっくり休めるんじゃないかな」
「そう、そういうことを期待したいんだ俺は。羽場君はわかってる。ところで、一人暮らしで寝込んだら食事はどうするんだろう」
「どーすんだろね? アタシ寝込んだことないからわかんないわ。亮真はわかる?」
「……わからない。欲しい物を買いに出るにも、しんどそうだ」
「そこで俺の出番なんだな」
「陸、さっきからアンタ楽しんでない!?」
「まさかそんな、シノの看病やお見舞いが楽しみだなんてそんな。人の不幸を喜ぶような俺じゃない」
「……顔が、笑っているが」
「これは不幸を喜んでる」
「うん、お見舞いと看病がしたくてたまらないって顔だね」
いやいや、別に一人で寝込んでるシノの元に食べられそうな物とかスポーツドリンクみたいな物をたんまり買い込んでお見舞いに行きたいとかそんなんじゃあ、ないし。冷やご飯でお粥を作ったりしたいわけでも、ないし。ブラウザの履歴は見られたくないけれども。
「しゃーなしだ。智也への愛が止まらない陸のために、このアタシが絶品のお粥レシピを伝授しようじゃないの。はい、あいまいみぃー」
「それは期待出来る! ぜひ教えてください」
「はいお米同好会強い~」
「俺も、食べやすい食パンでも持って行ってあげようかなあ」
「食パンて。カビるわ」
「パンは冷凍出来るもん。1枚1枚ラップでくるんで――」
「ササ。……下らないことを思いついたんだけど、言っていいか」
「え、亮真が? 逆に聞きたい。言って言って」
「まいみぃの、お見舞いみぃー」
「ぶっは、亮真らしからぬシンプルなシャレ! おみまいみぃー、いいな、俺は好きだ」
「ちょっと、人のヤツ! アンタらで盛り上がんないでよ! でもおみまいみぃーはこれから使ってくわ。てかグッズかLINEスタンプ作ろうかな? 売れたら亮真に高い店のコーヒーくらい奢るよ」
「楽しみにしておく」
とりあえず、ゼミが終わったら俺は買い出しに出て、シノの部屋に一旦様子を見に行くんだ。最近のシノは対策委員の議長としての責任感で頑張り過ぎてる感もあったし、一回ちょっと息抜きをしてもらえるように。いや、くるみから会議の報告があったらまた気に病むかな。
「ほい、ほい、ほい。それじゃあ君たちぃ、出席とるよー。相倉君」
「はい」
end.
++++
シノは1回くらい悪いもの食べておなか壊してそうだと思ったし、季節の変わり目にも弱そうだし、蓄積疲労で死にそうだとも思ったなど
+1年のササが順調に相棒ラブ!な感じになってるけど、保護者扱いされるの嫌なんじゃなかったんかい
高木パイセンが安定のパイセンっぷりでちょっと安心。ササが行きすぎてたら叱りつける人はいるので大丈夫かな
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公式学年+1年
++++
「えっ、智也寝込んでんの!?」
「この季節だろ、元々最近ちょっと調子悪いって言ってたんだけど、半日台所に置いといたレタスチャーハンがどうも痛んでたみたくて」
「あー、それはダメだ。この時期、食べ物は数時間でもう腐るよ」
「冷蔵庫にすぐ入れないとだねー」
「シノは、一人暮らしをして日が浅い。わからなかったんだろう」
俺の体感だけど、進級してからのシノはちょっと体が弱くなったように思う。いや、厳密には進級してからと言うより去年の夏に熱中症をやって以来かもしれない。ちょっとしたことで体調を崩しがちになったような気がする。
それでも何とか騙し騙しやってたんだけど、バイトの入り方や一人暮らしで乱れ始めた生活リズム、季節の変わり目、悪くなった食べ物なんかの条件が重なって、昨日から寝込んでいる。講習会も近いのに対策委員の会議が~と言っているのを寝かしつけて、会議のことはくるみに託した。
一方、ゼミの方では班分けが行われた。5人の班で1年かけて1本のラジオ番組を作るんだそうだ。番組のテーマ決めから町へ出ての取材(フィールドワーク)、素材やナレーションの収録、パソコンでの編集までを行い、11月の末頃に発表するとのこと。
ちなみに、この班ではオープンキャンパスでも3年生がインフォメーションをやる合間合間に45分くらいの番組をやるんだそうだ。俺は亮真と同じ3班になった。シノはまいみぃや羽場君という、仲のいいメンツと一緒に2班ということになった。
「シノ、せっかく花粉症の季節が終わって調子良くなってたのにね」
「アイツ何気にめちゃくちゃ体弱くない? 気の所為?」
「多分気の所為じゃなくなってきてる。花粉症も今年に入ってからだし。あの、夏になったら班でフィールドワークに行くと思うけど、熱中症にならないかだけ見といてやって。アイツ、去年もやってるし」
「わかったよー」
「いやいや、フツーに返事してるけどミトゥー、それに陸、それは本人が気をつけるトコじゃなくて?」
「本人にも気を付けさせるけど、サークル関係とかでも忙しくなってきたら忘れそうだから」
「はーっ……陸、そんなコトやってっからアンタが智也の面倒を見るんだーって先生からも言われるんじゃん」
「でも、心配なものは心配だ。無茶して体壊すところは見たくない」
――とまあ、最近はそんな感じでシノの心配をしているから、高木先輩からは俺が心配される始末だ。シノを心配しすぎるあまり、自分のことと、自分の周りの人のことが疎かにならないようにねって。シノのことはシノ自身にもフォローさせるんだよとは注意をされている。
ただ、他にもメンバーがいるサークルや対策委員ならともかく、ゼミのことは俺が頑張ってあげたいと強く思う。そのために俺は対策委員とかに出ずに大学に残ってるんだし。でも、生活リズムを整えさせるのが一番いいのかな。その辺のやり方はエージ先輩か鵠沼先輩に聞いてみたい。
「でも、ササは頼りになるし、ササがいてくれるって思えばシノも1日くらいはゆっくり休めるんじゃないかな」
「そう、そういうことを期待したいんだ俺は。羽場君はわかってる。ところで、一人暮らしで寝込んだら食事はどうするんだろう」
「どーすんだろね? アタシ寝込んだことないからわかんないわ。亮真はわかる?」
「……わからない。欲しい物を買いに出るにも、しんどそうだ」
「そこで俺の出番なんだな」
「陸、さっきからアンタ楽しんでない!?」
「まさかそんな、シノの看病やお見舞いが楽しみだなんてそんな。人の不幸を喜ぶような俺じゃない」
「……顔が、笑っているが」
「これは不幸を喜んでる」
「うん、お見舞いと看病がしたくてたまらないって顔だね」
いやいや、別に一人で寝込んでるシノの元に食べられそうな物とかスポーツドリンクみたいな物をたんまり買い込んでお見舞いに行きたいとかそんなんじゃあ、ないし。冷やご飯でお粥を作ったりしたいわけでも、ないし。ブラウザの履歴は見られたくないけれども。
「しゃーなしだ。智也への愛が止まらない陸のために、このアタシが絶品のお粥レシピを伝授しようじゃないの。はい、あいまいみぃー」
「それは期待出来る! ぜひ教えてください」
「はいお米同好会強い~」
「俺も、食べやすい食パンでも持って行ってあげようかなあ」
「食パンて。カビるわ」
「パンは冷凍出来るもん。1枚1枚ラップでくるんで――」
「ササ。……下らないことを思いついたんだけど、言っていいか」
「え、亮真が? 逆に聞きたい。言って言って」
「まいみぃの、お見舞いみぃー」
「ぶっは、亮真らしからぬシンプルなシャレ! おみまいみぃー、いいな、俺は好きだ」
「ちょっと、人のヤツ! アンタらで盛り上がんないでよ! でもおみまいみぃーはこれから使ってくわ。てかグッズかLINEスタンプ作ろうかな? 売れたら亮真に高い店のコーヒーくらい奢るよ」
「楽しみにしておく」
とりあえず、ゼミが終わったら俺は買い出しに出て、シノの部屋に一旦様子を見に行くんだ。最近のシノは対策委員の議長としての責任感で頑張り過ぎてる感もあったし、一回ちょっと息抜きをしてもらえるように。いや、くるみから会議の報告があったらまた気に病むかな。
「ほい、ほい、ほい。それじゃあ君たちぃ、出席とるよー。相倉君」
「はい」
end.
++++
シノは1回くらい悪いもの食べておなか壊してそうだと思ったし、季節の変わり目にも弱そうだし、蓄積疲労で死にそうだとも思ったなど
+1年のササが順調に相棒ラブ!な感じになってるけど、保護者扱いされるの嫌なんじゃなかったんかい
高木パイセンが安定のパイセンっぷりでちょっと安心。ササが行きすぎてたら叱りつける人はいるので大丈夫かな
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