2021
■確認の個別面談
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先週、班の見学ツアーというのがあって、自分が放送部のどの班でやっていくのかをしばらくずっと考えていた。別に今すぐ決めなければならないということではないし、行く場所を決めずにうだうだしていれば、人員を求める班の方から声がかかることもあるらしい。
ただ、それでは自分のやりたいように出来なくなる可能性が高くなるし、やっぱり加入する班は自分で決めたいと思う。せっかくやるからには、受け身じゃなくて積極的にやって行きたい。そういうスタンスでやれそうな班はどこだったかという話だ。
こないだの見学ツアーで見て回った結果で言えば、監査の白河さんが説明してくれるのを班の人たちも一緒になって座って聞いてて、お見合いみたいになってたんだよな。だから説明は聞けたけど、実際の様子があんまよくわかんなかったっつーか。
「えーっと、こっちだったかな」
階段を上って、あの小さな教室を探す。談話室だったかな。ブースを覗いても誰もいなかったから、班の人はきっとその教室に出払っているんだろう。俺が改めて話を聞こうと思ったのは、戸田班という人の少ない小さな班だ。
戸田班の何が良かったかっつったら、ツアーの時に見学の俺たちを完全に無視して自分たちの練習をしていたのと、ステージの他にも変わったことをしてるって点だった。ここだったらガツガツやれるかなっつーのと、やってることや班の人が具体的に見れたから。座ってニコニコしてるだけじゃなー。
「すんませーん、お邪魔していーすか」
「はーい」
「戸田班の人たちって、ここで練習してるんすよね」
「そうだけど、1年生の子?」
「はい。自分、谷本彩人っていうんすけど、戸田班に入れてもらいたくて来ました」
「えーっ!? えっと、ちょっと待っ、えっ!?」
機材をセッティングしていた男の先輩は、俺の訪問が全くの想定外だったのかかなり取り乱している。どうしよどうしよと、わたわたしている様が面白いけど、1年があんなぞろぞろ見学してんだから、いつか来るとは思わなかったのか?
「とっ、とりあえず、ここに座ってくれる?」
「あざっす」
「えっと……確認だけど、ここは戸田班だよ?」
「わかってますよ」
「入りに来たの?」
「そのつもりっすけど」
「あらー……そう。それじゃあ、ちょっと待っててね」
俺を適当なイスに座らせた先輩は、機材のセッティングを再開した。その間特に何を話すでもなく。まあ、俺も黙っているのは苦じゃないし、機材をセットしている様子を眺めているのが楽しいからこれはこれでいいんだけど。
「ちょっと聞いていいすか?」
「うん、どうぞ」
「この機材って、戸田班が借り切ってるような感じっすか?」
「これはね、部の機材じゃなくて班で持ってる機材なんだよ」
「班で!? 班でこんだけ立派な機材揃えてんすか!」
「ウチの部って一応インターフェイスっていう7大学の組織に加盟してて、とは言っても主に参加してるのは戸田班なんだけど、そこで繋がりのある緑ヶ丘さんからラジオに使う機材一式を譲ってもらったんだ。ほら、部の機材って使う時に手続きしなきゃいけなくて、それが面倒なんだよね。でも、自前で機材を持ってたら手続きなしでいつでもどこでも、時間制限なく練習出来ていいでしょ?」
この先輩はさも当たり前かのように言ってるけど、そのスケールだ。部の機材を使う手続きがめんどくさいから自前で機材を持つ? まあ、この班くらい練習をやってるところなら共用機材だと他の班との兼ね合いも出てめんどくせーってなるのはわからないでもないけど。それに、これだけの機材を譲る大学があるのかと。
「へー、凄いっすね。その、インターフェイス? ってのは何をやってるんすか?」
「インターフェイスでは他校の人と一緒にラジオの活動をやってるのかな。こないだあったファンフェスで公開生放送をやったり、講習会や合宿があったり。作品出展っていって、他の大学さんと作品を品評し合ったりしてるんだよ」
「じゃあ、放送部としてやってる期間以外も結構隙間なくやってるって感じっすか」
「うん、そうだね。あっそうだ、来月の5日の土曜日に、初心者講習会っていって各大学の1年生を対象にした行事があるんだ」
「あー、何かチラッと聞いた気がしますね」
その講習会では、ラジオの話が主にはなってしまうけど、ステージをやる上でも生かせる話はあるからぜひ出て欲しいという風に言われた。普通に面白そうだと思うし、他校がどんなことをやっているかとかっていうのにも少し興味が出たから普通に参加することに。
「ちなみに、谷本くんはパートのこととかってうっすらでもいいから考えてる?」
「自分、ステージの台本を書いたり、構成を考えたりしたいとは思ってますね」
「ああ、それじゃあプロデューサー志望なんだね」
「そうっすね」
「今の1年生はもうそんなことを考えててエライねえ」
「先輩は違ったんすか?」
「俺は何となく合いそうだなと思った班……今の白河班に行って、先輩たちが親切に教えてくれてミキサーで行こうかなって思ったけど」
「白河班にいたのに今は戸田班にいるんすか?」
「班長のつばめ先輩からミキサーとして朝霞班に来て欲しいって誘われて、去年の講習会後に班を代わったんだ。元いた班の班長も、朝霞班ならすぐ実戦でやれるしインターフェイスが楽しかったんなら移動したらって」
やっぱり、この班なら活動的にやれそうだなってのには間違いなさそうだ。班長さんが来たら改めて班に入れてもらえるようお願いしようねと言われたけど、やっぱ班長の許可が要るのか。入れてもらえるかな。
end.
++++
見学ツアーを経て、彩人が戸田班に殴り込みに来ました。ゲンゴローは1年生が来るとは思ってなかったよ! 釣りに行くものだと思ってたからね
フェーズ1初年度の最後の方のゲンゴローも人から見れば凄いことをのほほんとした感じで言ってたのかしら。TKGと似た雰囲気を感じる。
練習するのに機材を使う許可を取る必要がなくてラクなのは確かにそう。他の班に気兼ねする必要もなし。そう考えるとブースが狭かろうが持っとくのはいいね
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先週、班の見学ツアーというのがあって、自分が放送部のどの班でやっていくのかをしばらくずっと考えていた。別に今すぐ決めなければならないということではないし、行く場所を決めずにうだうだしていれば、人員を求める班の方から声がかかることもあるらしい。
ただ、それでは自分のやりたいように出来なくなる可能性が高くなるし、やっぱり加入する班は自分で決めたいと思う。せっかくやるからには、受け身じゃなくて積極的にやって行きたい。そういうスタンスでやれそうな班はどこだったかという話だ。
こないだの見学ツアーで見て回った結果で言えば、監査の白河さんが説明してくれるのを班の人たちも一緒になって座って聞いてて、お見合いみたいになってたんだよな。だから説明は聞けたけど、実際の様子があんまよくわかんなかったっつーか。
「えーっと、こっちだったかな」
階段を上って、あの小さな教室を探す。談話室だったかな。ブースを覗いても誰もいなかったから、班の人はきっとその教室に出払っているんだろう。俺が改めて話を聞こうと思ったのは、戸田班という人の少ない小さな班だ。
戸田班の何が良かったかっつったら、ツアーの時に見学の俺たちを完全に無視して自分たちの練習をしていたのと、ステージの他にも変わったことをしてるって点だった。ここだったらガツガツやれるかなっつーのと、やってることや班の人が具体的に見れたから。座ってニコニコしてるだけじゃなー。
「すんませーん、お邪魔していーすか」
「はーい」
「戸田班の人たちって、ここで練習してるんすよね」
「そうだけど、1年生の子?」
「はい。自分、谷本彩人っていうんすけど、戸田班に入れてもらいたくて来ました」
「えーっ!? えっと、ちょっと待っ、えっ!?」
機材をセッティングしていた男の先輩は、俺の訪問が全くの想定外だったのかかなり取り乱している。どうしよどうしよと、わたわたしている様が面白いけど、1年があんなぞろぞろ見学してんだから、いつか来るとは思わなかったのか?
「とっ、とりあえず、ここに座ってくれる?」
「あざっす」
「えっと……確認だけど、ここは戸田班だよ?」
「わかってますよ」
「入りに来たの?」
「そのつもりっすけど」
「あらー……そう。それじゃあ、ちょっと待っててね」
俺を適当なイスに座らせた先輩は、機材のセッティングを再開した。その間特に何を話すでもなく。まあ、俺も黙っているのは苦じゃないし、機材をセットしている様子を眺めているのが楽しいからこれはこれでいいんだけど。
「ちょっと聞いていいすか?」
「うん、どうぞ」
「この機材って、戸田班が借り切ってるような感じっすか?」
「これはね、部の機材じゃなくて班で持ってる機材なんだよ」
「班で!? 班でこんだけ立派な機材揃えてんすか!」
「ウチの部って一応インターフェイスっていう7大学の組織に加盟してて、とは言っても主に参加してるのは戸田班なんだけど、そこで繋がりのある緑ヶ丘さんからラジオに使う機材一式を譲ってもらったんだ。ほら、部の機材って使う時に手続きしなきゃいけなくて、それが面倒なんだよね。でも、自前で機材を持ってたら手続きなしでいつでもどこでも、時間制限なく練習出来ていいでしょ?」
この先輩はさも当たり前かのように言ってるけど、そのスケールだ。部の機材を使う手続きがめんどくさいから自前で機材を持つ? まあ、この班くらい練習をやってるところなら共用機材だと他の班との兼ね合いも出てめんどくせーってなるのはわからないでもないけど。それに、これだけの機材を譲る大学があるのかと。
「へー、凄いっすね。その、インターフェイス? ってのは何をやってるんすか?」
「インターフェイスでは他校の人と一緒にラジオの活動をやってるのかな。こないだあったファンフェスで公開生放送をやったり、講習会や合宿があったり。作品出展っていって、他の大学さんと作品を品評し合ったりしてるんだよ」
「じゃあ、放送部としてやってる期間以外も結構隙間なくやってるって感じっすか」
「うん、そうだね。あっそうだ、来月の5日の土曜日に、初心者講習会っていって各大学の1年生を対象にした行事があるんだ」
「あー、何かチラッと聞いた気がしますね」
その講習会では、ラジオの話が主にはなってしまうけど、ステージをやる上でも生かせる話はあるからぜひ出て欲しいという風に言われた。普通に面白そうだと思うし、他校がどんなことをやっているかとかっていうのにも少し興味が出たから普通に参加することに。
「ちなみに、谷本くんはパートのこととかってうっすらでもいいから考えてる?」
「自分、ステージの台本を書いたり、構成を考えたりしたいとは思ってますね」
「ああ、それじゃあプロデューサー志望なんだね」
「そうっすね」
「今の1年生はもうそんなことを考えててエライねえ」
「先輩は違ったんすか?」
「俺は何となく合いそうだなと思った班……今の白河班に行って、先輩たちが親切に教えてくれてミキサーで行こうかなって思ったけど」
「白河班にいたのに今は戸田班にいるんすか?」
「班長のつばめ先輩からミキサーとして朝霞班に来て欲しいって誘われて、去年の講習会後に班を代わったんだ。元いた班の班長も、朝霞班ならすぐ実戦でやれるしインターフェイスが楽しかったんなら移動したらって」
やっぱり、この班なら活動的にやれそうだなってのには間違いなさそうだ。班長さんが来たら改めて班に入れてもらえるようお願いしようねと言われたけど、やっぱ班長の許可が要るのか。入れてもらえるかな。
end.
++++
見学ツアーを経て、彩人が戸田班に殴り込みに来ました。ゲンゴローは1年生が来るとは思ってなかったよ! 釣りに行くものだと思ってたからね
フェーズ1初年度の最後の方のゲンゴローも人から見れば凄いことをのほほんとした感じで言ってたのかしら。TKGと似た雰囲気を感じる。
練習するのに機材を使う許可を取る必要がなくてラクなのは確かにそう。他の班に気兼ねする必要もなし。そう考えるとブースが狭かろうが持っとくのはいいね
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