2021
■どこかに縁がある
++++
「はい、俺の勝ち。さーて休憩休憩」
「ちくしょう、まーた勝ち逃げされた」
「まあ今のままだと何遍やっても俺の勝ちだからなー、しゃーない」
「くそ~……4年生の卒業までには絶対ぎゃふんと言わせますからね!」
「ふーん、そいつは楽しみだ。頑張ってぎゃふんと言わせてくれや」
今日も今日とて奏多は前原さんに挑んでは負けている。奏多もサークルの中では上手い、強い方らしいんだけど、それを軽くいなす前原さんはメチャクチャ上手いんだろう。まあ、俺はバドミントン初心者だし2人ともメチャクチャ上手いんだけど。
ちくしょーちくしょーと奏多は本当に悔しそうにしている。俺から見れば2人とも上手いのに、何故か奏多は前原さんには勝てないんだよな。他の先輩に話を聞くと、前原さんはそれでもまだ余力を残しているとのこと。どんだけだよ。
「前原さんて昔から全国行ったりとかしてたんすか?」
「いやー、俺は精々緑風エリア大会レベルよ」
「へー、前原さんて緑風の人なんすね。でも、緑風って代表チームの合宿とかやってたりしますもんね」
「あー、何かそうらしーね」
「エリアでどんくらいだったんすか? ベスト8とか?」
「行って16だわ。でも、中学ン時はエリア大会でいつも当たる奴がいて、勝ったり負けたりしてたから勝手にライバル認定してたんだわ。ほら、緑風って向島ほど学校多くないし人口からして違うじゃんな。気付いたら顔見知りよ」
「そういう組み合わせの縁みたいなのってありますよね」
「でも、いーっすねそーゆーライバルみたいなの! スポーツ漫画とかでもあるじゃないすか宿命の相手みたいなの!」
「そんないいモンでもなかったけど、去年かな? そいつと初めて緑風で飲んでさ」
「へー。どういうきっかけだったんすか?」
「真希の友達がたまたま緑風出身の子で、その子とそいつが高校の同級生とかで友達だったんだよ。で、連絡してもらって忘年会に混ぜてもらってさ」
思いもよらないところでそういう縁が結び付くこともあるし本当にビックリした、と前原さんは煙草に火を付けた。高校の時はバドミントンをやめていたらしい宿命のライバルさんも、大学のサークルでまた復帰したとかで、そんな話でも盛り上がったとか。
今の前原さんは、その宿命のライバルさんも頑張ってるし自分もちゃんとやんなきゃなーというモチベーションでバドミントンをやっているらしい。ライバルさんは青丹エリアの大学にいるらしいけど、いつかまたちゃんと決着を付けようなと約束をしているとか。
「前原さんてどうして緑風からわざわざ向島に出て来たんすか?」
「まー、偏差値の都合もあるけど、やっぱ1回は都会に出ときたいじゃん? ま、大学の周りは山だし、逆に地元の方が街だったけど。松居君はどうして向島大学に?」
「高校で1年遅れた上に浪人したじゃないすか。そろそろテキトーなトコで決めときたかったんすよ。星大に行くつもりだったけど、保険で向島にって」
「保険で向島とか。言ってみてーなあ! 春日井君は?」
「俺は……」
いろいろなことを思い返していた。どうして向島大学に行きたいと思ったのか。去年は志望校を決めるために適当にいろいろオープンキャンパスに回っていた。私大に公立に国立にと。その中でも向島大学を目指すことになった決定打は何だったのかと。
「それこそもうちょい頑張ればギリ行けそうな公立だったってのもあるんすけど……去年、オープンキャンパスに行ったんす、ここの。それで、学食で飯食う時に、食堂の一角でどっかのサークルがラジオやってたんすね。それを見て、何かいいなって思ったんす。その印象がデカかったんで向島大学を受けたのかもしれないっす」
「へえ、ラジオのサークルだったらMMP?」
「名前までは覚えてないんすけど、そういうサークルがあるんすね。あー、思い出したら俄然興味が出て来た!」
「それだったら見学に行けるよう話付けようか?」
「マジすか!? 行きたいっす!」
「前原さん、アンタどんだけ顔広いんすか? 天文部だけじゃなくてラジオのサークルにも知り合いがいるとか」
「さっきの話でしてた真希の友達がMMPの子だからさ。春日井君の見学の件、頼もうと思えば今すぐにでも頼めるし。ウチは幸い掛け持ち不可とかそーゆー堅苦しいサークルじゃないし、行くだけ行ってみたらいいんじゃない?」
「やったあ! よろしくお願いします!」
サークルの見学としては少し時期が遅いかもしれないけど、大学はその辺りも自由だ。やりたいことはやりたいときにやればいいし、いろいろ見て回る方がいいよと前原さんは言う。そして取り出したスマホだ。今から聞いてみるからちょい待っててなーと。
「ちなみにですけど前原さん、そのラジオのサークルは天文部みたくヤバいとかそーゆーウワサはないんです?」
「ちょっ、奏多お前縁起でもないこと言うなよ!」
「いや、飲みは酒のある食事会って感じらしいし、活動も学食でラジオやってるしごく普通? 他校に友達も出来るし美男美女もいるってね。天文部と比べれば健全も健全だから安心してもらって」
「それはよかったっす」
「ただ、唯一難点があるとすりゃ、春日井君の見学を頼むのに何を包まなきゃいけないかっていう点?」
「包む?」
「や、こっちの話」
end.
++++
菜月さんに何かをお願いするときには何かしら菓子折りじゃないけどプリンか何かを奢らないといけないと思っている様子の前原さん。こんなところにも財布が
で、奏多がしれっと嘘をついてるヤツ。まあ、別に差し支えはありませんし全部が全部嘘でもないからね。
さて、いよいよ人が来なかったMMPにも動きが出そうな予感。そうなると、みんな忙しくなってるんだろうなあ
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「はい、俺の勝ち。さーて休憩休憩」
「ちくしょう、まーた勝ち逃げされた」
「まあ今のままだと何遍やっても俺の勝ちだからなー、しゃーない」
「くそ~……4年生の卒業までには絶対ぎゃふんと言わせますからね!」
「ふーん、そいつは楽しみだ。頑張ってぎゃふんと言わせてくれや」
今日も今日とて奏多は前原さんに挑んでは負けている。奏多もサークルの中では上手い、強い方らしいんだけど、それを軽くいなす前原さんはメチャクチャ上手いんだろう。まあ、俺はバドミントン初心者だし2人ともメチャクチャ上手いんだけど。
ちくしょーちくしょーと奏多は本当に悔しそうにしている。俺から見れば2人とも上手いのに、何故か奏多は前原さんには勝てないんだよな。他の先輩に話を聞くと、前原さんはそれでもまだ余力を残しているとのこと。どんだけだよ。
「前原さんて昔から全国行ったりとかしてたんすか?」
「いやー、俺は精々緑風エリア大会レベルよ」
「へー、前原さんて緑風の人なんすね。でも、緑風って代表チームの合宿とかやってたりしますもんね」
「あー、何かそうらしーね」
「エリアでどんくらいだったんすか? ベスト8とか?」
「行って16だわ。でも、中学ン時はエリア大会でいつも当たる奴がいて、勝ったり負けたりしてたから勝手にライバル認定してたんだわ。ほら、緑風って向島ほど学校多くないし人口からして違うじゃんな。気付いたら顔見知りよ」
「そういう組み合わせの縁みたいなのってありますよね」
「でも、いーっすねそーゆーライバルみたいなの! スポーツ漫画とかでもあるじゃないすか宿命の相手みたいなの!」
「そんないいモンでもなかったけど、去年かな? そいつと初めて緑風で飲んでさ」
「へー。どういうきっかけだったんすか?」
「真希の友達がたまたま緑風出身の子で、その子とそいつが高校の同級生とかで友達だったんだよ。で、連絡してもらって忘年会に混ぜてもらってさ」
思いもよらないところでそういう縁が結び付くこともあるし本当にビックリした、と前原さんは煙草に火を付けた。高校の時はバドミントンをやめていたらしい宿命のライバルさんも、大学のサークルでまた復帰したとかで、そんな話でも盛り上がったとか。
今の前原さんは、その宿命のライバルさんも頑張ってるし自分もちゃんとやんなきゃなーというモチベーションでバドミントンをやっているらしい。ライバルさんは青丹エリアの大学にいるらしいけど、いつかまたちゃんと決着を付けようなと約束をしているとか。
「前原さんてどうして緑風からわざわざ向島に出て来たんすか?」
「まー、偏差値の都合もあるけど、やっぱ1回は都会に出ときたいじゃん? ま、大学の周りは山だし、逆に地元の方が街だったけど。松居君はどうして向島大学に?」
「高校で1年遅れた上に浪人したじゃないすか。そろそろテキトーなトコで決めときたかったんすよ。星大に行くつもりだったけど、保険で向島にって」
「保険で向島とか。言ってみてーなあ! 春日井君は?」
「俺は……」
いろいろなことを思い返していた。どうして向島大学に行きたいと思ったのか。去年は志望校を決めるために適当にいろいろオープンキャンパスに回っていた。私大に公立に国立にと。その中でも向島大学を目指すことになった決定打は何だったのかと。
「それこそもうちょい頑張ればギリ行けそうな公立だったってのもあるんすけど……去年、オープンキャンパスに行ったんす、ここの。それで、学食で飯食う時に、食堂の一角でどっかのサークルがラジオやってたんすね。それを見て、何かいいなって思ったんす。その印象がデカかったんで向島大学を受けたのかもしれないっす」
「へえ、ラジオのサークルだったらMMP?」
「名前までは覚えてないんすけど、そういうサークルがあるんすね。あー、思い出したら俄然興味が出て来た!」
「それだったら見学に行けるよう話付けようか?」
「マジすか!? 行きたいっす!」
「前原さん、アンタどんだけ顔広いんすか? 天文部だけじゃなくてラジオのサークルにも知り合いがいるとか」
「さっきの話でしてた真希の友達がMMPの子だからさ。春日井君の見学の件、頼もうと思えば今すぐにでも頼めるし。ウチは幸い掛け持ち不可とかそーゆー堅苦しいサークルじゃないし、行くだけ行ってみたらいいんじゃない?」
「やったあ! よろしくお願いします!」
サークルの見学としては少し時期が遅いかもしれないけど、大学はその辺りも自由だ。やりたいことはやりたいときにやればいいし、いろいろ見て回る方がいいよと前原さんは言う。そして取り出したスマホだ。今から聞いてみるからちょい待っててなーと。
「ちなみにですけど前原さん、そのラジオのサークルは天文部みたくヤバいとかそーゆーウワサはないんです?」
「ちょっ、奏多お前縁起でもないこと言うなよ!」
「いや、飲みは酒のある食事会って感じらしいし、活動も学食でラジオやってるしごく普通? 他校に友達も出来るし美男美女もいるってね。天文部と比べれば健全も健全だから安心してもらって」
「それはよかったっす」
「ただ、唯一難点があるとすりゃ、春日井君の見学を頼むのに何を包まなきゃいけないかっていう点?」
「包む?」
「や、こっちの話」
end.
++++
菜月さんに何かをお願いするときには何かしら菓子折りじゃないけどプリンか何かを奢らないといけないと思っている様子の前原さん。こんなところにも財布が
で、奏多がしれっと嘘をついてるヤツ。まあ、別に差し支えはありませんし全部が全部嘘でもないからね。
さて、いよいよ人が来なかったMMPにも動きが出そうな予感。そうなると、みんな忙しくなってるんだろうなあ
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