2021
■無限の引力
公式学年+1年
++++
「ひらっちゃん」
「どーした千葉ちゃん」
「年々佐藤ゼミに天才が増えてる気がする」
「ホンマやわ」
3年生も鵠さんが仕切る安定の美味しそうなヤツなんだけど、2年生がとんでもない。パエリアなんて作ってるし、脇の方では何か小麦粉とかいろいろ混ぜてるけど、イーストって時点でパンじゃんね! バーベキューでパンなんて焼けるの!?
アタシたち4年生はこのバーベキューへの参加が任意になって、今までよりは少ない人数で網を囲んでる。それでも予算は変わらないから一人当たりの金額は高くなって豪勢にやろうと思えば出来るけど、アタシがいる時点で量が必要だって桃華が言って質は据え置きに。
「まあいいわ。アタシらはアタシらで美味しくお肉を食べること。さすれば自然と食料が寄って来るってね」
「千葉ちゃんが悟りの域に達しとるで。まあ、実際俺らは質より量よ。2、3年生は余らすでな」
「でも3年生はお酒に予算振れるようになったからねえ」
「弟の貫禄がヤバいな。ビール飲みながら肉焼いとる」
「タカちゃんにとっては貴重な機会だからねえ。人のお金で食べる肉の美味しさよ」
「間違いない」
3年生は鵠さんと米ちゃんが中心になってワイルドな男のバーベキューって感じで美味しそうな感じでやってるんだけど、2年生ですよ。2年生は背の高いクールそうな子とバンダナをリボンぽく巻いた女の子が中心になってオシャレなアウトドアごはんを作ってるんだよね。
で、2年生の網を見てみるとササとシノが安定の食べっぷりでお姉さんは嬉しいね。やっぱり食べてナンボ的なところがあるからね、バーベキューって。みんな途中でお腹いっぱいになっちゃって食材が余るのもよく見るけど、本来は余らせない方がいいからね。でも、焼きそばもご飯もパンもあって、食べ切れるかな?
「果林先輩平田先輩、お疲れさまです」
「おー! 弟ー! 来い来い」
「あれっ、小田先輩は」
「小田ちゃんトイレ行っとるわ」
「そうなんですね。3年生から、4年生の先輩に差し入れです。去年と一緒の焼きおにぎりで申し訳ないんですけど」
「ううん、もう、激烈感謝だよ! ありがとねタカちゃん」
「3年生は気が利くな~! これ、3つあるのって俺らと小田ちゃんの分?」
「そのつもりで持って来ました」
「ホンマあんがとなあ。康平らにもよろしく言っといて」
タカちゃん(って言うか3年生)の気が利き過ぎて! 炊いた分は食べ切らなきゃいけないけど、結局みんなほどほどが一番だから、必ず食べ切ってくれる4年生の方に持って来るんだよね。そうそう、こっちで特段用意しなくても回って来るんですよ食べ物って。
「ねえねえタカちゃん、2年生ヤバくない? オシャレ過ぎるんだけど」
「中心になってる相倉くんと来須さんが登山とかキャンプとかのアウトドアに強い子たちで、こういうのに詳しいらしいですね」
「へー、そうなんだ。パエリアとかもオシャレだし美味しそうだよねえ」
「いや~、でも、あれは多分食べ切れないですよ。ひとつひとつはオシャレですし映えてますけど、1人1人がどれだけ食べれるかっていう、消費能力以上に買っちゃってますね」
「人数多いで目算を誤りやすいんやなあ」
「まあ、25人ですからねえ」
そして4年生の網からはタカちゃんも食べなよとアメリカンドッグを差し出す。フランクフルトとはちょっと違う、甘じょっぱい感じの美味しいヤツですよねー。あー、3年生の焼きおにぎりは安定のクオリティ~…! 美味しい!
でも、時間も結構経ってるし、遊び始めてる子もちらほら。それでも網から離れられない子も少なからずいるみたい。それぞれの学年ごとに、絶対にこの場で食べ切らないといけない食材っていうのがあるっぽくて、そのお世話をしなきゃいけないんだよね。
「4年生の皆さん、失礼します」
「果林せんぱーい、まだ飯入りますかー?」
「あら。どうしたのササ、シノ」
「えっとですね、2年生の網でいろいろ焼いたモンがですね、そろそろみんな腹いっぱいって言い始めて余って来たんすよ。で、もし良ければ果林先輩に差し入れの体で食ってもらえないかなーと思って」
「えっと? これは、チーズとウズラの卵?」
「燻製ですね。スモークチップで燻ったものです」
「おつまみ~。タカちゃんも食べる?」
「いただきます」
「はいかんぱーい」
「かんぱーい」
改めてタカちゃんと乾杯して、燻製をつまみながら2年生のお品書きを聞き続ける。アウトドアに強いと出来ることが多すぎてあれもこれもってなっちゃうんだろうねえ。燻製がまたビールに合って美味しいんだこれが。
「他には? 焼きとうもろこしと、パエリアに?」
「今からまだアヒージョが出て来る予定なんすよ。焼いてる巻きパン浸けて食ったら美味いだろっつってやることになってんすけど」
「えー! 絶対美味しいのにもう2年生お腹いっぱいなの!?」
「メインが焼けるまでの時間があるので前菜にも力を入れてたんです」
「それをみんな美味い美味いって食ってたらメインが出る頃には腹が膨れてたんす。俺とかササは余裕だったんすけど。でも、俺たちだけじゃキツくなってきたんで黄色の悪魔に魂を売りに来たんすよ」
「えっと、アヒージョと巻きパンをごちそうになる権利は?」
「あるっす」
「行こうじゃない。しばらくこれ食べてるし、出来たらまた呼びに来てー」
「了解っす!」
そうなんだよね。メインのお肉の前にオシャレに野菜を食べてお腹いっぱいにしちゃうんだよね。食べ方的には合ってるんだろうけど、あくまで人のお金で食べる時に力を入れるべきはお肉なんですよねー。
「千葉ちゃんが合法的に食料を集めとるわ」
「仕方ないよね、アタシは助けを求められてるんだから。ねえタカちゃん」
「そうですね。圧をかけてるワケではないので合法です」
end.
++++
毎年新しいことをしている下級生たちを「天才か!?」って眺めてる果林と店長です。毎年天才が増えてるのか……
タカちゃんは4年生にも仲のいい先輩がちょこちょこいるので差し入れに行くのもハードルが低いようです。弟で定着しています。
ササとシノは佐藤ゼミ2年生の中ではいっぱい食べる方だったようです。前菜食べてもまだメインのお肉をガッツリ食べるよ!
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公式学年+1年
++++
「ひらっちゃん」
「どーした千葉ちゃん」
「年々佐藤ゼミに天才が増えてる気がする」
「ホンマやわ」
3年生も鵠さんが仕切る安定の美味しそうなヤツなんだけど、2年生がとんでもない。パエリアなんて作ってるし、脇の方では何か小麦粉とかいろいろ混ぜてるけど、イーストって時点でパンじゃんね! バーベキューでパンなんて焼けるの!?
アタシたち4年生はこのバーベキューへの参加が任意になって、今までよりは少ない人数で網を囲んでる。それでも予算は変わらないから一人当たりの金額は高くなって豪勢にやろうと思えば出来るけど、アタシがいる時点で量が必要だって桃華が言って質は据え置きに。
「まあいいわ。アタシらはアタシらで美味しくお肉を食べること。さすれば自然と食料が寄って来るってね」
「千葉ちゃんが悟りの域に達しとるで。まあ、実際俺らは質より量よ。2、3年生は余らすでな」
「でも3年生はお酒に予算振れるようになったからねえ」
「弟の貫禄がヤバいな。ビール飲みながら肉焼いとる」
「タカちゃんにとっては貴重な機会だからねえ。人のお金で食べる肉の美味しさよ」
「間違いない」
3年生は鵠さんと米ちゃんが中心になってワイルドな男のバーベキューって感じで美味しそうな感じでやってるんだけど、2年生ですよ。2年生は背の高いクールそうな子とバンダナをリボンぽく巻いた女の子が中心になってオシャレなアウトドアごはんを作ってるんだよね。
で、2年生の網を見てみるとササとシノが安定の食べっぷりでお姉さんは嬉しいね。やっぱり食べてナンボ的なところがあるからね、バーベキューって。みんな途中でお腹いっぱいになっちゃって食材が余るのもよく見るけど、本来は余らせない方がいいからね。でも、焼きそばもご飯もパンもあって、食べ切れるかな?
「果林先輩平田先輩、お疲れさまです」
「おー! 弟ー! 来い来い」
「あれっ、小田先輩は」
「小田ちゃんトイレ行っとるわ」
「そうなんですね。3年生から、4年生の先輩に差し入れです。去年と一緒の焼きおにぎりで申し訳ないんですけど」
「ううん、もう、激烈感謝だよ! ありがとねタカちゃん」
「3年生は気が利くな~! これ、3つあるのって俺らと小田ちゃんの分?」
「そのつもりで持って来ました」
「ホンマあんがとなあ。康平らにもよろしく言っといて」
タカちゃん(って言うか3年生)の気が利き過ぎて! 炊いた分は食べ切らなきゃいけないけど、結局みんなほどほどが一番だから、必ず食べ切ってくれる4年生の方に持って来るんだよね。そうそう、こっちで特段用意しなくても回って来るんですよ食べ物って。
「ねえねえタカちゃん、2年生ヤバくない? オシャレ過ぎるんだけど」
「中心になってる相倉くんと来須さんが登山とかキャンプとかのアウトドアに強い子たちで、こういうのに詳しいらしいですね」
「へー、そうなんだ。パエリアとかもオシャレだし美味しそうだよねえ」
「いや~、でも、あれは多分食べ切れないですよ。ひとつひとつはオシャレですし映えてますけど、1人1人がどれだけ食べれるかっていう、消費能力以上に買っちゃってますね」
「人数多いで目算を誤りやすいんやなあ」
「まあ、25人ですからねえ」
そして4年生の網からはタカちゃんも食べなよとアメリカンドッグを差し出す。フランクフルトとはちょっと違う、甘じょっぱい感じの美味しいヤツですよねー。あー、3年生の焼きおにぎりは安定のクオリティ~…! 美味しい!
でも、時間も結構経ってるし、遊び始めてる子もちらほら。それでも網から離れられない子も少なからずいるみたい。それぞれの学年ごとに、絶対にこの場で食べ切らないといけない食材っていうのがあるっぽくて、そのお世話をしなきゃいけないんだよね。
「4年生の皆さん、失礼します」
「果林せんぱーい、まだ飯入りますかー?」
「あら。どうしたのササ、シノ」
「えっとですね、2年生の網でいろいろ焼いたモンがですね、そろそろみんな腹いっぱいって言い始めて余って来たんすよ。で、もし良ければ果林先輩に差し入れの体で食ってもらえないかなーと思って」
「えっと? これは、チーズとウズラの卵?」
「燻製ですね。スモークチップで燻ったものです」
「おつまみ~。タカちゃんも食べる?」
「いただきます」
「はいかんぱーい」
「かんぱーい」
改めてタカちゃんと乾杯して、燻製をつまみながら2年生のお品書きを聞き続ける。アウトドアに強いと出来ることが多すぎてあれもこれもってなっちゃうんだろうねえ。燻製がまたビールに合って美味しいんだこれが。
「他には? 焼きとうもろこしと、パエリアに?」
「今からまだアヒージョが出て来る予定なんすよ。焼いてる巻きパン浸けて食ったら美味いだろっつってやることになってんすけど」
「えー! 絶対美味しいのにもう2年生お腹いっぱいなの!?」
「メインが焼けるまでの時間があるので前菜にも力を入れてたんです」
「それをみんな美味い美味いって食ってたらメインが出る頃には腹が膨れてたんす。俺とかササは余裕だったんすけど。でも、俺たちだけじゃキツくなってきたんで黄色の悪魔に魂を売りに来たんすよ」
「えっと、アヒージョと巻きパンをごちそうになる権利は?」
「あるっす」
「行こうじゃない。しばらくこれ食べてるし、出来たらまた呼びに来てー」
「了解っす!」
そうなんだよね。メインのお肉の前にオシャレに野菜を食べてお腹いっぱいにしちゃうんだよね。食べ方的には合ってるんだろうけど、あくまで人のお金で食べる時に力を入れるべきはお肉なんですよねー。
「千葉ちゃんが合法的に食料を集めとるわ」
「仕方ないよね、アタシは助けを求められてるんだから。ねえタカちゃん」
「そうですね。圧をかけてるワケではないので合法です」
end.
++++
毎年新しいことをしている下級生たちを「天才か!?」って眺めてる果林と店長です。毎年天才が増えてるのか……
タカちゃんは4年生にも仲のいい先輩がちょこちょこいるので差し入れに行くのもハードルが低いようです。弟で定着しています。
ササとシノは佐藤ゼミ2年生の中ではいっぱい食べる方だったようです。前菜食べてもまだメインのお肉をガッツリ食べるよ!
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