2021
■機能的な配置 とは?
++++
「おーい、朝霞ー! 来たぞー!」
「カンノ、そんなところで叫ばずとも、インターホンを鳴らせばいいのではないか」
「リン君の言う通りだぞ、カン。近所の人にも迷惑にならないか?」
「朝霞がさっさと出て来れば済む話だ! おーい! 起きろー!」
インターホンを短く連打するカンを後目に、俺とリン君は少し呆れ気味。激しくインターホンを鳴らしてるのになかなか出てこないところを見ると、朝霞はきっと寝ているのだろうというのが俺たちの見立て。寝起きがメチャクチャ悪いらしいんだ。
「……うるさい」
「お前なあ、そもそも1時に行くっつってたんだから起きとけよ! ぜってー寝起きじゃんか!」
「いいからさっさと入ってくれ」
通された部屋は例によって汚い。朝霞が座っていたであろうパソコンの前だけは、人ひとりが座れるだけの空間が残っているけど、周りには人型を残すように物が散乱している。手の届く範囲にあらゆる物が置いてあって、何が何だか。
「つか、相変わらずきったねー部屋だな!」
「うるさいな。俺にとってはこれ以上ないほど機能的な配置になってるんだ」
「は!? 機能的な配置にしたいってのはわかるけど、もうちょっと整然と機能的に出来ないか?」
「だから、これがいいんだって言ってるだろ」
「お前って血液型何だっけ」
「Aだけど。まさかお前、部屋の片付けと血液型に関係性を見出そうとしてんのか?」
「でも、A型って几帳面って言うじゃねーか」
「菅野、さてはお前、知らないな? 最近では片付けをしないA型の方が多いのではないかと言われ始めてるんだぞ」
「つか、片付けと血液型に相関性を持たせる気がない的な考えのお前が何でそんなことを知ってんだよ」
「部活の現役時代に戸田からブースを片付けろって怒鳴られ続けたからな」
「いや、それはドヤるところじゃねーし戸田に同情するぞ」
――という話を朝霞はお茶を淹れながらしてたんだけど、毎度こうやってお茶を淹れてくれる辺りはきっちりしてるっていう、血液型の印象通りで間違いないと思うんだよな。ちなみにこの季節ということで水出しの緑茶になったようだ。
ただ、お茶を受け取ったまではいいんだけど、俺たちが座る場所はまだ整備されていない。グラスを手にどうしたものかと俺たちは立ち尽くす。と言うか、朝霞班のブースの様子は外から窺い知れなかったけど、やはりと言うか何と言うか、汚かったのか……。
「まあ、それはそうとして俺らが座る場所くらいは作ってくれよ」
「それはそうだな。しばらくベッドの上で待っててくれ」
「お前さー、仮に部屋に女呼んでもこんな感じなのかよ。ベッドの上で待っとけってのはさすがにねーわ」
「リン君って血液型何?」
「ABだ」
「そっか。俺がBだしカンがOだから、ここ4人はみんな血液型が違うのか」
「血液型のテンプレみたいなのあるだろネットで」
「ああ、あるな。A型が唐揚げにレモンを勝手にかけるB型を怒鳴り、B型がそれをスルーしてレモンをかけてない物を勧めるも、それは既にO型が食っていたが、O型はレモンをかければ良かったなとここで思い至る。それを後目にパセリを食うAB型、というヤツだな」
「そーいや朝霞お前、唐揚げに勝手にレモンかけたらめっちゃキレるんだってな!?」
「俺は朝霞が唐揚げの脇にあるパセリを好んで食べると聞いたことがある」
「いやいやいや、お前ら誰から聞いたんだよ」
「俺は洋平から」
「俺は宇部からだな」
アイツら何を喋ってんだよ、と朝霞はバツが悪そうに俺たちの座る場所を作ってくれている。俺たちが押し掛けていることで本人的にはこれ以上ないほど機能的な配置というのを崩させているのには若干の申し訳なさを覚えつつも、さすがに人を部屋に入れる時は最低限片付けるだろうと。
ただ、朝霞に言わせれば「この機能的な配置が崩れたことでUSDX関係の物書きのペースが遅れても文句を言うなよ」とのこと。そこでそう釘を刺されてしまうとカンもたじろぐしか無くなってしまい、部屋の汚さには目を瞑るしかなくなりそうだ。でも、ああ言えばこう言うの範囲だよなあ。
「ああ、そうだお前ら。せっかく来てくれたのに悪いけど、声のトーンはちょっと控えめにしてくれないか」
「どしたん? 騒音問題的な?」
「ちょっと最近隣から壁ドンされる頻度が上がっててさ。一応声とか音には気を遣ってたつもりなんだけど、俺の思った以上に音が漏れてるっぽくて」
「ふーん。まあ、気を付けはするけど学生街のアパートでそんな細かいこと気にするとか神経質なヤツなんかね」
「いや、今年から住み始めた人ってことくらいしかわかんないけど、そういうことだからよろしく頼む」
「わーったよ」
音が漏れているのか朝霞の部屋が壁ドンされ始めているらしい。そうなると、今さっきカンが玄関の前でわーわー叫んでいたのは大丈夫だったかなと不安になってくる。ギターの練習や実況中に壁ドンされることもまああるそうなので、どう防音するかが課題らしい。
「そしたら、座る場所は作ったし、好きな場所に座ってもらって」
「つか朝霞、これは片付けたって言うより周りの物を端に寄せただけなんじゃねーのか?」
「そりゃあ、お前らが帰ったらまた元に戻さなきゃいけないからな」
「えっ、あの惨状に戻すの?」
「何度も言わせるな。機能的な配置なんだ」
end.
++++
片付けと血液型云々を調べたところ、片付けをしないA型も多いと言われていると出てPさんやん!ってなったなど。
USDXの学生組は4人みんな血液型が違うらしい。でもこのメンツでパセリ食べるのはA型のPさんである。レモンかけても怒るけどね
朝霞Pの隣人についてはまたもう少し先で。壁ドンで拳だけ割らないように気を付けてもらう感じで。
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「おーい、朝霞ー! 来たぞー!」
「カンノ、そんなところで叫ばずとも、インターホンを鳴らせばいいのではないか」
「リン君の言う通りだぞ、カン。近所の人にも迷惑にならないか?」
「朝霞がさっさと出て来れば済む話だ! おーい! 起きろー!」
インターホンを短く連打するカンを後目に、俺とリン君は少し呆れ気味。激しくインターホンを鳴らしてるのになかなか出てこないところを見ると、朝霞はきっと寝ているのだろうというのが俺たちの見立て。寝起きがメチャクチャ悪いらしいんだ。
「……うるさい」
「お前なあ、そもそも1時に行くっつってたんだから起きとけよ! ぜってー寝起きじゃんか!」
「いいからさっさと入ってくれ」
通された部屋は例によって汚い。朝霞が座っていたであろうパソコンの前だけは、人ひとりが座れるだけの空間が残っているけど、周りには人型を残すように物が散乱している。手の届く範囲にあらゆる物が置いてあって、何が何だか。
「つか、相変わらずきったねー部屋だな!」
「うるさいな。俺にとってはこれ以上ないほど機能的な配置になってるんだ」
「は!? 機能的な配置にしたいってのはわかるけど、もうちょっと整然と機能的に出来ないか?」
「だから、これがいいんだって言ってるだろ」
「お前って血液型何だっけ」
「Aだけど。まさかお前、部屋の片付けと血液型に関係性を見出そうとしてんのか?」
「でも、A型って几帳面って言うじゃねーか」
「菅野、さてはお前、知らないな? 最近では片付けをしないA型の方が多いのではないかと言われ始めてるんだぞ」
「つか、片付けと血液型に相関性を持たせる気がない的な考えのお前が何でそんなことを知ってんだよ」
「部活の現役時代に戸田からブースを片付けろって怒鳴られ続けたからな」
「いや、それはドヤるところじゃねーし戸田に同情するぞ」
――という話を朝霞はお茶を淹れながらしてたんだけど、毎度こうやってお茶を淹れてくれる辺りはきっちりしてるっていう、血液型の印象通りで間違いないと思うんだよな。ちなみにこの季節ということで水出しの緑茶になったようだ。
ただ、お茶を受け取ったまではいいんだけど、俺たちが座る場所はまだ整備されていない。グラスを手にどうしたものかと俺たちは立ち尽くす。と言うか、朝霞班のブースの様子は外から窺い知れなかったけど、やはりと言うか何と言うか、汚かったのか……。
「まあ、それはそうとして俺らが座る場所くらいは作ってくれよ」
「それはそうだな。しばらくベッドの上で待っててくれ」
「お前さー、仮に部屋に女呼んでもこんな感じなのかよ。ベッドの上で待っとけってのはさすがにねーわ」
「リン君って血液型何?」
「ABだ」
「そっか。俺がBだしカンがOだから、ここ4人はみんな血液型が違うのか」
「血液型のテンプレみたいなのあるだろネットで」
「ああ、あるな。A型が唐揚げにレモンを勝手にかけるB型を怒鳴り、B型がそれをスルーしてレモンをかけてない物を勧めるも、それは既にO型が食っていたが、O型はレモンをかければ良かったなとここで思い至る。それを後目にパセリを食うAB型、というヤツだな」
「そーいや朝霞お前、唐揚げに勝手にレモンかけたらめっちゃキレるんだってな!?」
「俺は朝霞が唐揚げの脇にあるパセリを好んで食べると聞いたことがある」
「いやいやいや、お前ら誰から聞いたんだよ」
「俺は洋平から」
「俺は宇部からだな」
アイツら何を喋ってんだよ、と朝霞はバツが悪そうに俺たちの座る場所を作ってくれている。俺たちが押し掛けていることで本人的にはこれ以上ないほど機能的な配置というのを崩させているのには若干の申し訳なさを覚えつつも、さすがに人を部屋に入れる時は最低限片付けるだろうと。
ただ、朝霞に言わせれば「この機能的な配置が崩れたことでUSDX関係の物書きのペースが遅れても文句を言うなよ」とのこと。そこでそう釘を刺されてしまうとカンもたじろぐしか無くなってしまい、部屋の汚さには目を瞑るしかなくなりそうだ。でも、ああ言えばこう言うの範囲だよなあ。
「ああ、そうだお前ら。せっかく来てくれたのに悪いけど、声のトーンはちょっと控えめにしてくれないか」
「どしたん? 騒音問題的な?」
「ちょっと最近隣から壁ドンされる頻度が上がっててさ。一応声とか音には気を遣ってたつもりなんだけど、俺の思った以上に音が漏れてるっぽくて」
「ふーん。まあ、気を付けはするけど学生街のアパートでそんな細かいこと気にするとか神経質なヤツなんかね」
「いや、今年から住み始めた人ってことくらいしかわかんないけど、そういうことだからよろしく頼む」
「わーったよ」
音が漏れているのか朝霞の部屋が壁ドンされ始めているらしい。そうなると、今さっきカンが玄関の前でわーわー叫んでいたのは大丈夫だったかなと不安になってくる。ギターの練習や実況中に壁ドンされることもまああるそうなので、どう防音するかが課題らしい。
「そしたら、座る場所は作ったし、好きな場所に座ってもらって」
「つか朝霞、これは片付けたって言うより周りの物を端に寄せただけなんじゃねーのか?」
「そりゃあ、お前らが帰ったらまた元に戻さなきゃいけないからな」
「えっ、あの惨状に戻すの?」
「何度も言わせるな。機能的な配置なんだ」
end.
++++
片付けと血液型云々を調べたところ、片付けをしないA型も多いと言われていると出てPさんやん!ってなったなど。
USDXの学生組は4人みんな血液型が違うらしい。でもこのメンツでパセリ食べるのはA型のPさんである。レモンかけても怒るけどね
朝霞Pの隣人についてはまたもう少し先で。壁ドンで拳だけ割らないように気を付けてもらう感じで。
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