2021
■reins and whip
++++
人が来ない来ないと嘆いていても、月日は流れていく。そうこうしているうちにMMPの通年の活動になる昼放送が始まる時期になったので、その収録をしなければならないなという話になっていた。
今期のMMPはアナウンサーがヒロ1人しかおらず、週に1回しか番組をやることが出来ない。ただ、週1回でもサークルとしての活動をちゃんとやっておかないと、今後のことにも関わって来るだろう。やらねば。
「ヒロ先輩よろしくお願いしますッ!」
「はーい」
結局、ヒロとペアを組むミキサーは奈々に決まり、担当の曜日は水曜日ということになった。ヒロは俺との共演NGを出しているし、律とこーたは履修が減って学内にいないこともまあまあある。事実上、消去法でのペア決定だ。
「ヒロ、これが来週からのフェア情報スから」
「ありがと」
学食ではたまにフェアというものが企画される。ラーメンフェアだったり、ご当地フェアだったり。学食で番組をやらせてもらっているということで、その中で学食のフェア情報などをお知らせするコーナーを設けているんだ。ギブ&テイク的な。
「それじゃーそろそろやる?」
「そうですねッ! やりましょうッ! 5秒前からですッ! 4、3……」
2、1、ときてキューが振られれば、録音開始だ。収録の光景を見ている俺たちガヤは黙ってそれを見守るだけだ。番組の本編の前には学食を使う上での注意事項など、インフォメーションとしてアナウンスする。
それを聞いた俺たちガヤは、ホワイトボードで筆談をするのだ。律は「まー悪くない」、こーたは「さいさきがいい」と発する。確かに、去年までのぐだぐだなヒロと比べたら発声だとか滑舌の面でも謎の改善がみられているような気がする。
去年の秋ごろ、ヒロは謎に覚醒をして微妙にやる気を見せていたのだけど、まさかそれが継続して恒常化したというのか。それまでのヒロと言ったらやる気はないわトーク時間の半分を逆キューで返すわ、鼻水がぐずぐずだわでいいところがてんでないアナだったのに。
「皆さんこんにちは。MMP昼放送水曜日、五月病ラジオの時間になりました。水曜日って曜日の真ん中で大学来るんもだるいですよね。5月に限らずボクずっとだるいですわ。もうずっと昼休みでええと思いません?」
……何てことを話してるんだとは思うが、当たり障りがないと言えばないのかもしれない。水曜日が中だるみしやすい曜日だというのも事実だ。番組名の「五月病ラジオ」というのも変だと思うけれども、4年生の先輩たちに言わせれば「ヒロの味」になるのだろうか。
「マイク下げましたッ」
「は~……疲れた~」
「まだオープニングが終わったばかりなんだが?」
「しかしヒロ、どーゆー心変わりスか。声にも謎に張りがありヤすし」
「明日ファンフェスやん。ちゃんとやらなつばちゃんにシメられるんやよ」
つばめにシメられる発言に、3年ミキ陣は「あー」と声を揃える。地味に明日に迫っていたファンフェスでは、ヒロはつばめ率いる班にぶち込まれていた。その理由は至極簡単。とにかく自由気ままに振る舞うヒロを俺たちMMPメンバー以外でシメられるのは誰か、という話だ。
去年からのやる気も微妙に継続してはいるが、つばめにシメられる恐怖の方が大きかったようだ。まあ、つばめはその辺容赦ないからな。番組に対する妥協は許さない方だし、当日に至るまでにも番組の進行計画などを事細かに作らされていたとは聞く。つばめマジパねえ(cv.真司)。
「マイク上げますッ」
「突然ですけど、キャンプとか行きたないですか? 梅雨に入ったら雨降って残念やし、夏は暑いし。今くらいの時期が丁度ええと思うんですよね」
ヒロにしては実に無難なトークに、俺たち3人は感心するしかないワケで。もしかしてつばめによる調教がここまで功を奏しているということか。サドニナの扱いをこーたに請う青女さんの気持ちがわかったような気がする。俺はつばめに教えを請いたい。
律の筆談情報によれば、つばめの班はワイヤレス機材を使って中継をやるそうだ。夏合宿でヒロが思い付きでやっていたあれを、一般の人に対する番組でやってしまうらしい。そんなこともあってより思い付きではなくきちんとした番組計画を作らせていたとのこと。
「はいッ! 録音終わりましたッ! ヒロ先輩お疲れさまですッ!」
「は~……疲れた~……真面目にやったら疲れたわ」
「やァー、お疲れさんス」
「ヒロさん、なかなか良かったですよ」
「明日ファンフェスで番組やる体力無くなったわ」
「このレベルで…!? 明日はダブルトークもやるんだろ」
「ダブルトークはハナちゃんに任せた方がえーやんね」
「……中継やるんだろ。つばめにシメられるぞ」
「それは怖いわ」
「中継やるって定例会も知ってたらそれはもう心配のタネだろ」
ヒロの覚醒状態がいつまで続くかはわからないけど、ファンフェスが終わっても維持されるようであれば本物と見ていいのかもしれない。消去法で決まったアナウンス部長だけど、真にアナウンス部長たる資質をようやくここに来て身に付けることになるのか否か。
「あの、野坂先輩……」
「ん? どうした奈々」
「ちょっと言いにくいんですけど、定例会的には野坂先輩がちゃんと時間通りに来てくれるかどうかってのも心配のタネで……」
「ナ、ナンダッテー!?」
「ヤ、普段の行いッしょ」
「前対策委員の班長が一般の参加者を集めるんでしょう? これは野坂さんもつばちゃんにシメられるヤツですね」
「シャレにならない。冗談じゃない」
end.
++++
ヒロが覚醒した年度の設定を引っ張り出してきました。今年度のヒロはアナウンス部長としてまあまあやるよ!
ガヤを入れるミキサー陣3人ですが、この後リツ神は2人で番組を始めるのでハブられるノサカである。
そういや対策委員時代はつばちゃんから向島と一括りにされて問題児扱いされていたのである……シメられてもしゃーないし日頃の行いだわね
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人が来ない来ないと嘆いていても、月日は流れていく。そうこうしているうちにMMPの通年の活動になる昼放送が始まる時期になったので、その収録をしなければならないなという話になっていた。
今期のMMPはアナウンサーがヒロ1人しかおらず、週に1回しか番組をやることが出来ない。ただ、週1回でもサークルとしての活動をちゃんとやっておかないと、今後のことにも関わって来るだろう。やらねば。
「ヒロ先輩よろしくお願いしますッ!」
「はーい」
結局、ヒロとペアを組むミキサーは奈々に決まり、担当の曜日は水曜日ということになった。ヒロは俺との共演NGを出しているし、律とこーたは履修が減って学内にいないこともまあまあある。事実上、消去法でのペア決定だ。
「ヒロ、これが来週からのフェア情報スから」
「ありがと」
学食ではたまにフェアというものが企画される。ラーメンフェアだったり、ご当地フェアだったり。学食で番組をやらせてもらっているということで、その中で学食のフェア情報などをお知らせするコーナーを設けているんだ。ギブ&テイク的な。
「それじゃーそろそろやる?」
「そうですねッ! やりましょうッ! 5秒前からですッ! 4、3……」
2、1、ときてキューが振られれば、録音開始だ。収録の光景を見ている俺たちガヤは黙ってそれを見守るだけだ。番組の本編の前には学食を使う上での注意事項など、インフォメーションとしてアナウンスする。
それを聞いた俺たちガヤは、ホワイトボードで筆談をするのだ。律は「まー悪くない」、こーたは「さいさきがいい」と発する。確かに、去年までのぐだぐだなヒロと比べたら発声だとか滑舌の面でも謎の改善がみられているような気がする。
去年の秋ごろ、ヒロは謎に覚醒をして微妙にやる気を見せていたのだけど、まさかそれが継続して恒常化したというのか。それまでのヒロと言ったらやる気はないわトーク時間の半分を逆キューで返すわ、鼻水がぐずぐずだわでいいところがてんでないアナだったのに。
「皆さんこんにちは。MMP昼放送水曜日、五月病ラジオの時間になりました。水曜日って曜日の真ん中で大学来るんもだるいですよね。5月に限らずボクずっとだるいですわ。もうずっと昼休みでええと思いません?」
……何てことを話してるんだとは思うが、当たり障りがないと言えばないのかもしれない。水曜日が中だるみしやすい曜日だというのも事実だ。番組名の「五月病ラジオ」というのも変だと思うけれども、4年生の先輩たちに言わせれば「ヒロの味」になるのだろうか。
「マイク下げましたッ」
「は~……疲れた~」
「まだオープニングが終わったばかりなんだが?」
「しかしヒロ、どーゆー心変わりスか。声にも謎に張りがありヤすし」
「明日ファンフェスやん。ちゃんとやらなつばちゃんにシメられるんやよ」
つばめにシメられる発言に、3年ミキ陣は「あー」と声を揃える。地味に明日に迫っていたファンフェスでは、ヒロはつばめ率いる班にぶち込まれていた。その理由は至極簡単。とにかく自由気ままに振る舞うヒロを俺たちMMPメンバー以外でシメられるのは誰か、という話だ。
去年からのやる気も微妙に継続してはいるが、つばめにシメられる恐怖の方が大きかったようだ。まあ、つばめはその辺容赦ないからな。番組に対する妥協は許さない方だし、当日に至るまでにも番組の進行計画などを事細かに作らされていたとは聞く。つばめマジパねえ(cv.真司)。
「マイク上げますッ」
「突然ですけど、キャンプとか行きたないですか? 梅雨に入ったら雨降って残念やし、夏は暑いし。今くらいの時期が丁度ええと思うんですよね」
ヒロにしては実に無難なトークに、俺たち3人は感心するしかないワケで。もしかしてつばめによる調教がここまで功を奏しているということか。サドニナの扱いをこーたに請う青女さんの気持ちがわかったような気がする。俺はつばめに教えを請いたい。
律の筆談情報によれば、つばめの班はワイヤレス機材を使って中継をやるそうだ。夏合宿でヒロが思い付きでやっていたあれを、一般の人に対する番組でやってしまうらしい。そんなこともあってより思い付きではなくきちんとした番組計画を作らせていたとのこと。
「はいッ! 録音終わりましたッ! ヒロ先輩お疲れさまですッ!」
「は~……疲れた~……真面目にやったら疲れたわ」
「やァー、お疲れさんス」
「ヒロさん、なかなか良かったですよ」
「明日ファンフェスで番組やる体力無くなったわ」
「このレベルで…!? 明日はダブルトークもやるんだろ」
「ダブルトークはハナちゃんに任せた方がえーやんね」
「……中継やるんだろ。つばめにシメられるぞ」
「それは怖いわ」
「中継やるって定例会も知ってたらそれはもう心配のタネだろ」
ヒロの覚醒状態がいつまで続くかはわからないけど、ファンフェスが終わっても維持されるようであれば本物と見ていいのかもしれない。消去法で決まったアナウンス部長だけど、真にアナウンス部長たる資質をようやくここに来て身に付けることになるのか否か。
「あの、野坂先輩……」
「ん? どうした奈々」
「ちょっと言いにくいんですけど、定例会的には野坂先輩がちゃんと時間通りに来てくれるかどうかってのも心配のタネで……」
「ナ、ナンダッテー!?」
「ヤ、普段の行いッしょ」
「前対策委員の班長が一般の参加者を集めるんでしょう? これは野坂さんもつばちゃんにシメられるヤツですね」
「シャレにならない。冗談じゃない」
end.
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ヒロが覚醒した年度の設定を引っ張り出してきました。今年度のヒロはアナウンス部長としてまあまあやるよ!
ガヤを入れるミキサー陣3人ですが、この後リツ神は2人で番組を始めるのでハブられるノサカである。
そういや対策委員時代はつばちゃんから向島と一括りにされて問題児扱いされていたのである……シメられてもしゃーないし日頃の行いだわね
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