2021

■とりあえず花を盛る

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「ユキちゃーん、ちょっと手伝って~!」
「はー、い!? さと先輩このお花どうしたんですか!? よいしょっと」
「ふー、ありがとう。衣装に使ってもよし、他の装飾に使ってもよしのお花。宏樹さんとお喋りしながら作ってたら凄い量になっちゃって」
「さと先輩って量を作りますよねー」

 5月末にある植物園ステージに向けて、さと先輩にはいつものように衣装を作ってもらっていた。植物園ステージの衣装は場所が場所だけに、花や草木をモチーフにしたデザインになっていてすっごく可愛いんだよね。それを人数分、ミシンで作っちゃうのがすごい。
 で、2年生と3年生にはしっかりとした服を作ってくれるんだけど、1年生にはワンポイントのチャームみたいな感じで花のブローチとか、花冠とかを作ってもらえるんだよね。いつ何人入って来ても不公平にならないために服じゃなくてアクセサリーなんだって。

「今いる1年生は4人でしょ? まつりちゃんを見ててふわーっとイメージが降って来て、それからはもう夢中だよ」
「どんなイメージだったんですか?」

 ABCには今の時点で4人の1年生がいる。小さくてふわーっとしたタイプの本宮ちとせ、落ち着いたタイプの柏崎みわ、賑やかなガンガンタイプの清瀬まつり、そして華やかでエレガンスな黒姫恵麻。4人が4人タイプが違うから、見ていて面白い。
 タイプは違うけど、それなりにみんな仲良くやってるのかな。パートもアナウンサーがちとせと恵麻、そしてミキサーがみわとまつりって感じで2人ずつ分かれてバランスがとてもいい。今回のステージも、パートごとにそれとなく勉強中。

「まつりちゃんから、茉莉花がイメージされたんだよ」
「茉莉花って、ジャスミンの花ですよね」
「そうだね。名前からの短絡的なイメージなんだけど。茉莉花は初夏とか夏の花なんだけど、そしたら春夏秋冬、四季のお花を4人で1人1季節担当してもらおうと思って」
「へー。でも、確かにまつりは本人のキャラクターも夏って感じですもんね。他の子たちはどんな担当になったんですか?」
「ちとせちゃんが春のすずらん。まつりちゃんが夏の茉莉花で、恵麻ちゃんが秋のダリア。それから、みわちゃんが冬のノースポール」
「ノースポール? あんまり知らないですね」
「こういうお花だよ。白くてかわいいの」
「あっ、ほんとにかわいいですねー」

 今回1年生は助手ということで、お揃いのエプロンをつけてもらうことになっている。あたしたちもエプロンからスタートしてるからね。豪華な衣装はさと先輩が担当するようになってからだけど、エプロンはその前からずーっと続く伝統みたいだし。
 さと先輩はメイドさんがつけてるようなフリルエプロンにそれぞれのイメージの花を刺繍してくれていた。その刺繍がまた細かくて綺麗なんだ。あたしは去年木の枝を刺繍してもらったけど、そのエプロンは今じゃ普通に家とかミドリの部屋で使ってるよね。

「さと先輩、それぞれの子の性格とかキャラを刺繍にも反映させてるのすごいですよね。恵麻のダリアなんかすっごい華やかで、華美ですもん。でも、ちとせのすずらんはちっさくてかわいくて」
「やっぱり、その子のイメージもあるからね。恵麻ちゃんとまつりちゃんは派手めの方がいいかなあとか、ちとせちゃんはかわいらしくとかみわちゃんはシンプルにとか、考えはしたんだけどね。気に入ってくれればいいけど、どうかなあ」

 あたしたちのときはサドニナと2人してこーゆーのがいいでーすってさと先輩にリクエストを出してたんだけど、こういうのってリクエストを出してもらえるのと自分で考えるのってどっちがいいんだろう。

「それで、この大量のお花はどうするんですか?」
「一応使えるだけ使ってもらえればいいんだけど、それでも余るだろうからね。もし余ったらもらってくれたら嬉しいな」
「また花冠にしたらいいんじゃないですか?」
「冠を作ってもコサージュにしても余りそうじゃない?」
「まあ余りますね。2人で作るからとにかく量が。さと先輩、彼氏さんと順調そうじゃないですかぁ」
「そう言うユキちゃんはどうなの、ミドリ君とは」
「まあまあ上手くやってますよ」

 さと先輩もあたしも、似たような時期に彼氏が出来て、こういう話をすることもまあありますよね。あと、直クン先輩もかな。さと先輩は青敬の先輩と付き合い始めたんだけど、向こうが1人暮らししてる部屋で一緒にいることが多いんだって。
 それで、彼氏さんは手先が器用だからさと先輩のお花作りを手伝ってくれてるんだって。でも、お喋りしながら作ってたらたくさんになりすぎちゃったって。さと先輩ってお菓子とかお花とか作るときに上限とか目標個数とか設けないのかな。

「おはようございまーす」
「わー、すごいお花ー。きれいですねー」
「まあ! 素敵じゃありませんこと? どなたがこれをご用意されたんですの?」
「これはさと先輩が作ったお花だね。ステージの飾り付けに使ってもいいし、コサージュにしてみんなで付けてもいいしって感じで使い道は自由」
「ちとせ、あなたにはこの可憐なお花が似合ってらしてよ」
「エマちゃんありがとう!」
「沙都子先輩、この白いお花をちとせが付けられるようにしてあげてもらえます?」
「わかったよー。ちとせちゃん、ちょっと待っててね」
「はーい」

 他のみんなも喜んでくれてるみたい。使い道はまだ全然決まらないけど、たくさんのお花に囲まれて、ステージへの士気が高まるのを感じてる。

「さと先輩! あたしはいつも通り草木中心の感じでお願いします!」
「ユキちゃんの注文は承ってます。もうしばらく待ってね」


end.


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久々に青女メイン回。今年度は1年生のキャラをどうにかしたいとは去年言ってたような気がする。
ちとせはくるちゃんとの関係で少しやってたけど、他の3人のキャラはまだまだこれから。今回ちょっと喋ってたのは恵麻嬢。立ちやすそう。
ユキちゃんは2年生のしっかり枠と見せかけて、サドニナと一緒になってきゃっきゃしてることもまああったりする。しっかり見えるのはサドニナとの対比なんだろうなあ。

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