2021
■I won't be extravagant
++++
「律、そろそろ何か動きはあったか?」
「やァー、皆無スね」
動き、というのは新入生勧誘活動に関する動きのことだ。今年のMMPはとにかく人を入れなければならないという話をしていたんだけど、律によれば何の動きもないらしい。4月も終わりそうなこの時期に動きがないのは普通にマズい。
新入生の勧誘活動は一般的には4月いっぱいくらいまでを目途に見学希望の連絡があればいいなーっていう風に構えてるんだけども。うん。いや、サークルへの加入は4月に限らないんだけども、さすがに焦らなければいけない頃合いだぞ。
さて、向島大学放送サークルMMPは何をどうしてこんなに新歓を焦っているのかという理由だ。現在MMPは3年生4人に2年生1人の5人で活動している。MMPでのサークル活動は基本3年で引退になるから、今年は良くても来年が絶望的な状況なのだ。
「野坂、一応聞きヤすが、今年のビラは無差別に配ったンすよね?」
「今年は無差別だ。どや」
「ヤ、ドヤるトコではないスよ。でも、野坂がちゃんと無差別に配ってたとするなら枚数は捌けてるはずスよねェ」
「俺を何だと思ってるんだ」
「野坂には前科がありヤすからね」
「あれは某誰得プロジェクトに引き摺られた結果じゃないか」
「カボチャ摘みの作業スね」
去年の新歓は、菜月先輩主導の「ゲッティング☆ガールプロジェクト」と冠したカボチャ摘み……もとい、女子狙いの活動を行っていた。その結果入ったのが奈々1人という、言ってしまえば結果は惨敗だ。
どうして女子狙いで人を呼び込もうとしていたのかと言うと、サークルの男女比にある。陰のオーラに溢れるMMPの男女比は圧倒的に男子の方が多い。今年もだけど、去年の今頃もサークルに女子は1人だった。その事態を嘆いた菜月先輩が「女子を入れたい!」と声高らかに宣言された。
そうして始まったゲッティング☆ガールプロジェクトだったのだけど、呼びこむ女子には厳しい条件があった。菜月先輩好みの、春風の似合うぽわぽわして癒される女子……とかいうワケのわからないものでなければならなかったのだ。
そもそもが男子の方が多い向島大学でそんなモンいるワケねーだろと思いつつも、菜月先輩の仰ることなのでちゃんと言うことは聞いてました。俺にとって女子は皆等しくカボチャかジャガイモ、菜月先輩以外は正直どれもこれも一緒だしどうでもいい。
ポーズだけはそれらしいカボチャを探しつつも、俺は俺で圭斗先輩ばりのイケメン増えろと念じながら、それっぽいイケメンに偏ってビラを配っていた結果ですよ。今年になって律から“前科”と言われる始末だ。まあ、結果はお察しですね。
「俺にカボチャ摘みなんて出来るわけないだろ、いい加減にしろ」
「女子を皆等しくカボチャ扱いするから去年の冬至にエライ目に遭ったンすよねェ」
「こーたの奴、後でぶん殴ってやる」
しかしまあ、人がいないならいないなりに活動はやって行かなければならないので、今日は来月から始まる昼放送のことを話し合うそうだ。ただ、現行メンバーはアナウンサーが1人とミキサーが4人。わかってたけどバランスが悪い。
「律、今日は昼放送のことを話し合うんだろ?」
「そースね。ヒロと予定が合うのはだーれだって擦り合わせるだけの作業スけどね」
「ヒロと予定が合うのはだーれだ、か。アイツ、結構履修キツキツだったはずだけど誰がアイツの相手をするんだ。文系の3年って結構緩くなってんだろ」
「まァほどほどに緩いすね。自分もこーたも全休を作ってヤすし、来てる日も午後からとか、そんな感じスよ」
「だよなー…! いないんだよな、お前らは学内に!」
如何せんヒロというのは緩すぎるんだ。いや、緩いだけならいい! それをやれトークタイムが長すぎるだの何だのとミキサーに文句を垂れて即逆キューを振るわ、曲を用意しろと言っても持って来ないわ。ワガママ放題で好き勝手し過ぎるんだ。
そんなヒロでも消去法で現在はMMPのアナウンス部長で、現在は唯一のアナウンサー。残る4人のミキサーの中から誰かがペアを組んでサークルとしての活動を維持させなければならないのだ。だけども、律とこーたの文系組は学内にいない時間も増えている。
昼放送はペアの予定が合ったときに収録した30分の番組を食堂で流させてもらっている。番組自体は30分だけど、収録にはそれ以上の時間がかかる。予定を合わせると一言で言っても授業やバイトの都合もあってなかなか難しいんだ。
「野坂、やりたく無さが滲み出てヤすよ」
「だってヒロだろ?」
「そうは言っても、やらないことには放送サークルとしての活動は出来ないスよ」
「そうなんだよな~…! 今からヒロがアブダクションに遭って脳を入れ替えない限り、こう、望み薄と言うか、なあ」
「もしヒロと予定が合うのが野坂だけだったとしたら、その時点でペア決定になりヤすから。サークルの存在意義ッつー意味でもその時はちゃんとやってもらってスね」
「まあ、その時は覚悟を決めるしかないけど、基本ヒロとは組みたくないとは言っとくぞ」
「ま、ヒロはヒロで野坂NGを出して来るとは思いヤすけど、時と場合によっちゃァ甘やかしヤせんからその時は何卒ヨロシク」
そうだな、そうなんだよな。週1しかない昼放送の枠にサークルの存在意義とか、そんなモンが乗っかって来る学期なんだよな。いや~……今からでも1年生降って来ないかなー! 圭斗先輩ばりの美形とか高崎先輩ばりの男前とかそんな贅沢は言わないんで1年生~!
end.
++++
そういやフェーズ2初年度だった去年はヒロがなかなか大人しかったと言うか、話にあんまり出てこなかった感じがする。今年はやりたいね、ヒロの話。
そしてとことんヒロとはペアを組みたくないと喚くノサカ。今までの3期はフルで菜月さん相手だったので、落差がとんでもないんだろうなあ。舌が肥えた的な。
例によって菜月さん発の某プロジェクトをボロクソに言わせたら右に出る者がないノサカよ。菜月さんがナンバーワンでオンリーワンだから他は必要ないんだよな!
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「律、そろそろ何か動きはあったか?」
「やァー、皆無スね」
動き、というのは新入生勧誘活動に関する動きのことだ。今年のMMPはとにかく人を入れなければならないという話をしていたんだけど、律によれば何の動きもないらしい。4月も終わりそうなこの時期に動きがないのは普通にマズい。
新入生の勧誘活動は一般的には4月いっぱいくらいまでを目途に見学希望の連絡があればいいなーっていう風に構えてるんだけども。うん。いや、サークルへの加入は4月に限らないんだけども、さすがに焦らなければいけない頃合いだぞ。
さて、向島大学放送サークルMMPは何をどうしてこんなに新歓を焦っているのかという理由だ。現在MMPは3年生4人に2年生1人の5人で活動している。MMPでのサークル活動は基本3年で引退になるから、今年は良くても来年が絶望的な状況なのだ。
「野坂、一応聞きヤすが、今年のビラは無差別に配ったンすよね?」
「今年は無差別だ。どや」
「ヤ、ドヤるトコではないスよ。でも、野坂がちゃんと無差別に配ってたとするなら枚数は捌けてるはずスよねェ」
「俺を何だと思ってるんだ」
「野坂には前科がありヤすからね」
「あれは某誰得プロジェクトに引き摺られた結果じゃないか」
「カボチャ摘みの作業スね」
去年の新歓は、菜月先輩主導の「ゲッティング☆ガールプロジェクト」と冠したカボチャ摘み……もとい、女子狙いの活動を行っていた。その結果入ったのが奈々1人という、言ってしまえば結果は惨敗だ。
どうして女子狙いで人を呼び込もうとしていたのかと言うと、サークルの男女比にある。陰のオーラに溢れるMMPの男女比は圧倒的に男子の方が多い。今年もだけど、去年の今頃もサークルに女子は1人だった。その事態を嘆いた菜月先輩が「女子を入れたい!」と声高らかに宣言された。
そうして始まったゲッティング☆ガールプロジェクトだったのだけど、呼びこむ女子には厳しい条件があった。菜月先輩好みの、春風の似合うぽわぽわして癒される女子……とかいうワケのわからないものでなければならなかったのだ。
そもそもが男子の方が多い向島大学でそんなモンいるワケねーだろと思いつつも、菜月先輩の仰ることなのでちゃんと言うことは聞いてました。俺にとって女子は皆等しくカボチャかジャガイモ、菜月先輩以外は正直どれもこれも一緒だしどうでもいい。
ポーズだけはそれらしいカボチャを探しつつも、俺は俺で圭斗先輩ばりのイケメン増えろと念じながら、それっぽいイケメンに偏ってビラを配っていた結果ですよ。今年になって律から“前科”と言われる始末だ。まあ、結果はお察しですね。
「俺にカボチャ摘みなんて出来るわけないだろ、いい加減にしろ」
「女子を皆等しくカボチャ扱いするから去年の冬至にエライ目に遭ったンすよねェ」
「こーたの奴、後でぶん殴ってやる」
しかしまあ、人がいないならいないなりに活動はやって行かなければならないので、今日は来月から始まる昼放送のことを話し合うそうだ。ただ、現行メンバーはアナウンサーが1人とミキサーが4人。わかってたけどバランスが悪い。
「律、今日は昼放送のことを話し合うんだろ?」
「そースね。ヒロと予定が合うのはだーれだって擦り合わせるだけの作業スけどね」
「ヒロと予定が合うのはだーれだ、か。アイツ、結構履修キツキツだったはずだけど誰がアイツの相手をするんだ。文系の3年って結構緩くなってんだろ」
「まァほどほどに緩いすね。自分もこーたも全休を作ってヤすし、来てる日も午後からとか、そんな感じスよ」
「だよなー…! いないんだよな、お前らは学内に!」
如何せんヒロというのは緩すぎるんだ。いや、緩いだけならいい! それをやれトークタイムが長すぎるだの何だのとミキサーに文句を垂れて即逆キューを振るわ、曲を用意しろと言っても持って来ないわ。ワガママ放題で好き勝手し過ぎるんだ。
そんなヒロでも消去法で現在はMMPのアナウンス部長で、現在は唯一のアナウンサー。残る4人のミキサーの中から誰かがペアを組んでサークルとしての活動を維持させなければならないのだ。だけども、律とこーたの文系組は学内にいない時間も増えている。
昼放送はペアの予定が合ったときに収録した30分の番組を食堂で流させてもらっている。番組自体は30分だけど、収録にはそれ以上の時間がかかる。予定を合わせると一言で言っても授業やバイトの都合もあってなかなか難しいんだ。
「野坂、やりたく無さが滲み出てヤすよ」
「だってヒロだろ?」
「そうは言っても、やらないことには放送サークルとしての活動は出来ないスよ」
「そうなんだよな~…! 今からヒロがアブダクションに遭って脳を入れ替えない限り、こう、望み薄と言うか、なあ」
「もしヒロと予定が合うのが野坂だけだったとしたら、その時点でペア決定になりヤすから。サークルの存在意義ッつー意味でもその時はちゃんとやってもらってスね」
「まあ、その時は覚悟を決めるしかないけど、基本ヒロとは組みたくないとは言っとくぞ」
「ま、ヒロはヒロで野坂NGを出して来るとは思いヤすけど、時と場合によっちゃァ甘やかしヤせんからその時は何卒ヨロシク」
そうだな、そうなんだよな。週1しかない昼放送の枠にサークルの存在意義とか、そんなモンが乗っかって来る学期なんだよな。いや~……今からでも1年生降って来ないかなー! 圭斗先輩ばりの美形とか高崎先輩ばりの男前とかそんな贅沢は言わないんで1年生~!
end.
++++
そういやフェーズ2初年度だった去年はヒロがなかなか大人しかったと言うか、話にあんまり出てこなかった感じがする。今年はやりたいね、ヒロの話。
そしてとことんヒロとはペアを組みたくないと喚くノサカ。今までの3期はフルで菜月さん相手だったので、落差がとんでもないんだろうなあ。舌が肥えた的な。
例によって菜月さん発の某プロジェクトをボロクソに言わせたら右に出る者がないノサカよ。菜月さんがナンバーワンでオンリーワンだから他は必要ないんだよな!
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