2021
■気が付けば初夏
++++
「おはようございまーす」
「ああ、川北。来たか」
「最近は熱~いお茶っていう気分でもないですし、そろそろ俺もお茶ポットとか買ってマイお茶でも作っておいた方がいいですかねー」
「確かにこれからの季節は冷茶があればいいだろうな。ポットを買うなら名前を書いて管理しろよ」
「はーい」
情報センターのバイトも2年目に入って、大分慣れて来たなと思う。私物もちょっと増えて来たし、人が少ない時にはちょっとおやつをつまみながら仕事をしたり。おやつと言うか、春山さんが置いて行ったプレッツェルだね。食べるのも大事な仕事。
仕事中にはみんなそれぞれ好きな飲み物を飲んでるんだけど、最近は気温も高いし熱いお茶より冷たいお茶をクーッと飲みたいなーって思うことも多々。いちいち沸かすの面倒だからリットル単位で作り置きしようって思うくらいにはここにいる気だよね。
「あっ、そしたら氷も作っとかなきゃ。冷凍庫ってどうなってましたっけ」
「ああ、冷凍庫で思い出した」
「はい?」
「那須田さんが差し入れと称しアイスを詰めて行った。好きな物を取るといい。ちなみにオレはもう確保済みだからな。横取りするなよ」
「わーい、いいんですかー? いただきまーす」
センターには一応大学職員の所長さんという人がいる。所長の那須田さんはゆるいと言うかいい加減と言うか……何の仕事をしてるのかイマイチよくわからないんだけど、たまにこうやって差し入れをくれたりするんだよね。
でも、バイトの面接に来た人に合否を出すのも結局はバイトリーダーの仕事になってるし、去年の年末には年賀状の宛名書きを当時研修生だったカナコさんに任せてたり……いないことの方が多いのに、こっちが学生課に何か言おうとしたら那須田さんを通せーって。まいっか。何のアイスだろう。
「わ、わー! ソフトクリームだー!」
「去年のハーゲンダッツも美味かったが、あれはミニカップだったし値段的にも量的にもこちらの方が上だな」
「あっ、林原さんは安定の抹茶ソフトですねー。あー! ほうじ茶ソフトもある! これ、まだ引き取り手決まってませんか!?」
「無記名であるならまだだな」
「これ、いただきますー!」
ほうじ茶ソフトに、俺も林原さんがしてるみたくマスキングテープに名前を書いてペタリ。抹茶とほうじ茶の他には北辰ミルク、チョコ、紅芋、メロンがある。現在アクティブなスタッフは6人いるけど、そう言えば俺と林原さん以外のみんなの好みって?
「あとは誰がもらってないんですかね?」
「オレと烏丸はもう確保したし、他の連中だろう」
「烏丸さんてアイス食べるんですね」
「全く食わんことはないそうだ。紅芋に名前が貼ってあるだろう」
「あ、ホントだ。そう言えば烏丸さん、サツマイモ好きでしたね」
前に烏丸さんが農業をやっている友達からもらってっていうサツマイモを春山さんに美味しく料理してもらったんだよね。大学芋にしてもらったのが本当に美味しかったなー。あー、そんなことを思い出したら大学芋食べたくなってきた。スーパーかお惣菜屋さんにあるかな?
「おはようございます」
「有馬、冷凍庫に所長からの差し入れでアイスがある。記名の無い物があと3つあるはずだ。好きな物を取るといい」
「いいんですか? ありがとうございます」
「有馬くん、あと北辰ミルクとチョコとメロンが残ってるよ」
「そしたら僕はミルクをいただきます」
「有馬くん北辰出身だし北辰ってついてる物に厳しそうだなあ」
「独特の食文化はあると思いますけど、僕はそこまで深く気にしない方なので……えっと、マスキングテープはどれを使ったらいいですか?」
「あっ、これ使ってー」
「ありがとうございます。川北さんたちはもうもらったんですか?」
「そうだねー。俺はほうじ茶にしたよ。林原さんは抹茶で、烏丸さんは紅芋。で、有馬くんがミルクをもらったから、後はカナコさんとアオでチョコとメロンを分けるのかな」
「あ……冷静に考えたら、僕は1年ですし先輩に先に取ってもらうべきでしたか?」
「ううん、大丈夫だよ。今日は早い者勝ち」
「でも、残った物が先輩たちの好みとは限りませんよね」
「カナコさんもアオも特段好き嫌いが目立つ人じゃないし大丈夫だよ」
本当に大丈夫かなってそわそわしてる有馬くんを何とか励ますんだけど、確かに味ともらうタイミングがバラバラだとそういう心配も出て来るんだね。エライな、俺そんなこと全然考えてなかった。でもほうじ茶がある時点でみんなが俺に譲ってくれるんだもんなー…!
「綾瀬と高山は今日は来んはずだし、これを貼っておいてくれ」
「わかりましたー」
林原さんから受け取った書置きの付箋を冷凍庫のドアにペタリ。後はこれを見た2人の間で話し合い。そう言えば、みんなの好きな味って言うか、好みってあんまり知らないなあ。林原さんはミルクティーとか抹茶が好きって知ってるんだけどね。
「アイスを見ていると食パンが欲しくなりますね」
「食パン? アイスと一緒に食べるの?」
「僕は厚めの食パンを焼いた上にアイスを乗せて、そこにハチミツをかけて食べるのが好きなんです」
「あ~、美味しそう! 俺もやりたい!」
「有馬、川北。食パンなら烏丸が持っているだろう。つついてみてはどうだ」
「さすがに烏丸さんの主食のパンはもらえません! 帰りにコンビニで買って帰ります!」
いや、コンビニよりスーパーの方がいいかな? お茶ポットも買いたいし。冷茶を作るにも、ヤカンで沸かすより水出しのティーバッグの方が楽だよね、センターだし。ちょっと、思った以上に夏支度に忙しいかもしれない。
end.
++++
那須田さんが差し入れと称してアイスを持って来るのは情報センターではよくあることなのかもしれない。所長の仕事とは。
今日の出来事をユキちゃんに話したらさとちゃんからホームベーカリー借りて来るくらいのパワープレーしてくんないかなユキちゃん。そんなミドユキがかわいい。
そして何気にまだ完全にはなくなっていない春山さんのプレッツェルである。乾きものだからあなかなかダメにならないんだよなあ
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「おはようございまーす」
「ああ、川北。来たか」
「最近は熱~いお茶っていう気分でもないですし、そろそろ俺もお茶ポットとか買ってマイお茶でも作っておいた方がいいですかねー」
「確かにこれからの季節は冷茶があればいいだろうな。ポットを買うなら名前を書いて管理しろよ」
「はーい」
情報センターのバイトも2年目に入って、大分慣れて来たなと思う。私物もちょっと増えて来たし、人が少ない時にはちょっとおやつをつまみながら仕事をしたり。おやつと言うか、春山さんが置いて行ったプレッツェルだね。食べるのも大事な仕事。
仕事中にはみんなそれぞれ好きな飲み物を飲んでるんだけど、最近は気温も高いし熱いお茶より冷たいお茶をクーッと飲みたいなーって思うことも多々。いちいち沸かすの面倒だからリットル単位で作り置きしようって思うくらいにはここにいる気だよね。
「あっ、そしたら氷も作っとかなきゃ。冷凍庫ってどうなってましたっけ」
「ああ、冷凍庫で思い出した」
「はい?」
「那須田さんが差し入れと称しアイスを詰めて行った。好きな物を取るといい。ちなみにオレはもう確保済みだからな。横取りするなよ」
「わーい、いいんですかー? いただきまーす」
センターには一応大学職員の所長さんという人がいる。所長の那須田さんはゆるいと言うかいい加減と言うか……何の仕事をしてるのかイマイチよくわからないんだけど、たまにこうやって差し入れをくれたりするんだよね。
でも、バイトの面接に来た人に合否を出すのも結局はバイトリーダーの仕事になってるし、去年の年末には年賀状の宛名書きを当時研修生だったカナコさんに任せてたり……いないことの方が多いのに、こっちが学生課に何か言おうとしたら那須田さんを通せーって。まいっか。何のアイスだろう。
「わ、わー! ソフトクリームだー!」
「去年のハーゲンダッツも美味かったが、あれはミニカップだったし値段的にも量的にもこちらの方が上だな」
「あっ、林原さんは安定の抹茶ソフトですねー。あー! ほうじ茶ソフトもある! これ、まだ引き取り手決まってませんか!?」
「無記名であるならまだだな」
「これ、いただきますー!」
ほうじ茶ソフトに、俺も林原さんがしてるみたくマスキングテープに名前を書いてペタリ。抹茶とほうじ茶の他には北辰ミルク、チョコ、紅芋、メロンがある。現在アクティブなスタッフは6人いるけど、そう言えば俺と林原さん以外のみんなの好みって?
「あとは誰がもらってないんですかね?」
「オレと烏丸はもう確保したし、他の連中だろう」
「烏丸さんてアイス食べるんですね」
「全く食わんことはないそうだ。紅芋に名前が貼ってあるだろう」
「あ、ホントだ。そう言えば烏丸さん、サツマイモ好きでしたね」
前に烏丸さんが農業をやっている友達からもらってっていうサツマイモを春山さんに美味しく料理してもらったんだよね。大学芋にしてもらったのが本当に美味しかったなー。あー、そんなことを思い出したら大学芋食べたくなってきた。スーパーかお惣菜屋さんにあるかな?
「おはようございます」
「有馬、冷凍庫に所長からの差し入れでアイスがある。記名の無い物があと3つあるはずだ。好きな物を取るといい」
「いいんですか? ありがとうございます」
「有馬くん、あと北辰ミルクとチョコとメロンが残ってるよ」
「そしたら僕はミルクをいただきます」
「有馬くん北辰出身だし北辰ってついてる物に厳しそうだなあ」
「独特の食文化はあると思いますけど、僕はそこまで深く気にしない方なので……えっと、マスキングテープはどれを使ったらいいですか?」
「あっ、これ使ってー」
「ありがとうございます。川北さんたちはもうもらったんですか?」
「そうだねー。俺はほうじ茶にしたよ。林原さんは抹茶で、烏丸さんは紅芋。で、有馬くんがミルクをもらったから、後はカナコさんとアオでチョコとメロンを分けるのかな」
「あ……冷静に考えたら、僕は1年ですし先輩に先に取ってもらうべきでしたか?」
「ううん、大丈夫だよ。今日は早い者勝ち」
「でも、残った物が先輩たちの好みとは限りませんよね」
「カナコさんもアオも特段好き嫌いが目立つ人じゃないし大丈夫だよ」
本当に大丈夫かなってそわそわしてる有馬くんを何とか励ますんだけど、確かに味ともらうタイミングがバラバラだとそういう心配も出て来るんだね。エライな、俺そんなこと全然考えてなかった。でもほうじ茶がある時点でみんなが俺に譲ってくれるんだもんなー…!
「綾瀬と高山は今日は来んはずだし、これを貼っておいてくれ」
「わかりましたー」
林原さんから受け取った書置きの付箋を冷凍庫のドアにペタリ。後はこれを見た2人の間で話し合い。そう言えば、みんなの好きな味って言うか、好みってあんまり知らないなあ。林原さんはミルクティーとか抹茶が好きって知ってるんだけどね。
「アイスを見ていると食パンが欲しくなりますね」
「食パン? アイスと一緒に食べるの?」
「僕は厚めの食パンを焼いた上にアイスを乗せて、そこにハチミツをかけて食べるのが好きなんです」
「あ~、美味しそう! 俺もやりたい!」
「有馬、川北。食パンなら烏丸が持っているだろう。つついてみてはどうだ」
「さすがに烏丸さんの主食のパンはもらえません! 帰りにコンビニで買って帰ります!」
いや、コンビニよりスーパーの方がいいかな? お茶ポットも買いたいし。冷茶を作るにも、ヤカンで沸かすより水出しのティーバッグの方が楽だよね、センターだし。ちょっと、思った以上に夏支度に忙しいかもしれない。
end.
++++
那須田さんが差し入れと称してアイスを持って来るのは情報センターではよくあることなのかもしれない。所長の仕事とは。
今日の出来事をユキちゃんに話したらさとちゃんからホームベーカリー借りて来るくらいのパワープレーしてくんないかなユキちゃん。そんなミドユキがかわいい。
そして何気にまだ完全にはなくなっていない春山さんのプレッツェルである。乾きものだからあなかなかダメにならないんだよなあ
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