2021
■火花は消していこう
++++
「みんな見て見て、購買に新しいお菓子売ってたんだよ。みんなで食べよう」
「お、いいね。そしたらそれ食べながらでいいから活動報告なー」
星港大学放送サークルUHBC、油断するとお茶会サークルのようになりがちだけど、ラジオ番組を制作するっていう活動をしてるサークルだ。今はツカサ先輩とテル先輩が実質的リーダーみたいな感じでまとめてくれてるのかな。
2年生は俺とアオ、それからモモの3人がレギュラーっていう感じで、他にも人はいるけど来たり来なかったりまばら。元々そんなに厳しいサークルでもないからね。で、1年生ですよ~。今現在1年生は4人入ってくれたのかな。
「はいミドリ、お茶ゴーフルだって。ほうじ茶だよね」
「わー、ありがとー」
テル先輩が持って来てくれたこのお茶ゴーフルというのは、お茶のフレーバーのクリームが挟まってサクサクっとしたお菓子みたいだ。味は抹茶、ほうじ茶、紅茶の3種類。2年生以上は俺がほうじ茶好きって知ってるから、残しといてくれるんだよね。
「ファンフェスの班割りも出たし、顔合わせをやってるところはやってるのかな? 誰か、やった人いる?」
「あ、はい。私はもう行ってきました」
「アオって誰の班だっけ」
「班長が野坂先輩で、啓子先輩とエージがいます」
「あー、野坂なら初動が早いのも頷ける」
UHBCはインターフェイスっていう組織に参加してて、他校の人と一緒に活動をすることもある。5月の連休明けにあるファンタジックフェスタっていうイベントにもDJブースを出展して、持ち回りで番組をやることになってるんだ。
「そういやテル、今年機材ってどうなってる? 去年は確かウチのを使ってただろ」
「今年はちゃんとインターフェイスの機材を使うよ。インターフェイス、ちょっとお金なさすぎたし」
「そっか。そうだよな。あれだけのお金がウチに入って来たってことは、それだけインターフェイスの収入が無かったってことだもんな」
去年のファンフェスでは機材を巡ってちょっとトラブルがあった。インターフェイスで持ってる機材は会議をさせてもらってるビルの物置に置かせてもらってるんだけど、それがなかなか険しい感じの物置で。掘り起こすのが大変そうだったんだって。
それで立地的にも割といい感じの星大から機材を出せないかーって頼まれて、ウチの機材を出したそうなんだ。機材にもしものことがあったときのためにみんなからもらう機材保障費っていうのを全額星港大学でもらうっていうのが貸し出す条件だったんだって。
それ以来、インターフェイスの行事でどこかの大学さんから機材を借りたときには機材保障費をまるっとその貸出元の大学さんに渡してたんだけど、それでインターフェイスの収入がガクーンと減っちゃって、財政状況がとんでもないことになってるとか。
「去年の機材の件は、大石先輩を板挟みにした石川先輩と圭斗先輩との戦争だったっていう風には聞いてますけど」
「そうなんだよなー、仲悪かったもんなあの人たち」
「あの2人の間で大石先輩がただただ大変そうだったとは」
インターフェイスでは他校にも友達が出来るしみんな仲が良い、というのも本当ではあるんだけど、合わない人は合わないっていうこともあるみたい。今は引退しちゃったけど、4年生の先輩には共演NGみたいな指定もあったとかなかったとか。
「石川先輩って圭斗先輩の話になる度に毒吐いてたよな」
「言ってることに中身がないとか、所詮口だけで実際何かをやってるわけじゃないーとか。あの人定例会っていう物自体にも懐疑的だから、正直俺も胃が痛かった」
「でも石川先輩は実際やれば出来てしまう人だもんな」
「石川先輩の言う圭斗先輩評もそれはそれで正しいんですよ。でも、私は圭斗先輩が石川先輩に対して言ってることにも一定の理解は示してるんです」
「圭斗先輩も何か言ってたのか?」
「掻い摘んで言えば、こっちのやり方に文句があるなら現場に出て来てから言えやクソが、的なことですね。安全圏から憶測で好き勝手言ってんじゃねーぞ、と」
石川先輩と圭斗先輩の間に散ってた火花が俺の思ってた、聞いてた以上にバチバチだったから、なんかもう、大石先輩本当にお疲れさまでしたって感じで胸がいっぱいだ。今の2、3年生は特に誰と誰が合わないとかっていう話はなかったよね?
「ツカサ、大石先輩があんまり自己主張しない人で良かったかもしれない」
「何でだ?」
「だって、大石先輩が自分の意見を言ってどっちかに付いてたら、絶対もっと面倒なことに発展してただろ」
「あー……まあ、確かに。でも、大石先輩も言う時は言うし、多分歴代UHBCの中でも一番リアリストである意味残酷な人ではあると思う、多分」
ほわほわーっとして優しくて、みんなの声をまず聞いてくれる大石先輩が、強く人に物を言うイメージは全く出来ないし、リアリストはともかく残酷な人って言われるような印象が全くわからない。人にはいろんな面があるのかな。俺も自分が思いもよらない見え方をしてるのかな。
「さ! 4年生の話は措いといて、ファンフェスの話な。ちなみに俺は明後日顔合わせに行ってきます。テルは?」
「俺は土曜日に顔合わせ」
「テル先輩がしっかりと班長をやれてるイメージがあまり……」
「アオ!? い、一応これからだし……ちゃんとやれるかな~…!」
「アオ、あんまりテルをイジメてやるな」
「すみません。ふと疑問に思ったので。お菓子でも食べて元気出してください。どうぞ」
「てか俺が買って来たヤツ」
end.
++++
テルはあんまりストレス耐性なさそう。ちょっとしたことで胃がムカムカしてるのかな、大変そうだ。
圭斗さんとイシカー兄さんがバチバチやり合ってたのを星大の下の子たちは案外めんどくせーと思いながら見ていたのかもしれない。
ツカサのちーちゃん評に関しては、フェーズ1で結局やれなかったバタやんこと瑞希の件でいろいろと言われてるからなんだけど、そのうち触れたい
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「みんな見て見て、購買に新しいお菓子売ってたんだよ。みんなで食べよう」
「お、いいね。そしたらそれ食べながらでいいから活動報告なー」
星港大学放送サークルUHBC、油断するとお茶会サークルのようになりがちだけど、ラジオ番組を制作するっていう活動をしてるサークルだ。今はツカサ先輩とテル先輩が実質的リーダーみたいな感じでまとめてくれてるのかな。
2年生は俺とアオ、それからモモの3人がレギュラーっていう感じで、他にも人はいるけど来たり来なかったりまばら。元々そんなに厳しいサークルでもないからね。で、1年生ですよ~。今現在1年生は4人入ってくれたのかな。
「はいミドリ、お茶ゴーフルだって。ほうじ茶だよね」
「わー、ありがとー」
テル先輩が持って来てくれたこのお茶ゴーフルというのは、お茶のフレーバーのクリームが挟まってサクサクっとしたお菓子みたいだ。味は抹茶、ほうじ茶、紅茶の3種類。2年生以上は俺がほうじ茶好きって知ってるから、残しといてくれるんだよね。
「ファンフェスの班割りも出たし、顔合わせをやってるところはやってるのかな? 誰か、やった人いる?」
「あ、はい。私はもう行ってきました」
「アオって誰の班だっけ」
「班長が野坂先輩で、啓子先輩とエージがいます」
「あー、野坂なら初動が早いのも頷ける」
UHBCはインターフェイスっていう組織に参加してて、他校の人と一緒に活動をすることもある。5月の連休明けにあるファンタジックフェスタっていうイベントにもDJブースを出展して、持ち回りで番組をやることになってるんだ。
「そういやテル、今年機材ってどうなってる? 去年は確かウチのを使ってただろ」
「今年はちゃんとインターフェイスの機材を使うよ。インターフェイス、ちょっとお金なさすぎたし」
「そっか。そうだよな。あれだけのお金がウチに入って来たってことは、それだけインターフェイスの収入が無かったってことだもんな」
去年のファンフェスでは機材を巡ってちょっとトラブルがあった。インターフェイスで持ってる機材は会議をさせてもらってるビルの物置に置かせてもらってるんだけど、それがなかなか険しい感じの物置で。掘り起こすのが大変そうだったんだって。
それで立地的にも割といい感じの星大から機材を出せないかーって頼まれて、ウチの機材を出したそうなんだ。機材にもしものことがあったときのためにみんなからもらう機材保障費っていうのを全額星港大学でもらうっていうのが貸し出す条件だったんだって。
それ以来、インターフェイスの行事でどこかの大学さんから機材を借りたときには機材保障費をまるっとその貸出元の大学さんに渡してたんだけど、それでインターフェイスの収入がガクーンと減っちゃって、財政状況がとんでもないことになってるとか。
「去年の機材の件は、大石先輩を板挟みにした石川先輩と圭斗先輩との戦争だったっていう風には聞いてますけど」
「そうなんだよなー、仲悪かったもんなあの人たち」
「あの2人の間で大石先輩がただただ大変そうだったとは」
インターフェイスでは他校にも友達が出来るしみんな仲が良い、というのも本当ではあるんだけど、合わない人は合わないっていうこともあるみたい。今は引退しちゃったけど、4年生の先輩には共演NGみたいな指定もあったとかなかったとか。
「石川先輩って圭斗先輩の話になる度に毒吐いてたよな」
「言ってることに中身がないとか、所詮口だけで実際何かをやってるわけじゃないーとか。あの人定例会っていう物自体にも懐疑的だから、正直俺も胃が痛かった」
「でも石川先輩は実際やれば出来てしまう人だもんな」
「石川先輩の言う圭斗先輩評もそれはそれで正しいんですよ。でも、私は圭斗先輩が石川先輩に対して言ってることにも一定の理解は示してるんです」
「圭斗先輩も何か言ってたのか?」
「掻い摘んで言えば、こっちのやり方に文句があるなら現場に出て来てから言えやクソが、的なことですね。安全圏から憶測で好き勝手言ってんじゃねーぞ、と」
石川先輩と圭斗先輩の間に散ってた火花が俺の思ってた、聞いてた以上にバチバチだったから、なんかもう、大石先輩本当にお疲れさまでしたって感じで胸がいっぱいだ。今の2、3年生は特に誰と誰が合わないとかっていう話はなかったよね?
「ツカサ、大石先輩があんまり自己主張しない人で良かったかもしれない」
「何でだ?」
「だって、大石先輩が自分の意見を言ってどっちかに付いてたら、絶対もっと面倒なことに発展してただろ」
「あー……まあ、確かに。でも、大石先輩も言う時は言うし、多分歴代UHBCの中でも一番リアリストである意味残酷な人ではあると思う、多分」
ほわほわーっとして優しくて、みんなの声をまず聞いてくれる大石先輩が、強く人に物を言うイメージは全く出来ないし、リアリストはともかく残酷な人って言われるような印象が全くわからない。人にはいろんな面があるのかな。俺も自分が思いもよらない見え方をしてるのかな。
「さ! 4年生の話は措いといて、ファンフェスの話な。ちなみに俺は明後日顔合わせに行ってきます。テルは?」
「俺は土曜日に顔合わせ」
「テル先輩がしっかりと班長をやれてるイメージがあまり……」
「アオ!? い、一応これからだし……ちゃんとやれるかな~…!」
「アオ、あんまりテルをイジメてやるな」
「すみません。ふと疑問に思ったので。お菓子でも食べて元気出してください。どうぞ」
「てか俺が買って来たヤツ」
end.
++++
テルはあんまりストレス耐性なさそう。ちょっとしたことで胃がムカムカしてるのかな、大変そうだ。
圭斗さんとイシカー兄さんがバチバチやり合ってたのを星大の下の子たちは案外めんどくせーと思いながら見ていたのかもしれない。
ツカサのちーちゃん評に関しては、フェーズ1で結局やれなかったバタやんこと瑞希の件でいろいろと言われてるからなんだけど、そのうち触れたい
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