2021
■春2回目の様式美
公式学年+1年
++++
「5月の合同ゼミではバーベキューやるからね。2年生から4年生までが勢揃いする数少ない機会になるから、ぜひ楽しんでちょうだい」
木曜3限、ゼミの授業は佐藤先生からの連絡で始まる。佐藤ゼミには正式に履修している授業コマの他に、合同ゼミという活動がある。水曜日の4、5限の時間帯に学年が入り混じった授業を行うんだそうだ。5月の枠はバーベキューなのだという。
そこで先生から言われたのは、こういう行事では誰か幹事を立てて、その人が中心になって進めてほしいということ。大学を卒業するまでに1人1回はゼミの行事の幹事をやらなくてはならない「一人一幹事制度」というものもあるんだそうだ。
「それで、毎年学年でお揃いのTシャツも作ってるから。そのTシャツのデザインと発注を誰か担当してちょうだい。これも幹事1回にカウントするからね。それからバーベキューの幹事を決めて、今日の授業の前半半分でバーベキューの話し合いをしてくれる?」
「幹事かー。こんだけの人数まとめて動くとか、何か大変そうだな。出来れば早いうちに済ませときてーなー」
「そうだな。でも、Tシャツのデザインはそういうのが得意な人にやってもらった方がいいだろうし、俺はやれてバーベキューの方かな」
「ああ、そうそう! シノキ君!」
「はい、何すか?」
「君はこの一人一幹事制度の例外。幹事やらなくていいから」
「えっ? 何でっすか?」
「君にはこういう行事以外の場所でしっかり働いてもらわなきゃいけないのよ」
「はあ」
「どうあってもやりたいって言うならやってもいいけど、それだと君が働き過ぎることになるから。他の子たちにも中心になってもらわないといけないからね」
シノは腑に落ちないっていう顔をしてるけど、シノが働くべきアクティビティ以外の場所と言えばラジオ関係しかないだろう。高木先輩はオープンキャンパスや大学祭でもミキサーとして働いていたそうだから、シノもそういった道を辿るのかもしれない。
ただ、同じMBCCと言ってもミキサーのシノとアナウンサーの俺では期待される役割も大きく異なるのだと改めて理解をした。幹事制度が免除されたシノと、話にも挙がって来ない俺だ。幹事が必要そうな行事ってどれくらいあるんだろう。
「それじゃアタシTシャツ作ろっかな。他に得意な人いれば全然譲るけど」
「まいみぃならグッズ作りのノウハウもあるし、俺は適任だと思うな」
「おっ、期待の頭脳派から推薦いただきましたー。陸、その発言撤回しないでよね!」
「しないしない。でも、他に誰が何を得意にしてるかとかも知らないから。こういうゼミだしイラストとかデザイン得意な人いそうじゃないか?」
「他に誰かTシャツやりたい人いるー? はいいなーい。それじゃアタシやりまーす。あいまいみぃー」
Tシャツ作りはするっとまいみぃがやることに決定して、次に決めるのはバーベキューの幹事だ。バーベキューの幹事はみんなに何を食べるか聞いて、必要なものを買いに行ったりするのが主な仕事だそうだ。当日はみんなに仕事を割り振って欲しいとも。
「ちょっと、誰かバーベキューの幹事やるって子はいないの? 今年の子たちはバーベキューやったことないのかな?」
「つか、2回目のゼミでガンガン行ける方がどうかしてると思うんだよ俺は。まだまだ牽制の段階だろ」
「シノ、気付いてても大きな声では言っちゃダメなヤツだ」
「……それじゃあ、やります」
「おっ、いいねえ! 君、名前は?」
「相倉です」
「他に立候補がいないなら相倉君に決まるけど、それでいい?」
いいでーすとシノとまいみぃが返事をすれば、それでそのように通ってしまう。まだまだこういう場で肯定の返事をするにも度胸がいる段階だ。こうなると、シノが幹事制度から外れてしまっているのが惜しいと言うか何と言うか。
「亮真、本当にやるのか」
「多分、経験が活かせる」
「そっか、実質アウトドア部。バーベキューもやるのか」
「言うほどやらないけど、キャンプ飯に近そうだから」
「それじゃあ、ここからは君が話を進めてね。はいマイク」
「はい。ササ、書記頼む」
「了解」
そう言えば亮真はゼミ合宿の自由時間にまいみぃが作っていた雪中キャンプ飯にも興味を示していた。それに、自然科学研究部という実質的なアウトドア部ならバーベキューをやらせてもそれなりの物になりそうだという期待が湧いてくる。
「バーベキューの幹事になりました相倉です。さっそくですが、食べたいもののある人」
「はーい! パエリアやろっ!」
「パエリア…? 出来るけど、米か」
「だーいじょうぶ! レシピとか道具とかはアタシ持ってるし!」
「いーじゃん主食! さすがお米同好会! 肉も美味いけど、肉だけじゃ腹は膨れねーんだよなー!」
「智也アンタわかってんじゃん!」
「……亮真、本当にいいのか」
「貴重な意見だ。とりあえず、書くだけ書いといてくれ」
バーベキュー食べたいもの、その1。パエリア。
……いや、美味しそうだとは思うけど、肉とかじゃなくて、米か。先生によれば、酒類が禁止されている2年生は食材に予算を振り過ぎて毎年余らせる傾向にある、と。だから少しくらいであれば豪華なパエリアというのもアリと言えばアリなのかもしれないけど。
「あっ、せっかくならバナナとかもあったらいいよね!」
「え、バーベキューでバナナ…?」
「騙されたと思って食べてみてよ、美味しーんだから。アタシのチャンネルでも紹介してるし再生数結構あるんだよ?」
「このままだとシノとまいみぃだけで終わりそうだ。亮真、他の人からも意見を募った方が」
end.
++++
学年ごとに色が出るバーベキュー会議ですが、ここの学年はシノとまいみぃが既にゼミでもきゃっきゃしてる子たちになりつつある。
上の学年で言えばヨネケン先輩が幹事やってたっけ?と思ったけどヨネケン先輩は網奉行鵠さんの補佐だった。大学祭の店長でしたね。
しかしパエリアなんて美味しそうなものを作っちゃうとご飯余らせてる学年ないかなーって目を光らせてる4年生の先輩に狙われるぞ!
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公式学年+1年
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「5月の合同ゼミではバーベキューやるからね。2年生から4年生までが勢揃いする数少ない機会になるから、ぜひ楽しんでちょうだい」
木曜3限、ゼミの授業は佐藤先生からの連絡で始まる。佐藤ゼミには正式に履修している授業コマの他に、合同ゼミという活動がある。水曜日の4、5限の時間帯に学年が入り混じった授業を行うんだそうだ。5月の枠はバーベキューなのだという。
そこで先生から言われたのは、こういう行事では誰か幹事を立てて、その人が中心になって進めてほしいということ。大学を卒業するまでに1人1回はゼミの行事の幹事をやらなくてはならない「一人一幹事制度」というものもあるんだそうだ。
「それで、毎年学年でお揃いのTシャツも作ってるから。そのTシャツのデザインと発注を誰か担当してちょうだい。これも幹事1回にカウントするからね。それからバーベキューの幹事を決めて、今日の授業の前半半分でバーベキューの話し合いをしてくれる?」
「幹事かー。こんだけの人数まとめて動くとか、何か大変そうだな。出来れば早いうちに済ませときてーなー」
「そうだな。でも、Tシャツのデザインはそういうのが得意な人にやってもらった方がいいだろうし、俺はやれてバーベキューの方かな」
「ああ、そうそう! シノキ君!」
「はい、何すか?」
「君はこの一人一幹事制度の例外。幹事やらなくていいから」
「えっ? 何でっすか?」
「君にはこういう行事以外の場所でしっかり働いてもらわなきゃいけないのよ」
「はあ」
「どうあってもやりたいって言うならやってもいいけど、それだと君が働き過ぎることになるから。他の子たちにも中心になってもらわないといけないからね」
シノは腑に落ちないっていう顔をしてるけど、シノが働くべきアクティビティ以外の場所と言えばラジオ関係しかないだろう。高木先輩はオープンキャンパスや大学祭でもミキサーとして働いていたそうだから、シノもそういった道を辿るのかもしれない。
ただ、同じMBCCと言ってもミキサーのシノとアナウンサーの俺では期待される役割も大きく異なるのだと改めて理解をした。幹事制度が免除されたシノと、話にも挙がって来ない俺だ。幹事が必要そうな行事ってどれくらいあるんだろう。
「それじゃアタシTシャツ作ろっかな。他に得意な人いれば全然譲るけど」
「まいみぃならグッズ作りのノウハウもあるし、俺は適任だと思うな」
「おっ、期待の頭脳派から推薦いただきましたー。陸、その発言撤回しないでよね!」
「しないしない。でも、他に誰が何を得意にしてるかとかも知らないから。こういうゼミだしイラストとかデザイン得意な人いそうじゃないか?」
「他に誰かTシャツやりたい人いるー? はいいなーい。それじゃアタシやりまーす。あいまいみぃー」
Tシャツ作りはするっとまいみぃがやることに決定して、次に決めるのはバーベキューの幹事だ。バーベキューの幹事はみんなに何を食べるか聞いて、必要なものを買いに行ったりするのが主な仕事だそうだ。当日はみんなに仕事を割り振って欲しいとも。
「ちょっと、誰かバーベキューの幹事やるって子はいないの? 今年の子たちはバーベキューやったことないのかな?」
「つか、2回目のゼミでガンガン行ける方がどうかしてると思うんだよ俺は。まだまだ牽制の段階だろ」
「シノ、気付いてても大きな声では言っちゃダメなヤツだ」
「……それじゃあ、やります」
「おっ、いいねえ! 君、名前は?」
「相倉です」
「他に立候補がいないなら相倉君に決まるけど、それでいい?」
いいでーすとシノとまいみぃが返事をすれば、それでそのように通ってしまう。まだまだこういう場で肯定の返事をするにも度胸がいる段階だ。こうなると、シノが幹事制度から外れてしまっているのが惜しいと言うか何と言うか。
「亮真、本当にやるのか」
「多分、経験が活かせる」
「そっか、実質アウトドア部。バーベキューもやるのか」
「言うほどやらないけど、キャンプ飯に近そうだから」
「それじゃあ、ここからは君が話を進めてね。はいマイク」
「はい。ササ、書記頼む」
「了解」
そう言えば亮真はゼミ合宿の自由時間にまいみぃが作っていた雪中キャンプ飯にも興味を示していた。それに、自然科学研究部という実質的なアウトドア部ならバーベキューをやらせてもそれなりの物になりそうだという期待が湧いてくる。
「バーベキューの幹事になりました相倉です。さっそくですが、食べたいもののある人」
「はーい! パエリアやろっ!」
「パエリア…? 出来るけど、米か」
「だーいじょうぶ! レシピとか道具とかはアタシ持ってるし!」
「いーじゃん主食! さすがお米同好会! 肉も美味いけど、肉だけじゃ腹は膨れねーんだよなー!」
「智也アンタわかってんじゃん!」
「……亮真、本当にいいのか」
「貴重な意見だ。とりあえず、書くだけ書いといてくれ」
バーベキュー食べたいもの、その1。パエリア。
……いや、美味しそうだとは思うけど、肉とかじゃなくて、米か。先生によれば、酒類が禁止されている2年生は食材に予算を振り過ぎて毎年余らせる傾向にある、と。だから少しくらいであれば豪華なパエリアというのもアリと言えばアリなのかもしれないけど。
「あっ、せっかくならバナナとかもあったらいいよね!」
「え、バーベキューでバナナ…?」
「騙されたと思って食べてみてよ、美味しーんだから。アタシのチャンネルでも紹介してるし再生数結構あるんだよ?」
「このままだとシノとまいみぃだけで終わりそうだ。亮真、他の人からも意見を募った方が」
end.
++++
学年ごとに色が出るバーベキュー会議ですが、ここの学年はシノとまいみぃが既にゼミでもきゃっきゃしてる子たちになりつつある。
上の学年で言えばヨネケン先輩が幹事やってたっけ?と思ったけどヨネケン先輩は網奉行鵠さんの補佐だった。大学祭の店長でしたね。
しかしパエリアなんて美味しそうなものを作っちゃうとご飯余らせてる学年ないかなーって目を光らせてる4年生の先輩に狙われるぞ!
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