2021
■反省の目覚ましカレー
++++
はー……ねっむい。調子に乗ってゲームやった後からドラマとかアニメ見てたら結構な時間になってたよね。まだまだ大学生活は始まったばっかりだからちゃんと授業に出て、話も聞かなきゃいけないし。眠かった。ただただ眠かった。
「栗山さん、目の下にクマが出来ていますよ。眠そうですね」
「本当に眠い……よっちゃんごめん、さっきの授業のノート後で見せてくれる?」
「いいですよ。眠気覚ましに学食にでも行きますか? 目の覚めるようなカレーを食べましょう」
「それがいい。そうしよう」
大学の授業を1週間分受ける中で、知り合いとか友達みたいな感じになった人もいる。その中の1人がこの葉山夜空、よっちゃんという男子だ。如何せん工学部の機械システム工学科なんていう学科では女子の割合が低い。よく話すのも必然的に男子になりがちだ。
私があまりに眠そうにしていたからか、よっちゃんはカレーを食べようと誘ってくれた。緑大には一言で学食と言ってもいろいろな店がある。今回誘われているのはカレーとパスタの店、バジーナ。ここのカレーはいろいろな辛さがあるんだって。
「チキンカレーにしよう。えーっと、辛さは……辛口じゃここに来た目的としては弱いかな、大辛にしよう」
「眠気覚ましにはそれくらいがいいと思いますよ。僕はビーフカレーの中辛で」
食券を買ってカウンターに出すと、パッとすぐにカレーとサラダが出て来るのはありがたい。第1学食の2階にあるこの店は、オシャレな第2学食と比べて認知度が低くて人もちょっとだけ少ないから、ちょっと待てばすぐに座れるのがいい。
「いただきます。ふーっ、さすが大辛、辛い」
「一口食べただけなのに額にうっすら汗が滲んでいますね」
「辛いもん。でも、どっちにしてもメイクは直さなきゃいけないと思ってたし、ちょうどよかった。よっちゃん、ビーフカレー美味しい?」
「美味しいですよ。思ったより肉も入っていて」
「へー。私も今度食べてみよう。そう言えば、こないだサークル見学に行ってみるって言ってたでしょ。どうだった?」
「はい。結果としては、とても興味深い場所であると思いました。ですから、正式に加入することにしてこれから研究と観察を始めようと思います」
「そっか。それならよかった」
よっちゃんと最初にご飯を食べたときに、サークルはどうしようかという話で盛り上がった。彼が興味を持っているのはバスケットボール。とは言ってもバスケの経験があるわけではなく、テレビで見たバスケロボットに対する興味なのだという。
ロボットが正確にシュートを決める映像を見た彼は、人間はそれをどうやっているのだろうと疑問を抱いてバスケサークルの見学を希望したそうだ。そしていくつかもらったバスケサークルのビラを見比べ、候補を絞って見学に行って来たそうなのだけど。
「僕が入ることにしたサークルにはスリーポイントシューターの先輩が2人もいたんですよ。それも男性と女性。バスケットボールは男性と女性でシュートを打つ際のフォームも違いますし、個々人の癖などもありますから」
「よっちゃんも実際にバスケやるんでしょ? あんまりスポーツの経験ないって言ってたけど出来そう?」
「大学でバスケを始める人もいるそうですし、僕自身がスリーポイントシュートを打つにはまだまだですが、今のところは簡単なことを教えてもらっていますね」
「そう、よかったね」
「それより、栗山さんはサークルを決めたんですか?」
「一応ね。興味ありそうな中から今日はラジオのサークルに行ってみようと思って」
「ラジオですか。ロボットサークルなどではなかったんですね」
「なかなかそういうところが無かったんだよね。それに、サークルでは違うことをしてみるのもいいかなって思って」
趣味を仕事にするか否かじゃないけど、せっかくサークルに入るんだから何をするかはきちんと考えないと。見学して合わなければやめればいいんだけど、極力外したくないという気持ちもある。
緑ヶ丘大学のサークルは星の数ほどあると言うから、その中から絞って行くのも大変な作業ではある。入学式の日から数日間はそれこそ掃いて捨てるほどのビラをもらっていたし、今はポスターが掲示されていたり、机とイスを並べた勧誘ブースが設置されている。
「それで今日はラジオのサークルの活動日だから行こうと思ってたのに、この顔でしょ? マズいなとは……」
「クマが尋常でなく濃いですからねえ」
「でも、そうやってずるずる後回しにする方が良くない! 顔はメイクで誤魔化す!」
「はい。思い立ったときに行動する方がいいと思います」
「ふーっ、辛いカレーで目が覚めた。念のためフリスク買ってこう。目薬も」
「本気ですね」
「3限以降はちゃんと起きてないといけないし」
始まったばっかりで授業をちゃんと受けるのを諦めるわけにはいかない。趣味は趣味でそれに浸ってたいけど、それで他の生活が成り行かなくなると他の問題が発生してくる。趣味だけでご飯が食べられる域にないからこそ、それなりにきちんとしてないと。好きなことでご飯が食べられるようになるための勉強でもあるからね。
「栗山さんの場合、バイクに乗るのなら眠気なんていうのは一番避けなければならないんじゃないですか?」
「本当にそれなんだよね。バイクで居眠り運転とかシャレにならない。うーん、遅くても2時までには寝ないとね」
「ちなみに、昨晩は何時に寝たんですか?」
「4時過ぎ」
「早朝じゃないですか」
end.
++++
サークル見学の結果GREENsに加入したよっちゃんと、これからサークル見学に行こうとしているレナのお話。
眠気覚ましに辛いカレーを食べようってのはなかなかな発想だなあ。痛みでムリヤリ叩き起こそうっていう考えに基づいてるからね
この「眠いわー」って状態でサークル見学に行って口数が必要最低限だった結果MBCC内でのレナに対する第一印象が「クール」になった可能性?
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はー……ねっむい。調子に乗ってゲームやった後からドラマとかアニメ見てたら結構な時間になってたよね。まだまだ大学生活は始まったばっかりだからちゃんと授業に出て、話も聞かなきゃいけないし。眠かった。ただただ眠かった。
「栗山さん、目の下にクマが出来ていますよ。眠そうですね」
「本当に眠い……よっちゃんごめん、さっきの授業のノート後で見せてくれる?」
「いいですよ。眠気覚ましに学食にでも行きますか? 目の覚めるようなカレーを食べましょう」
「それがいい。そうしよう」
大学の授業を1週間分受ける中で、知り合いとか友達みたいな感じになった人もいる。その中の1人がこの葉山夜空、よっちゃんという男子だ。如何せん工学部の機械システム工学科なんていう学科では女子の割合が低い。よく話すのも必然的に男子になりがちだ。
私があまりに眠そうにしていたからか、よっちゃんはカレーを食べようと誘ってくれた。緑大には一言で学食と言ってもいろいろな店がある。今回誘われているのはカレーとパスタの店、バジーナ。ここのカレーはいろいろな辛さがあるんだって。
「チキンカレーにしよう。えーっと、辛さは……辛口じゃここに来た目的としては弱いかな、大辛にしよう」
「眠気覚ましにはそれくらいがいいと思いますよ。僕はビーフカレーの中辛で」
食券を買ってカウンターに出すと、パッとすぐにカレーとサラダが出て来るのはありがたい。第1学食の2階にあるこの店は、オシャレな第2学食と比べて認知度が低くて人もちょっとだけ少ないから、ちょっと待てばすぐに座れるのがいい。
「いただきます。ふーっ、さすが大辛、辛い」
「一口食べただけなのに額にうっすら汗が滲んでいますね」
「辛いもん。でも、どっちにしてもメイクは直さなきゃいけないと思ってたし、ちょうどよかった。よっちゃん、ビーフカレー美味しい?」
「美味しいですよ。思ったより肉も入っていて」
「へー。私も今度食べてみよう。そう言えば、こないだサークル見学に行ってみるって言ってたでしょ。どうだった?」
「はい。結果としては、とても興味深い場所であると思いました。ですから、正式に加入することにしてこれから研究と観察を始めようと思います」
「そっか。それならよかった」
よっちゃんと最初にご飯を食べたときに、サークルはどうしようかという話で盛り上がった。彼が興味を持っているのはバスケットボール。とは言ってもバスケの経験があるわけではなく、テレビで見たバスケロボットに対する興味なのだという。
ロボットが正確にシュートを決める映像を見た彼は、人間はそれをどうやっているのだろうと疑問を抱いてバスケサークルの見学を希望したそうだ。そしていくつかもらったバスケサークルのビラを見比べ、候補を絞って見学に行って来たそうなのだけど。
「僕が入ることにしたサークルにはスリーポイントシューターの先輩が2人もいたんですよ。それも男性と女性。バスケットボールは男性と女性でシュートを打つ際のフォームも違いますし、個々人の癖などもありますから」
「よっちゃんも実際にバスケやるんでしょ? あんまりスポーツの経験ないって言ってたけど出来そう?」
「大学でバスケを始める人もいるそうですし、僕自身がスリーポイントシュートを打つにはまだまだですが、今のところは簡単なことを教えてもらっていますね」
「そう、よかったね」
「それより、栗山さんはサークルを決めたんですか?」
「一応ね。興味ありそうな中から今日はラジオのサークルに行ってみようと思って」
「ラジオですか。ロボットサークルなどではなかったんですね」
「なかなかそういうところが無かったんだよね。それに、サークルでは違うことをしてみるのもいいかなって思って」
趣味を仕事にするか否かじゃないけど、せっかくサークルに入るんだから何をするかはきちんと考えないと。見学して合わなければやめればいいんだけど、極力外したくないという気持ちもある。
緑ヶ丘大学のサークルは星の数ほどあると言うから、その中から絞って行くのも大変な作業ではある。入学式の日から数日間はそれこそ掃いて捨てるほどのビラをもらっていたし、今はポスターが掲示されていたり、机とイスを並べた勧誘ブースが設置されている。
「それで今日はラジオのサークルの活動日だから行こうと思ってたのに、この顔でしょ? マズいなとは……」
「クマが尋常でなく濃いですからねえ」
「でも、そうやってずるずる後回しにする方が良くない! 顔はメイクで誤魔化す!」
「はい。思い立ったときに行動する方がいいと思います」
「ふーっ、辛いカレーで目が覚めた。念のためフリスク買ってこう。目薬も」
「本気ですね」
「3限以降はちゃんと起きてないといけないし」
始まったばっかりで授業をちゃんと受けるのを諦めるわけにはいかない。趣味は趣味でそれに浸ってたいけど、それで他の生活が成り行かなくなると他の問題が発生してくる。趣味だけでご飯が食べられる域にないからこそ、それなりにきちんとしてないと。好きなことでご飯が食べられるようになるための勉強でもあるからね。
「栗山さんの場合、バイクに乗るのなら眠気なんていうのは一番避けなければならないんじゃないですか?」
「本当にそれなんだよね。バイクで居眠り運転とかシャレにならない。うーん、遅くても2時までには寝ないとね」
「ちなみに、昨晩は何時に寝たんですか?」
「4時過ぎ」
「早朝じゃないですか」
end.
++++
サークル見学の結果GREENsに加入したよっちゃんと、これからサークル見学に行こうとしているレナのお話。
眠気覚ましに辛いカレーを食べようってのはなかなかな発想だなあ。痛みでムリヤリ叩き起こそうっていう考えに基づいてるからね
この「眠いわー」って状態でサークル見学に行って口数が必要最低限だった結果MBCC内でのレナに対する第一印象が「クール」になった可能性?
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