2021
■偶像コントロール
++++
「あ~、もうダメ~! 出来る気がしない!」
「ユキちゃん、少し休んで。散歩とかして気分転換するのもいいよ」
「少し休みます~」
青葉女学園大学放送サークルABCでは、5月末に近場の植物園でやらせてもらっているステージイベントに向けた準備に奔走してる。このイベントで中心になるのは毎年2年生。3年生の先輩たちもサポートしてくれるけど、それでも主になって動くのはあたしたち。とにもかくにも台本がなければ始まらない。
今いるABCの2年生はあたしとサドニナとなっちゃんの3人。なっちゃんは去年の秋学期にサークルに入ったしこのステージを知らない。それにサドニナにステージの台本が書けるかって言ったら……ねえ。というワケで何となく消去法であたしが台本を書く流れに自然と落ち着いちゃってたよね。
「Kちゃん先輩、よく去年台本書いてましたよね。本来大学祭のステージって2年生の仕事じゃないですよね?」
「まあ、ヒビキ先輩は台本を書くタイプじゃないからね。書けないこともないけどあまり好きじゃないみたくて」
「あー、何となくわかります」
「私は台本を書くのも嫌いじゃないし、何となくそうなってたって感じ。春奈先輩からも「啓子の1コ上の代は台本書くタイプいないから覚悟した方がいい」って言われてたし」
「やっぱり、何となくそうなるっていうのってある種の呪いですよ呪い。何とな~く空気が圧をかけるっていうか。そういうものだって思っちゃうのって何なんでしょうかね」
「ちゃんと話し合った上で納得してそうするんであればいいんだけどね」
「それですそれそれ」
カフェラテを飲みながら、ちょっとした雑談を。あたしが台本を書くことに決まってからは、経験者であるKちゃん先輩が横についていろいろ教えてくれてる。それで、今日も台本を書くのに付き合ってもらっている。
誰が台本を書くかは何となく決まってるから緩いんだよね、周りの感じも。だったらあたしがみんなの前でババーンと「あたしは台本書きます! なっちゃんはミキサーよろしく、サドニナはちゃんと練習して!」みたいな風にやれてたら、もっとパリッとしたんだろうけどね。Kちゃん先輩のあの感じではなかなかやれない。
「そう言えば、ファンフェスはどうなった? こないだ定例会だったでしょ」
「班が決まりましたねー」
「おっ。誰と一緒になった?」
「果林先輩が班長で、こーた先輩となっちゃんがいます」
「へえ、いいね。でもユキちゃんとなっちゃんを一緒の班にしたんだ」
「なっちゃんは大きな行事が初めてなので、フォローをよろしくねっていう風に直クン先輩からお願いされてます」
「ああ、直がお願いしてくれたんだ」
「ラジオ系の学校の3年生のアナウンサーの先輩で、なっちゃんを預けるなら果林先輩とヒロ先輩どっちがいいかって話になって」
「それは私でも果林に預けたいって即答するよ」
インターフェイスで出るファンタジックフェスタに向けても動き出した。だけどあたしは正直ステージの台本で手一杯。台本さえ上がっちゃえばラジオの方にも目を向けられるんだけど。班の顔合わせが今すぐじゃないのが救いだし、この時期の青女は忙しいってわかってくれてる先輩たちなのがありがたい。
「こーた先輩って夏合宿でサドニナと一緒の班でしたよね。どんな感じの人なんですか?」
「こーたはね、あのサドニナを調教した実績のある腕の確かなミキサーだから! 向島のノリでふざけて見えるかもしれないけど、ちゃんと言うこと聞きなさいね。こーたの言うことを聞いとけば間違いないから」
「サドニナを調教したってだけで相当すごいってことがわかりますね」
「人の言うことをとにかく聞かないサドニナに、きっちり番組と向き合わせて練習させたっていう……どうやってやったのか本当に教えてほしい」
Kちゃん先輩の溜め息が深すぎて。それだけ毎回苦労しているところはあたしも見ているし、なんなら今回はあたしも同じ道を歩みそうだから台本を上げてすぐ班の顔合わせをしてサドニナ対策をしておきたいかも。
サドニナは、ステージ本番になるとそれなりにちゃんとこなせてるんだけど、それまでの態度がとにかくふざけ倒しててイライラする人はするんだよね。練習したくなーいって言ってひたすら自分の好きな歌を歌って踊ってばっかりだし、台本は真っ白だし。
「それに、なっちゃんを預けるっていう意味合いでは向島のミキサーなら技術的に安心だわ」
「向島のミキサーだったら誰に当たっても安心みたいな感じなんですか?」
「そうだね。でも、ユキちゃんにとっては多分こーたが1番の当たりだと思うよ。ユキちゃんも何だかんだABCっぽいノリは好きでしょ?」
「何がABCっぽいノリなのかはわからないですけどね」
「女子の勢いで可愛らしくキメる方向? 去年の夏合宿で言えばサドニナの思い付きで班員みんな頭に花飾りを付けてたりとか」
「あ~、好きですね!」
「こーただったらそういうのにも何だかんだ付き合ってくれるからね。自称ウザい界のアイドルだし」
そう聞くと、早くステージの台本を上げちゃってファンフェス班の顔合わせをしたくなってくる。こーた先輩がどんな人なのか話してみたいなって。Kちゃん先輩がこれだけ信頼してるってだけでも期待大だよね。
「でも、果林にこーたにユキちゃんになっちゃんか。こう見るとなかなか既視感があるような気がするけど」
「なっちゃんのサポートのためだけに班決めの慣習を無視した班です! 大人の事情です!」
「まあ、青女的にはありがたいけど、よく直がそこまで押せたなあ。議長がLだから物を言いやすいのかな」
end.
++++
青女のあれやこれやです。ユキちゃんが何となく台本を書くポジションになってますが、さすがに啓子さんもお手伝い。
青女のステージと言えばさとちゃんの衣装ですが、さとちゃんがいる間はお願いすればやってもらえることにはなってます。小物なんかは長野っちと作るのかなあ
啓子さんから絶大な信頼を得ている神崎である。それだけ啓子さんはサドニナに毎回お怒りなんやな……
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「あ~、もうダメ~! 出来る気がしない!」
「ユキちゃん、少し休んで。散歩とかして気分転換するのもいいよ」
「少し休みます~」
青葉女学園大学放送サークルABCでは、5月末に近場の植物園でやらせてもらっているステージイベントに向けた準備に奔走してる。このイベントで中心になるのは毎年2年生。3年生の先輩たちもサポートしてくれるけど、それでも主になって動くのはあたしたち。とにもかくにも台本がなければ始まらない。
今いるABCの2年生はあたしとサドニナとなっちゃんの3人。なっちゃんは去年の秋学期にサークルに入ったしこのステージを知らない。それにサドニナにステージの台本が書けるかって言ったら……ねえ。というワケで何となく消去法であたしが台本を書く流れに自然と落ち着いちゃってたよね。
「Kちゃん先輩、よく去年台本書いてましたよね。本来大学祭のステージって2年生の仕事じゃないですよね?」
「まあ、ヒビキ先輩は台本を書くタイプじゃないからね。書けないこともないけどあまり好きじゃないみたくて」
「あー、何となくわかります」
「私は台本を書くのも嫌いじゃないし、何となくそうなってたって感じ。春奈先輩からも「啓子の1コ上の代は台本書くタイプいないから覚悟した方がいい」って言われてたし」
「やっぱり、何となくそうなるっていうのってある種の呪いですよ呪い。何とな~く空気が圧をかけるっていうか。そういうものだって思っちゃうのって何なんでしょうかね」
「ちゃんと話し合った上で納得してそうするんであればいいんだけどね」
「それですそれそれ」
カフェラテを飲みながら、ちょっとした雑談を。あたしが台本を書くことに決まってからは、経験者であるKちゃん先輩が横についていろいろ教えてくれてる。それで、今日も台本を書くのに付き合ってもらっている。
誰が台本を書くかは何となく決まってるから緩いんだよね、周りの感じも。だったらあたしがみんなの前でババーンと「あたしは台本書きます! なっちゃんはミキサーよろしく、サドニナはちゃんと練習して!」みたいな風にやれてたら、もっとパリッとしたんだろうけどね。Kちゃん先輩のあの感じではなかなかやれない。
「そう言えば、ファンフェスはどうなった? こないだ定例会だったでしょ」
「班が決まりましたねー」
「おっ。誰と一緒になった?」
「果林先輩が班長で、こーた先輩となっちゃんがいます」
「へえ、いいね。でもユキちゃんとなっちゃんを一緒の班にしたんだ」
「なっちゃんは大きな行事が初めてなので、フォローをよろしくねっていう風に直クン先輩からお願いされてます」
「ああ、直がお願いしてくれたんだ」
「ラジオ系の学校の3年生のアナウンサーの先輩で、なっちゃんを預けるなら果林先輩とヒロ先輩どっちがいいかって話になって」
「それは私でも果林に預けたいって即答するよ」
インターフェイスで出るファンタジックフェスタに向けても動き出した。だけどあたしは正直ステージの台本で手一杯。台本さえ上がっちゃえばラジオの方にも目を向けられるんだけど。班の顔合わせが今すぐじゃないのが救いだし、この時期の青女は忙しいってわかってくれてる先輩たちなのがありがたい。
「こーた先輩って夏合宿でサドニナと一緒の班でしたよね。どんな感じの人なんですか?」
「こーたはね、あのサドニナを調教した実績のある腕の確かなミキサーだから! 向島のノリでふざけて見えるかもしれないけど、ちゃんと言うこと聞きなさいね。こーたの言うことを聞いとけば間違いないから」
「サドニナを調教したってだけで相当すごいってことがわかりますね」
「人の言うことをとにかく聞かないサドニナに、きっちり番組と向き合わせて練習させたっていう……どうやってやったのか本当に教えてほしい」
Kちゃん先輩の溜め息が深すぎて。それだけ毎回苦労しているところはあたしも見ているし、なんなら今回はあたしも同じ道を歩みそうだから台本を上げてすぐ班の顔合わせをしてサドニナ対策をしておきたいかも。
サドニナは、ステージ本番になるとそれなりにちゃんとこなせてるんだけど、それまでの態度がとにかくふざけ倒しててイライラする人はするんだよね。練習したくなーいって言ってひたすら自分の好きな歌を歌って踊ってばっかりだし、台本は真っ白だし。
「それに、なっちゃんを預けるっていう意味合いでは向島のミキサーなら技術的に安心だわ」
「向島のミキサーだったら誰に当たっても安心みたいな感じなんですか?」
「そうだね。でも、ユキちゃんにとっては多分こーたが1番の当たりだと思うよ。ユキちゃんも何だかんだABCっぽいノリは好きでしょ?」
「何がABCっぽいノリなのかはわからないですけどね」
「女子の勢いで可愛らしくキメる方向? 去年の夏合宿で言えばサドニナの思い付きで班員みんな頭に花飾りを付けてたりとか」
「あ~、好きですね!」
「こーただったらそういうのにも何だかんだ付き合ってくれるからね。自称ウザい界のアイドルだし」
そう聞くと、早くステージの台本を上げちゃってファンフェス班の顔合わせをしたくなってくる。こーた先輩がどんな人なのか話してみたいなって。Kちゃん先輩がこれだけ信頼してるってだけでも期待大だよね。
「でも、果林にこーたにユキちゃんになっちゃんか。こう見るとなかなか既視感があるような気がするけど」
「なっちゃんのサポートのためだけに班決めの慣習を無視した班です! 大人の事情です!」
「まあ、青女的にはありがたいけど、よく直がそこまで押せたなあ。議長がLだから物を言いやすいのかな」
end.
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青女のあれやこれやです。ユキちゃんが何となく台本を書くポジションになってますが、さすがに啓子さんもお手伝い。
青女のステージと言えばさとちゃんの衣装ですが、さとちゃんがいる間はお願いすればやってもらえることにはなってます。小物なんかは長野っちと作るのかなあ
啓子さんから絶大な信頼を得ている神崎である。それだけ啓子さんはサドニナに毎回お怒りなんやな……
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