2021

■嵐は直球ストレート

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「ごっちゃんせんぱぁーあーいっ!」
「うおっと危ねえ。サチ、元気なのはいいけどその勢いで追突されたら池ポチャ不可避よ」
「ゴティ、隅に置けないねえ」
「そやなあ。ゴティは人脈あるでね、よくあることなんかもしれん」

 さあご飯でも食べようと学食に移動していると、一緒に歩いてたゴティめがけて女の子が猛突進してきた。結構距離のあるところから声を出してきたから避けれたって感じだけど、本当に凄い勢いだったから衝突してたら確かに池ポチャだったかも。
 このゴティはアタシとはMBCCの同期で、去年は一緒に対策委員としての活動していた。なかなかにアクティブな子で、プライベートではスポーツもやってる。今いる“店長”ことひらっちゃんとも草野球仲間なんだって。
 で、ゴティに猛突進してきた女の子よ。オレンジ系の色したおかっぱ頭が特徴的。背も170ないくらいでスレンダーな感じだよね。ゴティより背が高いから先輩先輩って絡んでる様も大きな犬か何かに懐かれてる風に見える。

「そんでサチ、お前何の用で俺にぶち当たって来たんよ」
「用はないっす。ごっちゃん先輩見つけたんで挨拶しないとって」
「ンなこったろーとは思ったけどよ。あー、わりーな果林、ひらっちゃん。コイツ俺の高校の後輩で、これから西山ゼミに入るヤツなんだわ」
「ごっちゃん先輩の後輩の三浦祥子です!」
「昔っからこの調子でこっちとしても困ってんのよ」
「ひどーい! かわいいサチに慕われてるのにー!」
「時と場合とテンションを考えてくれりゃあこっちもウェルカムよ。お前は抑えるっつーことをいい加減覚えろっつーの」
「あだっ」

 コン、とゴティがさっちゃんにデコピンをして窘めてる。うん、やっぱりこの感じだとやっぱりゴティが先輩と言うかお兄さん的な感じで間違いなさそう。背丈は力関係に全く関係ありませんでしたね。

「西山ゼミってことはさっちゃんもスポーツとかに興味ある感じ?」
「興味があるって言うか、面白そうだったんで!」
「それを興味があるっていうんじゃねーのかよ」
「ごっちゃん先輩はいちいちサチの言うことにケチつけないでくださいよぅ」
「まあ何だ、コイツは見たまんまバカだからさ、面白そうだと思ったらすーぐやり始めてんのよ。大学に入ってバスケ始めたり、向舞祭で踊ってみたり」
「へえ、口だけで何もやらないより全然いいじゃん」
「せやなあ」
「ほらー。皆さん優しいじゃないですかぁ。ごっちゃん先輩くらいですよサチにネチネチ文句言うの」
「俺がいつお前に文句垂れたよ」
「今です今!」

 やれあのときはこうだったああだったとゴティとさっちゃんが口喧嘩を始めたけど、まあこれも仲良しだからこそなのかもしれない。アタシと店長はこの光景をほのぼのと見守って。同じ地元から出てきて付き合い続けられるってのは悪くないね。
 ゴティとさっちゃんが所属する西山ゼミっていうのはスポーツと社会学を絡めていくっていうスタイルのゼミ。地元のプロ野球球団とも協力して研究したりしていて、アクティブにフィールドワークをする方のゼミだという印象がある。

「そう言えば、1年やっといて難だけどアタシ的に店長が西山ゼミじゃないの結構意外だわ。店長ポケッツの熱狂的ファンだし」
「確かにポケッツは好きやけど、ラジオも好きやしダメ元で佐藤ゼミにも応募してみよっかーっつって出したら通ったんよね。第二希望はもちろん西山ゼミやったけどね」
「あ、そうなんだ」
「ゆーて千葉ちゃんも西山ゼミの資質あるやんね」
「アタシが切り込みたかったのはスポーツの現場じゃなくてそれを伝えるマスコミの方だからね。西山ゼミの領域とはちょっと違ったんだよね。だったら佐藤ゼミでラジオやろーって感じ?」

 今ではアタシも店長も、佐藤ゼミでそれなりにやることをやって、何となくこういうヤツだっていう風にキャラ付けがされている。お互い佐藤ゼミでやりたいことに踏み込んでいくのは3年生になった今からなんだと思う。
 さて、西山ゼミ勢の2人はと言うと、これから先の予定をきゃっきゃとすり合わせて楽しそうにしている。ゴティとさっちゃんはこれからちょこちょこ地方で行われる町おこし系のマラソン大会に殴り込んで回るとか。頑張るねえ。何時間もかけて観光しながら42.195km走るんだもんね。

「うえー。42.195km走るとか俺は無理やわ。イケてスリーベースまでやわ」
「や、別にプロのランナーみたくガチるワケじゃなくて、そのご当地の美味いモン食ったり写真撮ったりしつつ駆け足で散歩するって感じよ」
「ご当地の美味しいものかー、いいね。沿道に出てるんだっけ」
「そうそう。沿道では応援の見せ物とかもいろいろあって、祭りみたいなモンで雰囲気が楽しいのよ。コスプレランナーもいるし」
「1回出たらまた出たくなるんですよねー。楽しいんですよ。だからまたごっちゃん先輩に付き合ってもらうんですよ」
「ったくよー、お前の所為で俺がどんだけ走るハメになったやら」

 そうは言いつつ嫌そうな感じじゃないのがさすがゴティ。スポーツは楽しんでやるものだからね。運動神経や体力でマウント取るのはよろしくないんだよ。

「じゃ! ごっちゃん先輩またねー」
「気を付けろよー」
「はーい!」
「……やっと嵐が去ったわ。わりー果林、ひらっちゃん。飯行くかー」
「ホントに。お腹空いた」
「まあまあ。今の立ち話のおかげでピークど真ん中に学食突っ込まんくてよくなったし。いい風に解釈しようや」
「店長ホントにパパだわ」


end.


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ゴサチやりたいなーと思った結果のゴサチ。さっちゃんは周りを見ずにゴティパイセンにぶち当たっていくくらいがちょうどいい。
店長とゴティ先輩は草野球仲間だって言われてるけど、ゴティ先輩IFサッカー部でもあるし本当に何でもやってるねえ
また野球のシーズンになったし店長や小田ちゃんがポケッツの結果を見ながらきゃっきゃしてるだけの話もやりたい

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