2021
■狙ってダメなら乱れ撃ち
++++
「AKBCでーす、お願いしまーす。AKBCでーす。映像作ってまーす」
4月1日。向島エリア内の多くの大学で入学式が行われていて、それは青浪敬愛大学も例外じゃない。入学式はサークルや部活に1年生を勧誘する大きなチャンス。青敬はキャンパスが2つに分かれてるんだけど、入学式はどっちのキャンパスの学生も一緒にやるから。
AKBCというのは映像作品を主に作っているサークルで、新設されたキャンパスの方にサークル室を移転した。私、諏訪あやめはこれからこの新しいキャンパスで改めて映像メディアに関する勉強を始めることになる。本当に学舎がピカピカで楽しみ。
「かんな、あやめ、手応えどうだ?」
「1日目じゃわかんないですね」
「ですー」
「そうかー、だよなー。やっぱ映像系学部っぽいヤツを狙ってくべきかなー。そうだ。お前ら別々に配ってないで双子で興味を引くっつーのはどうだ? 双子マジパねえ的な」
「双子なんて珍しくも何ともないですよ」
「ですー」
今のAKBCをまとめてるのが前髪を布のヘアバンドで上げてるハマちゃん先輩。マジパねえが口癖。機械工学を勉強してる人だけど、ハマちゃん先輩の学部は古い方の校舎のまま移転しないから、サークルの度にこっちに通うことになるんだって。
それから、私にはかんなっていう双子の姉がいる。一卵性双生児だから見た目はあまり変わらないし、学部も一緒で服の趣味も似たり寄ったり。だから髪留めの色で区別してもらえるようにしている。かんなが赤で私が紫で覚えてもらえるように。
見た目はほとんど一緒だけど、双子で一緒にいるときはかんなの方が口数が多い。考えていることが似たり寄ったりの場合は「です」とか「ます」と語尾に付けることで同意であると伝えて語数の節約をすることも多々。私も普通に喋るけどね。
それから、双子での違いは作品作りのスタンス。私の方が作業を始めると集中して周りが見えなくなるらしい。2人とも映像を作るから部屋でも技術的な話が出来て楽しいけど、2人暮らしだと家事の分担でケンカになることもある。
「ま! 何にせよ数打ってこうぜ! 乱射乱射!」
「言葉のチョイスが物騒です」
「ですー」
「ただの映像サークルと違うのはインターフェイスにも出てるってトコだからな! 友達も出来るし映像だけやってたんじゃ身につかない技術も知れる! それも押してこうぜ!」
余談だけど、AKBCは向島インターフェイス放送委員会っていう組織に加盟している。向島エリアにある大学の放送サークルがいくつか集まって一緒に活動をしてる。活動としてはラジオのことがメインだけど、これがなかなか楽しいし、音を扱ったり作品の構成を考える上での勉強にもなる。
これに参加するのは義務じゃなくて任意。ハマちゃん先輩や私は参加してるけど、かんなは参加していない。インターフェイスで映像作品を作ることはほとんどないから、純粋に映像をやりたい人にとっては寄り道になるんだよね。でも、他校にも友達が出来るし私は出て良かったと思ってる。
「お願いしまーす。AKBCでーす。映像やってまーす」
「これって、映像系のサークルですか?」
「はいっ! そうです! 興味ありますか?」
「映像学部なので。本格的にやってる感じですか?」
「映像学部以外の人もいるのでレベルはまちまちなんですけど、個人での制作も出来ますし、チームでの制作もやってます。ガッツリって言うよりは楽しくって感じですね。他校の人との交流もあったりして」
「へえ。いろいろ教えてもらったりも出来るんですか?」
「そうですねー。先輩がいろいろ教えてくれますね。映像制作以外にも大学の事とか生活のこととかいろいろ」
「ちょっと、見学してみたいです」
「ありがとうございます! えっと、来週から、ここに書いてる時間帯にサークル室に来てもらえれば誰かしらいるので。一応お名前聞いていい?」
「本浦当麻です」
「本浦当麻くんね。それじゃあ来週、待ってます」
「よろしくお願いします」
はー…! ビラを配ってても大体スルーされて心が折れそうだったけど、脈ありって感じの反応をもらえると泣きそうになるほど嬉しい! この調子でどんどん配るぞー。他のみんなはどうかな。でも、みんな私よりコミュ力あるし大丈夫そうか。
「おーいあやめー、釣れたかー?」
「何とか1人、脈ありって感じの子を見学に誘いました」
「オッケーナイス! 俺も1人シンパシー感じた奴を誘ったぜ!」
「えっ、何のシンパシーです?」
「テンションとかノリとか?」
「えっ、うるさそう」
「何だお前! 人をうるさいっつったろ!」
「ハマちゃん先輩基本声のボリュームが大きいんですよ。たまたまノリのいい子が引っかかってくれましたけど、普通は引きますからね」
でも、そういうノリとか雰囲気が合う人がいるっていうのも大事なのかも。ただ映像を極めたいだけなら自分1人でやってればいいんだけど、それでもわざわざサークルに入る意味って何だろうってことになるからね。人との繋がりで何かを得たいってことだろうから。
「かんな、お前は誰か釣れたか?」
「一応手当たり次第に配ってますけど、見学希望とかは今のところ特に」
「そっか。ま、何にせよ乱射だ乱射! 狙って行っても当たらない時は当たらないんだから数だ数! ビラからAKBCチャンネルに飛べるようにしてるし、作品サンプルで後から釣れる可能性にも賭けようぜ!」
「そうですねー」
「あれっ。そう言えばハマちゃん先輩ってサークルの度にこっちに通って来るじゃないですか」
「そうだな」
「何かの間違いで向こうのキャンパスの子がたくさん釣れたらどうするんです?」
「あー……それはー、まあー……4人までなら俺が連れて来れるけど、それ以上増えたときのことは考えてなかった」
「……ダメそうです」
「ですー」
end.
++++
フェーズ2の2年目はまさかの青敬からスタート。ハマちゃんとかんなあやめがビラを配っているのですが、これに関してはどこも大差ないかな。
青敬1年生トリオは先にサークルに入ってた当麻と雨竜が北星を連れて来るって感じだろうね。2人が行くなら俺も行く~的なアレで
かんなも久し振りだし、青敬の1年生にもインターフェイスの活動に出ない子がいてもいいと思うから湧いて出ないかなあそういう子
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「AKBCでーす、お願いしまーす。AKBCでーす。映像作ってまーす」
4月1日。向島エリア内の多くの大学で入学式が行われていて、それは青浪敬愛大学も例外じゃない。入学式はサークルや部活に1年生を勧誘する大きなチャンス。青敬はキャンパスが2つに分かれてるんだけど、入学式はどっちのキャンパスの学生も一緒にやるから。
AKBCというのは映像作品を主に作っているサークルで、新設されたキャンパスの方にサークル室を移転した。私、諏訪あやめはこれからこの新しいキャンパスで改めて映像メディアに関する勉強を始めることになる。本当に学舎がピカピカで楽しみ。
「かんな、あやめ、手応えどうだ?」
「1日目じゃわかんないですね」
「ですー」
「そうかー、だよなー。やっぱ映像系学部っぽいヤツを狙ってくべきかなー。そうだ。お前ら別々に配ってないで双子で興味を引くっつーのはどうだ? 双子マジパねえ的な」
「双子なんて珍しくも何ともないですよ」
「ですー」
今のAKBCをまとめてるのが前髪を布のヘアバンドで上げてるハマちゃん先輩。マジパねえが口癖。機械工学を勉強してる人だけど、ハマちゃん先輩の学部は古い方の校舎のまま移転しないから、サークルの度にこっちに通うことになるんだって。
それから、私にはかんなっていう双子の姉がいる。一卵性双生児だから見た目はあまり変わらないし、学部も一緒で服の趣味も似たり寄ったり。だから髪留めの色で区別してもらえるようにしている。かんなが赤で私が紫で覚えてもらえるように。
見た目はほとんど一緒だけど、双子で一緒にいるときはかんなの方が口数が多い。考えていることが似たり寄ったりの場合は「です」とか「ます」と語尾に付けることで同意であると伝えて語数の節約をすることも多々。私も普通に喋るけどね。
それから、双子での違いは作品作りのスタンス。私の方が作業を始めると集中して周りが見えなくなるらしい。2人とも映像を作るから部屋でも技術的な話が出来て楽しいけど、2人暮らしだと家事の分担でケンカになることもある。
「ま! 何にせよ数打ってこうぜ! 乱射乱射!」
「言葉のチョイスが物騒です」
「ですー」
「ただの映像サークルと違うのはインターフェイスにも出てるってトコだからな! 友達も出来るし映像だけやってたんじゃ身につかない技術も知れる! それも押してこうぜ!」
余談だけど、AKBCは向島インターフェイス放送委員会っていう組織に加盟している。向島エリアにある大学の放送サークルがいくつか集まって一緒に活動をしてる。活動としてはラジオのことがメインだけど、これがなかなか楽しいし、音を扱ったり作品の構成を考える上での勉強にもなる。
これに参加するのは義務じゃなくて任意。ハマちゃん先輩や私は参加してるけど、かんなは参加していない。インターフェイスで映像作品を作ることはほとんどないから、純粋に映像をやりたい人にとっては寄り道になるんだよね。でも、他校にも友達が出来るし私は出て良かったと思ってる。
「お願いしまーす。AKBCでーす。映像やってまーす」
「これって、映像系のサークルですか?」
「はいっ! そうです! 興味ありますか?」
「映像学部なので。本格的にやってる感じですか?」
「映像学部以外の人もいるのでレベルはまちまちなんですけど、個人での制作も出来ますし、チームでの制作もやってます。ガッツリって言うよりは楽しくって感じですね。他校の人との交流もあったりして」
「へえ。いろいろ教えてもらったりも出来るんですか?」
「そうですねー。先輩がいろいろ教えてくれますね。映像制作以外にも大学の事とか生活のこととかいろいろ」
「ちょっと、見学してみたいです」
「ありがとうございます! えっと、来週から、ここに書いてる時間帯にサークル室に来てもらえれば誰かしらいるので。一応お名前聞いていい?」
「本浦当麻です」
「本浦当麻くんね。それじゃあ来週、待ってます」
「よろしくお願いします」
はー…! ビラを配ってても大体スルーされて心が折れそうだったけど、脈ありって感じの反応をもらえると泣きそうになるほど嬉しい! この調子でどんどん配るぞー。他のみんなはどうかな。でも、みんな私よりコミュ力あるし大丈夫そうか。
「おーいあやめー、釣れたかー?」
「何とか1人、脈ありって感じの子を見学に誘いました」
「オッケーナイス! 俺も1人シンパシー感じた奴を誘ったぜ!」
「えっ、何のシンパシーです?」
「テンションとかノリとか?」
「えっ、うるさそう」
「何だお前! 人をうるさいっつったろ!」
「ハマちゃん先輩基本声のボリュームが大きいんですよ。たまたまノリのいい子が引っかかってくれましたけど、普通は引きますからね」
でも、そういうノリとか雰囲気が合う人がいるっていうのも大事なのかも。ただ映像を極めたいだけなら自分1人でやってればいいんだけど、それでもわざわざサークルに入る意味って何だろうってことになるからね。人との繋がりで何かを得たいってことだろうから。
「かんな、お前は誰か釣れたか?」
「一応手当たり次第に配ってますけど、見学希望とかは今のところ特に」
「そっか。ま、何にせよ乱射だ乱射! 狙って行っても当たらない時は当たらないんだから数だ数! ビラからAKBCチャンネルに飛べるようにしてるし、作品サンプルで後から釣れる可能性にも賭けようぜ!」
「そうですねー」
「あれっ。そう言えばハマちゃん先輩ってサークルの度にこっちに通って来るじゃないですか」
「そうだな」
「何かの間違いで向こうのキャンパスの子がたくさん釣れたらどうするんです?」
「あー……それはー、まあー……4人までなら俺が連れて来れるけど、それ以上増えたときのことは考えてなかった」
「……ダメそうです」
「ですー」
end.
++++
フェーズ2の2年目はまさかの青敬からスタート。ハマちゃんとかんなあやめがビラを配っているのですが、これに関してはどこも大差ないかな。
青敬1年生トリオは先にサークルに入ってた当麻と雨竜が北星を連れて来るって感じだろうね。2人が行くなら俺も行く~的なアレで
かんなも久し振りだし、青敬の1年生にもインターフェイスの活動に出ない子がいてもいいと思うから湧いて出ないかなあそういう子
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