2020(05)

■Gripping Conversations

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「これからが勝負だからねみんなッ! よろしくお願いしますッ!」

 4月になると入学式があって、それはサークルにも新入生を勧誘しましょうっていう戦いなんだよな。奈々先輩はこの新歓にすげー気合が入っているようだ。俺と鳥ちゃん、それから奏多は気圧されながら話を聞いているっていう感じだ。
 でもそうなんだよな。奈々先輩からしてみれば、ちょっと前に鳥ちゃんと奏多がMMPに入ってくれたのだけでもかなりありがたい話なんだけど、ここで1年生を入れて行かないとまた同じことの繰り返し。何としても1年を入れなきゃいけないんだ。

「新入生の勧誘っていうと、ビラを配るのかな?」
「そうだね。ビラを配るでしょ、ポスターを貼るでしょ。去年はそれくらいだったかなあ」
「天文部では昼休みなどにブースを作って説明会をやっていましたが、MMPではやらないのですか?」
「天文部は部活だからね。サークルでも出来るのかなあ」
「でも、せっかくだしそういうブース? 出せたら出したいよなー。番組を流しながらとか説明出来たら活動のイメージも付きやすいし。新歓の管轄ってあるんすか? 総務課とか学生課とかー」
「学生課かな。うーん、聞いてみたらいいのかな」

 聞いてみたらいいのかな、で奈々先輩は学生課に電話するんだからなかなかすげーなと思う。でも徒歩だったら往復で結構時間かかるし電話の方がラクだよなー。で、結果からすると部室を持ってるサークルならブース組んでオッケーとのこと。
 一言でサークルと言っても大学の中ではランクみたいなものがあるらしい。MMPは大学に届け出が出されていて、かつ部室を持っている認可サークルだという。他には非認可サークルだとか同好会だとかいうのがあるとか。要は、MMPはサークルの中では強い部類だ。

「サークルにもいろいろ種類があるのですね。勉強になりました。MMPは大学認可サークルだったのですね」
「大学認可サークルってビラの隅っこに書いとこうぜ」
「聞いてみるモンだな、ブースも構えてオッケーみたいだし。奈々さん、いっちょやっちゃいます?」
「やっちゃおうかッ! 机とかは4号館にある物を借りれるらしいから、昼休みとかに指定の場所でブースを展開して説明会をやりましょう。えっと、ブースのことを一番知ってるのはとりぃかな。ブースってどんな感じ?」
「ブースに来た人に部の活動を説明しつつ、それ以外にも大学生活を送る上での相談など、雑談をしていました。そういう会話をとっかかりにして勧誘するという手法のようです」
「なるほどー。フランクな会話が大事ってワケだね」
「春風の苦手分野だな。お前のおカタい喋り方だと1年が逃げちまう」
「うう……悔しいけれど、こればっかりは奏多が正しいです……。友達もなかなか出来なかった私が初対面の1年生と楽しく会話が出来るのでしょうか……」

 奏多の言葉に鳥ちゃんが見るからにしょぼんとしてしまって、せっかくの新歓なのに自信を完全に無くしてしまっている。確かに鳥ちゃんはちょっと固いところがあるけど、別に欠点ってワケじゃないんだよな。人見知りではないし。――って、あれっ?

「そう言えばさ、すがやんとは初対面でめちゃくちゃ楽しく喋ってなかったっけ?」
「希くん!」
「おー、そうじゃん。俺はお前と同レベルで話したすがやんに引いたもんな」
「奏多も! あれは、徹平くんが私に合わせて星の話をしてくれたからで」
「それだよ鳥ちゃん。1年生の子に話を合わせる。別に鳥ちゃんが常に話題を提供し続けなきゃいけないワケじゃないんだよ。フランクで親しみやすいだけがいい先輩じゃねーしな。しっかりして頼れるお姉さん路線で行けばいいじゃんな」

 そこで俺が思い出すのは、新歓と言うよりは高3の時のオープンキャンパスだ。食堂でやってたMMPの公開生放送の現場でヒロ先輩と話したときのこと。あの人は良くも悪くも飾ることをしないから、裏表がなかったなと今でも思う。実際サークルに入ってもあんな感じの人だったし。
 大学生活だとかサークルに対してキラキラとした希望に溢れる話にすることも出来る。だけど俺はそうじゃなくてヒロ先輩がしてくれたみたいなリアルな話の方に魅力を感じたから、話す人の数に受ける人の数を掛けただけの解釈みたいなモンが出て来るのかなとは。結局のところフィーリングかな。

「春風が頼れるお姉さんねぇ~」
「そこは新3年らしくうちが頼れるお姉さんとして」
「や、奈々さんも頼れるお姉さんって感じじゃないっすね~。サークルを引っ張ろうって頑張ってる感はかわいいっすけどね」
「奏多! すみません奈々先輩、奏多が失礼なことを」
「ううん、まだ空回ってるって言われてないだけよかった。実際松兄は実年齢1コ上だし、人生経験的なトコでは敵わないからねー。あっ、そこまで言うなら使えるところでは使い倒そうって今決めたし大丈夫ッ!」
「は!? 俺、使い倒されるんです!? サークルに入りたてのいたいけな1年っすけど?」
「でも歳はうちの方が下だし、いたいけなハタチをサポートしてもらわないと」
「奈々先輩、俺がサークル入った時に比べてめちゃ図太くなりましたよね。あっ、もちろんいい意味でっす」
「来期のサークルを回すには、うちが腹を括ってないとだからねッ」

 最低でも抜けた分の4人は入ってもらえるように頑張りましょーと号令がかかり、俺たちもそれに「おー」と乗っかる。何人入ってもらえるかは俺たちの頑張り次第。よっしゃ、やるぞ! もう「向島はヤバい」なんて言わせないぞ!


end.


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MMPの新歓会議はなかなかに前向きなようです。しっかりと1年生をゲッティング☆していかないといけないからね
それぞれが元いた団体の勧誘手法なども使いつつ、追い出した分の4人を取りに行く戦い。奈々はしっかりとメンバーを束ねていけるか。
奏多は誰に対してものらりくらりやってるけど、奈々にはどうにもこうにもしてやられる様子。フェーズ3見て~な~、MMPらしくて面白いんだろうな~

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