2020(05)
■貪欲カフェリサーチ
++++
すがやんの頼みで、豊葦のカフェ巡りをすることになった。何でも、どこのカフェがどんな雰囲気で、どういうメニューがあってというのを知りたいらしい。大方彼女絡みで思い至ったんだろうけど、面白そうだからついて行く。
俺の他に呼ばれたのはくるみだ。くるみは元々スイーツ好きっていうのもあるけど、高崎先輩によく大学周辺のカフェに連れて行ってもらっていたらしい。だから知識はこの3人の中では1番ある。今回はアドバイザー的役割を期待されているみたいだ。
「出来れば大学に近いところにあるカフェっていうのもまた限定的な条件だよね。一応調べてきたけどどうしたのすがやん」
「大方彼女絡みでしょ。緑大と向島の間にある場所なら土地勘もちょっと出来たしみたいなことじゃない」
「サキ、お前なあ!」
「違う? 空きコマとか放課後とかに春風と一緒にお茶するためのリサーチとかじゃなくて、他に何かある?」
「ぐっ……ないです」
「別にそれをダメだとは言ってないから。思う存分調べてもらって」
「すがやんの愛だねー。いいなー」
やっぱりすがやんはわかりやすい。わかりやすい顔をしてるってワケでもないんだけど、考えることが何となくわかるんだよね。それも1年経って友達としての付き合いが深まってきてるからかな。
「それで、どこのカフェに行く? 一応ね、あたしのカフェ日記もあるよ」
「カフェ日記? って何だ?」
「スイーツブログと別に付けてる行ったカフェの記録。いつ、どこのお店で何を頼んで、どんなケーキ食べたとか、お店のBGMや客層、全体的にどんな雰囲気だったかとか、そんなようなことを記録してるんだ」
「筆まめな方だとは思ってたけど、そこまでやってるとは思わなかったよ」
「あ、えーと、そしたら、あんまりガヤガヤし過ぎてないようなところがいいかな」
「オッケー、任せて!」
俺も少し見せてもらったけど、くるみのカフェ日記には情報が事細かに記録されていて、読み物として単純に面白いしとても参考になるなと思った。いや、読み物としての面白味は俺が議事録などを読むのが好きだから感じたのかもしれない。
だけど高崎先輩と行った時にも観察と記録ばっかりしてたから最終的には呆れられたって。でも、ブログとかで情報をまとめるならここまでやらなきゃいけないのかな。カフェ日記はスイーツブログ程ちゃんとしてないって言うけど癖になってるのかもね。
「そしたら高崎先輩の最推しカフェに行く? そこまで大きくないお店だけど明るくて開放的な雰囲気。もちろんコーヒーもケーキもバツグンに美味しいの。団体って言うよりおひとり様かペアで来るお客さんが多くって、騒がしすぎないよ」
「へえ。良さそうだね」
「俄然興味が沸いた。くるみ、ナビしてー」
「オッケー! って言うかカーナビに入力するね」
そしてしばらく行くと、坂の上に少し開けた台地みたいになってる土地があって、そこにぽつんと一軒の店がある。店の横にはこの場所のシンボルのような大きな木があって、風が吹くと枝葉の揺れてさざめいている。
店の中は、くるみの記録通りそこまで広くなく、客席も多くない。3人での入店も団体様扱いされそうな、そんな感じだ。入るなりコーヒーの香りが漂ってきて、こだわってるのかなと察することが出来る。
「あたし今日のブレンドコーヒーとチョコレートケーキにしよう」
「俺はレモンティーとミルクレープ。サキは?」
「えっと、カフェラテにしようかな」
「ケーキ食べないの?」
「おなかいっぱいになるからね。一軒だけで終わる気もないんでしょ」
「そっか。あたしケーキだったらいくらでも食べれちゃうけどな」
「俺は食べられないからね」
「すがやんとサキの感想もちょうだいね。香りとかも確かめたい」
「ああそっか、今日のこれも普通にカフェ日記に書くのか」
「もちろん書くよ。高崎先輩と来たときも紅茶を頼んだことはなかったから、すがやんのレモンティーがどんな感じで来るのか興味しかないんだよね」
「レモンの輪切りとか浮かんでるのかな」
どういった分野であるかには関わらず、知識がある人はもっと知識を得たくなるのかなと思った。くるみのカフェやスイーツに対するストイックさを見ていると強く思う。最初はよくやるよなあって呆れてたけど、ここまでくると尊敬の念すら覚える。
「わー、すがやんのミルクレープおいしそー! 写真いい?」
「紅茶もよかったら」
「ありがと。はいオッケー。ミルクレープの醍醐味はこの断面! スイーツ断面フェチのあたしにはこれがたまらないのです」
「ミルクレープの断面に関してはわかる。地層みたいだよな。1枚1枚重ねる時間のロマンを感じるぞ」
「ベクトルは違うけどミルクレープの断面に想いを馳せる同士として、すがやんに次のカフェの情報をあげましょう」
「サンキュ。次の候補はどこ?」
「アンジェ*アンジュっていうお店。中にイートインスペースのあるケーキ屋さん。すがやんと言うか春風へのおすすめは天の川ゼリーだね。名前の通り天の川や星空をイメージして作られたゼリーで、とにかくビジュアルがキレイ! ほらこれ写真。ホントはもっと上手く撮らなきゃいけないんだけどさ」
「次もナビお願いします…!」
くるみの情報量が神懸かってるなと思う。下手なグルメ情報誌とかネットのレビューサイトよりもリアルな情報だからより参考になるんだろうな。うん。カフェラテのミルク感がまったりしてるのにコーヒーがコーヒーで美味しい。
「すがやん、ケーキもいいけどランチとかも探っといた方がいいんじゃない?」
「そっか! ランチか! ……ま、まあ、それは一旦また後でということで……」
end.
++++
久々にすがくるサキの3人がきゃっきゃしてるんだけど、今回はくるみの情報網がバリバリに生きてる感じがする。何だカフェ日記って。
どうやらくるちゃんは高崎に結構な数のカフェに連れて行ってもらっていた様子。足代わりにしてたようにも思えてくるから怖いもの知らずである。
何やかんやすがはるはほんのりラブラブな様子。一方その頃向島ではのパターンも見てみたいような気がするけど。
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すがやんの頼みで、豊葦のカフェ巡りをすることになった。何でも、どこのカフェがどんな雰囲気で、どういうメニューがあってというのを知りたいらしい。大方彼女絡みで思い至ったんだろうけど、面白そうだからついて行く。
俺の他に呼ばれたのはくるみだ。くるみは元々スイーツ好きっていうのもあるけど、高崎先輩によく大学周辺のカフェに連れて行ってもらっていたらしい。だから知識はこの3人の中では1番ある。今回はアドバイザー的役割を期待されているみたいだ。
「出来れば大学に近いところにあるカフェっていうのもまた限定的な条件だよね。一応調べてきたけどどうしたのすがやん」
「大方彼女絡みでしょ。緑大と向島の間にある場所なら土地勘もちょっと出来たしみたいなことじゃない」
「サキ、お前なあ!」
「違う? 空きコマとか放課後とかに春風と一緒にお茶するためのリサーチとかじゃなくて、他に何かある?」
「ぐっ……ないです」
「別にそれをダメだとは言ってないから。思う存分調べてもらって」
「すがやんの愛だねー。いいなー」
やっぱりすがやんはわかりやすい。わかりやすい顔をしてるってワケでもないんだけど、考えることが何となくわかるんだよね。それも1年経って友達としての付き合いが深まってきてるからかな。
「それで、どこのカフェに行く? 一応ね、あたしのカフェ日記もあるよ」
「カフェ日記? って何だ?」
「スイーツブログと別に付けてる行ったカフェの記録。いつ、どこのお店で何を頼んで、どんなケーキ食べたとか、お店のBGMや客層、全体的にどんな雰囲気だったかとか、そんなようなことを記録してるんだ」
「筆まめな方だとは思ってたけど、そこまでやってるとは思わなかったよ」
「あ、えーと、そしたら、あんまりガヤガヤし過ぎてないようなところがいいかな」
「オッケー、任せて!」
俺も少し見せてもらったけど、くるみのカフェ日記には情報が事細かに記録されていて、読み物として単純に面白いしとても参考になるなと思った。いや、読み物としての面白味は俺が議事録などを読むのが好きだから感じたのかもしれない。
だけど高崎先輩と行った時にも観察と記録ばっかりしてたから最終的には呆れられたって。でも、ブログとかで情報をまとめるならここまでやらなきゃいけないのかな。カフェ日記はスイーツブログ程ちゃんとしてないって言うけど癖になってるのかもね。
「そしたら高崎先輩の最推しカフェに行く? そこまで大きくないお店だけど明るくて開放的な雰囲気。もちろんコーヒーもケーキもバツグンに美味しいの。団体って言うよりおひとり様かペアで来るお客さんが多くって、騒がしすぎないよ」
「へえ。良さそうだね」
「俄然興味が沸いた。くるみ、ナビしてー」
「オッケー! って言うかカーナビに入力するね」
そしてしばらく行くと、坂の上に少し開けた台地みたいになってる土地があって、そこにぽつんと一軒の店がある。店の横にはこの場所のシンボルのような大きな木があって、風が吹くと枝葉の揺れてさざめいている。
店の中は、くるみの記録通りそこまで広くなく、客席も多くない。3人での入店も団体様扱いされそうな、そんな感じだ。入るなりコーヒーの香りが漂ってきて、こだわってるのかなと察することが出来る。
「あたし今日のブレンドコーヒーとチョコレートケーキにしよう」
「俺はレモンティーとミルクレープ。サキは?」
「えっと、カフェラテにしようかな」
「ケーキ食べないの?」
「おなかいっぱいになるからね。一軒だけで終わる気もないんでしょ」
「そっか。あたしケーキだったらいくらでも食べれちゃうけどな」
「俺は食べられないからね」
「すがやんとサキの感想もちょうだいね。香りとかも確かめたい」
「ああそっか、今日のこれも普通にカフェ日記に書くのか」
「もちろん書くよ。高崎先輩と来たときも紅茶を頼んだことはなかったから、すがやんのレモンティーがどんな感じで来るのか興味しかないんだよね」
「レモンの輪切りとか浮かんでるのかな」
どういった分野であるかには関わらず、知識がある人はもっと知識を得たくなるのかなと思った。くるみのカフェやスイーツに対するストイックさを見ていると強く思う。最初はよくやるよなあって呆れてたけど、ここまでくると尊敬の念すら覚える。
「わー、すがやんのミルクレープおいしそー! 写真いい?」
「紅茶もよかったら」
「ありがと。はいオッケー。ミルクレープの醍醐味はこの断面! スイーツ断面フェチのあたしにはこれがたまらないのです」
「ミルクレープの断面に関してはわかる。地層みたいだよな。1枚1枚重ねる時間のロマンを感じるぞ」
「ベクトルは違うけどミルクレープの断面に想いを馳せる同士として、すがやんに次のカフェの情報をあげましょう」
「サンキュ。次の候補はどこ?」
「アンジェ*アンジュっていうお店。中にイートインスペースのあるケーキ屋さん。すがやんと言うか春風へのおすすめは天の川ゼリーだね。名前の通り天の川や星空をイメージして作られたゼリーで、とにかくビジュアルがキレイ! ほらこれ写真。ホントはもっと上手く撮らなきゃいけないんだけどさ」
「次もナビお願いします…!」
くるみの情報量が神懸かってるなと思う。下手なグルメ情報誌とかネットのレビューサイトよりもリアルな情報だからより参考になるんだろうな。うん。カフェラテのミルク感がまったりしてるのにコーヒーがコーヒーで美味しい。
「すがやん、ケーキもいいけどランチとかも探っといた方がいいんじゃない?」
「そっか! ランチか! ……ま、まあ、それは一旦また後でということで……」
end.
++++
久々にすがくるサキの3人がきゃっきゃしてるんだけど、今回はくるみの情報網がバリバリに生きてる感じがする。何だカフェ日記って。
どうやらくるちゃんは高崎に結構な数のカフェに連れて行ってもらっていた様子。足代わりにしてたようにも思えてくるから怖いもの知らずである。
何やかんやすがはるはほんのりラブラブな様子。一方その頃向島ではのパターンも見てみたいような気がするけど。
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