2020(05)
■起こせよお土産の嵐
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「へー、すごい良い部屋ー! いいねえロフト付きの部屋。朝霞クンの事だから生活空間と書斎みたいな感じで分けてるのかな」
「惜しい。下が生活空間で、上が実況部屋みたいな感じ」
「昨日の今日ではさすがにまだ綺麗だな」
今日は久々にリンちゃんと集合して、朝霞クンの新居にお邪魔することに。朝霞クンとはこの春から同じ会社に就職することが決まっていて、就活友達として出会ってから1年、よくここまで来たなあ。何やかんやで上手いことやってますわ。
そして今日の本題は、新婚旅行のお土産配りパーティーだね。学生のこの時期なんかは卒業旅行に行く子も多いみたいなんだけど、うちは新婚旅行に行ったよね。って言うか、仲のいい子たちが割とその一団以外の人とどこかに行くっぽかったんだよね。
「お茶なら出るけど要る?」
「あっ、いただきまーす!」
「いただこう」
朝霞クンのマメなところだよね、家に行くと緑茶を出してくれるの。緑茶なのは山羽出身だかららしいね。まあ、カズみたく紅茶とお茶菓子をセットにしてくれるなんて人はよっぽどレアだし、本来はこれくらいがちょうどいいんだろうけどね。
「そうそう、今日の本題ね。これなんだけど」
「何か箱デカくない?」
「これね、旦那さんと新婚旅行に行って来て、そのお土産」
「やたら多いような気がするけど。あっ、中身的にもしかして行き先って北辰?」
「そうだね。旦那さんたっての希望で花粉の心配が要らない北辰です」
「ああ……確かに奴は重度の花粉症だったな」
「えっと、好きなのを1つ貰える感じ?」
「ううん、これ全部朝霞クンとリンちゃんで山分け。捌き切れないならUSDXのメンバーに分けてもらっても全然いいし」
元々北辰はお土産を探し始めるとキリがないという風には聞いていたし、やっぱお土産はたくさん買って帰りたいっていうスタンスだからお土産だけで何万使ったわからないってレベルだよね。ここに担ぎこんだのも、抱えるのがやっとの段ボール箱だし。
「高崎がお前たちからの土産に押し潰されそうになってソルに救援要請を出したという話は聞いているが」
「えっ、そこで繋がって来るの?」
「高崎のバンドとUSDXで共同制作をしていてな。高崎の新居でイクラと鮭を海鮮親子丼にして食ったという話は聞いている」
「ただただ美味そう。この中には?」
「ゴメン、入ってない」
「マジか! 取り寄せるか自分で行くしかないかー」
「朝霞クン、せめてもの罪滅ぼしじゃないけど北辰限定のビールはあります」
「いただいていいんですか!?」
要冷蔵・要冷凍の物は今回持って来れなかったけど、ビールは缶だしまた自分で冷やしてもらえばいいからね。高崎クン宛てのヤツを買う時に朝霞クンのも買っといたんだよね。あの人確かお酒好きじゃなかったかなって。
「お。宮ちゃん、これは屯屯おかきか」
「そうだねー。うちの同士のレイヤーの子が屯屯おかきは美味しいのでオススメですって教えてくれたから買って来てみたよ。バイト先の先輩が好きだからーって」
「ほう。オレはこれをいただこう。しかもホタテ味ではないか」
ちな情報源はアヤちゃんなので、“先輩”の前ではその名前を伏せつつ。同士のレイヤーの子がアヤちゃんだというのはバイト先の先輩であるリン様ももちろん認識済み。つまり、リンちゃんが屯屯おかきが好きって話を知っててピンポイントで買って来たよね。
「リン君、これそんな美味いの」
「手が止まらんな。元よりオレは米菓の類の物を好む傾向にあるのだが、屯屯おかきは油断するとなくなっていてな」
「へー、そんなに美味いんだ。やっぱ俺も1回北辰に行ってみたいなあ」
「朝霞クンにオススメの季節は夏ですね」
「夏? 何で?」
「北辰のオン友さん曰く、ビアガーデンの季節が最高だって」
「あっ、間違いねーわ。星港とは比べ物にならないんだろうなー! 死ぬまでに絶対1回は行く」
朝霞クンがとにかくチョロ……もとい、分かりやすい。これはいざ働き始めてもビール一杯でギブ&テイク出来そうな予感。欲望に忠実っていう感じの性格なのかな。
「それはそうと、新婚旅行では何をしたんだ」
「特に何をするっていうのは決めずに行ったんだよね」
「それも旅行の醍醐味だよね。気の向くままに現地で目的を決めるっていうのも」
「ほら、そもそも北辰に行く理由が花粉からの逃走だからさ。結構ネガティブな旅行でね。いくら北辰と言えどももしもがないとも限らないから極力外には出たくないって言うんですよ旦那さんたら。根っからの春嫌いでね」
「だったら宮ちゃんを巻き込まず1人で逃げれば良かったのではないか」
「リンちゃんは知ってると思うけど、1人での過ごし方を知らない人だから」
「……確かにそんな奴ではあるな」
「結局食べ歩きだとか、有名な観光名所を少し回ったりしたかな。旦那さんが引き籠もってるときもうちはご当地の同人ショップ回ったり現地のオン友さんとお茶したり結構楽しくやってたんだけどね」
「伊東さんが逞しすぎる」
「だってせっかく来てるんだから、機会は有効に使わないと。いつでも大きなイベント合わせで東都に集合するワケじゃないんだからね! 地方には地方の良さがあるんですよ! ……まあ、向島はまだ恵まれてますよその辺」
結局新婚旅行の意味があったのかって聞かれると、それはそれで楽しかったからオッケーなんだよね。何だかんだカズも元気にやってたし。大学の4年間で少しずつマスクに対する抵抗感が薄れてきたのも大きいよね。
「何はともあれ、これだけ長く自由な時間っていうのはこの先なかなかないだろうからね。有意義な時間でしたよ。旦那さんと一緒にいられたし」
「幸せそうで」
「リン様ご祝儀ありがとうございました。いつか返す?」
「いつになるかな」
end.
++++
久方ぶりの混ぜるなキケン。朝霞Pの新居から。例によって大量のお土産です。あと押し潰されてそうなのは誰や
フェーズ2ではまだカナコが先輩がああだこうだと言っている話をあまりやっていないのですが、リン様の言うところの非実在先輩は実在する
花粉から逃げるためのネガティブな新婚旅行。だけど慧梨夏はしっかりと現地で出来ることをやっているので逞しいねえ
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「へー、すごい良い部屋ー! いいねえロフト付きの部屋。朝霞クンの事だから生活空間と書斎みたいな感じで分けてるのかな」
「惜しい。下が生活空間で、上が実況部屋みたいな感じ」
「昨日の今日ではさすがにまだ綺麗だな」
今日は久々にリンちゃんと集合して、朝霞クンの新居にお邪魔することに。朝霞クンとはこの春から同じ会社に就職することが決まっていて、就活友達として出会ってから1年、よくここまで来たなあ。何やかんやで上手いことやってますわ。
そして今日の本題は、新婚旅行のお土産配りパーティーだね。学生のこの時期なんかは卒業旅行に行く子も多いみたいなんだけど、うちは新婚旅行に行ったよね。って言うか、仲のいい子たちが割とその一団以外の人とどこかに行くっぽかったんだよね。
「お茶なら出るけど要る?」
「あっ、いただきまーす!」
「いただこう」
朝霞クンのマメなところだよね、家に行くと緑茶を出してくれるの。緑茶なのは山羽出身だかららしいね。まあ、カズみたく紅茶とお茶菓子をセットにしてくれるなんて人はよっぽどレアだし、本来はこれくらいがちょうどいいんだろうけどね。
「そうそう、今日の本題ね。これなんだけど」
「何か箱デカくない?」
「これね、旦那さんと新婚旅行に行って来て、そのお土産」
「やたら多いような気がするけど。あっ、中身的にもしかして行き先って北辰?」
「そうだね。旦那さんたっての希望で花粉の心配が要らない北辰です」
「ああ……確かに奴は重度の花粉症だったな」
「えっと、好きなのを1つ貰える感じ?」
「ううん、これ全部朝霞クンとリンちゃんで山分け。捌き切れないならUSDXのメンバーに分けてもらっても全然いいし」
元々北辰はお土産を探し始めるとキリがないという風には聞いていたし、やっぱお土産はたくさん買って帰りたいっていうスタンスだからお土産だけで何万使ったわからないってレベルだよね。ここに担ぎこんだのも、抱えるのがやっとの段ボール箱だし。
「高崎がお前たちからの土産に押し潰されそうになってソルに救援要請を出したという話は聞いているが」
「えっ、そこで繋がって来るの?」
「高崎のバンドとUSDXで共同制作をしていてな。高崎の新居でイクラと鮭を海鮮親子丼にして食ったという話は聞いている」
「ただただ美味そう。この中には?」
「ゴメン、入ってない」
「マジか! 取り寄せるか自分で行くしかないかー」
「朝霞クン、せめてもの罪滅ぼしじゃないけど北辰限定のビールはあります」
「いただいていいんですか!?」
要冷蔵・要冷凍の物は今回持って来れなかったけど、ビールは缶だしまた自分で冷やしてもらえばいいからね。高崎クン宛てのヤツを買う時に朝霞クンのも買っといたんだよね。あの人確かお酒好きじゃなかったかなって。
「お。宮ちゃん、これは屯屯おかきか」
「そうだねー。うちの同士のレイヤーの子が屯屯おかきは美味しいのでオススメですって教えてくれたから買って来てみたよ。バイト先の先輩が好きだからーって」
「ほう。オレはこれをいただこう。しかもホタテ味ではないか」
ちな情報源はアヤちゃんなので、“先輩”の前ではその名前を伏せつつ。同士のレイヤーの子がアヤちゃんだというのはバイト先の先輩であるリン様ももちろん認識済み。つまり、リンちゃんが屯屯おかきが好きって話を知っててピンポイントで買って来たよね。
「リン君、これそんな美味いの」
「手が止まらんな。元よりオレは米菓の類の物を好む傾向にあるのだが、屯屯おかきは油断するとなくなっていてな」
「へー、そんなに美味いんだ。やっぱ俺も1回北辰に行ってみたいなあ」
「朝霞クンにオススメの季節は夏ですね」
「夏? 何で?」
「北辰のオン友さん曰く、ビアガーデンの季節が最高だって」
「あっ、間違いねーわ。星港とは比べ物にならないんだろうなー! 死ぬまでに絶対1回は行く」
朝霞クンがとにかくチョロ……もとい、分かりやすい。これはいざ働き始めてもビール一杯でギブ&テイク出来そうな予感。欲望に忠実っていう感じの性格なのかな。
「それはそうと、新婚旅行では何をしたんだ」
「特に何をするっていうのは決めずに行ったんだよね」
「それも旅行の醍醐味だよね。気の向くままに現地で目的を決めるっていうのも」
「ほら、そもそも北辰に行く理由が花粉からの逃走だからさ。結構ネガティブな旅行でね。いくら北辰と言えどももしもがないとも限らないから極力外には出たくないって言うんですよ旦那さんたら。根っからの春嫌いでね」
「だったら宮ちゃんを巻き込まず1人で逃げれば良かったのではないか」
「リンちゃんは知ってると思うけど、1人での過ごし方を知らない人だから」
「……確かにそんな奴ではあるな」
「結局食べ歩きだとか、有名な観光名所を少し回ったりしたかな。旦那さんが引き籠もってるときもうちはご当地の同人ショップ回ったり現地のオン友さんとお茶したり結構楽しくやってたんだけどね」
「伊東さんが逞しすぎる」
「だってせっかく来てるんだから、機会は有効に使わないと。いつでも大きなイベント合わせで東都に集合するワケじゃないんだからね! 地方には地方の良さがあるんですよ! ……まあ、向島はまだ恵まれてますよその辺」
結局新婚旅行の意味があったのかって聞かれると、それはそれで楽しかったからオッケーなんだよね。何だかんだカズも元気にやってたし。大学の4年間で少しずつマスクに対する抵抗感が薄れてきたのも大きいよね。
「何はともあれ、これだけ長く自由な時間っていうのはこの先なかなかないだろうからね。有意義な時間でしたよ。旦那さんと一緒にいられたし」
「幸せそうで」
「リン様ご祝儀ありがとうございました。いつか返す?」
「いつになるかな」
end.
++++
久方ぶりの混ぜるなキケン。朝霞Pの新居から。例によって大量のお土産です。あと押し潰されてそうなのは誰や
フェーズ2ではまだカナコが先輩がああだこうだと言っている話をあまりやっていないのですが、リン様の言うところの非実在先輩は実在する
花粉から逃げるためのネガティブな新婚旅行。だけど慧梨夏はしっかりと現地で出来ることをやっているので逞しいねえ
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