2020(05)
■ヌシの居ぬ春へ
++++
「川北、調子はどうだ」
「あっ、林原さん! おはようございますー。今日はどうしたんですか?」
「いや、そろそろ私物を引き揚げねばならんと思ってな。ついでに、残っている牛乳などを使いに来た」
「そっか、もう卒業ですもんねー」
情報センターもしばらくは穏やかな時間の流れ方をしていた。カナコさんは就活という名のオーディション巡りなどを始めたし、有馬くんはしばらく実家に帰っているけど、俺とアオだけでもしばらくは何とかなるくらいのレベルで。
さすがに俺とアオだけでは大変だからと林原さんと烏丸さんもしばらくはシフトに入ってくれていたけど、4年生の先輩は卒業と同時にセンタースタッフとしての籍も無くなるし、カナコさんと有馬くんにはそろそろ戻って来てねとアナウンスしようと思っていた頃だ。
「まあ、この時期ならまだ利用者もそこまではないか」
「そうですね。来たとしてもずっと自習室に張り付いてなきゃいけないタイプの人ではないのでまあ。無理のない範囲で見てるって感じです」
「綾瀬と有馬はまだ戻らんのか」
「有馬くんは明日北辰から戻ってきて、明後日からシフトに入ることになってますね。カナコさんは今日はたまたまいないって感じですかね」
「そうか。お前も随分とバイトリーダーが板についてきたな」
林原さんはミルクティーを淹れて事務所の机に座ってるのも、最初の頃は当たり前の光景だったけど今では何となく懐かしさみたいなものを感じちゃうのが時間の流れなのかな。まあ、そうだよね。俺も3年生になるんだもんなあ。
去年の今頃、春山さんはいなくなる気がしないって思ってたのに本当にいなくなっちゃったし、林原さんもいなくなっちゃうんだなあって。いなくなるような気は全然しないんだけど。まあ、林原さんも烏丸さんも星大の院に進学するらしいから、その辺にはいるんだろうけどね。
「しかし、卒業式が終われば健康診断と履修登録に向けた準備をせねばならんだろう」
「それなんですけど、今年から2年生以上は理系のパソコン教室でも履修登録が出来るようになったんですよ」
「何と。ではセンターにはほぼほぼ文系の者しか来んようになるのだな」
「そうじゃないかなーと思ってます」
「履修登録は健康診断のシールを確認せねばならんだろう。理系のパソコン教室では誰が確認することになっているんだ」
「教務課の人がいるみたいですねー」
「ほう。しかし、もっと早くその制度を導入すれば良かった物を。難なら、自宅などからのオンライン登録を可能にしても良さそうな物だがな」
「でも、健康診断を受けに大学に来なきゃいけないことには違いないですからねー」
「まあな」
2年生以上は理系のパソコン教室から履修登録が出来るようになったことで、情報センターにかかる負担がかなり軽くなる。情報センターの自習室の座席数は45席。その席数で各学年で1000人以上を捌くとなると……ねえ。理系の教室を開放するのは教務課の英断だと思う。
かと言って、文系の人たちも少なからずいるから俺たちが手を抜けるというワケでは決してないことはわかっている。だけど、林原さんと烏丸さんがいなくなると、4人でどう回したらいいんだろうっていうのはちょっと悩みの種だったから、何とか出来そうな気はしてたよね。
「センターでも次年度のスタッフを募集していかねばならんな」
「そうなんですよねー。ガッツリ入れなくても、ちょっとした空きコマ1つからでもいいしダブルワークも出来ますよーっていうのを前面に押し出した方が良さそうですねー。とにかく人に来てもらわないことには。俺もサークル関係で忙しくなってくるのでずっとここに缶詰めになってるワケにはいきませんし」
「確かに、空きコマ1つを週にいくつか程度であれば、メインのバイトをしていても税金云々で引っかかることもそうないだろうからな」
「林原さんて、情報センターがメインでピアニストがサブのバイトだったんですよねー」
「そうだが」
「それで103万超えなかったんですか? 結構ガッツリセンターにいたじゃないですか」
「センターの日給は何時間働いていようとも上限が6000円に決まっているからな。お前もバイトリーダーとなった今、働けば働くほど時給が下がる現象を阻止したくば、新規スタッフを積極的に採用していくのだな。スタッフの合否を決める権限はお前にある」
「そうだった……」
俺は春山さんに拾ってもらったし、アオとカナコさん、それから有馬くんは当時のバイトリーダーだった林原さんが採用を決めてたっけ(カナコさんに関しては本当にいろいろあったけど)。これから来る人の合否を決めるのは俺なんだなー。那須田さんが自分で仕事をしないばっかりに!
「それから」
「まだ何か」
「昨今ではワケありの物を売り買いするアプリなどもリリースされている。もしも何かの事故で芋なりプレッツェルなりが山のように押し寄せても、人脈で捌き切れんと思えばそういう物を使うなどして早期解決を図る方がいい。綾瀬と高山がいる以上、まだ構成員との繋がりは切れていないからな」
「あはは……まだ可能性はありますかねー。どうせ押し寄せるならバターサンドとか、美味しいお土産がちょっとずつがいいんですけどー」
「それならばオレは屯屯おかきのホタテ味を希望するのだがな。有馬が来るのは明後日か。いや、奴に集るような真似はさすがに出来んな」
「あっでも俺には「川北さんはバターサンドですよね」って確認されましたし、もしかしたらもしかするかもですよ」
end.
++++
ミドリ、今ならまだ間に合うぞ! リン様のために屯屯おかきホタテ味をレンレンにオーダーするんだ!
というワケで久々の情報センター。どうやら星大情報センターと言うか星大にも履修登録の改革が行われたようです。混雑は問題になってた様子。
そういやダイチをフェーズ2になってからあまり見ていない。すっかり落ち着いてしまったんだ……
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「川北、調子はどうだ」
「あっ、林原さん! おはようございますー。今日はどうしたんですか?」
「いや、そろそろ私物を引き揚げねばならんと思ってな。ついでに、残っている牛乳などを使いに来た」
「そっか、もう卒業ですもんねー」
情報センターもしばらくは穏やかな時間の流れ方をしていた。カナコさんは就活という名のオーディション巡りなどを始めたし、有馬くんはしばらく実家に帰っているけど、俺とアオだけでもしばらくは何とかなるくらいのレベルで。
さすがに俺とアオだけでは大変だからと林原さんと烏丸さんもしばらくはシフトに入ってくれていたけど、4年生の先輩は卒業と同時にセンタースタッフとしての籍も無くなるし、カナコさんと有馬くんにはそろそろ戻って来てねとアナウンスしようと思っていた頃だ。
「まあ、この時期ならまだ利用者もそこまではないか」
「そうですね。来たとしてもずっと自習室に張り付いてなきゃいけないタイプの人ではないのでまあ。無理のない範囲で見てるって感じです」
「綾瀬と有馬はまだ戻らんのか」
「有馬くんは明日北辰から戻ってきて、明後日からシフトに入ることになってますね。カナコさんは今日はたまたまいないって感じですかね」
「そうか。お前も随分とバイトリーダーが板についてきたな」
林原さんはミルクティーを淹れて事務所の机に座ってるのも、最初の頃は当たり前の光景だったけど今では何となく懐かしさみたいなものを感じちゃうのが時間の流れなのかな。まあ、そうだよね。俺も3年生になるんだもんなあ。
去年の今頃、春山さんはいなくなる気がしないって思ってたのに本当にいなくなっちゃったし、林原さんもいなくなっちゃうんだなあって。いなくなるような気は全然しないんだけど。まあ、林原さんも烏丸さんも星大の院に進学するらしいから、その辺にはいるんだろうけどね。
「しかし、卒業式が終われば健康診断と履修登録に向けた準備をせねばならんだろう」
「それなんですけど、今年から2年生以上は理系のパソコン教室でも履修登録が出来るようになったんですよ」
「何と。ではセンターにはほぼほぼ文系の者しか来んようになるのだな」
「そうじゃないかなーと思ってます」
「履修登録は健康診断のシールを確認せねばならんだろう。理系のパソコン教室では誰が確認することになっているんだ」
「教務課の人がいるみたいですねー」
「ほう。しかし、もっと早くその制度を導入すれば良かった物を。難なら、自宅などからのオンライン登録を可能にしても良さそうな物だがな」
「でも、健康診断を受けに大学に来なきゃいけないことには違いないですからねー」
「まあな」
2年生以上は理系のパソコン教室から履修登録が出来るようになったことで、情報センターにかかる負担がかなり軽くなる。情報センターの自習室の座席数は45席。その席数で各学年で1000人以上を捌くとなると……ねえ。理系の教室を開放するのは教務課の英断だと思う。
かと言って、文系の人たちも少なからずいるから俺たちが手を抜けるというワケでは決してないことはわかっている。だけど、林原さんと烏丸さんがいなくなると、4人でどう回したらいいんだろうっていうのはちょっと悩みの種だったから、何とか出来そうな気はしてたよね。
「センターでも次年度のスタッフを募集していかねばならんな」
「そうなんですよねー。ガッツリ入れなくても、ちょっとした空きコマ1つからでもいいしダブルワークも出来ますよーっていうのを前面に押し出した方が良さそうですねー。とにかく人に来てもらわないことには。俺もサークル関係で忙しくなってくるのでずっとここに缶詰めになってるワケにはいきませんし」
「確かに、空きコマ1つを週にいくつか程度であれば、メインのバイトをしていても税金云々で引っかかることもそうないだろうからな」
「林原さんて、情報センターがメインでピアニストがサブのバイトだったんですよねー」
「そうだが」
「それで103万超えなかったんですか? 結構ガッツリセンターにいたじゃないですか」
「センターの日給は何時間働いていようとも上限が6000円に決まっているからな。お前もバイトリーダーとなった今、働けば働くほど時給が下がる現象を阻止したくば、新規スタッフを積極的に採用していくのだな。スタッフの合否を決める権限はお前にある」
「そうだった……」
俺は春山さんに拾ってもらったし、アオとカナコさん、それから有馬くんは当時のバイトリーダーだった林原さんが採用を決めてたっけ(カナコさんに関しては本当にいろいろあったけど)。これから来る人の合否を決めるのは俺なんだなー。那須田さんが自分で仕事をしないばっかりに!
「それから」
「まだ何か」
「昨今ではワケありの物を売り買いするアプリなどもリリースされている。もしも何かの事故で芋なりプレッツェルなりが山のように押し寄せても、人脈で捌き切れんと思えばそういう物を使うなどして早期解決を図る方がいい。綾瀬と高山がいる以上、まだ構成員との繋がりは切れていないからな」
「あはは……まだ可能性はありますかねー。どうせ押し寄せるならバターサンドとか、美味しいお土産がちょっとずつがいいんですけどー」
「それならばオレは屯屯おかきのホタテ味を希望するのだがな。有馬が来るのは明後日か。いや、奴に集るような真似はさすがに出来んな」
「あっでも俺には「川北さんはバターサンドですよね」って確認されましたし、もしかしたらもしかするかもですよ」
end.
++++
ミドリ、今ならまだ間に合うぞ! リン様のために屯屯おかきホタテ味をレンレンにオーダーするんだ!
というワケで久々の情報センター。どうやら星大情報センターと言うか星大にも履修登録の改革が行われたようです。混雑は問題になってた様子。
そういやダイチをフェーズ2になってからあまり見ていない。すっかり落ち着いてしまったんだ……
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