2020(05)
■新領域の補助輪
++++
「――と、いうわけでこの4人で班になったみたい。よろしく」
「よろしくー」
MMPに入って1ヶ月と少し。ラジオの練習もしてきたけれど、いざインターフェイスという組織で行う行事の現場に出ると緊張する。奏多はいつものようにゆるっとした感じだったけど、ここまで来ると逆に羨ましい。
私や奏多、それから映像系大学さんを対象に行われた初心者講習の現場で他校の皆さんとも少し顔を合わせていました。それでも本番になるとまだまだ見たことのない人がたくさん。そしてくじ引きで班が決まったのだけど。
「春風、星ヶ丘勢とは初めてだよね」
「そうですね」
「そしたら自己紹介からしようか」
「はい。向島大学の鳥居春風です。パートはアナウンサーで、DJネームはとりぃと決まりました。不束者ですがどうぞよろしくお願いいたします」
「星ヶ丘の谷本彩人っす。元々の役職はプロデューサーだけど、インターフェイスではミキサーでやってます」
「同じく星ヶ丘の荒川みちる。元々の役職はディレクターで、インターフェイスではミキサー。よろしく」
「レナ、元々の役職って…?」
「星ヶ丘はステージ系大学でパートも4種類あるんだけど、インターフェイスではアナミキどっちかに就いてもらってるんだよ」
「ラジオと映像の他にも活動があるんですね」
今日はインターフェイスの活動に初めて参加する人も多いということで、班打ち合わせの最初に自己紹介の時間が設けられています。その時間で対策委員の方が番組のテーマを決めるためのくじ引きを持って回って来るそうです。
先にシノさんの家で緑ヶ丘の皆さんとはお会いしてましたし、先日の講習会で映像系の皆さんとも会っていたのでラジオと映像がインターフェイスの活動の主軸なのかなと思っていたら、ステージという未知の活動形態をここでまた発見です。
くじ引きで決まった班と言え、同じ班にレナがいてくれてとても心強いです。同じMMPのメンバーだとあからさまですし、徹平くんでも周りの目が気になりますし。現段階までである程度仲良くなれたレナだというのがまさにこれ以上ないベストな相手だと。
「彩人、ハーレムだね」
「バカ言うな。……いや、でも真面目にみちるとレナがいて良かった」
「彩人さんは、人見知りなのですか?」
「人見知りとはちょっと違うんだけど、諸事情で初対面の女子とはワンクッション欲しいっつーか。あ、いや、別に春風のことを警戒してるとかではないっす、一応」
「彩人はこの顔でしょ。変な女から言い寄られるとかも多々だからさ」
「なるほど。確かに背も高くて華やかですもんね。あっ、私はかわいい女の子とかではないので安心してくださいね」
「おいみちる、適当言うなよ」
「大体合ってるでしょ」
他校にはいろいろな人がいて、みんなそれぞれキャラが濃いという風に聞いているのですが、彩人さんとみちるさんの掛け合いが個人的にはとても面白く感じます。同じ大学で気心が知れているからかもしれませんね。
「と言うか「かわいい女の子とかではない」を肯定しても否定してもすがやんに怒られそうだな」
「……彩人、もしかして陸さんが喋った?」
「あ、はい。リクから聞きました」
「恥ずかしいです…! レナ、どうしましょう! もうそんな風に私のことが知られてしまっているのですか!?」
「大丈夫、まだ一部だろうから。陸さんは後でシメとくから落ち着いて」
「こんなに可愛い子を困らせるなんて許せないね。レナ、ササをシメるなら私も付き合う」
「みちるからは気持ちだけ受け取る。物理的にボコボコにしても……ねえ」
「そーだよ。お前前科持ちなんだからシメるとかボコるとかシャレになんねーんだよ。つかその強火くるみ以外にも適用されんのかよ」
「私は女の子みんなの味方だから。くるみはその中でもさらに特別」
レナによれば、彩人さんはササさんととても親密なので、ササさんはついうっかりぽろっとこぼしてしまったんだそうです。まあ、遅かれ早かれなので私も覚悟を決めておかなければなりません。いちいち狼狽えていてはどうしようもありませんから。
「えーと、一応本題だね。今日は2人で話すダブルトーク。タテとヨコっていう役割とか、いろいろあるけど、今日は春風の喋りやすいようにネタを決めてもらって、それに沿って私が番組を進行しようと思うけど、それで大丈夫かな」
「さすがレナ。それでいいと思うぜ」
「私の喋りやすいように」
「それもテーマが来てからだろうけど。まだもう少しかかりそうだから自己紹介の続きしてよっか」
「そういや、レナと春風って既に仲良いみたいだけど個別にどっかで会ってたのか? シノの部屋でたこ焼き大会やったのは聞いてるけど」
「趣味が結構似通ってるんだよ。それでたこ焼き大会の後からいろいろ話したり遊んだりしてるうちに」
「え。レナの趣味って女子の大半と合わなくね? ロボに機械にバイクに特撮って」
「でも、春風とは合ったから。微妙に強い分野が違うのが話しててまた楽しくて」
そんなことを話していると、対策委員の先輩が折りたたまれた紙の入った箱を持ってやってきました。これが番組のトークテーマを決めるクジのようです。どんなテーマが来るのかドキドキしますね。でも、レナもいますし今までに練習も積み重ねてきましたから、何とかなる、何とかしてみせます!
end.
++++
そういや彩人は2人が付き合う前のデート現場にたまたまこっそり遭遇していたんですね。ササがものっそい怪しかった例の回。
レナはともかくみちるがシメるとか言い出すと確かにシャレにならないし最後の切り札的に置いておきたいところ。本気でボコしそうだからね
彩人が変な女に言い寄られたりしてるっていうのも全部が全部嘘でもないからみちるの説明は不自然ではないでしょう。適当にそれっぽくしておけばいいのだ。
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「――と、いうわけでこの4人で班になったみたい。よろしく」
「よろしくー」
MMPに入って1ヶ月と少し。ラジオの練習もしてきたけれど、いざインターフェイスという組織で行う行事の現場に出ると緊張する。奏多はいつものようにゆるっとした感じだったけど、ここまで来ると逆に羨ましい。
私や奏多、それから映像系大学さんを対象に行われた初心者講習の現場で他校の皆さんとも少し顔を合わせていました。それでも本番になるとまだまだ見たことのない人がたくさん。そしてくじ引きで班が決まったのだけど。
「春風、星ヶ丘勢とは初めてだよね」
「そうですね」
「そしたら自己紹介からしようか」
「はい。向島大学の鳥居春風です。パートはアナウンサーで、DJネームはとりぃと決まりました。不束者ですがどうぞよろしくお願いいたします」
「星ヶ丘の谷本彩人っす。元々の役職はプロデューサーだけど、インターフェイスではミキサーでやってます」
「同じく星ヶ丘の荒川みちる。元々の役職はディレクターで、インターフェイスではミキサー。よろしく」
「レナ、元々の役職って…?」
「星ヶ丘はステージ系大学でパートも4種類あるんだけど、インターフェイスではアナミキどっちかに就いてもらってるんだよ」
「ラジオと映像の他にも活動があるんですね」
今日はインターフェイスの活動に初めて参加する人も多いということで、班打ち合わせの最初に自己紹介の時間が設けられています。その時間で対策委員の方が番組のテーマを決めるためのくじ引きを持って回って来るそうです。
先にシノさんの家で緑ヶ丘の皆さんとはお会いしてましたし、先日の講習会で映像系の皆さんとも会っていたのでラジオと映像がインターフェイスの活動の主軸なのかなと思っていたら、ステージという未知の活動形態をここでまた発見です。
くじ引きで決まった班と言え、同じ班にレナがいてくれてとても心強いです。同じMMPのメンバーだとあからさまですし、徹平くんでも周りの目が気になりますし。現段階までである程度仲良くなれたレナだというのがまさにこれ以上ないベストな相手だと。
「彩人、ハーレムだね」
「バカ言うな。……いや、でも真面目にみちるとレナがいて良かった」
「彩人さんは、人見知りなのですか?」
「人見知りとはちょっと違うんだけど、諸事情で初対面の女子とはワンクッション欲しいっつーか。あ、いや、別に春風のことを警戒してるとかではないっす、一応」
「彩人はこの顔でしょ。変な女から言い寄られるとかも多々だからさ」
「なるほど。確かに背も高くて華やかですもんね。あっ、私はかわいい女の子とかではないので安心してくださいね」
「おいみちる、適当言うなよ」
「大体合ってるでしょ」
他校にはいろいろな人がいて、みんなそれぞれキャラが濃いという風に聞いているのですが、彩人さんとみちるさんの掛け合いが個人的にはとても面白く感じます。同じ大学で気心が知れているからかもしれませんね。
「と言うか「かわいい女の子とかではない」を肯定しても否定してもすがやんに怒られそうだな」
「……彩人、もしかして陸さんが喋った?」
「あ、はい。リクから聞きました」
「恥ずかしいです…! レナ、どうしましょう! もうそんな風に私のことが知られてしまっているのですか!?」
「大丈夫、まだ一部だろうから。陸さんは後でシメとくから落ち着いて」
「こんなに可愛い子を困らせるなんて許せないね。レナ、ササをシメるなら私も付き合う」
「みちるからは気持ちだけ受け取る。物理的にボコボコにしても……ねえ」
「そーだよ。お前前科持ちなんだからシメるとかボコるとかシャレになんねーんだよ。つかその強火くるみ以外にも適用されんのかよ」
「私は女の子みんなの味方だから。くるみはその中でもさらに特別」
レナによれば、彩人さんはササさんととても親密なので、ササさんはついうっかりぽろっとこぼしてしまったんだそうです。まあ、遅かれ早かれなので私も覚悟を決めておかなければなりません。いちいち狼狽えていてはどうしようもありませんから。
「えーと、一応本題だね。今日は2人で話すダブルトーク。タテとヨコっていう役割とか、いろいろあるけど、今日は春風の喋りやすいようにネタを決めてもらって、それに沿って私が番組を進行しようと思うけど、それで大丈夫かな」
「さすがレナ。それでいいと思うぜ」
「私の喋りやすいように」
「それもテーマが来てからだろうけど。まだもう少しかかりそうだから自己紹介の続きしてよっか」
「そういや、レナと春風って既に仲良いみたいだけど個別にどっかで会ってたのか? シノの部屋でたこ焼き大会やったのは聞いてるけど」
「趣味が結構似通ってるんだよ。それでたこ焼き大会の後からいろいろ話したり遊んだりしてるうちに」
「え。レナの趣味って女子の大半と合わなくね? ロボに機械にバイクに特撮って」
「でも、春風とは合ったから。微妙に強い分野が違うのが話しててまた楽しくて」
そんなことを話していると、対策委員の先輩が折りたたまれた紙の入った箱を持ってやってきました。これが番組のトークテーマを決めるクジのようです。どんなテーマが来るのかドキドキしますね。でも、レナもいますし今までに練習も積み重ねてきましたから、何とかなる、何とかしてみせます!
end.
++++
そういや彩人は2人が付き合う前のデート現場にたまたまこっそり遭遇していたんですね。ササがものっそい怪しかった例の回。
レナはともかくみちるがシメるとか言い出すと確かにシャレにならないし最後の切り札的に置いておきたいところ。本気でボコしそうだからね
彩人が変な女に言い寄られたりしてるっていうのも全部が全部嘘でもないからみちるの説明は不自然ではないでしょう。適当にそれっぽくしておけばいいのだ。
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