2020(05)

■crack the times

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 最初は奈々から頼まれてMMPの中だけで完結するはずだった春の初心者講習だけど、それが知らない間に話が大きくなって、映像系大学の青敬と桜貝を対象に含めた結構な規模の講習会にまで発展していた。
 青敬の子たちにとっては夏の復習だけど、今度から3年振りとかにインターフェイスの活動に復帰してくる桜貝さんにとってラジオの活動は未知の領域。どうしたものかと思ったけど、いつもの初心者講習会と同じスタイルでいいかと開き直って至る今だ。
 規模が結構大きくなったことに伴って、俺1人ではカバーしきれない部分が出て来るだろうと果林に救援要請をした。一応過去の講習会でも全体講習という形でアナウンサーのことについても触れていたけど、さすがに本職がいた方がいいだろうと思った結果だ。

「野坂先輩果林先輩ありがとうございましたッ!」
「まあ、6月の講習会とやってること自体はそんなに変わんないから、あんな感じかなとは」
「でも、最近の子たちってすごい意欲的ですよねー。講習を聞く態度ひとつ見てても真面目だわ。桜貝の子たちも何だかんだ興味は持ってくれたみたいだし」

 今日の講習は元々MMPの新メンバーを対象に開かれる内輪の行事だったという理由で会場もMMPのサークル室だった。まあまあの人数が来たから入れるかと一瞬心配したけど、別の部屋からイスを借りることで事なきを得た。
 講習を聞く姿勢だとか、活動に対する意欲で言えば、今日の参加者たちはとても高いと言えるだろう。今までインターフェイスで活動してきた大学たちが映像を学ぶのと同時に映像系大学たちがラジオを学ぼうとするのは、単純にとてもいいことだと思う。
 少し前には各大学が持つ技術や作品制作手法などを紹介し合う“技術交換会”なる行事も開かれたそうだ。一言でラジオ系、映像系と言っても大学ごとにカラーは違う。そういったところでの情報なり何なりを交換し合うことで各々刺激になったようだ。

「タカちゃん的にはどうだった? 講習のいろははわかった?」
「やっぱり、入り口を広くというのが大事になって来るんですかねえ。それから、掴みでしょうか。難しいですね」
「タカティはエライよね。講習の勉強をしに来るとか」

 今回の講習会にはタカティが見学に来ていた。タカティは講習をする側がどのようにしてやっているのかを見るために来たそうだ。次にまた6月にあるであろう初心者講習会で、講師としてあっち側に立つのであろうという覚悟を既に持っているようだった。
 実際、技術交換会という行事も、映像系大学の人たちがどういうことをやっているのかわからなければ、初心者講習会で何を講習していいかわからないという理由で開いたという。インターフェイスの活動がラジオだけに留まらなくなった今、“初心者講習”の中身も見直す時だろうと。

「でも実際、今の2年生だと講師って言ったら誰に声がかかりそうなんだろ」
「まあタカティは確定だろ。講習にパソコンの要素も含めるとするなら一番理解してる人に聞きたい」
「ですよねー。でも、映像系の要素っていう意味ではあやめにも監修して欲しいところではありますね」
「ミキサーはいいとして、アナウンサーは誰になるんだろう。やっぱりエージとかになるのかなッ」
「確かに何だかんだ今の2年生ってミキサーの方にキワモノが多いっていう印象で、アナウンサーの子たちって何かインパクトに欠けるよね。アタシたちの学年が言えたことじゃないけどさ」
「ただキワモノなだけならサドニナがキワッキワっすけど、講習が出来るかって言ったら疑問ですね。エージおハナ、ミドリユキちゃんサドニナマリン? 誰がやるんだろう」
「まあ順当に行けばエージなんだろうとは。でも、多様性っていうことを考えたらマリン辺りの目も入れておきたい」

 今度からの初心者講習会は、ラジオの基礎をやるというだけではなく、広く人に伝える活動をやるという意味での触りだとか、リテラシー的な部分がメインになってくるのだろう。その上で、技術的に共通しそうな部分はこの場で共有して、という形で。
 俺たちの時は先輩たちがやった内容を下敷きに、自分たちの時代で少し変わったことを加えればいいだけだった。だけど、今の2年生の代はその辺りの内容を見直して、結構ガラッと変える必要も出て来るという意味ではかなり大変そうだなと思う。

「そう言えば、桜貝の人たちっていつまでインターフェイスに参加してたんでしたっけッ。先輩たちは一緒にやってました?」
「いや、俺たちはカブってないな。多分、今の4年生までだと思う。今の4年生が桜貝の先輩とスキー場に行ってたらしいから」
「今から思うとやっぱりスキー場DJの中止がインターフェイスの大きな転換期だったのかも。やってたら行ってみたかったけど、結局代わりになるような活動は見つかんなかったしね」
「そういった意味では今の2年生たちは、ラジオだけに限らない活動の可能性を広げていけるし、その分難しさはあるだろうけど面白そうだなとは」

 俺たちの代はスキー場にも行っていないし新しいこともほとんどやれていない、インターフェイス的には谷間の世代と言えるだろう。だけど、時代と時代を繋ぐという役割を担っているのだと思っていなければ、自分たちの存在に対する意味が見出せなくなってしまう。

「その基礎を作ってくれたのは3年生の先輩だと思ってます。最初に録音にパソコンを導入したのは野坂先輩ですし、その後にしてもL先輩をはじめとした先輩たちが新しいことをやりやすくしてくれたっていうのはあります」
「そうだねッ! うちはそんなに面白いこと出来るアイディアもないしMMPを守るので精一杯だけど」
「いや、インターフェイスどうこうより奈々はその仕事が一番大事だ。次の新歓が勝負だぞ。ビラとポスターな。菜月先輩から受け継いだ装飾のノウハウをだな」
「うっすうっす」


end.


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ノサカにとっては菜月さんにとって大事な場所であるMMPを守ってもらうのが一番大事なことなので、奈々に多くは求めません。
毎度お馴染み大事なところはナレーションベースですが、講師たちとタカちゃんと奈々が来期に向けたことなどをしみじみと。
今の4年生や2年生と比べると3年生の代は地味だけど、これまでの形式をぶっ壊したのは間違いなく3年生の代なのでそこは誇ってもいい。

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