2020(04)
■リアルで見知る前からずっと
++++
「高木せんぱーい! すみませんお待たせしました!」
「あれっ、もしかしてジムに行ってた?」
「はいっ! 定期もありますし、あたしくらいの頻度だと一般のジムに会員登録するより大学のジムの方が安くて安心ですからね」
「頑張るね。そしたら行こうか」
高木先輩から連絡があって、あたしに紹介したい人がいるってことで大学に呼び出された。春休みの大学は運動部の人がちょこちょこ歩いてるくらいで人が本当に少ないなーって感じ。大学に来たついでにジムに寄ったけど、ジムの人出は変わんなかったな。
行くのはセンタービル2階の第2食堂。ここで待ち合わせてるそうなんだけど、誰がいるんだろう。何か飲むものでも買ったらいいよってことだったから、運動の後だし高タンパク質のアイスココアに決定。これ、運動してなくても普通に美味しいんだよね。
「あ、ごめん米福くん。もう来てたね。お待たせしました」
「ううん、こっちも今さっき来たところだから」
「えっと、この子がサークルの後輩の、依田くるみさん」
「依田くるみです」
「俺は佐藤ゼミでお米同好会の2年で米福賢司。それからこっちが」
「来須麻衣でーす。あいまいみぃー」
「えっ!? まさかまいみぃちゃん本人ですかっ!? よく見たらまいみぃちゃんのグッズのパーカーだし! えっ、チャンネル登録してますし何ならメンバーですしグッズも買ったし、いつも見てます!」
「いろいろありがとうございまーす」
「いやー、予想通りのリアクションで面白いねくるみは」
「もー、高木先輩意地悪しないでくださいよ!」
確かにまいみぃちゃんは高木先輩のゼミに入ることになる子だって聞いてたけど、まさか会わせてもらえるなんて全然思ってなかった! いつも動画で見てる投稿者さんが、こうやって現実世界に実在するなんて凄いし凄すぎるよね! てか実物顔ちっちゃ! スタイルいい! 可愛い!
「この子ジャージだけど、体育学部の子?」
「あっ、経営です」
「この子はダイエットと体づくりの一貫で学内のジムに通ってるんだよ。果林先輩がアドバイザーで」
「あたし、趣味でスイーツの断面動画撮ってブログに上げてるんですけど、撮影に使ったお菓子は自分で美味しくいただいてるんでどうしても太っちゃうんですよね。だからダイエットと、太りにくいとか、燃やしやすい体になろうと思って運動してるんです」
「は!? 高木サンもしかしなくてもこの子くるるですか!?」
「そうだね。スイーツブロガーのくるるだね」
「えっ! まいみぃちゃんに存在認知されてるとか! ありがとうございます!」
「って言うかアタシも普通にファンだしカメラアプリの記事とかめっちゃ参考にさせてもらってますし、ダイエット日記には励まされてるし、スイーツだけじゃなくてアタシの作った野菜とかおにぎりの断面も撮って欲しいなって野望抱いてるんですけど!? は!? てかこんなちっちゃくて可愛い子がスイーツ動画撮ってるとかあざとすぎない!?」
スイーツブログでカメラアプリの記事とかダイエット日記をやるのはどうかなって思ったけど、参考にしてるとか励まされてるって言われると見てもらえて良かったなって思う。一応スイーツブログだから違うカテゴリでもスイーツには絡めて記事を書いてるんだけどね。
「でも、あたしのブログはみんなの協力があってなので。ダイエット記事はトレーニングメニューを組み立ててカロリー計算してくれてる果林先輩のおかげですし、カメラアプリは一緒に研究してる北星のおかげだし」
「あのダイエット記事、これだけの運動でどのスイーツに換算出来るかってのが具体的にわかって日常の活動量の中で食べたいお菓子の量の計算に役立ってるんだよね」
「それならやってよかった! あたし、ゆくゆくは自分でお菓子も作りたくって。安くて簡単で、太りにくくてもちろん美味しいわがままなスイーツを実現したいんだー。将来はコンビニスイーツの開発が夢で」
「夢があるっていいと思うよ。アタシ、現状は畑いじって動画撮って、たまに山に登ってって生活してるけど、将来の職業的な意味での夢っていうのはよくわかんないわ」
「大丈夫だよ。あたしたち、まだ焦るような歳じゃないじゃん」
「そうだね。ありがとくるる。アタシくるるに励まされてばっかりだ」
「そんな! あたしだっていつもまいみぃちゃんに背中押されてるんだよ」
「お互い全然知らないところでね」
「あはは、そうだね。確かに」
こうやって実際に顔を合わせる前から動画やブログでお互いの姿に励まされてたって、そう言うとちょっと感動しちゃうな。でも実際こうやって顔を合わせてみると、ずっと大人で先を行ってると思ってたまいみぃちゃんもあたしと同じ年頃の子なんだなって思って。
「あっ、そうだまいみぃちゃん。あたし今度ね、包丁を新調するんだ。スイーツを切ってもいいんだけど、せっかくだし切り応えのある野菜があったらいいなー……なーんて」
「出そうよ野菜! あっ、そしたらくるる、あたしの畑に出張する? 一緒に動画撮ろうよ。まいみぃとくるるのコラボでさ」
「えー! そそそ、そんなまいみぃちゃんの動画にあたしなんかがコココラっ、コラっ」
「くるみ、落ち着いて。野菜を切る話は自分からふっかけたんでしょ」
「そーでした、そうでした。えー、でもせっかく野菜切るんだし、スイーツブロガーとしては野菜を使ったお菓子を作りたいなー」
……とは言ったものの、お菓子作りはまだまだ全然やったことがないし、本当にコラボ動画を撮るんだったら何回か野菜を切ったりお菓子を作ったりっていう練習はしとかなきゃなあ。何の野菜が採れるのかを聞いて、研究だね!
end.
++++
そろそろ顔合わせしとかないとなー的なノリで顔合わせのくるちゃんとまいみぃです。先輩たちはただの引率。
まいみぃはきゃっきゃしてる印象だったけど、将来が漠然としてるのがちょっと不安だったりしたのが意外。焦るような歳じゃないよ
くるちゃんのトレーニングに関しては完全に黄色の悪魔と呼ばれた軍曹さんのおかげなので、くるちゃんは軍曹さんにも美味しいものをごちそうしよう
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「高木せんぱーい! すみませんお待たせしました!」
「あれっ、もしかしてジムに行ってた?」
「はいっ! 定期もありますし、あたしくらいの頻度だと一般のジムに会員登録するより大学のジムの方が安くて安心ですからね」
「頑張るね。そしたら行こうか」
高木先輩から連絡があって、あたしに紹介したい人がいるってことで大学に呼び出された。春休みの大学は運動部の人がちょこちょこ歩いてるくらいで人が本当に少ないなーって感じ。大学に来たついでにジムに寄ったけど、ジムの人出は変わんなかったな。
行くのはセンタービル2階の第2食堂。ここで待ち合わせてるそうなんだけど、誰がいるんだろう。何か飲むものでも買ったらいいよってことだったから、運動の後だし高タンパク質のアイスココアに決定。これ、運動してなくても普通に美味しいんだよね。
「あ、ごめん米福くん。もう来てたね。お待たせしました」
「ううん、こっちも今さっき来たところだから」
「えっと、この子がサークルの後輩の、依田くるみさん」
「依田くるみです」
「俺は佐藤ゼミでお米同好会の2年で米福賢司。それからこっちが」
「来須麻衣でーす。あいまいみぃー」
「えっ!? まさかまいみぃちゃん本人ですかっ!? よく見たらまいみぃちゃんのグッズのパーカーだし! えっ、チャンネル登録してますし何ならメンバーですしグッズも買ったし、いつも見てます!」
「いろいろありがとうございまーす」
「いやー、予想通りのリアクションで面白いねくるみは」
「もー、高木先輩意地悪しないでくださいよ!」
確かにまいみぃちゃんは高木先輩のゼミに入ることになる子だって聞いてたけど、まさか会わせてもらえるなんて全然思ってなかった! いつも動画で見てる投稿者さんが、こうやって現実世界に実在するなんて凄いし凄すぎるよね! てか実物顔ちっちゃ! スタイルいい! 可愛い!
「この子ジャージだけど、体育学部の子?」
「あっ、経営です」
「この子はダイエットと体づくりの一貫で学内のジムに通ってるんだよ。果林先輩がアドバイザーで」
「あたし、趣味でスイーツの断面動画撮ってブログに上げてるんですけど、撮影に使ったお菓子は自分で美味しくいただいてるんでどうしても太っちゃうんですよね。だからダイエットと、太りにくいとか、燃やしやすい体になろうと思って運動してるんです」
「は!? 高木サンもしかしなくてもこの子くるるですか!?」
「そうだね。スイーツブロガーのくるるだね」
「えっ! まいみぃちゃんに存在認知されてるとか! ありがとうございます!」
「って言うかアタシも普通にファンだしカメラアプリの記事とかめっちゃ参考にさせてもらってますし、ダイエット日記には励まされてるし、スイーツだけじゃなくてアタシの作った野菜とかおにぎりの断面も撮って欲しいなって野望抱いてるんですけど!? は!? てかこんなちっちゃくて可愛い子がスイーツ動画撮ってるとかあざとすぎない!?」
スイーツブログでカメラアプリの記事とかダイエット日記をやるのはどうかなって思ったけど、参考にしてるとか励まされてるって言われると見てもらえて良かったなって思う。一応スイーツブログだから違うカテゴリでもスイーツには絡めて記事を書いてるんだけどね。
「でも、あたしのブログはみんなの協力があってなので。ダイエット記事はトレーニングメニューを組み立ててカロリー計算してくれてる果林先輩のおかげですし、カメラアプリは一緒に研究してる北星のおかげだし」
「あのダイエット記事、これだけの運動でどのスイーツに換算出来るかってのが具体的にわかって日常の活動量の中で食べたいお菓子の量の計算に役立ってるんだよね」
「それならやってよかった! あたし、ゆくゆくは自分でお菓子も作りたくって。安くて簡単で、太りにくくてもちろん美味しいわがままなスイーツを実現したいんだー。将来はコンビニスイーツの開発が夢で」
「夢があるっていいと思うよ。アタシ、現状は畑いじって動画撮って、たまに山に登ってって生活してるけど、将来の職業的な意味での夢っていうのはよくわかんないわ」
「大丈夫だよ。あたしたち、まだ焦るような歳じゃないじゃん」
「そうだね。ありがとくるる。アタシくるるに励まされてばっかりだ」
「そんな! あたしだっていつもまいみぃちゃんに背中押されてるんだよ」
「お互い全然知らないところでね」
「あはは、そうだね。確かに」
こうやって実際に顔を合わせる前から動画やブログでお互いの姿に励まされてたって、そう言うとちょっと感動しちゃうな。でも実際こうやって顔を合わせてみると、ずっと大人で先を行ってると思ってたまいみぃちゃんもあたしと同じ年頃の子なんだなって思って。
「あっ、そうだまいみぃちゃん。あたし今度ね、包丁を新調するんだ。スイーツを切ってもいいんだけど、せっかくだし切り応えのある野菜があったらいいなー……なーんて」
「出そうよ野菜! あっ、そしたらくるる、あたしの畑に出張する? 一緒に動画撮ろうよ。まいみぃとくるるのコラボでさ」
「えー! そそそ、そんなまいみぃちゃんの動画にあたしなんかがコココラっ、コラっ」
「くるみ、落ち着いて。野菜を切る話は自分からふっかけたんでしょ」
「そーでした、そうでした。えー、でもせっかく野菜切るんだし、スイーツブロガーとしては野菜を使ったお菓子を作りたいなー」
……とは言ったものの、お菓子作りはまだまだ全然やったことがないし、本当にコラボ動画を撮るんだったら何回か野菜を切ったりお菓子を作ったりっていう練習はしとかなきゃなあ。何の野菜が採れるのかを聞いて、研究だね!
end.
++++
そろそろ顔合わせしとかないとなー的なノリで顔合わせのくるちゃんとまいみぃです。先輩たちはただの引率。
まいみぃはきゃっきゃしてる印象だったけど、将来が漠然としてるのがちょっと不安だったりしたのが意外。焦るような歳じゃないよ
くるちゃんのトレーニングに関しては完全に黄色の悪魔と呼ばれた軍曹さんのおかげなので、くるちゃんは軍曹さんにも美味しいものをごちそうしよう
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