2020(04)
■相談相手の選び方
++++
「あ、すがやん。わざわざ出て来てくれてありがとう」
「それで、打ち合わせだっけ?」
「そうなんだ。協力してくれると嬉しい」
「俺で良ければいくらでも相談に乗るぜ」
この間、ササから俺に個別に連絡があった。あれはシノの引っ越し祝いを買いに行く2日前のことだから、ササはゼミ合宿っていうので雪山にいたんじゃなかったかな。そんな場所からわざわざ俺に何だったのかと。
用件は、MBCCの同期6人で薪ストーブか暖炉のあるような施設に泊まりで旅行に行きたいんだけどという相談だった。確かにサークル中にそんな話が出ていたような気もするし、6人での旅行というのは楽しそうだ。
何より、その計画を出してきたのがくるみとか、そういうのが大好きそうな奴じゃなくてササっていうのが俺的には「おっ」て思って。予定さえ合えばみんな乗ってくれるだろうと、まずは俺たちで計画を詰めることにしたんだ。
「でも、そこまで薪ストーブにガチだったのか」
「ゼミ合宿で泊まった大学のセミナーハウスのラウンジに暖炉があって、やっぱりいいなって思ったんだよ。合宿中は暖炉の前を俺の指定席にしてたくらいだ」
「つか暖炉があるってどんなセミナーハウスだよ」
「とにかく凄かったけどあんな洋館とかじゃなくて、ちょっと過ごすのにいいコテージっていうのをいくつか調べてあるんだ。さすがに向島には少ないけど、長篠とか山浪だとちょこちょこあって」
「へー、そうなんだ」
「ただ、山になるから公共交通機関もそこまで網羅されてないし、すがやんの協力が必須だったってワケ」
「事情は理解した。ドライバーがいなきゃ目的地にも行けないもんな」
「そういうこと。ああ、燃料費とか、高速使うならそのお金もちゃんと計算して渡すしその辺は安心してもらって」
「気遣い感謝です」
ササの計画では、コテージを1棟2泊3日くらいの計画で借り切って、そこで各々好きなように過ごすっていう緩いお泊まり会。ただ、どこの施設もキッチンはあるけど食材はないのでそれらは自分たちで持ち込んでもらいますよという感じのシステム。
6人と飲み食いする物、ちょっとした娯楽を果たして俺の車に積めるかどうかだけど、娯楽の面で贅沢をしなければまあイケるだろうと判断。6人が乗るとさすがに車のスペースにも限界が見えてくるし。でも食料は絶対に要るからその辺の案配を見ていかなきゃなとは。
「そういやシノの引っ越し祝い買いに行ったときにみんなやたらササから予定聞かれたって言ってたけど、このためだったのか」
「そうだな。みんな意外と融通利く感じで助かった。何ならすがやんが一番捕まらないまであったからな」
「えっ、俺?」
「そうだよ。すがやんにしてはなかなかLINEに既読付かないから忙しいのかなとは思ってたけど」
「ごめんごめん。バイトとか趣味とかもそうなんだけどさ、最近また向島にちょこちょこ行ってて」
「向島に? って言うと、向こうのサークルの都合でか」
「最近になってMMPに1年が2人入ったんだって。春の制作会に出るから、そこまでにやれるようになるぞーってカノンがすっげー気合い入っててさ。その練習に俺も付き合ってんだ」
カノンが1人で空回ってるってワケでもなくて、春風と奏多もそれなりにやる気があるんだよな。アナミキ二刀流のカノンは奏多にミキサーの基礎を教えるためにミキサーのことを自分も復習してる。だから、春風にアナのことを教えるための俺って感じで召集されてて。
「そうだったのか。え、どんな子?」
「アナウンサーの女子と、ミキサーの男子が1人ずつ。でも、向島だけあって面白い子たちだよ」
「そうか。会うのが楽しみだ」
「で、こないだササからのLINEになかなか返信出来なかった日は春風と遊びに行ってましたすんませんっした!」
「バカ正直だな。え、その向島の女子?」
「です、はい」
「もしかしてもう付き合ってるとか?」
「い、や~? 付き合って、は……ああ、うん。ない」
「何でそんな疑問系?」
「逆に俺がササに相談したい」
「俺で良ければ喜んで」
ササの顔がキラッキラしてるな~……案外こういうゴシップじゃないけど、そういう話も好きなんだな。レナとかシノとか、他の奴にはくれぐれも言わないでくれとは念押ししないとな。
「こないだ一緒に科学館に行ったんだよな。向こうは星が好きだからプラネタリウムはマストって言ってて。で、席が全然なくてしゃーなしでカップルシートに座るじゃん」
「俺なら暗がりなのをいいことにスキンシップのひとつくらいは仕掛けるけど」
「脚が触れるくらいのすげー至近距離で座ってんのにもドキドキするじゃん。すげー可愛いっつか綺麗な子だしさ。明るくなって、手ぇ繋いでるじゃんってすげー驚いちまって。いつの間にって、お互い照れながら謝り合ってさ」
「ああ、いいね。甘酸っぱい」
「それで、いろいろ回って、飯食って、帰りは向こうの最寄りまで送ってったんだよ。まあ、何か、なかなか別れにくくってさ。名残惜しいっつーか」
「そのままホテルに?」
「行ってねーよ! キスだけだよ! つかお前さっきから発言が1コ1コ段階をすっ飛ばしてんだよ! 手ぇ早すぎんだよ! これだからモテる奴は! はーっ……相談する相手間違えたかな」
「すごい。すがやんが怒ってる」
「茶化すな」
「ごめんって。でも付き合う前にキスしたんならすがやんだって手の早さに関して人のことは言えないからな」
「いや、だからそれでこれからどうして行こうかって話だったんだよ。拒否られたワケでもないし、今もラジオの練習で顔は合わせてるし。何事もなかったかのように普通だよ」
「敢えてもう1回デートしてみては? ラジオの練習はカノンやもう1人の子もいるんだろ? 2人きりで会ってみてどう変わるか見てみたらいいんじゃないかな」
「うう……そーする……緊張するな~……」
「ダメだったら今回の旅行はすがやんの残念会になるだけだし」
「それはそれで残酷じゃね!?」
ああ、うん。今日は薪ストーブの会の話にとどめときゃよかったかな。でも、俺の周りでこういう話に対応出来そうなのはササしか思いつかなかったし。せっかくの会が俺の残念会になることだけは避けたいんだけど、どーかな?
end.
++++
ササとすがやんという少し珍しい組み合わせのお話ですが、薪ストーブの会の幹事とドライバーという立場の話し合いだったんですね
これは、一方その頃向島ではのパターンも見たいんだけど、どうかなあ。見られるかなあ、でもこの場合相談相手は誰になる?
そして薪ストーブの会はどういう名目で行われることになるのか! 残念会になったパターンのサキくるのリアクションも楽しみではあるんだけどw
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「あ、すがやん。わざわざ出て来てくれてありがとう」
「それで、打ち合わせだっけ?」
「そうなんだ。協力してくれると嬉しい」
「俺で良ければいくらでも相談に乗るぜ」
この間、ササから俺に個別に連絡があった。あれはシノの引っ越し祝いを買いに行く2日前のことだから、ササはゼミ合宿っていうので雪山にいたんじゃなかったかな。そんな場所からわざわざ俺に何だったのかと。
用件は、MBCCの同期6人で薪ストーブか暖炉のあるような施設に泊まりで旅行に行きたいんだけどという相談だった。確かにサークル中にそんな話が出ていたような気もするし、6人での旅行というのは楽しそうだ。
何より、その計画を出してきたのがくるみとか、そういうのが大好きそうな奴じゃなくてササっていうのが俺的には「おっ」て思って。予定さえ合えばみんな乗ってくれるだろうと、まずは俺たちで計画を詰めることにしたんだ。
「でも、そこまで薪ストーブにガチだったのか」
「ゼミ合宿で泊まった大学のセミナーハウスのラウンジに暖炉があって、やっぱりいいなって思ったんだよ。合宿中は暖炉の前を俺の指定席にしてたくらいだ」
「つか暖炉があるってどんなセミナーハウスだよ」
「とにかく凄かったけどあんな洋館とかじゃなくて、ちょっと過ごすのにいいコテージっていうのをいくつか調べてあるんだ。さすがに向島には少ないけど、長篠とか山浪だとちょこちょこあって」
「へー、そうなんだ」
「ただ、山になるから公共交通機関もそこまで網羅されてないし、すがやんの協力が必須だったってワケ」
「事情は理解した。ドライバーがいなきゃ目的地にも行けないもんな」
「そういうこと。ああ、燃料費とか、高速使うならそのお金もちゃんと計算して渡すしその辺は安心してもらって」
「気遣い感謝です」
ササの計画では、コテージを1棟2泊3日くらいの計画で借り切って、そこで各々好きなように過ごすっていう緩いお泊まり会。ただ、どこの施設もキッチンはあるけど食材はないのでそれらは自分たちで持ち込んでもらいますよという感じのシステム。
6人と飲み食いする物、ちょっとした娯楽を果たして俺の車に積めるかどうかだけど、娯楽の面で贅沢をしなければまあイケるだろうと判断。6人が乗るとさすがに車のスペースにも限界が見えてくるし。でも食料は絶対に要るからその辺の案配を見ていかなきゃなとは。
「そういやシノの引っ越し祝い買いに行ったときにみんなやたらササから予定聞かれたって言ってたけど、このためだったのか」
「そうだな。みんな意外と融通利く感じで助かった。何ならすがやんが一番捕まらないまであったからな」
「えっ、俺?」
「そうだよ。すがやんにしてはなかなかLINEに既読付かないから忙しいのかなとは思ってたけど」
「ごめんごめん。バイトとか趣味とかもそうなんだけどさ、最近また向島にちょこちょこ行ってて」
「向島に? って言うと、向こうのサークルの都合でか」
「最近になってMMPに1年が2人入ったんだって。春の制作会に出るから、そこまでにやれるようになるぞーってカノンがすっげー気合い入っててさ。その練習に俺も付き合ってんだ」
カノンが1人で空回ってるってワケでもなくて、春風と奏多もそれなりにやる気があるんだよな。アナミキ二刀流のカノンは奏多にミキサーの基礎を教えるためにミキサーのことを自分も復習してる。だから、春風にアナのことを教えるための俺って感じで召集されてて。
「そうだったのか。え、どんな子?」
「アナウンサーの女子と、ミキサーの男子が1人ずつ。でも、向島だけあって面白い子たちだよ」
「そうか。会うのが楽しみだ」
「で、こないだササからのLINEになかなか返信出来なかった日は春風と遊びに行ってましたすんませんっした!」
「バカ正直だな。え、その向島の女子?」
「です、はい」
「もしかしてもう付き合ってるとか?」
「い、や~? 付き合って、は……ああ、うん。ない」
「何でそんな疑問系?」
「逆に俺がササに相談したい」
「俺で良ければ喜んで」
ササの顔がキラッキラしてるな~……案外こういうゴシップじゃないけど、そういう話も好きなんだな。レナとかシノとか、他の奴にはくれぐれも言わないでくれとは念押ししないとな。
「こないだ一緒に科学館に行ったんだよな。向こうは星が好きだからプラネタリウムはマストって言ってて。で、席が全然なくてしゃーなしでカップルシートに座るじゃん」
「俺なら暗がりなのをいいことにスキンシップのひとつくらいは仕掛けるけど」
「脚が触れるくらいのすげー至近距離で座ってんのにもドキドキするじゃん。すげー可愛いっつか綺麗な子だしさ。明るくなって、手ぇ繋いでるじゃんってすげー驚いちまって。いつの間にって、お互い照れながら謝り合ってさ」
「ああ、いいね。甘酸っぱい」
「それで、いろいろ回って、飯食って、帰りは向こうの最寄りまで送ってったんだよ。まあ、何か、なかなか別れにくくってさ。名残惜しいっつーか」
「そのままホテルに?」
「行ってねーよ! キスだけだよ! つかお前さっきから発言が1コ1コ段階をすっ飛ばしてんだよ! 手ぇ早すぎんだよ! これだからモテる奴は! はーっ……相談する相手間違えたかな」
「すごい。すがやんが怒ってる」
「茶化すな」
「ごめんって。でも付き合う前にキスしたんならすがやんだって手の早さに関して人のことは言えないからな」
「いや、だからそれでこれからどうして行こうかって話だったんだよ。拒否られたワケでもないし、今もラジオの練習で顔は合わせてるし。何事もなかったかのように普通だよ」
「敢えてもう1回デートしてみては? ラジオの練習はカノンやもう1人の子もいるんだろ? 2人きりで会ってみてどう変わるか見てみたらいいんじゃないかな」
「うう……そーする……緊張するな~……」
「ダメだったら今回の旅行はすがやんの残念会になるだけだし」
「それはそれで残酷じゃね!?」
ああ、うん。今日は薪ストーブの会の話にとどめときゃよかったかな。でも、俺の周りでこういう話に対応出来そうなのはササしか思いつかなかったし。せっかくの会が俺の残念会になることだけは避けたいんだけど、どーかな?
end.
++++
ササとすがやんという少し珍しい組み合わせのお話ですが、薪ストーブの会の幹事とドライバーという立場の話し合いだったんですね
これは、一方その頃向島ではのパターンも見たいんだけど、どうかなあ。見られるかなあ、でもこの場合相談相手は誰になる?
そして薪ストーブの会はどういう名目で行われることになるのか! 残念会になったパターンのサキくるのリアクションも楽しみではあるんだけどw