2020(04)
■講習とは何たるか
++++
「――というワケだから、果林にも協力してほしい」
「へー、何かすごいことになってんね? 映像系大学さんを対象にしたラジオの初心者講習ねえ」
「最初はMMPだけの話だったのを対策委員が大きくしてしまってすみませんッ」
奈々の話によれば、最近向島のサークルに加入した新メンバーの子たちに対する初心者講習を野坂に頼んでたそう。それを対策委員の会議の場で言ったらその講習の範囲が向島だけじゃなくて映像系大学にまで広がってしまったんだそうだ。
アタシたちの代ではインターフェイスの活動に参加してなかった桜貝大学が復帰してくるそうだし、ラジオだけじゃなくて映像作品を作ったりファンフェスの番組などを配信したりっていう映像に寄った活動をしていこうっていう流れだから、新しい時代だなと。
「とりぃと松兄だけだったら野坂先輩の講習だけでも全然大丈夫だと思ったんですけど、思ったより青敬さんと桜貝さんが乗ってきちゃって」
「あ、奏多って松兄ってDJネームになったんだ」
「とりぃが昔から奏多は松兄って呼ばれてたんだよーって言ってたんで採用したっす」
「へえ、さすが幼馴染みだな」
向島の新しい子たちはそこそこやる気もあるようで、野坂の初心者講習だけじゃなくて自分たちでも練習や勉強を積極的にやってるみたい。今は一応元いたサークルの活動にも顔を出してるけど、学年が上がった頃にはラジオ優先でやってくっていう話らしい。
「あのー……その講習を俺も後ろの方で覗かせてもらうことって出来ますかね」
「どしたのタカちゃん」
「奈々はこないだの会議の現場にいたから聞いてたと思うけど、北星がこないだやたら俺のことを上げて来てたじゃん」
「ああ、インターフェイスで一番上手いミキサーって件だねッ」
「おお~、タカちゃんがとうとうそんな風に呼ばれる時代が」
「まあ、順当じゃないか?」
「いえ、俺より上手い人なんてたくさんいるじゃないですか。現に野坂先輩もそうですし」
「それを北星が「夏合宿にはいなかった~」ってバッサリいってて」
「そんな風に言われるとプレッシャーやらなんやらで」
タカちゃんは如何せん組み立てる構成が奇抜だから、普通の、馴染みのある構成で番組をやってる子たちより目立っちゃうんだよね。基礎もちゃんとやってるし上手くはなってるけど、そういう部分は完全に影に隠れちゃってるっていう。
ただ、ラジオのミキサーという点で言えば、そろそろそれなりの実力者として名前が挙がって来ないといけない立場では実際あるんだけど。だから北星が何を見てそう思ったのかはともかく、そう言われたという事実は受け止めなきゃいけないんだけどね。
「もしかしてタカティ、次の初心者講習会の気配を察知してる?」
「正直、少し」
「気持ちはわかる。得てして対策委員に頼みがちだし、パソコンも範囲に入って来るならまずタカティに頼んで来るだろうから」
「ですよねー……というワケで、後学のために俺も講習とは何たるかというものを勉強しておこうかと」
「それをやるとガチで講師の話が来るぞ」
「どっちにしても、現状インターフェイスのパソコン事情を一番把握しているのは自分なので、誰かに教える機会というのも必要だなとは思ってました。それはまあ、技術交換会の時でもいいんですけど」
「技術交換会って何?」
「それはそのまま、各大学が持っている技術を交換し合うっていう会ですね。ウチや向島さんはラジオの活動をメインにやっているので映像関係の技術や知識はほとんどないじゃないですか。それを青敬さんや桜貝さんに教えてもらったり、逆も然りっていう感じで、講習会と言うほどカッチリした会ではなく、フランクにやろうっていう感じですね」
「へえ、それは面白そうだな」
「青敬や桜貝が元気になってきたから出来ることなのかもね」
「そうですね」
タカちゃんは学術的な方面でもカメラの扱い方に興味があるとかないとかっていう話は小田ちゃんから聞いてたんだけど、インターフェイスでこういう流れになってるんならある意味納得かな。ゼミでもインターフェイスでも役に立ちそうな技術だもんね。それは取って行かないと。
それから、インターフェイスで使えるカメラをタカちゃんはヒゲからお下がりでもらうという話にもなっているらしい。それにはいくつか条件があるみたいなんだけど、元々インターフェイスの動画チャンネルを作るって話になってたそう。ヒゲの提示した条件のひとつ、活動を示した動画を上げるというのはクリアできる。
「その技術交換会の話も、青敬さんや桜貝さんがどういうことをやっているのか知っていないと初心者講習会の講習内容を擦り合わせることも出来ないという理由も少しあっての開催なんですよね」
「タカティ、しっかり考えてるんだな」
「そりゃあ、MBCCの機材部長だからね!」
「奈々はどうだ? MMPの代表だけど」
「あー、えー、うちはですね~……タカティ程ちゃんとはしてないんですけど~」
「奈々は対策委員と定例会を結ぶ役割をしてるじゃない。そのおかげで対策と定例会の連係がリアルタイムで上手くいってるんだと思うよ」
「そ、そうかな~ッ」
やっぱり、それぞれに役割があるんだよね。大学にも、個人にも。サークルを引退したアタシや野坂が未だにこうやって声をかけられるのにも、きっと何かしらの意味があるんだろうと。
「内容的には6月の講習会と似たような感じで大丈夫?」
「そうですね。あんな感じでお願い出来ればと」
end.
++++
初心者講習の話が本当に大きくなりました。ノサカが助けを求める同期以上のアナウンサーとなるとやっぱり果林ですね。
ミキサーとしては派手な方のタカちゃんなので、パソコンを扱っているということもあり現在の立ち位置になるのは必然と言えるかも。
ただ、対策委員の会議の時に「ステージならともかくラジオならタカティ」とゲンゴローが言っていることもあり、他の分野だとまた得手不得手が変わってきそうですね
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「――というワケだから、果林にも協力してほしい」
「へー、何かすごいことになってんね? 映像系大学さんを対象にしたラジオの初心者講習ねえ」
「最初はMMPだけの話だったのを対策委員が大きくしてしまってすみませんッ」
奈々の話によれば、最近向島のサークルに加入した新メンバーの子たちに対する初心者講習を野坂に頼んでたそう。それを対策委員の会議の場で言ったらその講習の範囲が向島だけじゃなくて映像系大学にまで広がってしまったんだそうだ。
アタシたちの代ではインターフェイスの活動に参加してなかった桜貝大学が復帰してくるそうだし、ラジオだけじゃなくて映像作品を作ったりファンフェスの番組などを配信したりっていう映像に寄った活動をしていこうっていう流れだから、新しい時代だなと。
「とりぃと松兄だけだったら野坂先輩の講習だけでも全然大丈夫だと思ったんですけど、思ったより青敬さんと桜貝さんが乗ってきちゃって」
「あ、奏多って松兄ってDJネームになったんだ」
「とりぃが昔から奏多は松兄って呼ばれてたんだよーって言ってたんで採用したっす」
「へえ、さすが幼馴染みだな」
向島の新しい子たちはそこそこやる気もあるようで、野坂の初心者講習だけじゃなくて自分たちでも練習や勉強を積極的にやってるみたい。今は一応元いたサークルの活動にも顔を出してるけど、学年が上がった頃にはラジオ優先でやってくっていう話らしい。
「あのー……その講習を俺も後ろの方で覗かせてもらうことって出来ますかね」
「どしたのタカちゃん」
「奈々はこないだの会議の現場にいたから聞いてたと思うけど、北星がこないだやたら俺のことを上げて来てたじゃん」
「ああ、インターフェイスで一番上手いミキサーって件だねッ」
「おお~、タカちゃんがとうとうそんな風に呼ばれる時代が」
「まあ、順当じゃないか?」
「いえ、俺より上手い人なんてたくさんいるじゃないですか。現に野坂先輩もそうですし」
「それを北星が「夏合宿にはいなかった~」ってバッサリいってて」
「そんな風に言われるとプレッシャーやらなんやらで」
タカちゃんは如何せん組み立てる構成が奇抜だから、普通の、馴染みのある構成で番組をやってる子たちより目立っちゃうんだよね。基礎もちゃんとやってるし上手くはなってるけど、そういう部分は完全に影に隠れちゃってるっていう。
ただ、ラジオのミキサーという点で言えば、そろそろそれなりの実力者として名前が挙がって来ないといけない立場では実際あるんだけど。だから北星が何を見てそう思ったのかはともかく、そう言われたという事実は受け止めなきゃいけないんだけどね。
「もしかしてタカティ、次の初心者講習会の気配を察知してる?」
「正直、少し」
「気持ちはわかる。得てして対策委員に頼みがちだし、パソコンも範囲に入って来るならまずタカティに頼んで来るだろうから」
「ですよねー……というワケで、後学のために俺も講習とは何たるかというものを勉強しておこうかと」
「それをやるとガチで講師の話が来るぞ」
「どっちにしても、現状インターフェイスのパソコン事情を一番把握しているのは自分なので、誰かに教える機会というのも必要だなとは思ってました。それはまあ、技術交換会の時でもいいんですけど」
「技術交換会って何?」
「それはそのまま、各大学が持っている技術を交換し合うっていう会ですね。ウチや向島さんはラジオの活動をメインにやっているので映像関係の技術や知識はほとんどないじゃないですか。それを青敬さんや桜貝さんに教えてもらったり、逆も然りっていう感じで、講習会と言うほどカッチリした会ではなく、フランクにやろうっていう感じですね」
「へえ、それは面白そうだな」
「青敬や桜貝が元気になってきたから出来ることなのかもね」
「そうですね」
タカちゃんは学術的な方面でもカメラの扱い方に興味があるとかないとかっていう話は小田ちゃんから聞いてたんだけど、インターフェイスでこういう流れになってるんならある意味納得かな。ゼミでもインターフェイスでも役に立ちそうな技術だもんね。それは取って行かないと。
それから、インターフェイスで使えるカメラをタカちゃんはヒゲからお下がりでもらうという話にもなっているらしい。それにはいくつか条件があるみたいなんだけど、元々インターフェイスの動画チャンネルを作るって話になってたそう。ヒゲの提示した条件のひとつ、活動を示した動画を上げるというのはクリアできる。
「その技術交換会の話も、青敬さんや桜貝さんがどういうことをやっているのか知っていないと初心者講習会の講習内容を擦り合わせることも出来ないという理由も少しあっての開催なんですよね」
「タカティ、しっかり考えてるんだな」
「そりゃあ、MBCCの機材部長だからね!」
「奈々はどうだ? MMPの代表だけど」
「あー、えー、うちはですね~……タカティ程ちゃんとはしてないんですけど~」
「奈々は対策委員と定例会を結ぶ役割をしてるじゃない。そのおかげで対策と定例会の連係がリアルタイムで上手くいってるんだと思うよ」
「そ、そうかな~ッ」
やっぱり、それぞれに役割があるんだよね。大学にも、個人にも。サークルを引退したアタシや野坂が未だにこうやって声をかけられるのにも、きっと何かしらの意味があるんだろうと。
「内容的には6月の講習会と似たような感じで大丈夫?」
「そうですね。あんな感じでお願い出来ればと」
end.
++++
初心者講習の話が本当に大きくなりました。ノサカが助けを求める同期以上のアナウンサーとなるとやっぱり果林ですね。
ミキサーとしては派手な方のタカちゃんなので、パソコンを扱っているということもあり現在の立ち位置になるのは必然と言えるかも。
ただ、対策委員の会議の時に「ステージならともかくラジオならタカティ」とゲンゴローが言っていることもあり、他の分野だとまた得手不得手が変わってきそうですね
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