2020(04)
■同じ穴のムジナ
++++
「1人暮らしって何が必要になるのかなー。ねえすがやん、何があったらいいと思う?」
「えっ、俺に聞くのかよ! あー、えーと、カラーボックスとか?」
「そっか。みちるちゃんも上手にカラーボックス使ってるし、あったらいいのかもね。サキは何があったらいいと思う?」
「ティッシュとか、トイレットペーパーみたいな、絶対使う物かな。何気に大きいし、買い物するにもめんどくさそう。車ならともかく、シノは原付でしょ」
「そう聞いたらそっちのが正しい気がしてきた」
「すがやん、適当に意見合わせないで」
「適当じゃねーよ」
シノが1人暮らしを始めたと聞いたので、佐藤ゼミの合宿に出ている今がチャンスと言わんばかりに陸とシノを除く同期4人でシノへの引っ越し祝いを買いに出ている。1回はシノの部屋に6人で集まって飲もうという話にはなってるし、お邪魔する機会もまあまああるだろうから。
引っ越しを手伝った陸によれば、家具家電は高崎先輩のお下がりをもらってそれなりに揃っているので、今後は生活をしながら出て来るニーズに合わせて買い物をしていくという感じになるとのこと。逆に言えば最低限しかないので何を買っても外れるということはないだろうけど、と。
すがやんが車を出してくれているからある程度大きさや重さのある物でも大丈夫と言えば大丈夫なんだけど、その辺はシノの需要にもよるところだとは思う。でも、新生活が始まったばかりで合宿に出ているので、シノの生活スタイルはまだ確立されていない。さて、どうしたものか。
「ちなみに陸は米をあげたって。10キロ」
「お米かー。そっか、絶対食べるもんね。でも、シノって自炊するのかなあ」
「どうだろうなー。買った方が楽っちゃ楽だけど。つかシノが料理するイメージねーわ」
「倹約のためのおにぎりは続けたいって言ってるみたいだよ」
「って言うか何で1人暮らしするんだっけ?」
「朝がしんどくて授業でも寝るのを回避するためだったかな」
「それじゃあ、目覚まし時計でもあげようか。1人暮らしだと生活リズムが乱れがちになるって言うし」
「いいね! とびっきりうるさいのにしよう!」
確かにシノが自炊するイメージはないし、陸も「学祭でやっと焼きそばを覚えたレベル」とは言っていた。だけどおにぎりは数をこなしたから普通に上手に、そして美味しく出来るらしい。炊飯器でご飯を炊くのは料理スキルと言うより機械との相性だ。
問題は自炊よりも、1人暮らしをしたいと思ったきっかけの方。家が遠いから通学時間が長くなって、朝早くから起きなきゃいけないのがしんどいという方。スマホのアラームがあるとは言え、目覚まし時計で二重構えにするのは悪くないと思う。
「そう言えば、さっきからくるみは人に話を振ってばっかりだけど、何かアイディアはあんのか?」
「え~、そんなこと言っても~。あたしは家族と住んでるし~……」
「つか、俺ら全員そうだからな」
「カンニングしちゃお! 1人暮らしの引っ越し祝いランキングーっと」
そう言ってくるみはスマホで調べものを始めた。確かに想像だけでアイディアを出すだけよりも、実際にどんな物が引っ越し祝いとして選ばれているのかを調べて考えた方が効率はいいし、失敗することも少ないかもしれない。
「えーっと、湯沸し器に、ホットプレートが上位に来てるみたい。あとはBluetoothの防水スピーカーとか?」
「防水スピーカーはいいね。お風呂に入りながらラジオも聞けるんでしょ」
「サキ、1人暮らしだと実家暮らしより全然風呂に入らないらしいぞ」
「ああ、そうなんだ」
「湯沸し器はともかく1人暮らしでホットプレート?」
「たこ焼きを焼けるプレートと2枚組みたいになってるヤツがあって、たこ焼きパーティーとかにも使えるんだって! えー、いいなーたこ焼きパーティー! ねえねえ、誰かあたしと折半してホットプレート買おうよ!」
「くるみ、自分がパーティーやりたいからホットプレート買おうとしてないか?」
「すがやんはたこ焼きパーティーやりたくないの!?」
「やりたい」
「よね! じゃあすがやんはあたしとホットプレートを買う班ね!」
「そしたら、私とサキで目覚まし時計と消耗品を買おうか」
買う物を大体決めたけど、実際店に行って見て回ったらこれも便利そうだねって目移りしそうな気がする。まあ、その辺は臨機応変に。陸のお米が予算3000円程度で見繕ったと聞いたので、私たち4人もその範囲でお金を出し合うことには決めてある。
「たこ焼きパーティーもやりたいけどさ、パーティーと言えばやっぱ鍋じゃね? 土鍋とカセットコンロのコンボで」
「それも捨てがたいねー! えっ、どうしよう」
「現物を見て考えようぜ」
「そうだね!」
「それはそうと、くるみもすがやんも、自分たちのための備品をシノの家に置こうとしてない?」
「そっ、そんなことないよー、ないはずだよー。ねーすがやん」
「なーくるみー。純粋にお祝いだよなー」
「サキ、今の陸さんにも言ってあげて」
「ササに? 何で」
「陸がシノにお米10キロをあげたのって、自分がシノの部屋に行ったときの食料としてだからね。シノのためでありつつ、自分のためでもあるからね。くるみとすがやんは全然いいと思うよ。“みんなで”楽しむためでもあるし。陸は“自分”のためだからね」
「あー……まあ、シノの部屋に集まって飲もうって言ってる時点で俺たちみんな同罪か」
end.
++++
ササシノが合宿に行っているのをいいことに、残り4人は一緒にお買物に出ているようです。ササもさすがにこれに対してはハブられたとは思わんだろう
引っ越し祝いに関しては、みんなちょっと打算的っぽいところがあるけれど、パーティーは必ず通る道なのでそれはそれとしてアリ。
レナがササを窘めたりするときは大体陸さんって言うよね。そしてみんな同罪だと気付いたサキ。そうだ君も同罪だ
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「1人暮らしって何が必要になるのかなー。ねえすがやん、何があったらいいと思う?」
「えっ、俺に聞くのかよ! あー、えーと、カラーボックスとか?」
「そっか。みちるちゃんも上手にカラーボックス使ってるし、あったらいいのかもね。サキは何があったらいいと思う?」
「ティッシュとか、トイレットペーパーみたいな、絶対使う物かな。何気に大きいし、買い物するにもめんどくさそう。車ならともかく、シノは原付でしょ」
「そう聞いたらそっちのが正しい気がしてきた」
「すがやん、適当に意見合わせないで」
「適当じゃねーよ」
シノが1人暮らしを始めたと聞いたので、佐藤ゼミの合宿に出ている今がチャンスと言わんばかりに陸とシノを除く同期4人でシノへの引っ越し祝いを買いに出ている。1回はシノの部屋に6人で集まって飲もうという話にはなってるし、お邪魔する機会もまあまああるだろうから。
引っ越しを手伝った陸によれば、家具家電は高崎先輩のお下がりをもらってそれなりに揃っているので、今後は生活をしながら出て来るニーズに合わせて買い物をしていくという感じになるとのこと。逆に言えば最低限しかないので何を買っても外れるということはないだろうけど、と。
すがやんが車を出してくれているからある程度大きさや重さのある物でも大丈夫と言えば大丈夫なんだけど、その辺はシノの需要にもよるところだとは思う。でも、新生活が始まったばかりで合宿に出ているので、シノの生活スタイルはまだ確立されていない。さて、どうしたものか。
「ちなみに陸は米をあげたって。10キロ」
「お米かー。そっか、絶対食べるもんね。でも、シノって自炊するのかなあ」
「どうだろうなー。買った方が楽っちゃ楽だけど。つかシノが料理するイメージねーわ」
「倹約のためのおにぎりは続けたいって言ってるみたいだよ」
「って言うか何で1人暮らしするんだっけ?」
「朝がしんどくて授業でも寝るのを回避するためだったかな」
「それじゃあ、目覚まし時計でもあげようか。1人暮らしだと生活リズムが乱れがちになるって言うし」
「いいね! とびっきりうるさいのにしよう!」
確かにシノが自炊するイメージはないし、陸も「学祭でやっと焼きそばを覚えたレベル」とは言っていた。だけどおにぎりは数をこなしたから普通に上手に、そして美味しく出来るらしい。炊飯器でご飯を炊くのは料理スキルと言うより機械との相性だ。
問題は自炊よりも、1人暮らしをしたいと思ったきっかけの方。家が遠いから通学時間が長くなって、朝早くから起きなきゃいけないのがしんどいという方。スマホのアラームがあるとは言え、目覚まし時計で二重構えにするのは悪くないと思う。
「そう言えば、さっきからくるみは人に話を振ってばっかりだけど、何かアイディアはあんのか?」
「え~、そんなこと言っても~。あたしは家族と住んでるし~……」
「つか、俺ら全員そうだからな」
「カンニングしちゃお! 1人暮らしの引っ越し祝いランキングーっと」
そう言ってくるみはスマホで調べものを始めた。確かに想像だけでアイディアを出すだけよりも、実際にどんな物が引っ越し祝いとして選ばれているのかを調べて考えた方が効率はいいし、失敗することも少ないかもしれない。
「えーっと、湯沸し器に、ホットプレートが上位に来てるみたい。あとはBluetoothの防水スピーカーとか?」
「防水スピーカーはいいね。お風呂に入りながらラジオも聞けるんでしょ」
「サキ、1人暮らしだと実家暮らしより全然風呂に入らないらしいぞ」
「ああ、そうなんだ」
「湯沸し器はともかく1人暮らしでホットプレート?」
「たこ焼きを焼けるプレートと2枚組みたいになってるヤツがあって、たこ焼きパーティーとかにも使えるんだって! えー、いいなーたこ焼きパーティー! ねえねえ、誰かあたしと折半してホットプレート買おうよ!」
「くるみ、自分がパーティーやりたいからホットプレート買おうとしてないか?」
「すがやんはたこ焼きパーティーやりたくないの!?」
「やりたい」
「よね! じゃあすがやんはあたしとホットプレートを買う班ね!」
「そしたら、私とサキで目覚まし時計と消耗品を買おうか」
買う物を大体決めたけど、実際店に行って見て回ったらこれも便利そうだねって目移りしそうな気がする。まあ、その辺は臨機応変に。陸のお米が予算3000円程度で見繕ったと聞いたので、私たち4人もその範囲でお金を出し合うことには決めてある。
「たこ焼きパーティーもやりたいけどさ、パーティーと言えばやっぱ鍋じゃね? 土鍋とカセットコンロのコンボで」
「それも捨てがたいねー! えっ、どうしよう」
「現物を見て考えようぜ」
「そうだね!」
「それはそうと、くるみもすがやんも、自分たちのための備品をシノの家に置こうとしてない?」
「そっ、そんなことないよー、ないはずだよー。ねーすがやん」
「なーくるみー。純粋にお祝いだよなー」
「サキ、今の陸さんにも言ってあげて」
「ササに? 何で」
「陸がシノにお米10キロをあげたのって、自分がシノの部屋に行ったときの食料としてだからね。シノのためでありつつ、自分のためでもあるからね。くるみとすがやんは全然いいと思うよ。“みんなで”楽しむためでもあるし。陸は“自分”のためだからね」
「あー……まあ、シノの部屋に集まって飲もうって言ってる時点で俺たちみんな同罪か」
end.
++++
ササシノが合宿に行っているのをいいことに、残り4人は一緒にお買物に出ているようです。ササもさすがにこれに対してはハブられたとは思わんだろう
引っ越し祝いに関しては、みんなちょっと打算的っぽいところがあるけれど、パーティーは必ず通る道なのでそれはそれとしてアリ。
レナがササを窘めたりするときは大体陸さんって言うよね。そしてみんな同罪だと気付いたサキ。そうだ君も同罪だ
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