2020(04)
■みんなの雪山アウトドア
++++
「自由時間だー! よっしゃ、滑るぞ! くあーっ、いい天気だー! ササ、早く行こうぜ!」
「シノ、そんなに慌てるな」
「お前はのんびりしすぎなんだー! 先行ってるぞー!」
「あー……行ってしまった」
「シノは猪突猛進っていう感じの人?」
「進んでいくときの勢いは実際凄いね。そしたら、俺らも行く?」
自由時間になるやいなやシノはスノーボードをやりに飛んで行ってしまった。スキー場の方に出られる通用口というのがあって、そこにレンタルウエアやボードが一式置いてあるそうだ。スキー場に出る人はそこに行くし、そうでない人は各々好きなことをするようだ。
俺はスキーに挑戦するという相倉君……亮真と一緒にゆっくり通用口に向かう。ウエアのサイズは事前に申請してあった通りの物を取る。俺はLサイズ。昨日から少し話していて彼の情報が少し得られたんだけど、やっぱり大人しそうに見えて行動的なようだ。
「えっと、板はどれでもいいのかな」
「俺はスキーだから、これかな。うわ、眩しい」
「本当に目の前がスキー場だ。あ、そこが中腹のリフトなんだ」
「ここから登ると山頂まで行けるみたいだ。でも、俺は初心者だからまずはここから下って慣れないと」
「俺も初心者だから山頂にはしばらく行けそうにないな。一応滑り方は動画とか見て調べて来たんだけど」
「さて、アタシもやりますか!」
すぐ目の前にはリフト乗り場があるんだけど、そこから続くのは大きく見上げた先にある山頂だ。見た感じ結構な傾斜だからあそこから滑るのは怖い。そして、俺たちの後ろから大きな荷物を持ってやって来たのはまいみぃ。
「まいみぃ、スキーをやるにしては軽装だな」
「アタシはスキースノボじゃなくて雪中キャンプ飯を作るんだよ」
「雪中キャンプ飯?」
そう言ってまいみぃは雪の上に道具を広げ始めた。確かに最近流行ってますっていう感じでキャンプ特集とかで見たことがあるような風景なんだけど、まさかゼミ合宿にキャンプ用具を持って来ていたのか。
「……ワンバーナー、なかなかいいヤツだ。メスティンの中に食材が入ってるのかな」
「おっ、アンタわかってんじゃん! アンタも山に登るの?」
「部活で少し」
「へー、登山部とか?」
「自然科学研究会っていう、実質アウトドア部的な」
「いいじゃんアウトドア部! アタシはお米同好会らしくこれからご飯炊いて、それに合う煮込み料理でもつくろっかなって。お昼ご飯も各自で食べなきゃなんでしょ? だったらアタシはここで作ろうと思ってさ。って言うかアンタ名前は?」
「相倉亮真」
「名字長っ! あいのくら!? 長いから亮真って呼ぶね。アタシは来須麻衣。麻衣でもまいみぃでも好きに呼んで。それじゃ、アタシはご飯炊くし、スポーツ組はいってらっしゃーい」
ひらひらと手を振って俺たちを送り、まいみぃは本当に調理を始めてしまった。って言うか、普通に調理機器だしガスバーナーだし、そんなモンを持って来てるからバランスを取れなくて初っ端から転んだんじゃないかとうっすら思う。
はじめの一歩を踏み出す勇気はまだない。シノがこの辺にいるという感じでもないからアイツはもう行ってしまったんだろう。確か果林先輩や高木先輩もスキーをやってるはずなんだよな。先輩たちはどこに行ったんだろう。
「あれっ、ササ。行かないの?」
「高木先輩。えっ、今山頂から来ました?」
「そうだね。軽く肩慣らしに」
「本当に上手いじゃないですか」
「スキーは唯一得意なスポーツだから――って、えっ。来須さん何やってんの?」
「ああ、高木さん。アタシは見ての通り昼食作りですよ」
「びっくりした。本格的なキャンプ飯だね」
「アタシにはお構いなく。いってらっしゃーい」
「そしたら、もう1回行こうかな」
「あっ、高木先輩、シノ見ませんでした?」
「いや、見てないね。山頂にはいなかったよ」
「そっか。じゃあ下なのかな。ありがとうございます」
「それじゃあね」
雪国出身ってワケでもないのに高木先輩の滑りが華麗すぎるんだよな。本当に得意なんだろうな。羨ましい。その姿を見て、亮真がイメージトレーニングをしているようだ。体が左右に何となく揺れている。
「今の人、ササの先輩?」
「うん、サークルの先輩だよ。機材の扱いが凄くって、番組の構成も斬新で面白くて、人としても凄い先輩」
「やっぱり出来る人はいいアイテムを身に付けてるんだな」
「いいアイテム?」
「あの帽子、いいの被ってるなと思って」
「珍しいな、普段帽子なんか全然被ってないのに。やっぱスキーだからか」
「……アンタらまだいたの? さっさと滑りに行きなよ」
「ああ、そろそろ滑りに行く?」
「そうだな。最初の1回を行かなきゃ永遠にこのままだろうし」
初心者2人で最初の一歩を踏み出す。少し滑って、端の方で少し止まってみて、また滑る。山の空気を目いっぱい吸って、雪でキラキラ反射する光を受けていると、いいなあって思う。またこういう場所に、今度は勉強抜きで来たい。
「おーい! ササー!」
「シノ! 何やってんだー!」
「おやきがうめー!」
「もう間食してるのか!」
「いいから早く来いよー!」
「……仕方ないな。亮真、行こうか」
「そうだな」
end.
++++
みんな好き勝手にしてる2日目昼の自由時間です。ササシノらはスキー場へ、まいみぃは雪山キャンプ飯作り、多分ミツ君はハウス内で過ごしてる。
タカちゃんは塩見さんからもらった帽子をちゃんと被ってるようですね。やっぱMBCCの子らからするとTKG+帽子の図式は珍しい様子。
亮真は実質アウトドア部だけあってキャンプ道具なんかの知識もちょっとはあるみたいですね。まいみぃとはその辺の会話が通じるのかも。
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「自由時間だー! よっしゃ、滑るぞ! くあーっ、いい天気だー! ササ、早く行こうぜ!」
「シノ、そんなに慌てるな」
「お前はのんびりしすぎなんだー! 先行ってるぞー!」
「あー……行ってしまった」
「シノは猪突猛進っていう感じの人?」
「進んでいくときの勢いは実際凄いね。そしたら、俺らも行く?」
自由時間になるやいなやシノはスノーボードをやりに飛んで行ってしまった。スキー場の方に出られる通用口というのがあって、そこにレンタルウエアやボードが一式置いてあるそうだ。スキー場に出る人はそこに行くし、そうでない人は各々好きなことをするようだ。
俺はスキーに挑戦するという相倉君……亮真と一緒にゆっくり通用口に向かう。ウエアのサイズは事前に申請してあった通りの物を取る。俺はLサイズ。昨日から少し話していて彼の情報が少し得られたんだけど、やっぱり大人しそうに見えて行動的なようだ。
「えっと、板はどれでもいいのかな」
「俺はスキーだから、これかな。うわ、眩しい」
「本当に目の前がスキー場だ。あ、そこが中腹のリフトなんだ」
「ここから登ると山頂まで行けるみたいだ。でも、俺は初心者だからまずはここから下って慣れないと」
「俺も初心者だから山頂にはしばらく行けそうにないな。一応滑り方は動画とか見て調べて来たんだけど」
「さて、アタシもやりますか!」
すぐ目の前にはリフト乗り場があるんだけど、そこから続くのは大きく見上げた先にある山頂だ。見た感じ結構な傾斜だからあそこから滑るのは怖い。そして、俺たちの後ろから大きな荷物を持ってやって来たのはまいみぃ。
「まいみぃ、スキーをやるにしては軽装だな」
「アタシはスキースノボじゃなくて雪中キャンプ飯を作るんだよ」
「雪中キャンプ飯?」
そう言ってまいみぃは雪の上に道具を広げ始めた。確かに最近流行ってますっていう感じでキャンプ特集とかで見たことがあるような風景なんだけど、まさかゼミ合宿にキャンプ用具を持って来ていたのか。
「……ワンバーナー、なかなかいいヤツだ。メスティンの中に食材が入ってるのかな」
「おっ、アンタわかってんじゃん! アンタも山に登るの?」
「部活で少し」
「へー、登山部とか?」
「自然科学研究会っていう、実質アウトドア部的な」
「いいじゃんアウトドア部! アタシはお米同好会らしくこれからご飯炊いて、それに合う煮込み料理でもつくろっかなって。お昼ご飯も各自で食べなきゃなんでしょ? だったらアタシはここで作ろうと思ってさ。って言うかアンタ名前は?」
「相倉亮真」
「名字長っ! あいのくら!? 長いから亮真って呼ぶね。アタシは来須麻衣。麻衣でもまいみぃでも好きに呼んで。それじゃ、アタシはご飯炊くし、スポーツ組はいってらっしゃーい」
ひらひらと手を振って俺たちを送り、まいみぃは本当に調理を始めてしまった。って言うか、普通に調理機器だしガスバーナーだし、そんなモンを持って来てるからバランスを取れなくて初っ端から転んだんじゃないかとうっすら思う。
はじめの一歩を踏み出す勇気はまだない。シノがこの辺にいるという感じでもないからアイツはもう行ってしまったんだろう。確か果林先輩や高木先輩もスキーをやってるはずなんだよな。先輩たちはどこに行ったんだろう。
「あれっ、ササ。行かないの?」
「高木先輩。えっ、今山頂から来ました?」
「そうだね。軽く肩慣らしに」
「本当に上手いじゃないですか」
「スキーは唯一得意なスポーツだから――って、えっ。来須さん何やってんの?」
「ああ、高木さん。アタシは見ての通り昼食作りですよ」
「びっくりした。本格的なキャンプ飯だね」
「アタシにはお構いなく。いってらっしゃーい」
「そしたら、もう1回行こうかな」
「あっ、高木先輩、シノ見ませんでした?」
「いや、見てないね。山頂にはいなかったよ」
「そっか。じゃあ下なのかな。ありがとうございます」
「それじゃあね」
雪国出身ってワケでもないのに高木先輩の滑りが華麗すぎるんだよな。本当に得意なんだろうな。羨ましい。その姿を見て、亮真がイメージトレーニングをしているようだ。体が左右に何となく揺れている。
「今の人、ササの先輩?」
「うん、サークルの先輩だよ。機材の扱いが凄くって、番組の構成も斬新で面白くて、人としても凄い先輩」
「やっぱり出来る人はいいアイテムを身に付けてるんだな」
「いいアイテム?」
「あの帽子、いいの被ってるなと思って」
「珍しいな、普段帽子なんか全然被ってないのに。やっぱスキーだからか」
「……アンタらまだいたの? さっさと滑りに行きなよ」
「ああ、そろそろ滑りに行く?」
「そうだな。最初の1回を行かなきゃ永遠にこのままだろうし」
初心者2人で最初の一歩を踏み出す。少し滑って、端の方で少し止まってみて、また滑る。山の空気を目いっぱい吸って、雪でキラキラ反射する光を受けていると、いいなあって思う。またこういう場所に、今度は勉強抜きで来たい。
「おーい! ササー!」
「シノ! 何やってんだー!」
「おやきがうめー!」
「もう間食してるのか!」
「いいから早く来いよー!」
「……仕方ないな。亮真、行こうか」
「そうだな」
end.
++++
みんな好き勝手にしてる2日目昼の自由時間です。ササシノらはスキー場へ、まいみぃは雪山キャンプ飯作り、多分ミツ君はハウス内で過ごしてる。
タカちゃんは塩見さんからもらった帽子をちゃんと被ってるようですね。やっぱMBCCの子らからするとTKG+帽子の図式は珍しい様子。
亮真は実質アウトドア部だけあってキャンプ道具なんかの知識もちょっとはあるみたいですね。まいみぃとはその辺の会話が通じるのかも。
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