2020(04)
■黄色の悪魔奇譚
++++
「おーい高木、朝飯行くぞー」
「はーい。朝ごはんでしっかり食べとかないと今後が心配だよね」
「それじゃん?」
2日目朝。鵠さんが声をかけてくれて、朝食会場の食堂に向かう。食堂とは言うけど、シャンデリアが下がっているしテーブルやイスも豪華な家具っていう感じなんだよね。なかなか座りなれなくて落ち着かない机。
朝食はバイキング形式で、和食に洋食、好きなように食べることが出来る。逆に言えば、ここでしっかり食べておかないとこれから先の胃袋事情が保証されないっていうこと。2日目の日中は自由時間だし、夜は例によってフランス料理だから。
「高木先輩おざーす」
「おはようございます」
「おはよう。シノ、ちゃんと起きれた?」
「起きたっすよ!」
「あっ、MBCC勢揃いだねー、おはよー」
「果林先輩おはようございます」
「朝食バイキングの何が最高って言ったらやっぱりパン! 焼きたてが本当に美味しいの」
「くーっ、俺も楽しみっす!」
「さーて、ごはんごはん」
うきうきした様子の果林先輩に続いてシノも揚々と食べる物を取りに行った。果林先輩の後は食べる物がなくなりそうだなと思いつつも、俺もトレーを手に並ぶ。パンにしようかな、ご飯にしようかな。うーん、パンかな。
「おー、千葉ちゃん相変わらずめちゃ食うじゃん? 飯が無限湧きしてるから誰も難民になってねーのがすげーけど」
「そうだね。確かに、無くなったらすぐ補充されてるもんね」
「あ、高木君、康平もおはよう」
「おーす」
「米福くんおはよう」
「高木さんおはよーございまーす」
「来須さんもおはよう」
「高木さん朝食はパン派ですかぁ?」
「パンの方が多いけどご飯も食べるよ。この雪山だとご飯よりパンの方が貴重かなと思ってパンにしたんだ。ご飯はお湯で戻すの持ってるし」
「なるほどぉー。アタシはお米同好会という期待を裏切らず朝はご飯に玉子焼きです」
「ああ、いいね。和食もおいしいと思うよ」
ごはんと玉子焼き、それから鮭の切り身と味噌汁に納豆というザ・和朝食という献立の組み立て方をしている来須さんだ。お米同好会の子はやっぱりお米が好きなんだなあ。ただ、同じくお米同好会の米福くんは朝からうどんを食べるみたい。えっ、うどんなんてあるんだ。いいなあ。
「は!? 何あれ。ヨネケン先輩、あれは是し難いです!」
「まいみぃ、何か見つけたか」
「アタシテレビの大食い企画とか嫌いなの知ってますよね? あの盛り方は絶対食べられない、残すヤツじゃないですか」
――と、来須さんが見ているのは果林先輩の方で。果林先輩は確かに一般的尺度では考えられない盛り方をしてうっきうきで食事をしようとしている。俺も最初に見たときは驚いたけど、今では果林先輩ならこれくらいは食べるよなあと当たり前に思ってしまってるんだよね。
「アタシ、物申しに行きたいんですけど」
「まいみぃ、あの人はやめとけ」
「何で」
「あの人は本当に食べるから。よく見ろ。小柄な体に黄色のジャージ」
「はっ…! もしかして“黄色の悪魔”…!?」
「えーと、お米同好会の皆さん? 黄色の悪魔って」
「黄色の悪魔がはねる時、お米同好会は恐怖におののくっていう風に……ああ、もちろんネタでだけど言われてて。でも学祭でやってる米の食べ比べで千葉先輩が全種類食べてったときに、全部食われるんじゃないかって恐怖を覚えたのは事実としてある」
「ああー……身内としてその恐怖を否定は出来ない」
果林先輩なら炊飯器の1つや2つ空にするくらい造作もないし、お米同好会が出展していたご飯の食べ比べブースについても「全種類1回ずつと1番好きだったご飯のおかわり1回だけにしといた」と手加減していた様子。だけどその食べっぷりは一般人のそれを優に超えるから、お米同好会の間ではそんな異名が付いていた様子。
確かにテレビとかでよくある大食い企画は食べ切れないことを前提にやっている感がある。本当に食べれる人が食べてる分にはいいんだけどね。来須さんのようにそれを好まない人もいるコンテンツではあると思う。でも、何度でも言うけど果林先輩は食べちゃうんだ。
「高木君、千葉先輩にとってあの食事量って」
「準備体操にも入らないレベルだね」
「――だ、そうです。だからまいみぃ、ビュッフェとかで調子に乗って残す人とは違うんだよあの先輩は。あの人が通った後にはぺんぺん草ひとつ残らないんだ」
「ああー、その表現はウチのサークルでもされるね。実際飲み会の時とか、食料を求めて果林先輩が歩いた後にはパセリ一本残らないし」
「ええー……それがホントでも引くわ。あの体のどこに入んの?」
「初めて見た人はみんな思うことだね」
続々カゴに追加される焼きたてのパンを、果林先輩はどんどん取りに行ってぱくぱく食べている。パンも美味しいけどご飯も食べたいなーと言ってご飯もよそって行く辺りが安定。俺ももう少しパンを食べようかな。いろんな種類があるみたいだし。
「高木君、食べるね」
「せっかくだしね。昼は自由行動だからここで確実に食べときたい」
「あ、そっか。高木君スキー組だもんね。俺ももうちょっと食べとこう。お粥あったよね確か」
「うどんにお粥って。ヨネケン先輩消化良過ぎウケる」
end.
+++
黄色の悪魔に関しては完全にピンクの悪魔のオマージュ的なヤツ。お米同好会の中にかのゲームをやってた人がいるんだろう
ラーメンが好きだということがわかっているヨネケン、今回の朝食でもうどんを食べてるのでやっぱり麺類が好きらしい。
ザ・和朝食を作ったまいみぃ。オシャレに洋食とか食べてそうなキャラだと思ってたけどそうでもないんですね。
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「おーい高木、朝飯行くぞー」
「はーい。朝ごはんでしっかり食べとかないと今後が心配だよね」
「それじゃん?」
2日目朝。鵠さんが声をかけてくれて、朝食会場の食堂に向かう。食堂とは言うけど、シャンデリアが下がっているしテーブルやイスも豪華な家具っていう感じなんだよね。なかなか座りなれなくて落ち着かない机。
朝食はバイキング形式で、和食に洋食、好きなように食べることが出来る。逆に言えば、ここでしっかり食べておかないとこれから先の胃袋事情が保証されないっていうこと。2日目の日中は自由時間だし、夜は例によってフランス料理だから。
「高木先輩おざーす」
「おはようございます」
「おはよう。シノ、ちゃんと起きれた?」
「起きたっすよ!」
「あっ、MBCC勢揃いだねー、おはよー」
「果林先輩おはようございます」
「朝食バイキングの何が最高って言ったらやっぱりパン! 焼きたてが本当に美味しいの」
「くーっ、俺も楽しみっす!」
「さーて、ごはんごはん」
うきうきした様子の果林先輩に続いてシノも揚々と食べる物を取りに行った。果林先輩の後は食べる物がなくなりそうだなと思いつつも、俺もトレーを手に並ぶ。パンにしようかな、ご飯にしようかな。うーん、パンかな。
「おー、千葉ちゃん相変わらずめちゃ食うじゃん? 飯が無限湧きしてるから誰も難民になってねーのがすげーけど」
「そうだね。確かに、無くなったらすぐ補充されてるもんね」
「あ、高木君、康平もおはよう」
「おーす」
「米福くんおはよう」
「高木さんおはよーございまーす」
「来須さんもおはよう」
「高木さん朝食はパン派ですかぁ?」
「パンの方が多いけどご飯も食べるよ。この雪山だとご飯よりパンの方が貴重かなと思ってパンにしたんだ。ご飯はお湯で戻すの持ってるし」
「なるほどぉー。アタシはお米同好会という期待を裏切らず朝はご飯に玉子焼きです」
「ああ、いいね。和食もおいしいと思うよ」
ごはんと玉子焼き、それから鮭の切り身と味噌汁に納豆というザ・和朝食という献立の組み立て方をしている来須さんだ。お米同好会の子はやっぱりお米が好きなんだなあ。ただ、同じくお米同好会の米福くんは朝からうどんを食べるみたい。えっ、うどんなんてあるんだ。いいなあ。
「は!? 何あれ。ヨネケン先輩、あれは是し難いです!」
「まいみぃ、何か見つけたか」
「アタシテレビの大食い企画とか嫌いなの知ってますよね? あの盛り方は絶対食べられない、残すヤツじゃないですか」
――と、来須さんが見ているのは果林先輩の方で。果林先輩は確かに一般的尺度では考えられない盛り方をしてうっきうきで食事をしようとしている。俺も最初に見たときは驚いたけど、今では果林先輩ならこれくらいは食べるよなあと当たり前に思ってしまってるんだよね。
「アタシ、物申しに行きたいんですけど」
「まいみぃ、あの人はやめとけ」
「何で」
「あの人は本当に食べるから。よく見ろ。小柄な体に黄色のジャージ」
「はっ…! もしかして“黄色の悪魔”…!?」
「えーと、お米同好会の皆さん? 黄色の悪魔って」
「黄色の悪魔がはねる時、お米同好会は恐怖におののくっていう風に……ああ、もちろんネタでだけど言われてて。でも学祭でやってる米の食べ比べで千葉先輩が全種類食べてったときに、全部食われるんじゃないかって恐怖を覚えたのは事実としてある」
「ああー……身内としてその恐怖を否定は出来ない」
果林先輩なら炊飯器の1つや2つ空にするくらい造作もないし、お米同好会が出展していたご飯の食べ比べブースについても「全種類1回ずつと1番好きだったご飯のおかわり1回だけにしといた」と手加減していた様子。だけどその食べっぷりは一般人のそれを優に超えるから、お米同好会の間ではそんな異名が付いていた様子。
確かにテレビとかでよくある大食い企画は食べ切れないことを前提にやっている感がある。本当に食べれる人が食べてる分にはいいんだけどね。来須さんのようにそれを好まない人もいるコンテンツではあると思う。でも、何度でも言うけど果林先輩は食べちゃうんだ。
「高木君、千葉先輩にとってあの食事量って」
「準備体操にも入らないレベルだね」
「――だ、そうです。だからまいみぃ、ビュッフェとかで調子に乗って残す人とは違うんだよあの先輩は。あの人が通った後にはぺんぺん草ひとつ残らないんだ」
「ああー、その表現はウチのサークルでもされるね。実際飲み会の時とか、食料を求めて果林先輩が歩いた後にはパセリ一本残らないし」
「ええー……それがホントでも引くわ。あの体のどこに入んの?」
「初めて見た人はみんな思うことだね」
続々カゴに追加される焼きたてのパンを、果林先輩はどんどん取りに行ってぱくぱく食べている。パンも美味しいけどご飯も食べたいなーと言ってご飯もよそって行く辺りが安定。俺ももう少しパンを食べようかな。いろんな種類があるみたいだし。
「高木君、食べるね」
「せっかくだしね。昼は自由行動だからここで確実に食べときたい」
「あ、そっか。高木君スキー組だもんね。俺ももうちょっと食べとこう。お粥あったよね確か」
「うどんにお粥って。ヨネケン先輩消化良過ぎウケる」
end.
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黄色の悪魔に関しては完全にピンクの悪魔のオマージュ的なヤツ。お米同好会の中にかのゲームをやってた人がいるんだろう
ラーメンが好きだということがわかっているヨネケン、今回の朝食でもうどんを食べてるのでやっぱり麺類が好きらしい。
ザ・和朝食を作ったまいみぃ。オシャレに洋食とか食べてそうなキャラだと思ってたけどそうでもないんですね。
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