2020(04)

■多忙極まる2月上旬

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「非常食! って何だ!」
「とりあえず、先輩たちから聞いた情報を元にいろいろ探してみよう」

 佐藤ゼミの卒論発表合宿というのがもう来週に迫っているということで、必要な物資を調達するための買い物をシノと行く。昨日は引っ越しの準備に忙しくしていたようだけど、今日は合宿の準備に忙しくなりそうだ。
 高木先輩と果林先輩に聞いた情報では、宿泊室には湯沸し器があるのでお湯で調理出来る物であれば大体美味しくいただけるそうなので、カップめんがあると安心とのこと。濃い味の物や和食が恋しくなるという話だから、ラーメンやうどんは買って行こう。
 それから、お湯で戻す登山や災害用非常食のご飯が大活躍するそうだ。お湯で戻せば15分で美味しいご飯が出来上がるとか。最近ではフリーズドライ食品の進化も目覚ましいとはテレビや雑誌で見たし、試してみるいい機会なのかもしれない。

「確か、T-FRONTの中に登山グッズとか売ってるアウトドア用品店があったはずだから、そこを見てみようか」
「豊葦の地理に関しては任せた」

 駅前の商業ビルの中で粗方揃うだろうということで、そこから攻めていくことに。登山グッズとか非常食を扱う雑貨屋などが入っていたはずだという記憶を頼りに。まあ、非常食が無くても別の場所にスーパーもあるし大丈夫かなとは。

「えーっと、確かこの辺だったかな。ああ、あった。よかった。そしたら見てみるか」
「お湯で戻す飯~。……なあササ、スノボやるんだったらさすがに帽子とか手袋とかあった方がいいんだよな」
「ああー……そうかもな。ウエアはレンタル出来るけど、細かいアイテムは多分自前のが必要かもな。どっちにしても雪山は寒いし、持ってて損はしないだろ」
「帽子と手袋買お。あ、かわいいのあるじゃん。これにしよ」

 雪山対策のアイテムもカゴに入れて、本題の非常食コーナーを探す。登山料理に使える物と一緒にあることが多いとは先輩たちが言ってたから、そういう物を探してみる。カバンやウエア、靴のコーナーを抜けた先にそれはあった。
 陳列棚には結構な種類のフリーズドライ食品が置かれていた。定番の味噌汁に、カレーやパスタまである。そして、非常食としても備蓄出来るご飯が各種。白いご飯に始まりわかめごはんやたけのこご飯、ピラフまで多種多様だ。

「へー、いろいろあるんだな。お湯で15分か、結構なげーな。食べたいと思う前にもうお湯入れなきゃじゃんか」
「ご飯を食べたいと思うならそうなるな。カップめんとかでいいなら普通にお湯で3分だけど」
「カップめんを食った上でおかずとして飯が必要なんだけどな」
「言って間食だからな。普通に出る食事を補うための物だから、そこまでガッツリした食事は想定しなくても良さそうだけど」
「つか15分も待ってたら戻してる最中に冷めそうだ」
「タオルとか巻いとけば多少は保温出来るだろ」
「まあ、2つほど買ってってみるかあ」
「俺はこっちの方が気になるな」
「なにそれ」
「ぜんざいだって。フリーズドライの餅も入ってる。好きなら甘い物もあったらいいって話だから、俺はこれを買ってみよう」

 スキー場から戻った後のぜんざいはきっと美味しいはずだ。ただのお汁粉なら普通にお湯に溶かして飲むのもあるけど、餅が入ってるっていうのがいいなあと。一応割り箸とかも持って行った方がいいかもしれない。

「これ、非常食の他には何がいるんだろう」
「勉強に使う物と着替えとかじゃないか? それでなくても俺らはスキー場に出るから肌着は1枚多い方がいいとかさ」
「えっ、バスタオルとかってあるんだっけ?」
「それは備え付けのがあるから持って行かなくていいって。アメニティ関係はよっぽどこだわりが無ければ手ぶらで行っても全然平気とは聞いてるけど。普通のホテルみたいに部屋の掃除が入ってシーツやタオルの交換はもちろん、アメニティは毎日補充してもらえるとか」
「何だよそれ。至れり尽くせりじゃねーか」
「大学の施設と言え、一般の人も使えるホテルでもあるらしいからな。その辺はしっかりしてるんだろうな」

 自分で言っていてとんでもない施設だなと思う。一応施設のパンフレットを読んで書いてあったことだし、先輩たちもそんな風に言ってたから本当にそうなんだと思う。スキー場が併設した洋館風の宿泊施設だもんな。フランス料理のフルコースが出るって噂の。
 勉強に関してはテキストが必要だという話ではなさそうだし、筆記用具……筆箱とノートがあれば大丈夫そうかな。2年生以上はワークショップに必要な準備があるそうだけど、1年生はまだそういうのはないから。

「1年は酒禁止って言われてたよな」
「お前弱いし、オッケーでも飲まないだろ」
「まあなー。でも、2年生以上は夜の空き時間とかに一杯やんのかなと思って」
「禁止じゃない以上いいんだろうな。高木先輩はお酒持って行けるようになったしって言ってたから、やるんだろうな」
「自分の部屋に住むようになったら、たまに家でも飲みたいな」
「弱いのに?」
「弱いからだよ。人と飲むより迷惑かけなくて済む。たまに飲んで慣れときたい」
「俺は迷惑だとは思ってないけど」
「バカか。いつだってお前がいるとは限らないし、お前がいたとしても世話になりっ放しなのはダサい」
「世話云々は抜きにして、俺はお前とサシ飲みしたい」
「それはもちろん! やろうぜ! まあ、その前にまず引っ越しなんだけどなー。くあーっ、2月上旬忙しー」


end.


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いつもはタカりんでやっていたお買物の様子を今回はササシノで。現在TKGはバイト中なのでこういうのもいいでしょう
ササはシノのためにっていう行動も苦じゃなくナチュラルにやるんだけど、シノはそれを受けっ放しでいるのはよくないって思ってるみたいですね。
2年生になって、なおかつ合宿の時点ではハタチにもなっているTKGはそら当然のように酒類を持ち込みますよね

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