2020(04)

■There's still a mystery man

++++

「いいかお前ら、この計画には断っ……じて! 粗相があってはならないんだぞ!」
「――っつーコトなンで、よろしくお願いしヤーす」

 冬季特別サークルということで、招集されたMMP一同。今日はみんなに関わる話ということで3年生の先輩も4人全員来ているし、話を進めるのもりっちゃん先輩なんだけど、それを遮るようにして声を上げるのは野坂先輩だ。

「今回の4年生追いコンは2月第3週の金曜日、19日に開催します。えー、俺が独自に調査をした結果、菜月先輩と圭斗先輩はこの時期であればまだギリギリ豊葦にいらっしゃるということなので、場所も豊葦で取りました」
「あれ、今回は直前になって土田さんがバタバタと孤軍奮闘するという感じではないんですね」
「ホンマに。そー言えば愚民集合って言われとらんわ」
「やァー、4年生追いコンすよ。誰をどう使えば効率がいーかっつー話スわ」

 多くのサークルでは4年生追いコンという行事があるらしく、それはMMPでも例外ではないらしい。卒業式の日にはまた卒コンという飲み会があるらしいんだけど、それとはまた別に、フランクな感じでやるのがMMP式の4年生追いコンだ。
 で、今回送られるのが菜月先輩、それから圭斗先輩っていう顔ぶれだから、4年生の先輩を尊敬してやまない野坂先輩がこんだけ張り切ってるってワケらしい。その性質を利用してりっちゃん先輩が楽をしたかったっていうのが本音っぽいけど。

「土田さん、野坂さんに任せるのは一向に構わないんですが、某財布の人の存在をナチュラルに忘れてそうなので時々つついてあげてくださいね」
「あ」
「あれあれ~? もしかして~。土田さ~ん?」
「ヤ、別に財布だとか下僕だとか噛ませ犬だとか、そんなような人のことは断じて忘れてないス」
「単純な悪口!」
「事実なんでセーフす」
「ヒロ先輩、MMPって菜月先輩と圭斗先輩の他にまだ4年生の先輩がいたんですか?」
「一応おったんやけど、別に知らんくても支障ないよ。三井先輩って人やけど、ナチュラルに存在感ないんやよねあの人」
「はあ」
「カノン、三井先輩と会ったことなかったっけ」
「覚えがないですね」
「そーなんや。良かったね」

 MMPの4年生は3人だったという衝撃の新事実をここに来て知る。ただ、3年生の先輩たちのリアクションからすると、ろくでもない人っぽさが凄い。財布だとか下僕だとか噛ませ犬、だとか? でもってナチュラルに存在感がないって。

「ちなみに野坂、店はもう取ったンすよね」
「ああ。もちろんだ」
「どんな店かだけ教えてもらって」
「鶏肉と卵料理が主体の店だな。鶏団子鍋のコースで、酒は焼酎とか果実酒が多いのかな」
「やァー、特定の誰かを狙い撃ったかのような店の選び方スわ」
「4年生の先輩方の嗜好を考えた場合に、偏食の傾向のある菜月先輩を優先して店を選ぶ方が結果としては成功しやすい」
「ヤ、でもナイスではありヤすよ。圭斗先輩は焼酎も好きスからね。でもって鍋奉行にして擦れるゴマは擦っときヤしょーぜ」
「だから土田さんの表現ですよ」

 鶏団子鍋は普通に美味そうだし、圭斗先輩が鍋奉行タイプっていうのは間違いないよな。緑ヶ丘との交流会の時にチラッと見てたけど、確かに鍋の世話をしてたような気がする。で、菜月先輩はちょっと好き嫌いが多いのか。つか好き嫌いまで把握してんのか野坂先輩って。

「追いコンからは少しそれますけど、卒業式に関わる話もついでに詰めておきません? 私たちのパターンから言うときっと忘れますし」
「あー、いースね。例年卒業式の時には4年生の先輩らに寄せ書きと花束、それから贈り物を渡す風習があるンす」
「りっちゃん先輩ッ!」
「はい、奈々」
「卒業式の花束なんですけど、去年の卒業式の時に菜月先輩からの言付けがあったのでここで発表していいですかッ!」
「どーぞ」
「圭斗先輩には白いバラを、だそうですッ!」
「あー、ぽいスね。圭斗先輩には菜月先輩の御所望通り白いバラを贈って被写体になってもらうとして」
「ナ、ナンダッテー!? まさかまさか、圭斗先輩の撮影会が開催されるというのか!? スマホカメラの使い方を極めなければ…!」
「そンで野坂、菜月先輩に渡す花束はどんな花をメインにしヤす?」
「チューリップ一択。それから、程よく青みを入れてくれ」
「りょーかいス」

 渡す花束の花の種類までコーディネートするのか。好みを把握していると言えば聞こえはいいけど、ここまでバッチリわかってると逆に恐怖すらある。いや、3年生の先輩と4年生の先輩は付き合いも長いし、その中で培われた知識なんだろう! ほら、野坂先輩って頭めちゃいーし! 1回聞いたことは覚えてるとかそういうアレなんだろ!

「花束はそんな感じで行くとして、問題は筆不精集団の寄せ書きになるンすが。そもそも無理に寄せ書きを用意する必要性があるのかという話から始まりヤすが」
「確かに、寄せ書きは貰っても見返しませんからねえ」
「そー言えば、去年ノサカが寄せ書きじゃ足りんから便箋に手紙書くとかゆーとらんかったっけ」
「さすがにそれはご迷惑だろう。あと、ナチュラルに財布の人が自分にも寄こせと催促してくるだろうし」
「あー……」

 財布の人とは…? ここまでアレな感じだと逆に気になるぜ!


end.


++++

今年の4年生を送る会ならりっちゃんは誰を焚き付ければ楽を出来るのか、という話です。そらノサカよなあ。
多分三井さんは今年サークルに顔を出してないんじゃないかしら。話に出て来た覚えがない。のでカノンからしても謎の人。
相変わらず扱いがアレなんだけど、そういう扱い方があるというだけでもまだキャラクターとしては立っていていいのかもしれない

.
57/100ページ