2020(04)

■渡り鳥の手引き

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 大学での普段の授業は1コマ90分だけど、テストは1コマ60分なんだよな。だから1日がちょっと早く感じる。年明け前まではサークルがあったけど、活動は一旦休止中だから時間の使い方をどうしようかと考え始めてしばし。
 結論としては、インターフェイスでのことも考えて、練習を続けることにした。サークルをやってないとは言ってもやっちゃいけないと言われたワケじゃない。1人でもやれることは何だろうかと考えた結果、ミキサーを触りながらトークする、マルチってヤツの練習に行きついた。

「おーい、かっすー!」
「あー、おー。奏多ー、久しぶりー」
「ホント最近ご無沙汰だったもんな。やっぱ学部違ったら全然合わないな」
「あ、鳥ちゃんも。いつも奏多が世話になってます」
「いや、断じて世話されてない。なんなら俺が世話してるまである」
「ないよそんなの。もう、ご飯行くの行かないの」

 サークル室に行こうとしていた俺に声を掛けて来たのは、バドサー時代の同期で情報科学部の松居奏多。それから、天文部の鳥居春風。春風って書いてハルカ。奏多と鳥ちゃんは小学校から一緒の幼馴染みってヤツらしい。俺とは奏多の友達って感じで顔を合わせれば話す間柄。

「あ、そういや飯食うの忘れてたな」
「そしたらかっすーも一緒に飯食おうぜ。いろんな話したいし」

 ――と、学食に移動したんだけど、テスト期間の学食って人がいっぱいなんだよな。テスト時間が短いから客入りが分散されるかと思いきや、飯食って勉強、勉強して飯食うみたいな感じで回転率がとにかく低くて傍迷惑だ。

「はー、何とか座れたな」
「希くんどこか行こうとしてなかった? 奏多が引き留めて迷惑になってない?」
「や、それは大丈夫。飯食うの忘れてたし」
「飯食うの忘れるとかお前らしくもない。どうしたんだよ。悪いモンでも食ったか?」
「ご飯食べるの忘れてるくらいだし、そもそも食べてないでしょ」
「それもそうか! じゃなくて」

 奏多と鳥ちゃんの掛け合いはいつ見ても面白いなと思う。何がどう面白いってワケじゃないんだけど、幼馴染みだからこその遠慮のなさってヤツなんだろうか。

「今日はもう終わってるし、サークル室行って何か練習しようと思ってたんだよな」
「あー、MMPな。いきなりバド辞めるって言った時は驚いたけど、ラジオがお前に合ってたみたいで良かったよ」

 俺がバドサーを辞めた理由は一部の人にしか言ってなかったんだよな。奏多には、と言うか奏多に限らず同期には言ってなかったと思う。バドサーにいる同期たちのことを考えたらアイツが思った以上のクソ女だったし金輪際顔も見たくない、とは言えなかった。
 サークルを辞めると会わない奴は本当に会わないけど、奏多みたくたまに会うと気軽に声を掛けてくれる奴もいてありがたくもあった。奏多とか、あと先輩たちとか。奏多なんか学部も違うから普段は絶対会わないはずなんだけどな。この縁には感謝。

「希くん、ラジオって楽しい?」
「めっちゃ楽しい! だから上手くなりたいし、どんなことが出来るかなって、今ある機材とアイディアを組み合わせて新しいことに挑戦していきたい」
「挑戦か。私も挑戦の時かなあ」
「どうしたの鳥ちゃん。何か考えてるなら聞くよ」
「うん。天文部って結構人がいる部活なんだけど、あんまりちゃんと天文してなくってさ」
「ああ、天文部って実質的飲みサーとか出会い系みたいな話は聞くな」
「えっ、そーなの?」
「前原さんが言ってた。ちゃんと星ナビとか定期購読して星の活動をやってる人もいるっぽいけどそれもごく少数だって」

 前原さんはかなりの事情通で、俺にMMPのことを思い出させてくれたのもこの人だ。後から聞いたことなんだけど、野坂先輩と同じゼミの先輩でもあるらしい。そんな事情もあってかMMP事情にもちょっと通じてるんだよな。

「そうなの。それが4年生の磐田先輩って人なんだけど、去年その人が作った光ファイバー式のプラネタリウム装置がね、私の憧れでもあって」
「なにその光ファイバー式のプラネタリウムって。懐中電灯とかで照らして天井に穴開けたりしないの?」
「星の光の強弱をプログラムで制御して、より本当の星空に近い光を実現するっていう装置でね」
「やべー……すげーわ」
「へえ、真面目にやってる人もいたんだな」
「でも、星に関する活動がなさそうな部活に在籍してる意味ってあるかなあって」
「あーな。わからんでもない」
「ほら、私って将来プラネタリウムのナレーションやるのが夢じゃない? そういう人たちに星の良さを説くのも修行なのかなあ」
「鳥ちゃんあれだ。ワンチャンMMPと掛け持ちして星の良さを説く番組が売りのアナウンサーになるとか。ナレーションの練習も出来て一石二鳥」
「なるほど。でも実際の活動を見てみないことには」
「今やってねーんだよなー。俺が個人的に練習してるだけで」
「じゃあそれでいいよ。見せてほしいな。興味はちょっと湧いた」

 ひとつの場所で頑張り続けるのも悪くないけど、必要に応じて場所を変えてやっていくっていうのも悪くないと思うんだよな。実際に場所を変えて楽しくやってる俺が言うんだし、経験談としては参考になると思うんだ。鳥ちゃんの夢だとか、そういう物が少しでも具体的にイメージできるようになればいいな。

「よっしゃ、そしたら飯食ったらサークル室行くかー。奏多はどーする?」
「俺も行ってみようかなー。かっすーがそんだけ入れ込むモンがどんな物なのか見てみたい」
「しゃーねーな~! 見とけよ見とけよ~。ビビって腰抜かすなよ~?」


end.


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カノンにももちろん学内にある程度友達がいるはずで、毎度毎度弱くなりがちな向島キャラのオフの友達です。
どこかで聞いたような先輩たちの名前がちょこちょこ出て来てますが、バドサーで天文部でってなったらそうなるわな。
そういやバンデンが去年(フェーズ1で)作ってたプラネタリウムって結構な装置の割に場所が悪くて大学祭じゃあんまり人が入ってなかったんだっけ

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