2020(04)

■今の肩書きの集大成

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「お前ら、これを見ろ!」

 じゃじゃーんと効果音が入りそうな勢いでカンがCDケースを翳している。ちなみに例によって場所はUSDXの音楽拠点となっている須賀邸のスタジオだ。そして話を進めているのがカンだという時点で音楽の話であるのはお察し。
 現在USDXには進行中の音楽プロジェクトがいくつかある。ひとつは自分たちのオリジナル楽曲の制作、次にゲストボーカルにナユこと菜月さんを迎えたフィーチャリングアルバムの制作。それから、トリプルメソッドのギターボーカル・長崎壮馬率いるThe Cloudberry Funclubとのコラボ企画だ。

「何のジャケットだ?」
「これはナユ盤のジャケットで、絵はいつものようにきららに描いてもらってます。アルバムタイトルは“In space, no one can live alone.”で、10月から3月まで月1公開の6曲に、さらに新曲を4曲加えた全10曲になってます」

 今が1月だから、菜月さんをゲストボーカルに迎えた曲はこれまでに4曲上がっている。ありがたいことに結構聞いてもらえてるみたいだ。それを受けてカンが朝霞に追加で4曲分の作詞を注文したという経緯があった。

「ちなみに実際頒布するのは3月の曲が公開された後なんで、よろしく」
「はーい」
「チータ、もうレコーディングは終わってんのか」
「ヨユーで終わってんぜ。チンタラしてたら菜月が実家に戻っちまうからな、スピード勝負よ」

 菜月さんは須賀邸の目の前に建つマンションに住んでいるから、カンが彼女を待ち伏せするのも全く苦じゃなかったみたいなんだよな。見かけたらとりあえず引き摺り込むみたいなノリでノルマを渡してレコーディングして、と繰り返していたようだ。

「えー、それから、クラファンとのコラボな! こっちの曲も出来た! USDXから3曲と、クラファンから3曲が上がって来てて、6曲を収録したミニアルバムになる予定だからな! それでだ! クラファンとの企画に関しては生音でやるからな! 誰がどの曲担当するかとかはまた配るし練習よろしく! 特に朝霞とキョージュな。朝霞はともかく、キョ~ジュ!」
「え、俺?」
「お前だよ。バイオリン! どーせ留年すんだからヒマだろお前。みーっちり! 練習しろよ!」
「え~、そこはチータの打ち込みで何とかならない?」
「しない」

 ゲームの話題の時はプロさんにいいように言われていたカンだけど、音楽の話になると完全に立場が逆転するよなあと思う。でも生音で収録するなら実際一番不安なのはプロさんのバイオリンだし、カンも一生懸命になるよなあ。
 朝霞のギターは着実に上手くなってきてるなと思う。ギターの練習もサブチャンネルで定期的に配信しているし、それを見てくれている人からのアドバイスをリアルタイムで取り入れたりして試行錯誤しているようだ。
 ギターの練習をしながらカンが曲を書いた分だけ作詞をこなしていたと考えるとやっぱりおかしな作業量だと思う。しかもそればっかりやっているワケでもないんだから。今は学生で時間があるからともかく、社会人になったらお互いどうするつもりなんだろうか。

「どうせ留年するんだからってヒドくない? ねえコンちゃん」
「とは言え、俺たちは環境が大きく変わりますし、この先どうなるかわかりませんからね。ある意味で、プロさんの余裕が羨ましくもあります」
「だって。拓馬、環境が変わる子たちに先人からの助言は?」
「基本的には自分でどうにかするモンだとは思うけどな。社会人っつっても俺はただの作業員だけど朝霞もチータもクリエイティブ寄りな職種だろ。働き方の形態なんかは全然違うだろうから一概にああだこうだ言えねえな。それに、大学院生だからっつってコイツらが樹理みたくクソみてえな生活を送るはずもねえし」
「間違いないな」
「それは確かにそうですね」
「ま、別に実況に時間が取れなくなってもその時はその時だ。俺と樹理は何が変わるでもねえから普通にやってるし。好きな時に好きなことをやったらいい」

 USDXというグループは元々ソルさんとプロさんの2人ユニット、P&Sとして始まっている。SDX以降のメンバー4人が今春の大学卒業で環境が変わって実況が出来なくなったとしても、P&S形態での活動は続いて行くということだ。
 SDXというグループで始めたキャラクターを演じる遊びに関しても、ゲームが下手な振りをするのにも飽きたとプロさんは言っていた。P&Sとしての動画を撮っていくとするならそれでも……いや、その方がいいよなあと思う。本気でやってもらう方が。
 実を言うと、ファンとしてP&Sを見ていた俺からすると、それが復活するというのにも少しワクワクしているんだ。キャラクターや編集内容じゃなくて、ゲームのプレイだけで魅せていた2人の実況がまた見れるのかと。

「ま、何にせよ今は目の前のことを着実にやっていくことだな。なあ樹理。お前もバイオリン練習配信でもやるか」
「えっ!? ムリムリムリ!」
「無理じゃねえだろ。一昨年の大晦日にヘッタクソなバイオリンで年越し第九配信やってただろ」
「あ、練習配信やるなら一緒にやりますか?」
「そうだな。朝霞、お前も来い。コン、俺らでスケジュール合わせるから須賀邸スタジオの借用許可をもらってほしい。ダメなら星港かどっかで適当なスタジオを取るし」
「わかりました」


end.


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いよいよ塩見さんが樹理ちゃんに対するスパルタレッスンを始めるのかしら……それはそれで面白そう。
そもそもUSDXの音楽活動が活発になったきっかけは樹理ちゃんのヘッタクソな第九配信だったりもしたのでこれは仕方ないね、回って来た。
スガカンの2人がどうやってP&S時代の2人とコンタクトを取ったのかとかのきっかけは少し気になるところではあるあの頃話ですね

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