2020(04)

■どんな暮らしを始めよう

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「高崎せんぱーい! わざわざ来てもらって感謝っす」
「それでどうした。随分と浮かれてるようだけど」
「そうなんすよ! 俺、1人暮らしが出来るようになったっす!」
「おっ、良かったな」

 家から大学までの距離が遠く、通学がしんどいという理由で大学近くで1人暮らしをしたいと言っていた智也が、とうとう親から家を出ることを許されたらしい。70万貯めるという話にはなっていたが、契約をするなら早い方がいいからという理由で許可を前倒ししてもらったそうだ。

「それで、1人暮らしをするに至ってどんなモンが要るんすかね? 最低限の家具とかっすかね」
「一応1人暮らしの最低限セットみたいな感じで部屋の契約と同時に不動産屋で頼むパターンもあるけどな」
「そういうセットがあるんすね!」
「メーカーや機能によっぽどこだわりがなければそういうのでも全然やっていけるな」
「あー、そういうセットがあるのは全然知らなかったっすね」
「でも、稀にだけどそういうセットで買った家電で満足出来なくなるっつーパターンもあるにはあるんだ。伊東がそのパターンだったんだけど、アイツは1人暮らしを始めてから家事に目覚めて、チャチな電子レンジを有名メーカーの高いオーブンレンジに買い替えたし、洗濯機の機能にも嘆いてたんだよな」
「うーん。でも、カズ先輩って結構特殊な人っすよね?」
「まあそうだな」

 伊東はもうすぐ宮ちゃんと暮らす新居に移るそうだが、家電はかなりこだわりを持って選ぶようだ。尤もアイツは所帯持ちだし、単純な1人暮らしとは事情が違う。家事が好きというのもあるけど家電自体も好きだから、何をどう揃えるかを考える時点でかなり楽しんでいるようだ。
 ただ、智也の場合は伊東と同じようにはならないだろう。と言うか伊東がかなり特殊なんだ。俺はチャチな家電でも4年間やって来れたし。強いて言えば洗濯機の容量や機能を上げたいかなという気がする。薄い布団やちょっとしたおしゃれ着を自宅で洗えれば楽かなとは思う。

「高崎先輩って今の家を出たらどーするんすか?」
「新しい家に引っ越すな。独立するから」
「へー! すごいっすね!」
「そうだ智也、お前さえ良ければだけど、俺の家電とか使うか?」
「えっ、いいんすか!?」
「ああ。少し生活のグレードを上げようと思ってよ。家電は一式買い換えるつもりだったんだ。今使ってる家電もまだまだ使えるはずだ。中古屋に売っても大した金にならないだろうし、まだ処分するようなモンでもねえんだ」
「マジすか! えっ、ちなみにっすけどそれはー……こっちの方は……」

 智也の手の形が「金はかかるのか」と聞いているが、俺としては処分費用だの売りに行く費用だののことを考えればタダででも欲しい奴に譲った方がいいだろう。冷蔵庫に電子レンジ、それから炊飯器と洗濯機がある。

「やっぱ社会人ともなるとグレードは上がるんすね!」
「と言うか、自分の生活の仕方が分かって来て、家電に求める物が分かって来たとも言うな」
「家電に求める物」
「例えば、俺は寝具にはこだわりたいしこまめに綺麗にしたいから、薄い布団くらいなら洗える容量の洗濯機があればいいとか。それから、常にビールを冷やしておいた上でも食料を詰めて置ける冷蔵庫、とか」
「あー、なるほどー」
「トースターもあると便利だぞ。パンを焼いたりちょっとしたフライのあっため直しとかには必須だ」

 金を貯めに貯めてようやく念願かなっての1人暮らしだ。夢のような響きだし、これからの生活には希望しか映っていないだろう。ただ、1人暮らしだからこその落とし穴もあるにはある。ちゃんと出来てる奴ばかりではないのが現実だ。MBCCなら近くにいい例もあるしな。

「ちなみにだけど、お前はこっちに住んでからもバイトはするんだよな」
「それは当然っす! 1人暮らしのグレードを決めるのは財力っすからね!」
「バイトを探すならこれも早い方がいいぞ。今の時期は4年が辞めてくから、その交代要員を取りに行く傾向にある」

 早く契約した家に入れるようにならないかなーと智也が待ち侘びている様子に、やっぱり夢と希望に溢れてるなと少し呆れも混ざる。今はまだ住んでいる奴がいるらしいが、そいつが出ていく日も決まっているらしい。その日を待っている段階なんだそうだ。

「住むのはやっぱ大学近くか」
「大学から徒歩5分くらいのとこっす。えっと、コムギハイツってアパートの102号室で」
「おい、待てよ。お前、ムギツーの102に入るのか」
「コムギハイツⅡの102号室っす」
「マジかよ。俺が今住んでる部屋じゃねえか」
「えー! マジすか! ちょっと嬉しいっす!」
「あー……そしたらお前に譲る家電、Lの部屋に一瞬置かせてもらうか。いちいち動かすのめんどくせえもんな」
「引っ越してからの模様替えはササに手伝ってもらう予定だったんで、L先輩には悪いんすけどそうしてもらえるとありがたいっす」

 まんま置いていけるならその方が楽だけど、業者が入って部屋を綺麗にするはずだから、やっぱり家電とかは出さないといけないだろう。さて、と。俺も引っ越しの日が近付いてるし、生活に必要なものを改めて考えておくかな。


end.


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1人暮らしのことを相談していた高崎への報告回。無事に1人暮らしが出来るようになって、部屋も決まったよ!という話。
家電とかは、こだわりだしたらキリがないのはいち氏やLなんかがいい例ですね。それから堕落した生活にもMBCCにいい例がある。そう、TKGという奴がな
高崎が生活のグレードを上げたいとか言うと、如何せんお金はそこそこ持ってるんでとんでもないことが始まりそうでそれはそれで楽しみ。

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