2020(04)
■新しさへの分岐点
++++
「本当に、何をどう片付け始めていいかわからない部屋だね」
「そこを何とか頼む」
朝霞クンの部屋の片付けに駆り出されたのはいいけれど、いつものようにぐちゃあ……っとした部屋なんだよね。大学を卒業するにあたり、朝霞クンは今の部屋を引き払って新しい家に引っ越すことになった。実際に引っ越すのはまだだけど、準備はしないとねって。
新しい家は今の家からも割と近いところにある。この辺りが結構住みやすい町だからね。朝霞クンが住むのは2階建ての部屋って言うのかな、ロフト付きの部屋って言う方がいいのかな。メインの部屋は6.5畳だけど、5畳ちょっとのロフトがあって台所も広いし、バストイレ別だから今より結構いいね。
「とりあえず、本とかDVDみたいな物はガッツリ減らそうと思ってるんだ」
「えっ、どうしたの!? 朝霞クンの部屋て本とかDVDがわちゃわちゃになって足の踏み場もないのが基本でしょ!?」
「収納スペースに余裕がないと新しく買えないだろ」
「あ、そういうことね」
「それに、ネットがあれば割とどうにでもなるからな。つかお前が俺をどう思ってるのかがよーくわかった」
というワケで、本やDVDなんかを段ボールに詰めていく作業から始めることになった。俺はどう詰めればいいかわからないから、本棚に入っている順番のまま箱に詰める。緩衝材も忘れずに。
4年使って結構古くなってるような物は引っ越しついでに買い替えるそうで、その買い物もしないとなあと朝霞クンは捨てる物の目星を付けている。ベッドも新しくするんだって。この片付けを手伝いながら、俺も大学を出るんだなあとちょっとしみじみする。
「山口、結構片付いたしちょっと休むか」
「そうだね」
「はい、粗茶だけど」
「ありがとう。結構うるさくしてるけど、騒音問題的には大丈夫そう?」
「まあ、引っ越しの準備だし仕方ない。彩人には一応引っ越し準備で片付けるからうるさくなるかもとは言ってある」
「そう言えば、朝霞クン聞いた?」
「何を」
「追いコンの話。ビックリだよね、俺たちも呼ばれてるとか。ゲンゴローが部長だからかなあ」
「いや、追いコンの管轄は毎年3年だ。だけど、呼ばれたからってそうホイホイ出て行っても大丈夫な物か」
2月になると、部活やサークルでは4年生追いコンの季節になる。放送部でも毎年やってるらしいんだけど、流刑地と呼ばれた変わり者集団の俺たちは部活全体のそれに参加したことがない。だからどんな風にやってるかとかは全く知らないよね。
だけど今年は俺たちにも追いコンのお誘いが来たし、戸田班のみんなにもちゃんと声をかけてるんだって。ちなみに俺が誰からその話を聞いたのかって言ったら、メグちゃんからでした。そのちょっと後につばちゃんから聞いたよね。
「せっかく呼ばれたんだし、覗いてみたら? 最悪いつもみたいに隅っこでちびちびやってれば大丈夫でしょ俺たちは」
「まあ、そうだな」
「何か、日高班からなる部員たちって部から除籍処分になったんでしょ?」
「そうらしいな。彩人の件で柳井が高萩以外の班員も全員切ったとか」
「よくそんなことが出来たよね。除籍って、相当黒くないと出来ないっしょ」
「宇部が監査時代に日高班の悪事を調べてまとめてたんだと」
「さすがメグちゃん」
「俺も聞いた話だけど、日高はテストの不正行為で秋学期の単位が全部不認定になったんだと。それで就職もおじゃんになったらしいし宇部のリサーチファイルの件で学生課からも相当目を付けられてるとかで、結構ヤバいらしいな」
留年とか中退とか、日高がどうなったからと言って俺たちにはあまり関係ないんだけど、こういうのを因果応報って言うのかな。俺たちが追いコンに呼ばれたのも日高に絡む人間がほぼいなくなったからっていうのは間違いなさそうだけどね。
「それはそうと追いコンに行ったら行ったでかなり高い確率で隅っこでちびちびやることになりそうだけど、大丈夫かな」
「大丈夫でしょ。朝霞クンと話したい人を迎え入れるような感じでも全然大丈夫だろうし、スガノ君とかカンノ君とも今は仲良しなんでしょ?」
「まあ、それなりにはな。まあ、菅野は浦和の目があるから現場で絡んで来ることはないだろうけどな」
「あー、ぽい。と言うか、戸田班の1年生たちが朝霞クンをほっといてくれないって」
「お前はどうなんだ。追いコンでの立ち回りは」
「俺? んー、正直俺って朝霞班以外の子とは結構中途半端に付き合ってたからちゃんと知ってる子も全然いないんだよね。あっ、そうだ。そろそろステージスターの練習しなきゃ。ブランクが大きいからなあ」
4年生になってからはあんまりステージスターをやる機会がなかったから、顔とか気持ちがすっかり素なんだよね。今までがああだったのに、いきなり素で出て行ったらどうしたのって感じだから、少しずつ戻していかないとね。
「さ、片付けに戻るか」
「そうだね~。朝霞クン、新しい部屋に引っ越したら遊びに行っていい?」
「もちろん。家飲みでも何でもやろうぜ」
「そう言えば、新しい部屋って防音はどうなってるの? ギターは持ってくんでしょ?」
「今よりはいいけど本当の防音室ってワケじゃないからこの段ボールブースは持って行かないとな」
end.
++++
久々に洋朝。朝霞Pも就職に伴い引っ越すようです。家のグレードは上がるけど、防音室にはならなかったのでギターと実況は気を付けよう
この時期になると追いコンの話もちょこちょこナノスパ内で出て来るけど、今年の星ヶ丘の追いコンはなかなか異色なんだろうな。覗いてみたい。
シノの引っ越しでもそうだけど、基本相棒に手伝わせる感じなのね。でも朝霞Pは片付け苦手だし仕方ない。
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「本当に、何をどう片付け始めていいかわからない部屋だね」
「そこを何とか頼む」
朝霞クンの部屋の片付けに駆り出されたのはいいけれど、いつものようにぐちゃあ……っとした部屋なんだよね。大学を卒業するにあたり、朝霞クンは今の部屋を引き払って新しい家に引っ越すことになった。実際に引っ越すのはまだだけど、準備はしないとねって。
新しい家は今の家からも割と近いところにある。この辺りが結構住みやすい町だからね。朝霞クンが住むのは2階建ての部屋って言うのかな、ロフト付きの部屋って言う方がいいのかな。メインの部屋は6.5畳だけど、5畳ちょっとのロフトがあって台所も広いし、バストイレ別だから今より結構いいね。
「とりあえず、本とかDVDみたいな物はガッツリ減らそうと思ってるんだ」
「えっ、どうしたの!? 朝霞クンの部屋て本とかDVDがわちゃわちゃになって足の踏み場もないのが基本でしょ!?」
「収納スペースに余裕がないと新しく買えないだろ」
「あ、そういうことね」
「それに、ネットがあれば割とどうにでもなるからな。つかお前が俺をどう思ってるのかがよーくわかった」
というワケで、本やDVDなんかを段ボールに詰めていく作業から始めることになった。俺はどう詰めればいいかわからないから、本棚に入っている順番のまま箱に詰める。緩衝材も忘れずに。
4年使って結構古くなってるような物は引っ越しついでに買い替えるそうで、その買い物もしないとなあと朝霞クンは捨てる物の目星を付けている。ベッドも新しくするんだって。この片付けを手伝いながら、俺も大学を出るんだなあとちょっとしみじみする。
「山口、結構片付いたしちょっと休むか」
「そうだね」
「はい、粗茶だけど」
「ありがとう。結構うるさくしてるけど、騒音問題的には大丈夫そう?」
「まあ、引っ越しの準備だし仕方ない。彩人には一応引っ越し準備で片付けるからうるさくなるかもとは言ってある」
「そう言えば、朝霞クン聞いた?」
「何を」
「追いコンの話。ビックリだよね、俺たちも呼ばれてるとか。ゲンゴローが部長だからかなあ」
「いや、追いコンの管轄は毎年3年だ。だけど、呼ばれたからってそうホイホイ出て行っても大丈夫な物か」
2月になると、部活やサークルでは4年生追いコンの季節になる。放送部でも毎年やってるらしいんだけど、流刑地と呼ばれた変わり者集団の俺たちは部活全体のそれに参加したことがない。だからどんな風にやってるかとかは全く知らないよね。
だけど今年は俺たちにも追いコンのお誘いが来たし、戸田班のみんなにもちゃんと声をかけてるんだって。ちなみに俺が誰からその話を聞いたのかって言ったら、メグちゃんからでした。そのちょっと後につばちゃんから聞いたよね。
「せっかく呼ばれたんだし、覗いてみたら? 最悪いつもみたいに隅っこでちびちびやってれば大丈夫でしょ俺たちは」
「まあ、そうだな」
「何か、日高班からなる部員たちって部から除籍処分になったんでしょ?」
「そうらしいな。彩人の件で柳井が高萩以外の班員も全員切ったとか」
「よくそんなことが出来たよね。除籍って、相当黒くないと出来ないっしょ」
「宇部が監査時代に日高班の悪事を調べてまとめてたんだと」
「さすがメグちゃん」
「俺も聞いた話だけど、日高はテストの不正行為で秋学期の単位が全部不認定になったんだと。それで就職もおじゃんになったらしいし宇部のリサーチファイルの件で学生課からも相当目を付けられてるとかで、結構ヤバいらしいな」
留年とか中退とか、日高がどうなったからと言って俺たちにはあまり関係ないんだけど、こういうのを因果応報って言うのかな。俺たちが追いコンに呼ばれたのも日高に絡む人間がほぼいなくなったからっていうのは間違いなさそうだけどね。
「それはそうと追いコンに行ったら行ったでかなり高い確率で隅っこでちびちびやることになりそうだけど、大丈夫かな」
「大丈夫でしょ。朝霞クンと話したい人を迎え入れるような感じでも全然大丈夫だろうし、スガノ君とかカンノ君とも今は仲良しなんでしょ?」
「まあ、それなりにはな。まあ、菅野は浦和の目があるから現場で絡んで来ることはないだろうけどな」
「あー、ぽい。と言うか、戸田班の1年生たちが朝霞クンをほっといてくれないって」
「お前はどうなんだ。追いコンでの立ち回りは」
「俺? んー、正直俺って朝霞班以外の子とは結構中途半端に付き合ってたからちゃんと知ってる子も全然いないんだよね。あっ、そうだ。そろそろステージスターの練習しなきゃ。ブランクが大きいからなあ」
4年生になってからはあんまりステージスターをやる機会がなかったから、顔とか気持ちがすっかり素なんだよね。今までがああだったのに、いきなり素で出て行ったらどうしたのって感じだから、少しずつ戻していかないとね。
「さ、片付けに戻るか」
「そうだね~。朝霞クン、新しい部屋に引っ越したら遊びに行っていい?」
「もちろん。家飲みでも何でもやろうぜ」
「そう言えば、新しい部屋って防音はどうなってるの? ギターは持ってくんでしょ?」
「今よりはいいけど本当の防音室ってワケじゃないからこの段ボールブースは持って行かないとな」
end.
++++
久々に洋朝。朝霞Pも就職に伴い引っ越すようです。家のグレードは上がるけど、防音室にはならなかったのでギターと実況は気を付けよう
この時期になると追いコンの話もちょこちょこナノスパ内で出て来るけど、今年の星ヶ丘の追いコンはなかなか異色なんだろうな。覗いてみたい。
シノの引っ越しでもそうだけど、基本相棒に手伝わせる感じなのね。でも朝霞Pは片付け苦手だし仕方ない。
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