2017(03)
■ゴミ箱葬送曲
++++
「ヒビキ、食べたらちゃんとゴミ捨てといてね」
「全部食べたら捨てるつもりだったの!」
青葉女学園大学ABCでも、大学祭に向けてステージと模擬店の準備は始まっている。模擬店ではメイド&執事喫茶を出すことに決まり、メニューは各種ソフトドリンクとさとちゃんお手製のお菓子。
今日もその準備のために出てきたのはいいけれど、ヒビキが新発売になったお菓子を食べ比べていて話が進まない。衣装の採寸だってあるのに1人だけ食欲の秋をスタートダッシュしてる。
「紗希ー、これもゴミー」
「はいはい」
どうしてか、アタシがヒビキの出したゴミを回収する係になってしまっている。プラスチック製のゴミ箱を片手にヒビキが出すゴミをその都度集めていて。それを2年生たちも苦笑いで見ている。
「紗希先輩、ヒビキ先輩を甘やかさなくていいですよ」
「えー! Kちゃんなにそれー! 紗希はKちゃんみたくスパルタじゃないしー」
「言ってる側からゴミを出さないでください! ゴキブリ来るからすぐ片付けようって決めたじゃないですか!」
「だから、全部食べたらまとめて捨てるの!」
「紗希先輩、ゴミ箱溢れそうですしゴミ袋にまとめましょう」
「うん。ありがとう直クン」
直クンがゴミ袋の口を広げて待っててくれる中に、主にヒビキが出したお菓子のゴミでいっぱいになったゴミ箱をひっくり返す。カラカラと、プラスチックの袋が擦れる軽い音。
奥底の方に残ったゴミも残さず大きなゴミ袋へ。ゴミ箱の縁を叩いて全部出し切って――と思った時のこと。叩いた感じが何か違った。感触もだけど、音も。いつもは弾むようなそれが、バキッて。
「――バキッ?」
「あー! 紗希がバカ力でゴミ箱壊した!」
「そんなに強く叩いてません!」
プラスチック製のゴミ箱が、叩いた瞬間割れてしまった。割れたときの出た破片はちょうどゴミ箱の中に入っている。でも、尖っているし袋が破けてもいけないから手で拾い上げて回収。やっちゃったなあ。
「紗希先輩、割れた縁や破片でケガはしてませんか」
「大丈夫。ありがとう直クン。Kちゃんゴメン、ゴミ箱壊しちゃった。テープとかで直す?」
「いえ、次の買い出しでゴミ箱も買って来ますよ。予算もサークル費から出しますし」
「ありがとうKちゃん」
「紗希が怪力だからー」
「経年劣化もあったと思いますよ。そこに紗希先輩の力が加わって、というのは否定しきれませんけど」
アタシはこのサークルで一番力が強い。特に腕っ節に自信があるとかスポーツをやってたとかじゃないけど、何故か。バイト先でも重たい物を運ぶのに苦労しないし、ミキサーだと機材運搬もあるから力はないよりある方がいい。
加減は一応出来るつもりでいたけど、こうやって実際にゴミ箱を壊しちゃうと、何だかなあって。そんなに強く叩いちゃってたかなあって。固まった絵の具の瓶を開けるとか、役に立てるならいいけど今回は迷惑かけちゃってる。反省。
「これって何ゴミになるっけ」
「燃えないゴミじゃないですかね。外のコンテナでいいと思います」
「じゃあ、後で捨てて来るね」
「あー、紗希がゴミ捨てサボってるー。後からとか言ってるー」
「ヒビキのとは何から何まで違うからね」
何だか腹が立って、ヒビキが食べてたお菓子を横取り。あっ、これ美味しい。でも手が汚れる。ウェットティッシュかおしぼりか何かあったっけ。これを放置してたらそりゃゴキブリもやってくるよね。
「って言うかさ、普通は資源ごみとかになる雑誌を分別が面倒だからって真っ二つに引き裂くのに、こんなときばっかり何ゴミかって気にするとか紗希はおかしい」
「大まかには気にするよ。雑誌や段ボールはよっぽどじゃなければ細かくして燃やせば同じだけど、さすがに燃えるゴミの中にペットボトルを混ぜたりはしないし」
そんなことを話している裏で、2年生の子たちが次のゴミ箱はどういう材質の物にするかを話し合っていたので来年のABCは安泰だなと思いました。うふふ。……3年生が役に立ってなくてごめん。
end.
++++
紗希ちゃんがゴミ箱を壊してしまいました。いつか資源ごみになるような雑誌や段ボール箱をひたすらちぎって引き裂く紗希ちゃんのお話がやりたい。
ヒビキは安定のお菓子もぐもぐ。ゴキブリの出やすい環境になってしまうのでゴミの始末などは啓子さんにとっての死活問題。
この頃にはもうなっちゃんもいるはずなので、なっちゃんのお話なんかもやってみたいなあ。
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「ヒビキ、食べたらちゃんとゴミ捨てといてね」
「全部食べたら捨てるつもりだったの!」
青葉女学園大学ABCでも、大学祭に向けてステージと模擬店の準備は始まっている。模擬店ではメイド&執事喫茶を出すことに決まり、メニューは各種ソフトドリンクとさとちゃんお手製のお菓子。
今日もその準備のために出てきたのはいいけれど、ヒビキが新発売になったお菓子を食べ比べていて話が進まない。衣装の採寸だってあるのに1人だけ食欲の秋をスタートダッシュしてる。
「紗希ー、これもゴミー」
「はいはい」
どうしてか、アタシがヒビキの出したゴミを回収する係になってしまっている。プラスチック製のゴミ箱を片手にヒビキが出すゴミをその都度集めていて。それを2年生たちも苦笑いで見ている。
「紗希先輩、ヒビキ先輩を甘やかさなくていいですよ」
「えー! Kちゃんなにそれー! 紗希はKちゃんみたくスパルタじゃないしー」
「言ってる側からゴミを出さないでください! ゴキブリ来るからすぐ片付けようって決めたじゃないですか!」
「だから、全部食べたらまとめて捨てるの!」
「紗希先輩、ゴミ箱溢れそうですしゴミ袋にまとめましょう」
「うん。ありがとう直クン」
直クンがゴミ袋の口を広げて待っててくれる中に、主にヒビキが出したお菓子のゴミでいっぱいになったゴミ箱をひっくり返す。カラカラと、プラスチックの袋が擦れる軽い音。
奥底の方に残ったゴミも残さず大きなゴミ袋へ。ゴミ箱の縁を叩いて全部出し切って――と思った時のこと。叩いた感じが何か違った。感触もだけど、音も。いつもは弾むようなそれが、バキッて。
「――バキッ?」
「あー! 紗希がバカ力でゴミ箱壊した!」
「そんなに強く叩いてません!」
プラスチック製のゴミ箱が、叩いた瞬間割れてしまった。割れたときの出た破片はちょうどゴミ箱の中に入っている。でも、尖っているし袋が破けてもいけないから手で拾い上げて回収。やっちゃったなあ。
「紗希先輩、割れた縁や破片でケガはしてませんか」
「大丈夫。ありがとう直クン。Kちゃんゴメン、ゴミ箱壊しちゃった。テープとかで直す?」
「いえ、次の買い出しでゴミ箱も買って来ますよ。予算もサークル費から出しますし」
「ありがとうKちゃん」
「紗希が怪力だからー」
「経年劣化もあったと思いますよ。そこに紗希先輩の力が加わって、というのは否定しきれませんけど」
アタシはこのサークルで一番力が強い。特に腕っ節に自信があるとかスポーツをやってたとかじゃないけど、何故か。バイト先でも重たい物を運ぶのに苦労しないし、ミキサーだと機材運搬もあるから力はないよりある方がいい。
加減は一応出来るつもりでいたけど、こうやって実際にゴミ箱を壊しちゃうと、何だかなあって。そんなに強く叩いちゃってたかなあって。固まった絵の具の瓶を開けるとか、役に立てるならいいけど今回は迷惑かけちゃってる。反省。
「これって何ゴミになるっけ」
「燃えないゴミじゃないですかね。外のコンテナでいいと思います」
「じゃあ、後で捨てて来るね」
「あー、紗希がゴミ捨てサボってるー。後からとか言ってるー」
「ヒビキのとは何から何まで違うからね」
何だか腹が立って、ヒビキが食べてたお菓子を横取り。あっ、これ美味しい。でも手が汚れる。ウェットティッシュかおしぼりか何かあったっけ。これを放置してたらそりゃゴキブリもやってくるよね。
「って言うかさ、普通は資源ごみとかになる雑誌を分別が面倒だからって真っ二つに引き裂くのに、こんなときばっかり何ゴミかって気にするとか紗希はおかしい」
「大まかには気にするよ。雑誌や段ボールはよっぽどじゃなければ細かくして燃やせば同じだけど、さすがに燃えるゴミの中にペットボトルを混ぜたりはしないし」
そんなことを話している裏で、2年生の子たちが次のゴミ箱はどういう材質の物にするかを話し合っていたので来年のABCは安泰だなと思いました。うふふ。……3年生が役に立ってなくてごめん。
end.
++++
紗希ちゃんがゴミ箱を壊してしまいました。いつか資源ごみになるような雑誌や段ボール箱をひたすらちぎって引き裂く紗希ちゃんのお話がやりたい。
ヒビキは安定のお菓子もぐもぐ。ゴキブリの出やすい環境になってしまうのでゴミの始末などは啓子さんにとっての死活問題。
この頃にはもうなっちゃんもいるはずなので、なっちゃんのお話なんかもやってみたいなあ。
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