2020(04)
■成人の日、それぞれの選択
++++
「よーし、鍋っぽい物が出来たぞ。ま、食えりゃいいじゃん?」
「わー、美味しそうだねー」
1月に入って、いよいよ秋学期の授業も佳境に入った。授業自体は先週の金曜日から再開してたけど、本格的に始まるのは明日の火曜日からって感じかな。俺はと言えば、火曜1限には出席で成績が決まる情報処理系の授業があるので安全策を取ったよね。
大学から徒歩5分とかそれくらいのところに住んでいる鵠さんの部屋に泊まらせてもらって、明日はここから大学へ行こうかと。それで、成り行きで俺と家主の鵠さんと、それから米福くんの3人でお鍋をすることになったよね。
「米福くん、成人式はよかったの?」
「俺、一浪してるから成人式は去年終わってるんだよ」
「え!? あ、そうだったんだ」
「そうだぞ。俺ら一浪組なの知らなかったかお前」
「鵠さんは知ってたけど、米福くんは知らなかった」
「それはそうと、高木君は成人式よかったの? 今年二十歳なんだよね」
「授業もあったし、実家が近ければ出てたかもしれないけど、そう頻繁に往復するような距離でもないからいいかなって。地元の友達とは普通に正月の帰省で会って来たからね」
「高木君て地元どこ?」
「紅社」
「ああ、遠いね」
「米福、お前は地元どこだっけ」
「俺は新鷺エリアだね」
今年の佐藤ゼミ内でも実家が向島から遠い方の3人が集まっての鍋大会になったらしい。でも、鵠さんは知ってたけど米福くんも歳が1コ上だったんだなあ。大学だとそういう人も当たり前にいるんだけど、聞かされるとちょっとは驚くよね。
新鷺と言うと最初のイメージで言うなら米どころ。米福くんがお米同好会に所属してるからっていうワケでもないんだけど、一般的なイメージとしてはそれが出て来るかな。豪雪地帯だとか、いろいろあるんだろうけど。行ったこともないからなあ。
「新鷺だったらどうやって実家まで行くの?」
「新幹線なら東都まで出て、そこから新鷺に向かって北上してくって感じ」
「あー、東都まで出なきゃいけないんだ」
「4時間はかからないけど、乗り換えがあるからちょっと面倒かな。紅社だったらどう行くの?」
「それこそ星港から新幹線で一本だね。時間は2時間少しだから、恵まれてる気がして来た」
「余談だけど、俺は1時間半かからないくらいじゃんな」
「ああ、光洋は早い」
「早いね」
「俺は正直飛行機もあるし、その方が早くて安いよね」
「なら飛行機に乗りたいね」
「でも冬だと雪で飛ばないとかも普通だから、やっぱり陸路になるね」
帰省ひとつとっても場所によって時間も手段も変わって来るし、帰省あるあるみたいな話が盛り上がる。新幹線を乗り継ぐっていうのもなかなか大変そうだと思うし、そう考えると紅社まで一本で繋がってるのはありがたい。まあ、俺は旅費節約のためにバスに乗ることの方が多いんだけど。
「お前、新鷺だから米が好きみたいなアレか? お米同好会なのって」
「実家が田んぼを持ってるんだけど、正直実家で作ってる銘柄がそこまで好きじゃないんだよ」
「え、そうなの?」
「そう。でも米食自体が嫌ってわけでもなくて。だから1人暮らしを始めて自分の好きな米の銘柄を探すところから始めたんだよ。お米同好会に入ったのはその延長みたいな感じ。俺、あっさりしててしっかりした食感の米が好きなんだ。でも、実家で作ってるのは甘くてもちもち系で」
「米の銘柄とか考えたこともなかったなあ。食べられればいいやって感じで」
「高木君はご飯を濃い味のおかずと合わせる傾向にあるから、お米自体の味が強い銘柄が合ってそうかなとは。それか、おかずが無くても食べごたえのある銘柄とか」
「俺にはどんなのが良さそうとかってわかるか?」
「そうだな……康平は粒が大きめで冷めても美味しいっていう銘柄がいいかもね。でも基本パン食じゃなかったっけ」
「そうなんだよな。朝はトーストと目玉焼きじゃんな。つかお前米コンシェルジュかよ」
冬は水に触りたくないという理由で無洗米を食べてるんだけど、無洗米にするならするでいい銘柄とそうでない銘柄というのがあるとかないとか。今度米福くんに教えてもらった俺に合いそうなお米というのを買ってみようと思う。
でも、米コンシェルジュっていうのは上手いこと言ったなあと思う。俺も誰かにこれのどういうところがいいよって紹介できるような知識があればいいんだろうけど。うーん、ゼミにいる以上期待されるのはミキサーの技術とかかな。でもヘッドホンとかの道具にはちょっとの興味はある。
「今日のシメってやっぱり米福くんが監修した雑炊とか?」
「いや、普通にラーメンぶち込むつもりだった。しまった、米福がいるんだったら雑炊にすりゃよかったな」
「お米同好会だからそういうメニューを期待されがちだけど、俺も普通に麺類大好きだからね。ラーメンは嬉しい」
「じゃあ今日は心置きなくラーメンにしとくか」
「そう言えば、次の合同ゼミって明後日だっけ」
「その予定になってんな。次の1年も呼ばれてるってことはゼミ合宿の連絡か何かだと思うけど」
「あー、今年もこのシーズンかー。振り込み日までにお金を何とかしないと」
「高木お前今年もスキーやんの?」
「やりたいね。それに非常食も買ってかなきゃいけないし」
「あー、非常食かー! その概念があったじゃんな」
end.
++++
ちょっと変わったメンバーでのお鍋ですが、成人式が終わっている&スルーした組が鵠さんの部屋に集まりました。TKGは1限に備えた安全策。
お米同好会のヨネケンのキャラ付けを今のうちにやっておきたいと思ったなど。今後とか来年度に向けての肉付け。
お米は食べられればいいやというスタンスだけど、元々こだわりも結構強い方のTKGなので米にまでこだわりだしたら大変なことになりそうだぞ
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「よーし、鍋っぽい物が出来たぞ。ま、食えりゃいいじゃん?」
「わー、美味しそうだねー」
1月に入って、いよいよ秋学期の授業も佳境に入った。授業自体は先週の金曜日から再開してたけど、本格的に始まるのは明日の火曜日からって感じかな。俺はと言えば、火曜1限には出席で成績が決まる情報処理系の授業があるので安全策を取ったよね。
大学から徒歩5分とかそれくらいのところに住んでいる鵠さんの部屋に泊まらせてもらって、明日はここから大学へ行こうかと。それで、成り行きで俺と家主の鵠さんと、それから米福くんの3人でお鍋をすることになったよね。
「米福くん、成人式はよかったの?」
「俺、一浪してるから成人式は去年終わってるんだよ」
「え!? あ、そうだったんだ」
「そうだぞ。俺ら一浪組なの知らなかったかお前」
「鵠さんは知ってたけど、米福くんは知らなかった」
「それはそうと、高木君は成人式よかったの? 今年二十歳なんだよね」
「授業もあったし、実家が近ければ出てたかもしれないけど、そう頻繁に往復するような距離でもないからいいかなって。地元の友達とは普通に正月の帰省で会って来たからね」
「高木君て地元どこ?」
「紅社」
「ああ、遠いね」
「米福、お前は地元どこだっけ」
「俺は新鷺エリアだね」
今年の佐藤ゼミ内でも実家が向島から遠い方の3人が集まっての鍋大会になったらしい。でも、鵠さんは知ってたけど米福くんも歳が1コ上だったんだなあ。大学だとそういう人も当たり前にいるんだけど、聞かされるとちょっとは驚くよね。
新鷺と言うと最初のイメージで言うなら米どころ。米福くんがお米同好会に所属してるからっていうワケでもないんだけど、一般的なイメージとしてはそれが出て来るかな。豪雪地帯だとか、いろいろあるんだろうけど。行ったこともないからなあ。
「新鷺だったらどうやって実家まで行くの?」
「新幹線なら東都まで出て、そこから新鷺に向かって北上してくって感じ」
「あー、東都まで出なきゃいけないんだ」
「4時間はかからないけど、乗り換えがあるからちょっと面倒かな。紅社だったらどう行くの?」
「それこそ星港から新幹線で一本だね。時間は2時間少しだから、恵まれてる気がして来た」
「余談だけど、俺は1時間半かからないくらいじゃんな」
「ああ、光洋は早い」
「早いね」
「俺は正直飛行機もあるし、その方が早くて安いよね」
「なら飛行機に乗りたいね」
「でも冬だと雪で飛ばないとかも普通だから、やっぱり陸路になるね」
帰省ひとつとっても場所によって時間も手段も変わって来るし、帰省あるあるみたいな話が盛り上がる。新幹線を乗り継ぐっていうのもなかなか大変そうだと思うし、そう考えると紅社まで一本で繋がってるのはありがたい。まあ、俺は旅費節約のためにバスに乗ることの方が多いんだけど。
「お前、新鷺だから米が好きみたいなアレか? お米同好会なのって」
「実家が田んぼを持ってるんだけど、正直実家で作ってる銘柄がそこまで好きじゃないんだよ」
「え、そうなの?」
「そう。でも米食自体が嫌ってわけでもなくて。だから1人暮らしを始めて自分の好きな米の銘柄を探すところから始めたんだよ。お米同好会に入ったのはその延長みたいな感じ。俺、あっさりしててしっかりした食感の米が好きなんだ。でも、実家で作ってるのは甘くてもちもち系で」
「米の銘柄とか考えたこともなかったなあ。食べられればいいやって感じで」
「高木君はご飯を濃い味のおかずと合わせる傾向にあるから、お米自体の味が強い銘柄が合ってそうかなとは。それか、おかずが無くても食べごたえのある銘柄とか」
「俺にはどんなのが良さそうとかってわかるか?」
「そうだな……康平は粒が大きめで冷めても美味しいっていう銘柄がいいかもね。でも基本パン食じゃなかったっけ」
「そうなんだよな。朝はトーストと目玉焼きじゃんな。つかお前米コンシェルジュかよ」
冬は水に触りたくないという理由で無洗米を食べてるんだけど、無洗米にするならするでいい銘柄とそうでない銘柄というのがあるとかないとか。今度米福くんに教えてもらった俺に合いそうなお米というのを買ってみようと思う。
でも、米コンシェルジュっていうのは上手いこと言ったなあと思う。俺も誰かにこれのどういうところがいいよって紹介できるような知識があればいいんだろうけど。うーん、ゼミにいる以上期待されるのはミキサーの技術とかかな。でもヘッドホンとかの道具にはちょっとの興味はある。
「今日のシメってやっぱり米福くんが監修した雑炊とか?」
「いや、普通にラーメンぶち込むつもりだった。しまった、米福がいるんだったら雑炊にすりゃよかったな」
「お米同好会だからそういうメニューを期待されがちだけど、俺も普通に麺類大好きだからね。ラーメンは嬉しい」
「じゃあ今日は心置きなくラーメンにしとくか」
「そう言えば、次の合同ゼミって明後日だっけ」
「その予定になってんな。次の1年も呼ばれてるってことはゼミ合宿の連絡か何かだと思うけど」
「あー、今年もこのシーズンかー。振り込み日までにお金を何とかしないと」
「高木お前今年もスキーやんの?」
「やりたいね。それに非常食も買ってかなきゃいけないし」
「あー、非常食かー! その概念があったじゃんな」
end.
++++
ちょっと変わったメンバーでのお鍋ですが、成人式が終わっている&スルーした組が鵠さんの部屋に集まりました。TKGは1限に備えた安全策。
お米同好会のヨネケンのキャラ付けを今のうちにやっておきたいと思ったなど。今後とか来年度に向けての肉付け。
お米は食べられればいいやというスタンスだけど、元々こだわりも結構強い方のTKGなので米にまでこだわりだしたら大変なことになりそうだぞ
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