2020(04)
■ハカセの中間報告
++++
「皆さーん、毎年恒例の、お雑煮ですよー」
「やったー!」
GREENs恒例、伊東さんの家の鏡開きに伴う餅大会が今年も盛大に始まった。伊東さん自体はもう卒業したんだけど、その伊東さんの義妹になる慧梨夏サンが餅を持って来るという流れだ。でも、慧梨夏サンも今年で卒業だしさすがに今回が最後かもしれないな。
2年生以上は大量に用意された餅にも慣れ切っていつもの光景だなと思うだけだけど、1年生は例によってイベントの規模にビビっているようだ。鏡開きでビビってたら節分には耐えられないじゃん? 今年の節分は2月2日だったっけか。
「慧梨夏さんもすっかり料理が上手になりましたよね! 三浦はびっくりですよ!」
「料理って言う程の料理でもないけどね。でも去年の今頃からすれば大進歩ですよ。何と今年はネギも自分で切ってる!」
「マジで進歩っすよ」
「よっちゃん食べてる!? もっと欲しかったら三浦が取ってきますよ」
「食べてますよ。おかわりは食べられるようならいただきます」
GREENsに入った1年生もすっかりサークルに馴染み、それでもイベントの規模には毎度ビビっているようだけど、それなりにやれているようだった。サークルの風土的に、バスケ経験が無くても割と問題なくいられるようだった。
三浦が特に目をかけているのは自分と同じバスケ初心者、葉山夜空だ。何だかんだ言ってバスケ経験者かつ実力者の多いGREENsで、男子と言え自分と同じ境遇の奴が来たのが嬉しかったのだろう。ただ、ポジションは三浦がセンターで葉山がガードと全く違う。
この葉山という奴はサークルの中ではちょっとした変わり者だ。バスケをやるというよりもバスケを見て、分析することの方に興味のある奴だ。特にスリーポイントシューターに対する興味が強いようで、基本サトシさんや慧梨夏サンの周りにいる印象がある。
バスケサークルに入ったきっかけがテレビで見たバスケロボットだったというのも影響してるんだろう。工学部でロボット工学を主に勉強してるそうだから、その話を聞いた時にはみんな納得したけど。だからよっちゃんの他にハカセというニックネームも持っている。
「美弥子サンちのお餅は相変わらず美味しいっすねー」
「間違いないな。でも、例によってこれだけの量を人力でついてると思うと何気に結構な重労働じゃん?」
「今年はうちも餅つきに参加したんだけど、大変な分だけ楽しいし美味しいのよ。つきたてやわやわのお餅がも~う美味しくて、お正月だけで結構太ったよね」
「この餅は臼と杵でついたんですか?」
「そうだよ。毎年お正月に餅つき大会があって、ぺったんぺったんやってるの」
「市販のお餅や餅つき機を使ったわけではないんですね。人力だからこそ引き出せる餅の良さという物にも興味が」
「まーたよっちゃんがハカセになっちゃったよ」
葉山は機械が取って代わった人間の営みの中の、人間にだからこそ可能な微妙な力加減であったり所作であったりに興味があるらしかった。スリーポイントシューターへの興味もそれと同じで、人間はどのようにシュートを打っているのかが気になったとか。
「そう言えば、よっちゃん学部の友達にバスケロボットを推してたんでしょ。その後どうなった?」
「ロボットの話はわかったけど、実際のバスケをあまり見たことがないので次の休みに彼氏と一緒に見に行くと言っていました。この感じだと昨日見に行ったんでしょうね、確かにスリーポイントは奥深いとLINEが入っていました。それから、バスケットボールを取り扱った著作物にも興味が出たのでお勧めがあるなら教えてくれと」
「おっと、うちの出番ですね?」
「そうですね、スリーポイントシューターという意味でも、マンガやアニメに詳しいという意味でも頼りになりますね」
サークルでは変わり者扱いされている葉山だけど、学科には似たような興味関心の奴がたくさんいるのだろう。バスケロボットの話に関しても、興味をもって聞いてくれる友達がいるらしかった。で、実際にバスケを見に行かせたとか、何気に凄い熱量だ。
「よっちゃんのその友達、布教を求めて来るとかちょっとしたオタクの子なのかな」
「そうですね。彼女が本当に好きなのは特撮物ですが、幅広く興味関心の扉は開いているようです。フットワークも軽いですしね」
「よっちゃんもどう? いいのありますよ」
「あ、いえ、俺はまずスリーポイントシュートがリングに届くようになる方が先なので。キャップと慧梨夏さんが卒業してしまう前に、もっともっと教えてもらわないと」
「ああそう。それじゃ友達の子に推す作品のリスト作るから、渡してあげて」
「ありがとうございます」
「えー、でも特撮かー。うちもよっちゃんの友達にオススメ作推してもらおうかなあ」
「おい慧梨夏、餅の消費をサボるな。ほら、その辺の連中も、1人当たりのノルマをちゃんと消化しろ」
「ひい! 鬼キャップ!」
「誰が鬼だ」
「慧梨夏サン! 節分の鬼候補がここにいます! さとぴっぴに豆を投げつけましょう! 日頃の恨みを込めて!」
焼けた餅を配りに来たサトシさんと三浦の攻防が始まったけど、GREENsは今日も平和だ。そうか、豆まきがあるんだな……鬼にはなりたくないじゃん? 絶対痛いから。
「康平さん、ちなみにGREENs式の豆まきはまだ人力ですか?」
「ウチの豆まきを機械化したらそれこそ死人が……いや、案外人の方が怖いかもしんねーじゃんな」
end.
++++
GREENsの方にもフェーズ2ナノスパを賑やかにしてくれる1年生キャラを何人か増やしたいと思った結果のよっちゃんお披露目回。ハカセです。
ササレナのバスケ観戦回の方で名前だけはちょろっと出したのですが、レナとは結構仲良しなようですね。将来的に同じゼミとかになるのかな
と言うか、慧梨夏に布教を要求したらとんでもないことになるような気がするけどレナは大丈夫か? いや、自分が同じことをササにやってたわ。全然平気だ
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「皆さーん、毎年恒例の、お雑煮ですよー」
「やったー!」
GREENs恒例、伊東さんの家の鏡開きに伴う餅大会が今年も盛大に始まった。伊東さん自体はもう卒業したんだけど、その伊東さんの義妹になる慧梨夏サンが餅を持って来るという流れだ。でも、慧梨夏サンも今年で卒業だしさすがに今回が最後かもしれないな。
2年生以上は大量に用意された餅にも慣れ切っていつもの光景だなと思うだけだけど、1年生は例によってイベントの規模にビビっているようだ。鏡開きでビビってたら節分には耐えられないじゃん? 今年の節分は2月2日だったっけか。
「慧梨夏さんもすっかり料理が上手になりましたよね! 三浦はびっくりですよ!」
「料理って言う程の料理でもないけどね。でも去年の今頃からすれば大進歩ですよ。何と今年はネギも自分で切ってる!」
「マジで進歩っすよ」
「よっちゃん食べてる!? もっと欲しかったら三浦が取ってきますよ」
「食べてますよ。おかわりは食べられるようならいただきます」
GREENsに入った1年生もすっかりサークルに馴染み、それでもイベントの規模には毎度ビビっているようだけど、それなりにやれているようだった。サークルの風土的に、バスケ経験が無くても割と問題なくいられるようだった。
三浦が特に目をかけているのは自分と同じバスケ初心者、葉山夜空だ。何だかんだ言ってバスケ経験者かつ実力者の多いGREENsで、男子と言え自分と同じ境遇の奴が来たのが嬉しかったのだろう。ただ、ポジションは三浦がセンターで葉山がガードと全く違う。
この葉山という奴はサークルの中ではちょっとした変わり者だ。バスケをやるというよりもバスケを見て、分析することの方に興味のある奴だ。特にスリーポイントシューターに対する興味が強いようで、基本サトシさんや慧梨夏サンの周りにいる印象がある。
バスケサークルに入ったきっかけがテレビで見たバスケロボットだったというのも影響してるんだろう。工学部でロボット工学を主に勉強してるそうだから、その話を聞いた時にはみんな納得したけど。だからよっちゃんの他にハカセというニックネームも持っている。
「美弥子サンちのお餅は相変わらず美味しいっすねー」
「間違いないな。でも、例によってこれだけの量を人力でついてると思うと何気に結構な重労働じゃん?」
「今年はうちも餅つきに参加したんだけど、大変な分だけ楽しいし美味しいのよ。つきたてやわやわのお餅がも~う美味しくて、お正月だけで結構太ったよね」
「この餅は臼と杵でついたんですか?」
「そうだよ。毎年お正月に餅つき大会があって、ぺったんぺったんやってるの」
「市販のお餅や餅つき機を使ったわけではないんですね。人力だからこそ引き出せる餅の良さという物にも興味が」
「まーたよっちゃんがハカセになっちゃったよ」
葉山は機械が取って代わった人間の営みの中の、人間にだからこそ可能な微妙な力加減であったり所作であったりに興味があるらしかった。スリーポイントシューターへの興味もそれと同じで、人間はどのようにシュートを打っているのかが気になったとか。
「そう言えば、よっちゃん学部の友達にバスケロボットを推してたんでしょ。その後どうなった?」
「ロボットの話はわかったけど、実際のバスケをあまり見たことがないので次の休みに彼氏と一緒に見に行くと言っていました。この感じだと昨日見に行ったんでしょうね、確かにスリーポイントは奥深いとLINEが入っていました。それから、バスケットボールを取り扱った著作物にも興味が出たのでお勧めがあるなら教えてくれと」
「おっと、うちの出番ですね?」
「そうですね、スリーポイントシューターという意味でも、マンガやアニメに詳しいという意味でも頼りになりますね」
サークルでは変わり者扱いされている葉山だけど、学科には似たような興味関心の奴がたくさんいるのだろう。バスケロボットの話に関しても、興味をもって聞いてくれる友達がいるらしかった。で、実際にバスケを見に行かせたとか、何気に凄い熱量だ。
「よっちゃんのその友達、布教を求めて来るとかちょっとしたオタクの子なのかな」
「そうですね。彼女が本当に好きなのは特撮物ですが、幅広く興味関心の扉は開いているようです。フットワークも軽いですしね」
「よっちゃんもどう? いいのありますよ」
「あ、いえ、俺はまずスリーポイントシュートがリングに届くようになる方が先なので。キャップと慧梨夏さんが卒業してしまう前に、もっともっと教えてもらわないと」
「ああそう。それじゃ友達の子に推す作品のリスト作るから、渡してあげて」
「ありがとうございます」
「えー、でも特撮かー。うちもよっちゃんの友達にオススメ作推してもらおうかなあ」
「おい慧梨夏、餅の消費をサボるな。ほら、その辺の連中も、1人当たりのノルマをちゃんと消化しろ」
「ひい! 鬼キャップ!」
「誰が鬼だ」
「慧梨夏サン! 節分の鬼候補がここにいます! さとぴっぴに豆を投げつけましょう! 日頃の恨みを込めて!」
焼けた餅を配りに来たサトシさんと三浦の攻防が始まったけど、GREENsは今日も平和だ。そうか、豆まきがあるんだな……鬼にはなりたくないじゃん? 絶対痛いから。
「康平さん、ちなみにGREENs式の豆まきはまだ人力ですか?」
「ウチの豆まきを機械化したらそれこそ死人が……いや、案外人の方が怖いかもしんねーじゃんな」
end.
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GREENsの方にもフェーズ2ナノスパを賑やかにしてくれる1年生キャラを何人か増やしたいと思った結果のよっちゃんお披露目回。ハカセです。
ササレナのバスケ観戦回の方で名前だけはちょろっと出したのですが、レナとは結構仲良しなようですね。将来的に同じゼミとかになるのかな
と言うか、慧梨夏に布教を要求したらとんでもないことになるような気がするけどレナは大丈夫か? いや、自分が同じことをササにやってたわ。全然平気だ
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